レビュー
極寒の試乗会で改めて感じた、三菱車の4WD性能の高さ

雪上試乗でわかった!新型「デリカD:5」驚くべき走行性能の進化

2019年2月初旬、北海道千歳市のクローズドコースで三菱自動車の雪上試乗会が開催された。用意された車両は、2019年2月15日に発売されたばかりの新型「デリカD:5」と、「エクリプスクロス」「アウトランダーPHEV」の3台。同社の4WD技術によって、雪道での車両安定性や走破性の高さを体感してもらおうというのが、この試乗会の狙いである。

三菱 新型「デリカD:5」、「エクリプスクロス」「アウトランダーPHEV」3車種の雪上試乗会が開催された。目的は、三菱車の雪上における走破性の高さを実際に体験するというもので、北海道のクローズドコースにテクニカルな特設コースまで用意されるという大規模な試乗会となった

試乗会前日の夜には、新型デリカD:5の改良ポイントに加えて、三菱自動車が持つ4WD車の制御についての座学が行われた。しかし、この座学が正直言ってかなりハイレベル。三菱側はかなりやさしく教えたつもりでも、聞く側は大学での講義を想い出すほど難解であった……(泣)。

だが、座学を通じて改めて感じたのは、1987年に登場したE30系「ギャラン」から始まった「AWC(オールホイールコントロール)」という開発思想は、「パジェロ」や「ランサーエボリューション」、そしてデリカにも脈々と受け継がれ、進化しているということ。そして、それを進化させた「S-AWC」(車両運動統合制御システム)も、制御だけではなく構造も含めて、それぞれの車種に最適な技術として組み込まれているということが改めて理解できた。

孤高の存在とも言えるロングセラー商品

2007年に登場した、三菱「デリカD:5」

2007年に登場した、三菱「デリカD:5」

デリカD:5の発売は、2007年1月31日。それから、実に丸12年が経過している。日本車のモデルチェンジサイクルから考えれば、圧倒的に長いことは誰もが理解できるだろう。ただ、発売当初はガソリン車のみだった設定も、細かな制御変更による実用燃費の向上を始め、2012年12月には待望のクリーンディーゼル車も設定されるなど、大きく変化してきた。

また、三菱自動車がうまいと感じるのは、ボーナス商戦などを想定して買い得感の高い特別仕様車を用意していることだ。もちろん、販売上のテコ入れではあるが「CHAMONIX(シャモニー)」や「JASPER(ジャスパー)」などは、同車のブランドとしての強さを持ち、最近では「ACTIVE GEAR(アクティブギア)」が人気を博している。

つまり、デリカD:5の強みはその「ロングセラー性」にあり、発売当初からミニバンにSUVの走破性を組み合わせたという他社にはないコンセプトが、今でも評価され続けているのである。

賛否両論!? でも変わった感は十分伝わる外観

さて試乗会当日、すでにデリカD:5の現車自体は、2019年1月に開催された「東京オートサロン」でも拝見しているが、取材時は発売前ということからナンバーなしのデリカD:5が披露された。

三菱 新型「デリカD:5」のエクステリア

三菱 新型「デリカD:5」のエクステリア

まずは、ネットなどでもかなり「賛否両論」のエクステリアである。失礼を承知で言わせていただくと「切れる4枚刃のカミソリ」などと言われているのも、三菱側は想定済みだったようだ。

もともと、デリカD:5はアウトドア志向+カジュアル路線で商品展開しており、もう少し上質感が欲しいユーザーには「ROADEST(ローデスト)」で対応してきた。しかし、時代は変わりユーザーの嗜好も変化する中、従来のアウトドア路線はキープしつつ今回はフォーマル。言い換えれば、都会的なテイストを加えることで新規市場を開拓しようというのが狙いだ。

