レビュー
流麗なセダンスタイルで登場した新型インサイト

ホンダ 新型「インサイト」試乗&実燃費テスト/スムーズな走りはまさに次世代ハイブリッド

フルモデルチェンジしたホンダ「インサイト」へ試乗する機会を得たので、その印象をレポートしよう。

ホンダ 新型「インサイト」

ホンダ 新型「インサイト」

新型インサイトは“セダン”として誕生した。初代はクーペタイプ、2代目はハッチバックスタイルだったのだが、なぜ3代目はセダンなのだろうか。まずは、そこから話を始めたい。

「i-MMD」の特性を生かしたハイブリッド車として“セダン”を選んだ

今回、新型インサイトに搭載されたハイブリッドシステム「i-MMD」は、ホンダのこれからの中核をなすシステムだ。つまり、今後i-MMDを訴求していく表れとして、インサイトが復活したのだ。

ホンダ 初代「インサイト」

ホンダ 初代「インサイト」

初代インサイトは、空力を徹底的に追及した結果“燃費レーサー”のようなスタイルでデビュー。

ホンダ 2代目「インサイト」

ホンダ 2代目「インサイト」

2代目インサイトは、ハイブリッドを一般化させるべく、より親しみやすいハッチバックスタイルをまとって登場した。そして、3代目の新型インサイトは、i-MMDの訴求が目的だ。

なぜ新型インサイトは、あえてシュリンク気味であるセダン市場に投入するのだろうか。本田技術研究所四輪R&DセンターLPL主任研究員の堀川克己さんは、「i-MMDは、発電用モーターと走行用モーター、ハイブリッド専用エンジンを備える、2モーターハイブリッドシステムです。今回は、お客様の価値にあった“上質”を追及しています。そうしたi-MMDの特性を生かしたクルマを作り上げるとすると、いったいどんなクルマがいいかを考えました。その行き着いた先が、オーソドックスなセダンだったのです」とコメントする。

ホンダ 新型「インサイト」のフロントイメージ

ホンダ 新型「インサイト」のフロントイメージ

ホンダ 新型「インサイト」のリアイメージ

ホンダ 新型「インサイト」のリアイメージ

i-MMDの特性を生かしたクルマとは、「爽快かつ快適、ということです。そして、セダンの持っている安心感。こういった、基本的な性能がバランスされているもっともいいクルマとして、セダンスタイルがふさわしいと考えました。また、2代目インサイトやトヨタ『プリウス』のように、なるべく安い価格にして多くのお客様に乗っていただくことを志向したクルマということから、おおむね日本でいう50代の方をターゲットに、上質な価値を理解してもらえる方や共感してもらえる方に買ってもらえるような、月販約1,000台を販売するクルマという方向にシフトしたのです。このような提案もあるだろうと考え、セダンとしました」と述べた。

ホンダ「シビックセダン」「シビックハッチバック」

ホンダ「シビックセダン」「シビックハッチバック」

もうひとつ気になるのは、シビックとの関係だ。堀川さんは、「2代目インサイトのポジショニングは、『フィット』との兼ね合いでした。2代目インサイトでは、プラットフォームは基本的にフィットのプラットフォームから派生したハイブリッド専用車として作っていました」。そして、新型インサイトでは「シビックやアコードのプラットフォームを使って新型インサイトを作っていますので、日本のマーケットではシビックとの関係性は非常に高く、先代インサイトよりひとつ上の提案になります。アコードとシビックでは、シビック寄りを狙っています。サイズ感でも、アコードというよりはシビックに寄った位置付けになります。ただし、クオリティの面については、シビックとアコードのほぼど真ん中まで、きちんと仕上がっています」と説明した。

新型インサイトにはホンダの電動化への“魂”が込められている

現在、ホンダのハイブリッドシステムには、小型車向けの軽量コンパクトな1モーターハイブリッド「i-DCD」、中型車向けの高効率な2モーターハイブリッド「i-MMD」、そして大型車向けの3モーターハイブリッド「SH-AWD」の3種類が存在する。

ホンダ 新型「インサイト」のエンジンルーム

ホンダ 新型「インサイト」のエンジンルーム

新型インサイトに搭載されたi-MMDは、パワートレインの効率が非常に高く、環境性能にすぐれていることからミニバンやSUVへと適用を拡大。「今後も環境規制対応や、PHEV、EVへの拡大を見据え、モーター走行領域が大きくPHEVやEVへの発展性も持つi-MMDが有利と考えています。そしてモーター、バッテリー、IPUといった各構成要素の技術革新により、i-MMDにシフトしていく準備が整いました」とは、本田技術研究所取締役副社長の三部敏宏氏(4月1日付で本田技術研究所取締役社長に就任)の弁。

ホンダ 新型「インサイト」の外観イメージ

ホンダ 新型「インサイト」の外観イメージ

では、なぜここまでホンダはi-MMDにこだわるのだろうか。三部氏は、「ハイブリッドだからといって、燃費がいいだけのクルマではつまらない。“ホンダらしく”当然、走りにも強いこだわりを持っており、このi-MMDは燃費と走りを両立するホンダらしさを具現化した技術が込められています。EVらしさもありながら、長年ホンダが培ってきた内燃機関であるエンジンのメリットを最大限に引き出すホンダの独創技術も備わっているのです。中低速域のトルクと高速域の効率を両立したi-MMDは、まさにVTECと同じようにその特有の領域をうまく切り替える革新的な技術も持ち合わせています」と説明。

