レビュー
よく曲がるコーナーリング特性は新型スープラならでは

発売直前のトヨタ 新型「スープラ」へ試乗!3L直6ターボの実力をチェック

2019年1月、アメリカのデトロイトで開催された北米国際自動車ショーにおいて、トヨタ自動車の豊田章男 代表取締役社長は、「スープラは、これまで以上にいいクルマとして戻ってきた」とスピーチした。

2019年1月に、アメリカのデトロイトで開催された「北米国際自動車ショー」で世界初披露された、トヨタ 新型「スープラ」

トヨタ「スープラ」は、かつてトヨタが販売していたスポーツカーだ。日本では「セリカXX」の後継車種として1986年に「A70型」が発売され、1993年に「A80型」へとフルモデルチェンジを受けて2002年まで生産された。スープラは、セリカXXの時代から歴代モデルへ直列6気筒エンジンを搭載し、後輪駆動(FR)を採用していたことなどが特徴だ。そんなスープラが、17年ぶりに「A90型」の新型モデルとしてよみがえる。

トヨタ「スープラ」の歴代モデルの画像。中央の赤いクルマが、今回発売される新型「スープラ」だ

トヨタ「スープラ」の歴代モデルの画像。中央の赤いクルマが、今回発売される新型「スープラ」だ

トヨタとBMWの協業により直6エンジンが搭載可能に

新型スープラは、2012年に業務提携を結んだBMWと協力して開発が行われた。そのため、エンジンやトランスミッション、プラットフォームなどは、BMWのオープンスポーツカーである新型「Z4」と共通化されていることも、トピックのひとつだ。

今のトヨタは、乗用車向けの直列6気筒エンジンを開発していないため、BMWと提携しなければ直6エンジンの搭載は不可能であった。ちなみに、新型スープラでは直6エンジンのほかに直4エンジンもラインアップされている。

■新型スープラ(日本仕様)のグレードラインアップ
-3L直6ターボエンジン搭載-
RZ

-2L直4ターボエンジン搭載-
SZ-R
SZ

■新型スープラ(日本仕様)の主要諸元
駆動レイアウト:FR
乗車定員:2名
全長×全幅×全高:4,380×1,865×1,295mm(RZ)/4,380×1,865×1,290mm(SZ-R、SZ)ホイールベース:2,470mm
FRトレッド:1,594mm(RZ)/1,609mm(SZ-R、SZ)
RRトレッド:1,589mm(RZ)/1,616mm(SZ-R、SZ)
車重:1,520kg(RZ)/1,450kg(SZ-R)/1,410kg(SZ)
排気量:2,998cc(RZ)/1,998cc(SZ-R、SZ)
過給:ツインスクロールターボ
トランスミッション:8速スポーツAT
最高出力:250kW[340PS]/5,000-6,500rpm(RZ)/190kW[258PS]/5,000-6,500rpm(SZ-R)/145kW[197PS]/4,500-6,500rpm(SZ)
最大トルク:500N・m[51.0kgf・m]/1,600-4,500rpm/400N・m[40.8kgf・m]/1,550-4,400rpm/320N・m[32.6kgf・m]/1,450-4,200rpm
0-100km/h:4.3秒(RZ)/5.2秒(SZ-R)/6.5秒(SZ)
タイヤ:FR 255/35R19・RR 275/35R19(RZ)/FR 255/40R18・RR 275/40R18(SZ-R)/FR 225/50R17・RR 255/45R17(SZ)

トヨタ 新型「スープラ」のフロントイメージ

トヨタ 新型「スープラ」のフロントイメージ

トヨタ 新型「スープラ」のリアイメージ

トヨタ 新型「スープラ」のリアイメージ

新型スープラのボディサイズは、全長が4,380mm、全幅は1,865mmとワイドで、ホイールベースは2,470mmと短い。新型スープラの開発者へたずねると、「ワイドな全幅に対してホイールベースを短く抑えることで、よく曲がる機敏な操舵感を実現させた」と言う。ワインディングなどをドライブするときは、ホイールベースが短いほうが運転しやすい。駆動方式は従来のスープラと同じFR(後輪駆動)の2WDで、前後輪の重量配分は各50%ずつなので、バランスがいい。

トヨタ「86」とボディサイズを比べると、新型スープラは140mm長く、90mmワイドで、30mm低い。ホイールベースは100mm短い。ここで注目したいのは、全長は新型スープラが140mm長いのに、ホイールベースは逆に100mm短いということだ。結果、新型スープラは、オーバーハング(ボディがホイールよりも前後に張り出した部分)が240mm長い。

トヨタ 新型「スープラ」のサイドイメージ

トヨタ 新型「スープラ」のサイドイメージ

今のクルマは、以前と比べるとホイールベースを長くして、オーバーハングを短く抑える傾向にある。4輪をボディの四隅に配置すれば、カーブを曲がるときに慣性の影響を受けにくく、安定感が増す。だが、新型スープラのオーバーハングが長い外観は、クラシックな雰囲気すらただよう。真横のエクステリアを見ると、1960年代から1970年代のアメリカンスポーツカーのように見える。

トヨタ 新型「スープラ」のフロントフェイス

トヨタ 新型「スープラ」のフロントフェイス

フロントフェイスはグリルが大きく開き、前後フェンダーは大きな膨らみを持たせている。ボディのサイドはうしろへ向かって絞り込まれており、引き締まった印象を受ける。

トヨタ 新型「スープラ」のインパネ

トヨタ 新型「スープラ」のインパネ

ホイールベースが短いために、新型スープラの車内は狭く、後席はない。インパネは、横長にデザインされた空調スイッチなどがBMW「Z4」に似ている。ATレバーが収まるセンターコンソールの位置は、FRらしく高い。