で、このフロントマスク、正直言えば「好み」以外の何物でもないと思う。時間が経てば最初はいろいろと言われても、徐々になじんでくるクルマはこれまでにも数多くあった。

三菱 新型「デリカD:5 アーバンギア」のエクステリア

三菱 新型「デリカD:5 アーバンギア」のエクステリア

強いて言えば、同時に設定された「アーバンギア」のほうが落ち着いた感じではあると思う。いずれにせよ、「ひと目見たら忘れない」強烈とも言えるアピアランスが実現できたのは成功だったと思うし、それでも納得できないのであれば、デリカという性格からしてこれまでも数多く出てきた、サードパーティー製のカスタマイズパーツに期待するというのもありだろう。

三菱 新型「デリカD:5」のインパネ

三菱 新型「デリカD:5」のインパネ

ドアを開け、フロントシートに着座すると、刷新されたインパネが目に飛び込んでくる。水平基調のデザインは、走行時の車体姿勢を把握する意味を持つ、とのこと。デザイン性はもちろんだが、オフロードなどを走行する機会のある人は思わずニヤリとしてしまう設計となっている。

三菱 新型「デリカD:5」に、ディーラーオプションとして設定されているオリジナル10.1型ナビゲーション。4分割画面表示が可能で、知りたい情報へすぐにアクセスできる利便性の高さを持っている

また今回は、ディーラーオプションではあるが、クラリオン製の「10.1型ナビゲーション」が装着されていた。前モデルではアルパインの「ビッグX」とのコラボも存在していたが、インフォテインメントシステムのトレンドである大画面を実現するために、クラリオンとコラボしたということだ。

個人的には、このナビの大画面に注目したい。クラリオンのこのモデルは「Quad View」と呼ばれ、市販モデルでは9型のもののみが販売されている。つまり10.1型の「Quad View」は、現状においてはデリカD:5専用に開発されたことになる。

このナビは、「Quad View」という商品名が表すように、ディスプレイをナビ、AV、ツール、アプリの4つのエリアに分け、同時表示はもちろん、簡単な操作でレイアウトの入れ替えや4画面の大きさを変更できるというすぐれものである。9型でも、その能力は十分に堪能できるが、さすがに10.1型は画面がさらに大きく、視認性は抜群だ。

インフォテインメントシステム選びは、スマホアプリなどの台頭により販売が苦戦している部分も見受けられるが、デリカD:5を購入するのであればこの10.1型ナビを装着することをおすすめしたい。価格は、24万8,400円に加えて取り付けキットも必要となるが、マルチアラウンドモニターへの対応なども考えるとコスパは高く、何よりもインテリアにジャストフィットする点はユーザーの満足度を上げることは間違いない。

弱点を克服し、強化してきた

内外装が大幅に刷新された新型デリカD:5だが、何よりも中身で勝負! 悪路走破性の高さは元々の強みだが、今は必須とも言える先進安全装備の不足やクリーンディーゼルにおける静粛性、そのあたりをしっかりとアップデートしてきた。

先進安全装備に関しては、同社の「e-Assist」に準じ、FCM(衝突被害軽減ブレーキ)やBSW(後側方車両検知警報システム)、高速道路の走行時に利便性の高いACC(全車速追従走行機能付)など、十分な内容となっている。

三菱 新型「デリカD:5」では、ディーゼルターボエンジンに「尿素SCRシステム」が採用されたほか、トランスミッションは8速ATへと進化している

そして、今回のモデルチェンジで最大の目玉とも言えるのが、クリーンディーゼル&トランスミッションの大幅改良である。2.2L直4ディーゼルターボは、環境性能を大幅に向上させるためにAdBlue(尿素水)を噴射して排出ガスを浄化する「尿素SCRシステム」へ変更。エンジン自体も、燃焼室の改良によってフリクションを大幅に軽減するなど、改良の幅はここでは書き切れないほどだ。特に浄化システムは、環境&燃費性能だけでなく、音や振動の低減にも効果があるそうだ。

そして、トランスミッションは8速ATに進化。1速ギアを約8%、トップギアを約18%、合計で約27%ワイド化することで、悪路の走破性を向上させるとともに、高速走行時にはエンジン回転数を下げることで実用燃費を向上させている。