そして、「カーボンフリー社会に向けて、燃費の規制値はどんどん厳しくなっていくでしょう。もちろん将来的にはPHEVやZEVでの対応が必要不可欠です。そういった状況の中、ホンダは電動車の将来に向けて、2モーターハイブリッドi-MMDの効率をさらに上げていくことで、電動車の性能のベースラインをあげながら、PHEVやZEVの性能をさらに高めていきます。そこで、当面の戦略としてはベースラインのi-MMDを主体として展開していきたい」

「ホンダは、すべての人に生活の可能性が広がる喜びを提供したいと願っています。そのために、今後も2モーターハイブリッドのi-MMDを主軸とした電動化技術を多くのお客様に提供していくよう強力に開発を進めていきます」と語った。

「i-MMD」は“いいとこ取り”のシステム

新型インサイトが搭載する「i-MMD」とはどういう仕組みなのか。本田技術研究所常務執行役員の相田圭一氏に説明してもらおう。

ハイブリッドには、「シリーズ方式」と「パラレル方式」がある。シリーズ方式は、エンジンで発電用モーターを駆動し、その電力を使って走行用モーターを回し、それでタイヤを駆動するというシステムだ。対するパラレル方式は、エンジンとモーターの動力の両方を使ってタイヤを駆動するシステム。i-MMDシステムはこのシリーズ方式とパラレル方式を走り方に応じて使い分けることによって最高効率を出していく、いわば“いいとこ取り”のシステムだ。具体的なシーンに当てはめて解説してみよう。

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

-発進時や市街地走行など負荷が少ないとき-
モーターで走行する。市街地での発進時や低速クルーズでは、エンジンの負荷が小さく発電効率が悪いので、そのときはエンジンを止めてバッテリーとモーターによってEV走行する。

-加速時-
エンジンで発電しながら、モーターで走行する。そのときに、エンジンは効率のいい回転域を選んで、エンジンを回して発電。結果、市街地での良好な燃費性能を可能としている。

-高速道路など高い速度でのクルーズ時-
高速道路など、高い速度域においてシリーズ方式でモーター走行をすると、発電量が大きくなる。すると、電気への変換損失が大きくなるのでかえって燃費が悪くなってしまう。そこで、i-MMDではシリーズ方式からパラレル方式に切り替えて、エンジンを直結して走行することによって高効率を維持する。また、そのときにエンジン効率の高いところへモーターのアシストと回生で負荷を調整することで、高速域での高い燃費を維持している。

このように「さまざまな走行シーンで、シリーズ方式とパラレル方式を“知能的”に切り替えることで、相互の優位性を活かした3つのモードで最高効率を達成しています」と相田氏は述べた。

走りの性能は軽快で上質

いっぽう、新型インサイトの走りの性能については「燃費だけではなく、新しい走りの楽しさを表現したい。タイヤを大きなモーターでダイレクトに駆動するという特徴を生かして、モーターならではの低速のトルク、そして振動のないスムーズな駆動を利用して、軽快で上質な走りを表現したいと考えました」とのことだ。

そんな、軽快で上質な走りを実現するために「高出力かつ大トルクを発生するモーターを、独自に開発しました。低回転から発生する大きなトルクにより、従来のガソリン車にはないような軽快な加速を実現。そして、ドライバーの意思通りにアクセル操作に瞬時に反応し、かつ継ぎ目のないシームレスな加速を可能としています。さらに、モーターのダイレクト駆動なので、振動のないスムーズな上質な走りを表現しているのです」とその印象を語った。

第一印象は非常にスムーズな走り

今回、「EX BLACK STYLE」と「LX」の2グレードに試乗することができたので、その違いとともに報告しよう。

まずは、トップグレードのEX BLACK STYLEから。車内へ乗り込み、センターコンソールのDボタンを押してスタートする。その第一印象は、非常にスムーズだ。アクセルをふっと踏み込んだときの発進が、とてもスムーズに感じる。EVで発進して、途中でエンジンがかかった場合に、一瞬ぎくしゃく感をともなうようなハイブリッド車は数多く存在する。しかし、新型インサイトではまったくそんなことはなく、いつエンジンがかかったのかすら注意深く見ないと気付かないほどだ。

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

また、停止するときの動きもスムーズだ。ハイブリッドやEVの場合、ブレーキをかけると回生が介入する。減速エネルギーを電気に変えるもので、大いに活用したいシステムだが、この介入によってブレーキの踏力が変わり、特に停止寸前のペダルコントロールがしにくくなることがある。スムーズに停止しようと少しだけブレーキを緩めても、その加減が変わってしまうことがあり、ガックンと止まりがちになるのだ。それが、新型インサイトではまったくなく、多くのガソリンエンジン車と同じように、回生を気にすることなくスムーズな停止が行えることは、ハイブリッド車として評価に値するものだ。