ATレバーの形状は、BMWと同じだ。さらにウィンカースイッチも、日本車はステアリングの右側に装着されるが、新型スープラは左側に付いている。BMWと共同開発したというより、Z4をベースに新型スープラを造ったという印象だ。視認性や操作性はいい。シートは、スポーツカーらしいバケット形状で、ドライバーの体を確実にホールドしてくれる。腰付近のサポートは硬めだが、座り心地は快適だ。

トヨタ 新型「スープラ」には、3L直列6気筒ターボと2L直列4気筒ターボの、それぞれ排気量の異なるエンジンがラインアップされている

新型スープラの「RZ」グレードに搭載される3L直列6気筒ツインスクロールターボエンジンは、最高出力が340PS(5,000〜6,500rpm)、最大トルクは51.0kgf・m(1,600〜4,500rpm)に達する。ターボを装着しないノーマルエンジンに当てはめると、4.5〜5L並みの性能だ。

いっぽう、2L直列4気筒ツインスクロールターボエンジンは、グレード違いにより2種類のエンジンがラインアップされている。「SZ」グレードは、最高出力が197PS(4,500〜6,500rpm)、最大トルクは32.6kg-m(1,450〜4,200rpm)で、ノーマルエンジンなら3L並みの性能だ。「SZ-R」に搭載される2L直4エンジンはパワーアップされていて、258PS(5,000〜6,500rpm)・40.8kg-m(1,550〜4,400rpm)を発揮する。SZ-Rの性能は4Lクラスになる。

サスペンションは前輪がダブルジョイントスプリングのストラット、後輪はマルチリンクだ。

滑らかで高回転まできっちりと回る「3L直6ターボ」

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

今回、3種類のグレードの中で、最もパワフルな3L直6ターボを搭載する「RZ」のプロトタイプを、千葉県袖ヶ浦市に位置する「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」で試乗した。

(※当記事の走行画像は、プロトタイプ試乗時とは異なる北米仕様の走行画像を使用しております。あらかじめご了承ください(編))

新型スープラに搭載される3L直6ターボの駆動力は高く、低回転域から十分なパワーを発生させる。アクセルペダルを踏み込むと、エンジン回転数の上昇にともなって加速が鋭さを増していき、迫力ある加速を楽しめる。加速にはややターボラグが感じられるものの、スポーツカーなので欠点にはならないだろう。

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

とくに、4,000rpmを超えると加速は鋭さを増し、最高出力を発生させる6,500rpmまできっちりと回る。直6らしく吹け上がりは滑らかで、ドライビングの楽しさを盛り上げてくれる。コーナーでステアリングを切り込んだときの反応は正確だ。小さな舵角から忠実に反応するため、運転しやすい。ドライバーとクルマの一体感も覚える。この正確な操舵感は、BMWの特徴そのものだ。

切り込むようにカーブを曲がる感覚がたまらない

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

コーナーリング時の印象としては、走行モードによっても異なるが、外側のフロントタイヤがしっかりと踏ん張ってくれる。旋回軌跡も、外側へと膨らみにくい。よく曲がり、コーナーの先が内側へ回り込むような状況でも、ステアリングを切り足せばコースアウトしにくい。

だがコーナーリング中に、たとえば危険を避けるためにステアリングを切り込みながらアクセルペダルを戻すような操作をすると、後輪の接地性が下がりやすい。グリップの前後バランスが、少し前寄りな感覚だ。この挙動変化は、電子制御クラッチによって後輪左右のロック率を0〜100%に変化させる「アクティブデファレンシャル」の設定に基づくものでもあるのだろう。

今の多くのクルマは、スポーティーに曲がるよりも走行安定性を重視するセッティングなので、後輪の接地性が下がる車種は珍しい。一般的にいえば新型スープラの走行安定性は高いが、持ち味としてはコーナーを攻めるような性格を持ち合わせている。サーキット走行に適したセッティングなのだろう。

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

トヨタ 新型「スープラ」の走行イメージ(画像は北米仕様)

新型スープラのホイールベースは短いが、その目的も回頭性を高めるためだ。全幅が1,865mmに達するのでLサイズのスポーツカーに分類されているが、車両の性格としてはマツダ「ロードスター」のように軽快に曲がるような特性を狙っている。乗り心地は硬めだが、走行安定性を高めるために足まわりは柔軟に伸縮しているので、粗さは生じない。

新型スープラのよく曲がる運転感覚は、玩具的な印象も受けるが、それこそがほかのスポーツカーとは異なる新型スープラならではのおもしろさなのだろう。

今回、「スープラ」という車名を冠したことについては、賛否両論あると思う。新型は、これまでのスープラとは異なる後席のない2シーターボディなので、手荷物などの収納に困ることもあるだろう。ホイールベースが短いボディは、伸びやかだった従来型とは見栄えも異なる。

さらに、ささいなことかもしれないが、ウィンカーレバーが左側に装着されていることも気になる。開発者へその理由をたずねると、「右側へ移すには多額のコストがかかるため」との返答であった。つまり、主役はウィンカーレバーが左側に装着されるBMW「Z4」で、新型スープラは副次的な日本仕様と受け取れてしまう。これは、日本のユーザーとしては寂しいだろう。スープラを名乗るならば、純粋なトヨタ製であってほしい。

1993年に発売されたスープラのキャッチフレーズも、「THE SPORTS OF TOYOTA」であった。トヨタが珍しく「SPORTS」と宣言したクルマだ。こういった経緯も考えると、新型スープラは別の車名を名乗る方がいいのかもしれない。

だが、こういった感慨が生まれるのもスポーツカーであるからだ。賛否両論があってスポーツカーを語れるのは、クルマ好きとしてはとても楽しい。まもなく発売される新型スープラを、大いに味わいたいものだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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