レビュー
ボディが拡大された理由を開発者に尋ねてみました

先代よりもしなやかでスポーティーに!BMW 新型「3シリーズ(330i)」試乗

フルモデルチェンジしたBMW 新型「3シリーズ」に、わずかな時間ではあるがテストする機会があったので、その印象をレポートしよう。

2019年3月9日に発売された、BMW 新型「3シリーズ」(7代目、G20)

2019年3月9日に発売された、BMW 新型「3シリーズ」(7代目、G20)

■BMW 新型「3シリーズ」のグレードラインアップと価格
320i SE:4,520,000円
320i:5,230,000円
320i M Sport:5,830,000円
330i M Sport:6,320,000円

■BMW 新型「3シリーズ」の主要スペック
-BMW 320i-
駆動方式:後輪駆動(FR)
全長×全幅×全高:4,715×1,825×1,440mm(320i M Sportは1,430mm)
ホイールベース:2,850mm
車両重量:1,560kg
搭載エンジン:2リッター直列4気筒BMWツインパワーターボ ガソリンエンジン
最高出力:184PS(135kW)/5,000rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1,350-4,000rpm
トランスミッション:電子制御式8速AT

-BMW 330i-
駆動方式:後輪駆動(FR)
全長×全幅×全高:4,715×1,825×1,430mm
ホイールベース:2,850mm
車両重量:1,630kg
搭載エンジン:2リッター直列4気筒BMWツインパワーターボ ガソリンエンジン
最高出力:258PS(190kW)/5,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,550-4,000rpm
トランスミッション:電子制御式8速AT

日本市場からの声を反映した新型「3シリーズ」

BMW 3シリーズが、BMWの主力車種であることは間違いない。社内からも“BMWの家賃と電気代を払うクルマ”と冗談めかして言われているくらい重要なクルマで、絶対に売れなければいけない宿命を背負っているのだ。

1975年に初代3シリーズが発売以来、全世界で1,500万台以上が販売され、日本においてはそのうちの3%弱、約5万台が販売された。5万台という数字が大きいのか小さいのかの議論はひとまず置いておいて、3シリーズの開発においては、全世界の主要な6つのマーケットの一つとして、実は日本市場が大きな役割を担っている。具体的には、新型3シリーズではどのような仕様で、どのような顧客価値を作っていくかという開発の初期段階から、日本は携わっているのだ。

なぜそこまで、BMW本国は日本市場に目を向けているのか。それは、「国内に多くのメーカーを抱え、ハイブリッドを含めて技術的なトレンドに対して非常に大きな影響力があることや、日本のお客様がBMWを強く愛していることから、商品開発に対して一定の重きをもらい携わっているのです」と説明するのは、BMWブランド・マネジメント・ディビジョンプロダクト・マーケティングプロダクト・マネジャーの御舘康成さんだ。

では、具体的に新型3シリーズの3つの特徴を踏まえながら、日本市場からの声がどのように取り入れられたのかを説明しよう。

キドニーグリルの位置とサイズがポイント

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のフロントイメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のフロントイメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のリアイメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のリアイメージ

まずは、先進的なデザインについてだ。新型3シリーズの開発は2014年ごろにスタートしたのだが、そのときに日本市場からは、「スポーティー性はもちろん、より高い品質感やプレミアム性が欲しいと伝えました。日本市場では、いわゆるジャーマン3(BMW、メルセデス、アウディ)を比較して購入するお客様だけでなく、日本車のセダンからプレミアムなセダンに憧れてBMWを購入されるお客様も多くいらっしゃるからです。そのお客様が日本車から乗り換えたときに、走りだけでなく品質や安全などすべてにおいて満足を提供したい。そこで、特にデザイン開発や内装、品質などについて強く要望したのです」と御舘さんは説明する。

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のフロントフェイスのアップ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)のフロントフェイスのアップ

BMWのデザイナーとして有名な永島譲二さんは、BMWのデザインについてポイントを絞り、次のように説明する。

「いまのBMWのデザインは、フロント周りでその性格を表現しています。3シリーズはセダンですから、キドニーグリルの頂点が上の方についています。その頂点からヘッドランプが伸びているのです。一方、クーペなどはキドニーグリルの頂点がヘッドランプよりも下側にあります。これがいまの傾向です」という。

また、ヘッドライトの下にボディカラーが入っている個所がある。これは、「90年代のE46のヘッドランプの下側の形状に波が打っているような形があり、それをイメージしたものです。3シリーズはかなりアイコニックなクルマで、たとえばポルシェ911までにはいかないものの、何代も3シリーズが重ねてきたイメージが強いので、そのオマージュとして用いました」と話す。

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の外観イメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の外観イメージ

