レビュー
FRのコンパクトハッチという魅力的なパッケージ

BMW 1シリーズ最後の!? 後輪駆動を堪能! 「118d」1000km試乗

小型のハッチバックセグメントにおいて、唯一の後輪駆動レイアウトを持つBMW「1シリーズ」も、そろそろモデル末期を迎える。

数少ない後輪駆動のコンパクトハッチバックとして重宝されてきたBMW「1シリーズ」。だが、次期1シリーズは前輪駆動になる可能性が高い

次のモデルは「2シリーズ」や「X1」「X2」などのプラットフォームを利用することになるだろうから、前輪駆動になることが十分に想像できる。つまり、ついにこのセグメントの後輪駆動車がなくなってしまうのだ。そこで、乗り納めとばかりにBMW「118d」を1,000kmほどテストに連れ出してみた。また、欧州車ではよくあるように、モデル末期の完成度は非常に高くなることから、現在の1シリーズが最良の状態といえることも今回のテストでは楽しみな部分だ。

セグメント唯一の後輪駆動

デビューしてからしばらくたっているBMW 1シリーズについて、少し振り返っておこう。BMW 1シリーズは、2004年に初代モデルが発売されて以来、プレミアムコンパクトセグメントにおける唯一の後輪駆動レイアウトや、およそ50:50の前後重量配分により、スポーティーで俊敏なハンドリング性能とともに、すぐれた環境性能や高い動力性能を両立させてきた。

現行モデルとなる第2世代(2011年デビュー)では、従来の長所を引き継ぎつつ、新世代エンジンの搭載やサスペンションテクノロジーの最適化によって、スポーティーでありながら高効率となり、かつ走行快適性が大幅に改善された。

さらに、2015年にはスタイリングを一新。シャープな印象を与える「フロントヘッドライト」やフロントフェイスの存在感を主張する「キドニーグリル」、ワイドなスタンスを強調する「L字型リヤコンビネーションライト」、ダイナミックなたたずまいを強調する「フロントエプロン」や「リヤスカート」など、スポーティーで洗練された印象が強調された。

BMW「118d」のエンジンルーム。2リッター直列4気筒クリーンディーゼルエンジンが搭載されている

BMW「118d」のエンジンルーム。2リッター直列4気筒クリーンディーゼルエンジンが搭載されている

そして、2016年に2リッター直列4気筒クリーンディーゼルエンジンが搭載された「118d」が追加される。同ディーゼルエンジンは、最新の「コモンレールダイレクトインジェクションシステム」と「可変ジオメトリーターボチャージャー」が組み合わされ、最高出力は110kW(150ps)/4,000rpmを発揮。最大トルクは320Nm(32.6kgm)/1,500-3,000rpmと、ディーゼルエンジンならではのパワフルな走りが可能となっている。加えて、「8速オートマチックトランスミッション」や「エンジンオートスタート/ストップ機能」など、先進の環境対応技術を数多く採用し、燃料消費率(JC08 モード)は、22.2km/Lを実現。同等のガソリンエンジンを搭載するBMW「118i」から、さらに2割ほど向上しているという。

2018年9月にBMW「1シリーズ」のラインアップへ新たに加わった、「118d ファッショニスタ」

2018年9月にBMW「1シリーズ」のラインアップへ新たに加わった、「118d ファッショニスタ」

今回試乗したグレード「118d ファッショニスタ」は、ベースモデルに専用デザインの装備や安全性・快適性を高める機能を追加して商品力を高めながら、追加装備に対して大幅に抑えた価格設定とされた。オイスター色のシートによる温かみのある明るいインテリアに加えて、狭いスペースでの駐車をサポートする「リアビューカメラ」や、「ストップ&ゴー機能付きアクティブクルーズコントロール」など、安全性と快適性をサポートする機能を採用することで、特に女性ユーザーを中心に好評を博しているという。

街中でも楽しいディーゼル

BMW「118d」のインテリア。サイドブレーキこそ手動だが、基本レイアウトはほかのBMW車と変わらない

BMW「118d」のインテリア。サイドブレーキこそ手動だが、基本レイアウトはほかのBMW車と変わらない

しっかりとした作りのドアを開け、室内に乗り込むと、そこに広がるのはまさしくBMWのそれだ。どのBMWに乗っても基本的なレイアウトは変わらず、BMWに乗りなれたドライバーなら最初から迷いなく運転できる。

電動パワーシートを操作してドライビングポジションを合わせ、エンジンのスタート・ストップボタンを押すと、少し身震いをしてエンジンは目覚めた。ATのセレクターレバーの横にあるボタンを押しながら手前に引くとDがセレクトされ、最近では珍しくなった手引き式のサイドブレーキをリリースすると、ディーゼル特有のトルクフルな出足でしっかりと118dは走り始めた。

手頃なボディサイズにトルクフルなエンジンを搭載するBMW「118d」は、日本の市街地でも扱いやすいモデルだ

手頃なボディサイズにトルクフルなエンジンを搭載するBMW「118d」は、日本の市街地でも扱いやすいモデルだ

118dは、市街地ではきびきびと走り回る。そのポイントは、ボディが比較的小さなことに加え、前述したトルクフルなエンジンと8速ATのギア比の組み合わせが絶妙なことだ。

