レビュー
フォレスターで豪雪地を走破!

本当に雪上!?スバル「フォレスター アドバンス」豪雪でも安定感は抜群!

スバルが、“総合雪国性能”をテーマとした雪上試乗会を開催した。

スバルは、自車のAWD性能の高さを示すために、あえて積雪の多い地域での試乗会を開催している。こういった考え方そのものがスバルらしいと言える

近年のスバルは、よりユーザーの使用状況に近くなる一般道の雪上試乗会を開催している。2018年には、青森から八甲田山を越えて、安比に行く雪上試乗会が開かれた。そして2019年の今回は山形県を舞台に、山形市を北上して酒田まで行く雪上試乗会が開催された。

今回、試乗会の舞台となったのは、山形県の「肘折温泉」。2000年以降の最深積雪ランキングで2位を誇るほどに雪深い地域だ

2018年の青森での雪上試乗会は、5m66cmという最深積雪ランキング(気象庁/2000年以降)でトップとなる酸ヶ湯(すかゆ)温泉を越えるコースが設定された。そして今回は、4m45cmと同ランキングで2位を記録している山形県の肘折温泉を通るルートだ。距離は、およそ200km。雪になれないドライバーにとってはかなりの疲れを感じるような距離だが、そこは今回のテーマであるスバル車の“総合雪国性能”にかかっていると言えるだろう。

スバル広報部長の岡田貴浩さんは、「通常の新車試乗会では伝えられない、スバルというものを知ってもらうことを目的にしています。お客様が日常、特に雪国の方がスバル車に乗って、いかに安心と愉しさを感じていただいているか。そこを体験してもらいたいことから、今回は山形から酒田までの道を走ってもらう試乗会としました」と説明。

「天気も路面状況も、ふたをあけてみないとわからないような刻々と変わる環境ですが、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)とAWDを体感してもらうとともに、視界や空調などを含めた総合的な安心感を体験してもらいたいと思います」と今回の趣旨を説明した。

なぜスバルは“雪上”にこだわるのか

なぜスバルはそこまで雪上に、そして山形にこだわるのだろうか。その理由は、山形県のスバル車の登録車保有シェアが3.7%と、他県(3%)に比べて多いこと、またスバルが乗用4WDを開発する際に、山形の月山(がっさん)で雪上試験を行っていたからという。

スバルは、かつて同社初の4WD開発の際に、山形の月山にて試験を行っていた

スバルは、かつて同社初の4WD開発の際に、山形の月山にて試験を行っていた

さらに、山形県のスバル車のAWD(4WD)比率は95.4%。山形のスバル車のほとんどが4駆であることも、理由のひとつとして挙げられる。つまり、スバル車が雪に強いことをさらに浸透させたいという狙いがあるのだ。最後に岡田さんは、「今回は、走りとかトラクションだけではない“総合雪国性能”を味わってもらいたいのです」と述べた。

総合雪国性能のひとつでもある「e-BOXER」

スバルのハイブリッドシステム「e-BOXER」は、雪道での走行を想定した開発も行われている。そのひとつが、回生ブレーキ時の“アンダーステア”だ。

スバル「フォレスター アドバンス(e-BOXER)」の雪上試乗イメージ

スバル「フォレスター アドバンス(e-BOXER)」の雪上試乗イメージ

ハイブリッド車で滑りやすい路面を走行中に緩いブレーキをかけると、前輪に回生制御が入る。すると、フロントタイヤがスリップ気味になってしまうのだ。そうなるとハンドルを切っても外へと膨らんでしまい、思ったとおりのラインをトレースできない。その対策のために、e-BOXERではスリップ量を検知し、多いときにはフロントとリアの四駆の締結を少し強めることで、回生ブレーキをうしろも使って吸収させ、欲しい回生量をキープしながらタイヤのグリップを両立させているという。

