レビュー
コンパクトSUVでも、しっかりと“ボルボ”な乗り味に

日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞のボルボ「XC40」2種類の2リッターターボを乗り比べ!

2018年12月7日(金)、日本カー・オブ・ザ・イヤー2018-2019にボルボ「XC40」が選ばれました。受賞理由として、スポーティーな走行性能と快適性が高いレベルで両立されていることが挙げられています。今回、XC40に搭載されている2つのエンジンを乗り比べながら、XC40の実力や魅力などを、自動車ジャーナリストの内田俊一氏がレポートします。

ボルボの売れ行きが好調だ。2018年1月〜10月までの登録台数は14,149台。前年同月期間は13,061台なので前年比108.3%を記録している(JAIA調べ)。

東京などの都心部で見かけることも多くなってきた、ボルボ「XC40」。販売好調なボルボをけん引している車種のうちの1台だ

特にSUVの「XC40」は、2018年3月28日の発売以来3,000台を超える受注があり、バックオーダーを抱えている状態だ。そこで、XC40の試乗会が開催されたのを機に、改めてXC40を取り上げてみたい。

【ボルボ「XC40」のグレードラインアップと価格】

XC40 T4:3,890,000円
XC40 T4 Momentum:4,390,000円
XC40 T4 AWD Momentum:4,590,000円
XC40 T4 AWD R-Design:4,890,000円
XC40 T4 AWD Inscription:4,990,000円

XC40 T5 AWD R-Design:5,390,000円
XC40 T5 AWD Inscription:5,490,000円

XC40のフロントフェイスは「ブルドッグ」

ボルボにおけるXC40のポジショニングについて、おもしろいたとえがある。メーカーによっては同じ靴で大中小と作るところもあるだろうが、ボルボの場合は長男が黒の革靴だとしたら、次男はバックスキンのような素材を使った革靴、そして一番下の三男であるXC40は高級なスニーカーという位置づけとしている。そして、それぞれのセグメントに与えられるべきキャラクター、つまり小さなXC60を作るのではなく、まったく異なるキャラクターを与えることこそが、XC40に求められる個性と言うのだ。

では、XC40にどういうキャラクターが与えられたかというと、あきらかにSUVのように見え、若々しくて少しマッチョなイメージ。そして、XC60やXC90のリトルブラザーではなく、さらにはトラディショナルなファミリーカーではないものが重要視された。その結果、大径ホイールの入ったロボティックなデザインという方向性を持たせたのだ。

ややいかついブルドッグ顔がイメージのボルボ「XC40」

ややいかついブルドッグ顔がイメージのボルボ「XC40」

XC40では、フロントフェイスも特徴的だ。XC90やXC60はライオンが前を見据えて堂々たるイメージであるのに対し、XC40はちょっと小生意気なブルドッグ。フロントノーズは逆スラントになっており、そのイメージを強調している。

ユーザーは価格ではなく「好み」でグレードを決めている

右がボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」、左は「XC40 T4 AWD Momentum」

右がボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」、左は「XC40 T4 AWD Momentum」

XC40の大きな特徴は、それぞれのグレード(ボルボではトリムレベルという)によって、個性が表現されていることだ。グレードが単なる価格による装備差ではないので、グレードごとの個性をユーザーの好みによって選ぶことができる。それが功を奏して、オーダー状況も分散するという結果になっている。具体的には、上級グレードの「R-Design」が一番多くてほぼ4割。そして最上級グレードのInscription(インスクリプション)が38%、標準グレードのMomentum(モメンタム)が22%であると言う。ボルボでR-Designの比率がここまで高いのは珍しい。「R-Design は、1st Editionと呼ばれる特別限定車の白黒ツートンカラーの露出が多かったことや、インテリアの赤いカーペットのインパクトが大きかったのではないか」とマーケティング部門では分析している。

エンジンとグレードの組み合わせでは、「T4 Inscription AWD」が一番多く、これが売れ筋グレードと言えるだろう。次いで多いのが「T4 R-Design AWD」で、20%を超える。続いて、「T5 R-Design」、「T4 Momentum」へと続く。同社の木村社長も、この結果を見て「お客様は自分にあったチョイスで購入している」とコメントしている。

個性あふれる4つのグレード

右がボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」、左は「XC40 T4 AWD Momentum」

右がボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」、左は「XC40 T4 AWD Momentum」

トリムレベルについて、説明しておこう。最も売れている「R-Design」は、ダイナミックな走りを実現する専用シャシーと、スタイリングを引き締めるブラックカラールーフが特徴のスポーティーなモデル。インテリアは、ルーフライニングまでチャコールで統一され、スポーティー感を一層醸し出している。また、1st Editionで採用されていた「Lavaオレンジ」もオプションで用意されている。

スウェーデン流のラグジュアリーを表現しているのが「Inscription」だ。ウィンドウモールなどはクロームで縁取られ、上質感を表現。インテリアも、本革シートや木を手作業で仕上げたドリフトウッド、オレフィス社製のクリスタルシフトノブなどが採用され、スカンジナビアンデザインを演出している。

そして「Momentum」は、オプション装備のホワイトルーフが鮮やかだ。さらに、ソリッドとメタリックの両方が揃えられたボディカラーは、個性的な色調がラインアップされている。

なお、ベーシックグレードのXC40であっても、上級グレードと安全装備面では変わらない。インテリアは、シート生地やダッシュボードをチャコールで統一。インパネには、イエデポリの港の地図が彫り込まれるなど、遊び心あふれる仕上がりだ。