もうひとつ重要な点として、ボディサイズがある。新型3シリーズの全長と全幅は、4,715mm、1,825mmと先代からそれぞれ70mm、25mm拡大した。これについて、永島さんは「これはデザイナーの悩みでもあります」と述べる。「安全基準が毎年のように厳しくなることから、それに対処するためです」。それと同時に“人間そのもののサイズ”が大きくなることも要因とも言う。「クルマの室内の寸法は、ドイツ工業規格のマネキンの大きさで決めます。それが徐々に大きくなることに合わせて、段々とボディサイズが大きくなっていきました。したがって、新型3シリーズは少し前の5シリーズとほぼ同じくらいの全長になったのです」とサイズ拡大の理由を明かしてくれた。

一方、ボディサイズ決定に関しては、日本市場の影響も大きい。これまでの3シリーズでは全幅は1,800mmに抑えられ、これを守るために専用のドアハンドルが用いられるなど工夫されていた。その理由は、日本の道路事情とともに車庫のサイズの小ささからこれまでは抑えられていたのだ。したがって、むやみにボディサイズを大きくはできなかった。しかし新型3シリーズでは、走りとデザイン性にさらに余裕を持たせたいことから、あえて25mmの拡大に踏み切った。これは、日本市場からのデザインへの要望、スポーティーさや品質感の向上を求めたことが大きい。その結果、特にリアフェンダー周りの抑揚はこれまで以上にふくよかで、安定感とFRの走りのよさを予感させるエクステリアとなっている。

日本でも走り込んで熟成された安全運転支援システム

BMW 新型「3シリーズ」(320i)のリアイメージ

BMW 新型「3シリーズ」(320i)のリアイメージ

次にエンジンバリエーションとして、御舘さんは「320i」を挙げる。グローバルでは「330i」が基準車であり、新型の320iはかなり遅れての投入となる予定だ。しかし、日本市場では
最初から330iとともに320iが用意されている。これは、330iの出力を調整する形で日本専用に開発したものだという。「3シリーズの成功のためには、プレミアムセダンに対して要求の厳しいマーケットでの成功が必要だと、本国を含めて理解していることから、特別な開発が許されました」と述べる。

BMW 新型「3シリーズ」に搭載されている三眼カメラ

BMW 新型「3シリーズ」に搭載されている三眼カメラ

最後に、革新技術と運転支援システムだ。これまでの3シリーズには単眼カメラが採用されていたが、同じ時期に、5シリーズや7シリーズには二眼カメラが採用されるなどの差があった。しかし、新型3シリーズでは三眼カメラが採用されるとともに、日本仕様では同セグメント初のアダプティブクルーズコントロールが標準化されている。グローバルでは5%程度の装着率にもかかわらず、だ。その理由は、「日本のユーザーは、プレミアムメイクを買うときに、自分の生命や財産を守ることも含めて、安全に非常に関心が高いからです。開発当初から三眼カメラを使ったより高性能な、本来であればより上のセグメントで使うものの開発が進んでいたこともあって、標準採用に踏み切りました。新型3シリーズの安全装備については、現時点ではおそらくBMWでもっとも性能の高いものを全車に標準装備しています。そうすることで、ある程度価格を抑えることも可能になっているのです」と説明する。

三眼カメラの性能については、日本のあらゆる道路を走り込んで完成度を高めたとのことだ。三眼カメラは長距離、中距離、近距離の広角カメラによって、すべての距離の認識率が上げられている。かつ、従来からのレーダーセンサーの組み合わせによって、正確なレーンキープや長距離の危険予測、広角視野での周辺の危険予測などが改善されている。

たとえば、ドイツでテストしたままの仕様を、そのまま日本に持ってきてきちんと作動するかというと、実はそういうことはないのだそう。それは、右側通行や左側通行の違いのほかに、道路環境や白線、標識など、さまざまな道路事情が異なっていることから、その地域にあったセッティングが必要になるのだ。

したがって、新型3シリーズでも東京や大阪、名古屋といった大都市圏で集中的にテストを行ったほか、郊外や山岳地も積極的に走行。東京〜大阪を往復すると1,000km以上になるが、この間を20回以上、2万km以上走り込みをしてデータの解析や効果の確認が行われたのだそうだ。

ボディ剛性の強化によって走りと乗り心地が向上

このように、日本市場をかなり意識して開発された新型3シリーズ。当然、市場でも期待が高まった。だが、今回のテスト車には320iは用意されず、すべて330i M Sportのみであったのは非常に残念なところだ…。

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

それでも、エンジン以外には大きな変更はないだろうと気を取り直して走り出す。すると、先代から大きくボディ剛性が高まり、結果としてM Sportであっても乗り心地がいいことに気付いた。これまでは、BMWのM Sport仕様車に乗るとどうしてもばね下が重く、段差などを超えるとバタつき気味で、洗練された印象を得られないことが多くあった。だが、新型3シリーズでは、プレミアム感のあるしなやかさにともない、かつスポーティーさも感じさせるほどいい固さを併せ持った乗り心地を提供してくれている。