また、滑りやすい路面で段差を乗り越えたり、轍を横切ったりするときにタイヤがスリップしてしまうことがある。これはガソリンエンジンの場合、アクセルを踏んでからトルクが出るまでにわずかな遅れが生じてしまい、その間にドライバーがアクセルを踏みすぎた結果、遅れたトルクが必要以上に出てしまってスリップが生じてしまうのだ。ときには、段差を乗り越えるときに勢い余ってしまうこともあるだろう。

しかし、e-BOXERの場合はモーターを使うので応答性がいい。新田さんによると、「X-MODE(悪路走破性を高める機能)の状態で、モーターとエンジンのトルク配分をややモーター寄りにすることで、アクセルを踏んだときの忠実なトルク応答を実現しています。結果として、轍や段差を乗り越えた際に、少しアクセルを踏んだだけでもすぐにトルクが立ち上がって遅れがなく、とても扱いやすいトルク応答を実現しているのです」とコメントした。

また、暖房性能も雪国では重要な要素だ。新田さんは、「寒い地域にいると、足元が冷えることで寒さを感じてしまうので、特にフォレスターなどではフットダクト、足元に近い部分の空調に注力して開発しました。足元をいかに均一に温めるかということにこだわっています」と述べる。これは後席も同様で、ベントグリルを配することで後席も暖かく過ごせるようにしているという。また、シートヒーターなどもこれまで以上に体に触れる背もたれの部分を拡大することによって、より暖かさが伝わるようにしている。

雪国でもっとも売れている「ブリザック」

ブリヂストンのスタッドレスタイヤと言えば、「ブリザック」の名前が最初に挙がることだろう。北海道や北東北など、寒冷地の主要5都市におけるブリザックの装着率はおよそ43%。この装着率の高さで、なんと17年連続ナンバーワンという快挙を達成している。さらに、北海道のタクシードライバーの装着率は73%ということからも、ブリザックは一般ユーザーからプロドライバーまで、幅広く信頼を得ているスタッドレスと言える。

今回の試乗車には、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック VRX2」が装着されていた

今回の試乗車には、ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック VRX2」が装着されていた

今回、スバル車に装着されているスタッドレスタイヤは、そんなブリヂストン「ブリザック」の現行商品である「VRX2」だ。2017年9月に発売されたVRX2は、先代の「ブリザック VRX」に比べてさらに性能をアップ。氷上ブレーキでVRX2とVRXを比較すると、10%ほど手前で停止できる高い氷上性能を持ち合わせている。また、摩耗ライフはVRXよりも22%ほど向上し、より寿命が延びて長持ちするようになった。さらに静粛性についても、VRXより31%低減。これによって、車内での会話や音楽などをより楽しめるようになったという。

雪でも快適な「フォレスター アドバンス」

さて、いよいよ試乗だ。まずは、「フォレスター」にe-BOXERを搭載した「アドバンス」でスタート。ルートは山形市を出発して北上、行程の半分となる肘折温泉までの約95kmを走行する。肘折温泉に着いたら、フォレスターの別グレードへと乗り換えることになっている。

スバル「フォレスター アドバンス」の雪上試乗イメージ

スバル「フォレスター アドバンス」の雪上試乗イメージ

フォレスター アドバンスに乗り始めて最初に感じたのは、アクセルコントロールのしやすさだった。モーターで発進するため、トルクが急激に立ち上がらないので、雪道であまり気を遣わずに済むのだ。言い換えるなら、思ったとおりのアクセル開度で欲しいトルクが手に入るということ。これならソールの厚い靴などでも運転しやすく、またラフなアクセル操作に対しても過敏すぎることがないので、非常に乗りやすい。たとえば、都会などで渋滞に見舞われるようなときにも楽だと感じた。もちろん、アクセルを踏み込めばしっかりとした加速を手に入れることができることも追記しておきたい。