全長4,340mm、全幅1,765mm、全高1,430mmというボディサイズは、都心を泳ぎまわるにはちょうどいい。エンジンの出力やトルクについても非常に好感が持て、低速域からモリモリと厚いトルクがあふれてくるので、乗っていてとても気持ちがいい。ディーゼルなので高回転まで回す必要もなく、逆にそれが街中では乗りやすさに繋がっている。つまり適切なギアが低回転で選択され、トルクで走らせるのでせわしなさが皆無なのだ。ATのシフトショックやシフトタイミングは非常にスムーズで、かつ違和感もなく、ドライバーの意思に忠実な印象を与えてくれる。

交差点などでステアリングを操作すると、近年多くなった可変式のギアレシオではないので、どの速度域であっても違和感なくスムーズに走ることが可能だ。その重さも適度で、路面からのフィードバックも適切なので、可変式ギアレシオを備えた電動パワーステアリングにありがちな、軽すぎたり、妙に切れ込みすぎたりすることはないのは、とても好感が持てる。

BMW「118d」は、とくにコーナーリング時などに後輪駆動であることを堪能できる

BMW「118d」は、とくにコーナーリング時などに後輪駆動であることを堪能できる

そして、コーナーリングでは後輪駆動の楽しさが味わえる。ステアリングを切って安全を確認した後にアクセルオンで抜けようとすると、若干腰を沈めながら非常に気持ちのいい加速が開始されるので、「あぁ、いま後輪駆動を運転しているのだな」という後ろから押される感覚を堪能できる。もちろんこれはワインディングロードでも同様で、ひらひらとコーナーからコーナーへ抜けていくのは快感でもあった。

ややばたつく印象があるのは、標準車より1インチアップされたタイヤが影響している可能性も

ややばたつく印象があるのは、標準車より1インチアップされたタイヤが影響している可能性も

乗り心地に関してはこのセグメントとしてはよく、決して硬すぎることはない。ただし、もう少しだけ落ち着いてほしいと感じた。若干路面の凹凸を忠実に拾いすぎてひょこひょこと、バタつく傾向にあるのだ。

装着されているタイヤは205/50R17(テスト車はブリヂストン「ポテンザS001 RFT」)で、ベースモデルよりも1インチアップしているので、タイヤが影響を及ぼしていることも考えられる。その証拠に、若干だが路面の轍にタイヤをとられることがあった。ただし、他メーカーのようにランフラットであることの悪影響はほとんど感じられず、十分に履きこなしてはいるようだ。

ブレーキは若干トリッキーな効き心地だ。特に停止寸前は少し食いつく感じなので、微妙にブレーキコントロールをしたいときには気を遣うことになり、慣れが必要である。

高速道路の移動は得意だが、ACCは少し時代遅れ

高速道路に乗り入れると、118dはまた新たな1面を見せてくれた。それは、直進安定性の高さだ。市街地で轍にタイヤを取られていた悪癖は、速度域が上がる高速道路では収まった。この直進安定性は、欧州車としては標準的ではあるものの、このセグメントの日本車では絶対に味わえないもので、名古屋往復くらいなら淡々と平気でこなす実力を備えている。

BMW「118d」のシートは、疲れにくく長距離もこなせるほど快適だ

BMW「118d」のシートは、疲れにくく長距離もこなせるほど快適だ

そこへ大きく貢献しているのが、シートだ。普通の形状ながらホールド性があって、疲れにくく長距離でも快適に移動することができる。若干滑りやすい傾向にあるが、決して問題視するほどのものではなかった。

静粛性は高く、エンジン音は非常に静かで、とても快適な高速クルージングを楽しめる。100km/hでエンジンの回転は1,400rpmくらい。このあたりで一番気になるのはエンジン音ではなくどちらかといえば風切り音とロードノイズで、特にリア周りから入ってくるロードノイズは気になることがあった。

足回りはダンピングが効いているので、段差などでも一発でバウンシングが吸収される。スポーティーではあるものの、不快ではなかった。

いっぽう、時代を感じさせるものもある。それは、安全装備のひとつである「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」だ。単眼カメラの中では十分にその性能は満足できるものだが、徐々に2眼カメラが増えてきている今、やはりその動作には不満が残る。加減速は若干雑で、前が空いたら即加速体勢に入り、追いついたら強めのブレーキングをするなど荒いところが見受けられるのだ。しかし、完全停止までの機能が備わっているので高速道路での渋滞では便利な機能ではある。

満足な燃費性能

最後に、実燃費について報告しよう。市街地で14.5km/L、郊外路では17.0km/L、そして高速では20.3km/Lを記録した。街中ではもう少し伸びてほしい気もするが、十分満足できる値と言えよう。

基本設計は8年以上前のものなので、各所は確かに古臭さを感じる。その最たるものはACCとともに、エンジンの振動がわずかだがアイドリング時にステアリングとペダル類を通してドライバーに伝えてくる。このあたりは、最新のBMWの車種にはかなわない。

モデル末期ながら、BMW「118d」は走りを中心として大きな魅力を持ち合わせている

モデル末期ながら、BMW「118d」は走りを中心として大きな魅力を持ち合わせている

しかし、モデル末期にもかかわらず、気になる点がそのくらいでしかないことは驚きであった。118dは運転する喜びを十分に感じさせ、かつ燃費も満足できる。車両本体価格は404万円と、このセグメントとしては割高ではあるが、対価満足度は十分に高いものと言えるだろう。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン「動画」まとめページ
ページトップへ戻る