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

エンジンは気持ちよく回転を上げ、いかにもスポーティーセダンといった印象を強めてくれる。もちろん4気筒なので、6気筒並みのスムーズさとまではいかないが、十分以上にパワフルかつトルクフルなので、街中はもちろん、ワインディングでも気持ちよく走ることができる。これならば320iであってもまったく問題なく、というよりもよりバランスの取れた走りが楽しめるかもしれない。

ドライビングポジションには少々難あり

BMW 新型「3シリーズ」M Sportのステアリングは太く、手の小さなドライバーでは握りづらく感じる

BMW 新型「3シリーズ」M Sportのステアリングは太く、手の小さなドライバーでは握りづらく感じる

330i M Sportで走りを楽しむ際に、いくつか気になる点を挙げておきたい。ひとつはM Sport用に装着されたステアリングなのだが、握る部分が太すぎるのだ。これでは、高速道路での安定した走行においても、かえってステアリングを握る手が疲れてしまう。また、手のひらの小さな女性では、まさに手に余る状態になるだろう。

BMW 新型「3シリーズ」のペダル位置は、下半身がわずかに外側に向くレイアウトになっている

BMW 新型「3シリーズ」のペダル位置は、下半身がわずかに外側に向くレイアウトになっている

もう一つは、ドライビングポジションだ。これまで、左ハンドル仕様のクルマが右ハンドルに換装されるとペダルレイアウトがオフセット、つまり、右側のホイールアーチに邪魔されて内側に置かれ、その結果、体が少し内側に向くことになりがちだった。しかし、この新型3シリーズはどういうわけか、体の中心より右側にペダルがアウトセットされているのだ。したがって、真っすぐに前を向いてステアリングを握り、自然とペダル類に足を置くと下半身が若干外側に向くことになるのだ。もちろん、大げさに体がねじれることはないのだが、長時間のドライブでは疲労の蓄積につながることになろう。

BMW 新型「3シリーズ」のドアミラーは、Aピラーにマウントされているので、斜め前方に死角が発生してしまう

BMW 新型「3シリーズ」のドアミラーは、Aピラーにマウントされているので、斜め前方に死角が発生してしまう

また、ドアにマウントされず、Aピラー部分にマウントされたドアミラーも時代遅れといわざるを得ない。その結果、前方左右方向に死角が発生してしまい、右左折時にはより大きく体を動かすなどで、安全確認が必要になってしまっている。

見やすいメーターと質感が高いとは言いづらいセンターコンソールのスイッチ

BMW 新型「3シリーズ」のメーターは全体的に見やすいものの、左周りのタコメーターは通常と逆なので慣れが必要だ

さて、今回のモデルチェンジのポイントとして挙げられた質感だが、極めて高いところともう一歩という2つの側面が見られた。ひとつは、新たに採用されたメーター周りの見やすさだ。もともとBMWのメーターは見やすいことで定評があるが、新型3シリーズでは大型スクリーンが採用され、さらに見やすくなっている。ただし、タコメーターが通常とは逆回転になっているのは慣れが必要だ。センタースクリーンも非常に見やすく、操作も覚えてしまえば違和感なく使えるだろう。

BMW 新型「3シリーズ」のセンターコンソールスイッチは、パネル全体が動くタイプのボタンになっているため、押した際の質感はあまりいいとは言えない

そのいっぽう、たとえばクルマに乗り込む際にドアハンドルを引いた後のパカンという音は安っぽさを感じさせるし、センターコンソールのスイッチ類はこれまで独立した物理スイッチだったものを、その上に大きくカバーをかぶせたような形状になったため、操作する際にその部分以外もそのカバーが動いてしまい、グラグラするような操作感は決して質感が高いとは言いがたいものになってしまっている。

また、物理ボタンでいえば、個人的にはある程度独立したものがあることはとてもいいことだと思う。何でもかんでもスクリーン内に収めてしまっては、一つ一つ確認しなければ操作できず、また操作ステップも増えてしまって煩わしく、また運転中には危険でしかない。そのあたりは評価できるのだが、そのスイッチそのものが少々小さく、また見にくいのでそのあたりは一考をお願いしたい。

長距離を試乗してみたいと思わせてくれるような魅力を持つ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

BMW 新型「3シリーズ」(330i M Sport)の走行イメージ

新型3シリーズに触れてみて、もっとも感じたのは大きく進化したボディ剛性の高さと乗り心地だ。こればかりは実際に乗ってみなければわからないポイントではあるが、先代に乗ったことがある方であれば、最初の交差点を曲がった程度で気付くほどの差が見られた。日本では過半数がM Sportを選ぶようで、前述の通り十分に満足できる足なのだが、実はこの乗り心地のよさは標準モデルがもっとも味わえそうだ。

つまり、それほど足を固めずに、かつサイズの小さいタイヤを履いているからだ。もちろん外見はおとなしくなるので、物足りなさがともなうだろうが、しかしそれを補って余りあると想像される。そのあたりも含めて、改めて長距離を走らせてレポートしたいと思わせてくれるところにも、新型3シリーズの魅力が秘められているのかもしれない。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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