このように、XC40ではそれぞれのグレードが個性を発揮し、選ぶ楽しさを盛り上げてくれている。

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のエンジンルーム

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のエンジンルーム

XC40のエンジンは「T5」と「T4」の2種類で、いずれも2リッターターボだ。T5は最高出力が252ps、最大トルクは350Nmを発揮する。T4は同190ps、300Nmと、T5と比較するとパワーは落ちるが、最大トルクの発生回転数がT5と比較して400回転ほど下から発揮されるので、より低速域で扱いやすいパワートレインであることがわかる。

なお、T5はAWDのみで、R-DesignとInscriptionに搭載されている。T4は、FFがベースグレードとMomentumに。AWDはMomentumとR-Design、Inscriptionに設定されている。

スポーティーながら、しなやかさも持ち合わせるR-Design

さて今回は、「T5 AWD R-Design」(以下R-Design)と「T4 AWD Momentum」(以下Momentum)に試乗することができた。タイヤサイズは共通(235/50R19)だったので、サスペンションセッティングとエンジンの違いをメインにお伝えしたい。

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」の走行イメージ

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」の走行イメージ

XC40は以前、1st Editionに試乗したことがあるのだが、今回のR-Designとの違いで大きいのはタイヤサイズだろう。1st Editionは20インチであったのに対し、今回は19インチと1インチサイズダウンしていることから、乗り心地に影響はあるだろうと予想していた。もともと20インチであってもばね下が重くてバタつく印象はなく、そのサイズのタイヤを履きこなしていた印象があったが、それが今回19インチになったことで、よりしなやかさとともに静粛性が上がり、一段と好感が持てる乗り味になっていた。

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」の走行イメージ

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」の走行イメージ

R-Designはスポーティーで締まった足回りにもかかわらず、不快な突き上げはほとんど感じられない。高速域においては細かい目地をコトコトと拾うこともあったが、ボディ剛性が高いために大きく気になることはない。

またAWDということもあって直進安定性は高く、高速域での移動は得意分野と言ってもいいだろう。市街地では非常に軽いステアリングも高速道路では適度な重さへと変化するが、若干過敏な印象もあるので、もう少し鈍なセッティングでもいいのではと感じた。

街乗りは実に快適なMomentum

ボルボ「XC40 T4 AWD Momentum」のイメージ

ボルボ「XC40 T4 AWD Momentum」のイメージ

今度は、Momentumに乗り換えてみよう。当然エンジンの仕様が違うので、R-Designのほうがパワーがあってトルクフルなのだが、Momentumが非力に感じるかということはそんなことは決してなかった。前述のとおり、下からトルクが出るようなセッティングなので、市街地でも意外ときびきびと走ることができる。

また、今回の試乗ルートには東京湾アクアラインが含まれており、意外ときつい上り坂が続く行程がある。そこでもMomentumは非力さとはほど遠く、しっかりとしたパワーを発揮しており、十分な性能を備えていると感じた。ただ、Momentumでもパドルシフトは備えてほしいと思う。

乗り心地に関しても、Momentumではよりしなやかさが増して、快適な乗り心地だ。高速域でR-Designがコトコトと拾う目地も、Momentumではきれいにいなして走り抜けていく。いっぽう、R-Designと比較すると、高速道路では若干ふわつく印象もあったが、これはあくまでも両車を乗り比べたことから気付いたものなので、実際にMomentumのみで走らせれば、しなやかであるとともに少しやわらかいかなと感じる程度である。

タッチパネルのエアコン操作は使いにくい

両モデルを通じてかなり好印象であったが、気になった点についても触れておきたい。それは、センターにあるタッチパネルのモニター画面だ。

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のインパネ

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のインパネ

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のタッチパネルモニター画面

ボルボ「XC40 T5 AWD R-Design」のタッチパネルモニター画面

見た目は非常にきれいで使いやすそうにも思えるが、実際に画面をタッチしながら操作するというのは意外と手間がかかる。たとえば温度調整をしたい場合には、わざわざその画面を呼び出して温度の部分をタッチして、さらに温度を上げるか下げるかをタッチして設定しなければならない。

もし、これが従来のダイヤル式やレバー式であれば1度で済むものが、2度、あるいは3度と多くステップを踏まなければならないのだ。さらに、その操作をするにはブラインドタッチはまず無理で、必ず目線はモニター画面にそそがれてしまう。つまりはその瞬間、前方を見ていないことになり、危険がともなってしまうのだ。

いっぽう、ソフト面では新たな機能が追加された場合、単にダウンロードで済ますことができる。スイッチをパネルのどこかに追加する必要はないというメリットはあるものの、やはり危険がともなっては本末転倒になりかねない。今後は音声認識がより高度化されるので、そこに期待したい。そう、「Hi メルセデス」が好例だ。

画像の女性は、ボルボ試乗会会場で撮影などご協力頂いた瀧澤恵さん

画像の女性は、ボルボ試乗会会場で撮影などご協力頂いた瀧澤恵さん

スポーティーなR-Designと、素性のよさとはなやかさを備えるMomentum。どちらを選ぶかは本当に悩ましいが、もしあなたが高速道路を主体に走る場合には、R-Designをおすすめしたい。やはり、安定感はこちらのほうが上だからだ。そして、市街地がメインであればMomentumがいいだろう。しかも、今回装着しているオプションの19インチではなく、18インチの標準サイズのタイヤがよい。そうすればより快適な乗り心地が手に入るとともに、バネ下が軽くなり、燃費にも貢献することだろう。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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