前モデルとの比較が悲しいくらい、レベルアップは顕著

今回の雪上テストコースは、ダカール・ラリーなどで活躍し、日本が世界に誇るラリードライバー、増岡浩氏が監修している。

雪上試乗のコースレイアウトは、ラリードライバーの増岡浩氏が監修しており、アップダウンが激しくコーナーもきつい、テクニカルなコースレイアウトとなっていた

現地では、最初に増岡氏が運転するデリカD:5に乗り込んでコースをチェックするのだが、正直言って「誰だ、こんなキツイコースを作ったのは!」と心の中で叫んでしまうほどテクニカルなコースレイアウトだった(もちろん、隣に監修した増岡氏がいたのだが……)。増岡氏は、我々に解説しながらスイスイとコースを走っていくのだが「無理、これ無理。増岡さんだから走れているんだよ」とみずからに言い聞かせるのに必死であった。

三菱 新型「デリカD:5」には、走行シーンに合わせて「2WD」、「4WDオート」、「4WDロック」と、3つの走行モードを選択できるドライブモードが備えられている

そして、いよいよ試乗の出番だ。デリカD:5には、燃費にすぐれた「2WD」、雨や横風でも車体が安定する「4WDオート」、そして雪道や登坂路などの滑りやすい路面でも走破性の高い「4WDロック」と3種類のドライブモードが設定されている。だが雪上にもかかわらず、増岡氏は「4WDオートで全然大丈夫」とのこと。

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

「本当なのか〜?」と、心の中でつぶやきながらコースインしたのだが、思わず驚いたのが出だしのスムーズさだ。そして、音振性能は前モデルとは比較にならないほど静かで、フロアやステアリング周辺への振動も抑え込まれている。

マイナーチェンジ前の三菱「デリカD:5」雪上走行イメージ

マイナーチェンジ前の三菱「デリカD:5」雪上走行イメージ

コースには、15°以上の下り坂を下りてから今度は20°以上ある上り坂を一気に駆け上がるなど、走破性能が確認できるポイントが数か所設定されている。そして今回、新型デリカD:5の性能をわかりやすく体感するために、マイナーチェンジ前のデリカD:5も同様に試走することができたのだが、その差をはっきりと感じ取ることができた。

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

新型の魅力をひと言で言えば「あっさり走り切れる」のである。マイナーチェンジ前のモデルも走破性は高いのだが、新型と比較するとアクセルの踏み込み量が多くなる。それはそれでこのクルマの“味”であるわけだが、新型はアクセル開度も確実に少なく、それでいてとてもコントロールしやすい。

前日の座学で、デリカD:5には電子制御カップリングを搭載したシステムであることを再確認した。ブレーキAWCといった最新技術は持っていないが、走破性を高めるために対角離地対応トラクションコントロールを採用している。システム自体の優越というよりは、実際に深雪などを走っても神経を使うことなく、スムーズに走れることがドライバーにとって有益だということは間違いないだろう。

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

三菱 新型「デリカD:5」の雪上走行イメージ

これらのシステムにより、車両の挙動はきわめて安定しており、通常走行ならばアンダー/オーバーステアに陥ることはほぼない。もちろん安全運転が大前提ではあるが、昨今都市部を襲う積雪などでもスタッドレスタイヤを装着しておけば本当に頼りになる相棒となるだろう。

さて、今回試乗する前から気になっていたのがデザイン変更などによりアプローチアングルが24°から21°になって、デリカD:5の利点でもある最低地上高が210mmから185mmとなってしまった点だ。特に最低地上高は、ちょっとした縁石を間違えて乗り越えてしまった際などにアンダーボディをヒットしてしまうのではないかと心配だ。

この件について、三菱の技術者に聞いてみると、実用上は数字ほど影響が出ないとのこと。これは、そもそも最低地上高を測定する際の問題らしく、マイナーチェンジ前モデルは柔軟性のあるアンダーパネルの材質を使っていたため、その部分が凹んだ状態での数値だったとのこと。いっぽう、新型では硬い素材を使うことで変形自体は少ない。つまり、元々の最低地上高自体は185mmに近い(あくまでも測定上だが)ということで、心配しなくても大丈夫とのことだ。

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