スバル「フォレスター」に採用されている「AVH(オートビークルホールド)」は、作動時のショックもなく、とても好印象だ

また、フォレスターで便利な機能として「AVH(オートビークルホールド)」が挙げられる。AVHをオンにしておけば、信号などで停まったときにブレーキから足を離してもそのままブレーキがホールドされ、アイドルストップも効いたままになるというものだ。また、アクセルを踏み込めばAVHが解除される。ようは、サイドブレーキを自動で行ってくれる機構だ。

AVHの欠点としては、アクセルを踏み込んだときにブレーキがラフに解除され、ショックを伴う車種が多々あることだ。しかし、フォレスターの場合はまるでフットブレーキペダルから足を離してアクセルを踏み込んだかのごとくスムーズなのだ。助手席の同乗者に確認すると、AVHを使用していることに気付かないほど。これほどスムーズならば、雪道でも安心して使用できるだろう。

さらに、アイドルストップからのスムーズな発進も、雪道での安心感につながっている。たとえば、EVモードでスタートして途中からエンジンがかかるときや、発進と同時にエンジンがかかってしまうときなどでも、ショックを含めて違和感がまったくないことは特筆に値する。

フォレスター アドバンスのe-BOXERならではの滑らかな乗り心地は、雪道のような場面でも急にトルクが立ち上がらないので、スムーズに運転できる

また、アドバンスの走りはスムーズなだけでなくトルクフルなので、雪のわだちなどでも不要なアクセル操作をすることなく乗り越えられて、雪道での信号のスタートや渋滞時においても、とても安心だ。

乗り心地に関しては、ばね下が重く若干バタついた印象が伴う。これは、助手席に乗ったときにより顕著に感じられた。ドライバーは運転操作をしているので、やや気付きにくい。タイヤサイズをもう少し小さくして(試乗車は225/55R18)、かつサスペンションのストロークをより多くしてしなやかさを与えることによって、解決できる内容に思える。ボディ剛性はなかなか高めなので、十分に対応可能と思えるのだが……。

そのほか、総合雪国性能で重要な「シートヒーター」は、フォレスターに装着されているものはかなり強力だった。しかも、シートヒーターをオンにすると3段階中もっとも高温の設定から始まることにも、スバルの雪国を大切に思う気持ちが現れていると感じた。シートヒーターを使いたいときは室内が冷たく、すぐにでも温まりたいというシーンが多いので、この仕様は理に適っている。このような細かな配慮ができているのも、スバルならではといえるのではないだろうか。

ただし、視界に関しては前方、側方は良好だが、斜め後方、特に左斜めは見にくいことがあった。これは、デザイン的にサイド後方が蹴り上がっているので、死角となってしまっているためだ。

試乗当日は、前方がホワイトアウトになるほどの吹雪に見舞われたが、スバル「フォレスター アドバンス」は不安になるそぶりすら見せることはなかった

市街地を抜けて肘折温泉へ向かっていくと、みるみる雪深くなり狭い上り坂が続くようになる。さすがのブリザックもたまに足を取られることがあったが、極端にラフな操作さえしなければ不安はなく、快適に肘折温泉へと到着することができた。途中、道を少し外れた場所でアクセルをラフに踏み込むなどいろいろと試してみたのだがまったくもって安定しており、これは本当に雪上なのか?と思わせてくれるほどだった。これは、冒頭で述べた急激にトルクがかからないe-BOXERの特徴へとつながっている。

結局のところ、3時間少々で肘折温泉に到着したのだが、その間、一度たりとも「疲れた」などと思わなかったのは、すべてにおいて抜群のコントロール性の高さによるところが大きい。また、自然なドライビングポジションもそこに貢献していると感じた。