16インチタイヤで乗り心地良好な「LX」

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEの走行イメージ

いっぽう、気になるところといえば、まずは乗り心地だ。EX BLACK STYLEの場合、215/50R17(テスト車はブリヂストンTURANZA ER33)を履いていたが、ばね下が重くバタつくなどあまりいい印象ではなかった。また、ロードノイズの侵入も若干大きめであった。しかし、「LX」に乗り換えるとその印象はだいぶ軽減する。まず走りが軽快になり、乗り心地もしなやかさがかなり増したのだ。さらにロードノイズも減少したので、215/55R16(ミシュランエナジーセイバーA/S)であることが大きなメリットとなったと思われる。

次に、ドアミラーの位置をあげたい。最近では、左右前方の視界を確保する目的にドアにマウントしたドアミラーが多くなってきており、ホンダでも現行フィットなどに採用されている。しかし、新型インサイトでは採用されず、これまで通りAピラーあたりに取り付けられている。その結果、大きな死角ができてしまい、市街地ではその死角がかなり気になった。

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEのインパネ

ホンダ 新型「インサイト」EX BLACKSTYLEのインパネ

インテリアで気になったのは、EX BLACKSTYLE専用のコンソール周りに貼られた「ウルトラスエード」と呼ばれるバックスキン調の質感だ。涼しい時期ならいいのだろうが、真夏にはウルトラスエードは少々暑苦しく感じるかもしれない。また、ステアリングスイッチも少々煩雑な印象だ。たしかに手元で操作ができるのは非常に便利だが、どれがどのボタンかを確認するために視線を移動することになるのは本末転倒だ。

高速道路などで安全運転支援システムを試してみたのだが、意外とレーンキープアシストがロストしやすく、不安が残った。この辺りはロングドライブで改めてテストしてみたい。

また、ドライブモードのスポーツを選択すると、アクセルの反応が高くなると同時に、ステアリングが若干重くなることで、スポーティー感を演出している。しかし、インサイトというクルマの性格に合っているのかというと、少々疑問を感じてしまった。

ホンダ 新型「インサイト」の外観イメージ

ホンダ 新型「インサイト」の外観イメージ

総じて、i-MMDは次世代のホンダのハイブリッドを背負うだけのことはあって完成度は高く、実用性、スムーズさなど、高いレベルを維持している。さらに、これからもその開発の手を緩めず、改良を重ねていくというのでとても楽しみなシステムであるといえる。特にスムーズな走りに関してはハイブリッド云々ではなく、動力源が何かなど気にせず走ることができることは大きな魅力といえよう。今後、ホンダのハイブリッドシステムの中核になるとのことなので、他車種への展開も大いに期待したい。

最後に、どちらのグレードを選択するか。筆者としては、乗り心地を優先してLXを選択したい。セダンの上質さを、乗り心地で感じたいのならなおさらだ。たしかに、様々な装備は省かれるものの、果たしてそれらが必要かどうか、またインサイトに何を求めるかによっても変わってくるだろうが、シビック寄りとはいえ、アコードとシビックの間を埋めるモデルとしては、やはり乗り心地を求めたいと考えるからだ。

ホンダ 新型「インサイト」実燃費テスト

新たに2モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」を搭載した、3代目の新型インサイトの実燃費を、編集者Sが測定した。

実燃費テストの走行パターンは、「市街地」「郊外路」「高速道路」の3種類でそれぞれ計測。走行ルートは、「市街地」が新宿から八王子までの渋滞の激しい約30kmのルート。「郊外路」は、八王子から高尾山を過ぎ、相模湖から道志みちに入り途中で折り返す、信号が少なく快走路からワインディングまで変化に富む約50kmのルート。「高速道路」は、相模湖ICから新宿までの約60kmのルートだ。

ホンダ 新型「インサイト」市街地における実燃費結果は「22.8km/L」

ホンダ 新型「インサイト」市街地における実燃費結果は「22.8km/L」

ホンダ 新型「インサイト」郊外路における実燃費結果は「31.5km/L」

ホンダ 新型「インサイト」郊外路における実燃費結果は「31.5km/L」

ホンダ 新型「インサイト」高速道路における実燃費結果は「30.4km/L」

ホンダ 新型「インサイト」高速道路における実燃費結果は「30.4km/L」

結果としては、市街地モードはWLTCモードとまったく同じ値となり、郊外路、高速道路ではWLTCモードを上回る結果となった。郊外路、高速道路とどちらも30km/Lを超える燃費を叩きだしたのは驚愕で、最新の高効率なハイブリッドシステム「i-MMD」の恩恵にほかならない。測定結果については、以下をご覧頂きたい。

-新型インサイトの実燃費-
市街地の実燃費:22.8km/L
郊外路の実燃費:31.5km/L
高速道路の実燃費:30.4km/L

-カタログ燃費-
市街地モード(WLTC-L):22.8km/L
郊外モード(WLTC-M):27.1km/L
高速道路モード(WLTC-H):26.2km/L
WLTCモード 総合燃費:25.6km/L
JC08モード燃費:31.4km/L

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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