乗り心地の良さが目立つ「X-BREAK」

肘折温泉で、ガソリンモデルのスバル「フォレスター X-BREAK」へと乗り換えた

肘折温泉で、ガソリンモデルのスバル「フォレスター X-BREAK」へと乗り換えた

肘折温泉へ到着すると、フォレスターのガソリンモデルである「X-BREAK」に乗り換えた。そこで、最初に感じたのは乗り心地のしなやかさだ。さきほどまで試乗していたアドバンスよりもタイヤが小さくなり(225/60R17)、かつ車重が軽くなったぶん(アドバンス:1,640kg、X-BREAK:1,530kg)、足回りのセッティングにしなやかさが出ているのだろう。また、シートがファブリックになったことも大きいかもしれない。

特に車重に関しては顕著で、アドバンスでは雪をがりがりと踏んでいる感触が伝わってきていたのだが、同じ路面でもX-BREAKではそれほど感じない。またX-BREAKは走りも軽快で、クルマ全体を通して軽さが伝わってくる感じだ。

スバル「フォレスター X-BREAK」は、ガソリンモデルならではの軽やかさが魅力だ

スバル「フォレスター X-BREAK」は、ガソリンモデルならではの軽やかさが魅力だ

しかし、走行中に気になったのは、一定速度で走っていると「コツン」というショックがあることだ。特に、30km/hくらいの低速で顕著に感じられる。アクセル開度一定で、ある速度域、あるいは回転域に達すると、燃料カットが介入するかのような感じで一瞬こつんとした軽いショックとともに、アクセルをわずかにオフにしたような症状が出る。そしてその直後、ふたたび軽いショックとともに元に戻るのだ。人間が操作しているので、わずかにアクセルのオン・オフがあるのかとACC(アクティブクルーズコントロール)を作動させてみたりしたのだが、やはり同じような症状が出たのでクルマ側の問題といえる。これはスムーズに走らせたいときなどにはかなり気になる症状で、特に低速域ではスピードがコントロールしにくくなるので、原因を究明してぜひ改善してもらいたい。こういった現象からアクセル操作が乱暴になり、危険な状況になっては本末転倒になりかねないからだ。

スバル「フォレスター X-BREAK」は、雪道よりも酒田の市街地のほうがその軽快さを生かした走りを堪能できた

スバル「フォレスター X-BREAK」は、雪道よりも酒田の市街地のほうがその軽快さを生かした走りを堪能できた

X-BREAKでは肘折温泉から出羽三山を経由し、目的地の庄内空港までは95kmほどのルートだ。X-BREAKでは、雪深い山中を抜けて酒田市内の一般道を走行。特に、市街地での乗り心地のよさが顕著に感じられた。いっぽう、一気に加速をしたいときなどは、非常にパワフルかつスムーズで、ガソリンエンジンの楽しさを堪能できる。アドバンスとX-BREAKの2台を乗り比べると、X-BREAKは雪道よりも雪のない郊外路をスイスイと走らせるクルマという印象が強かった。

ミックスしたモデルがあるといい

雪道では「アドバンス」、通常の市街地では「X-BREAK」と、それぞれ魅力を発揮できるシチュエーションが異なる結果となった

今回、フォレスターを試乗して、スバルの総合雪国性能を十分に理解することができた。特にアドバンス(e-BOXER)と雪道との相性は抜群で、すべてをクルマにまかせて安心してドライブを楽しむことができると言えるだろう。いっぽう、X-BREAKも決して雪道が苦手ということはないが、同時に乗り比べると一歩アドバンスが先を行っている印象だ。

よって、今回の結論はアドバンスが有利……と言いたいところだが、“本音”で言うとパワートレインはアドバンス(e-BOXER)、それ以外はX-BREAKというミックスした仕様が欲しいと感じた。乗り心地では明らかにX-BREAKが勝っており、そのしなやかさは非常に魅力だったからだ。これは同行した編集者も同意見で、特に助手席での快適性はまったく違ったようだ。

だが、スバルのことだから、こんなことはとっくに気付いているに違いない。そう遠くない将来、そんなモデルが出てきて、フォレスターの魅力をさらに高めてくれることを今から期待したい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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