レビュー
フィアット初採用となる新世代エンジンの実力は!?

乗ればわかる魅力の高さ!パワーアップしたフィアット「500X」に試乗

FCAジャパンが日本へ導入している主力コンパクトカー、フィアット「500(チンクエチェント)」。その500にSUVテイストが盛り込まれたのが、「500X(チンクエチェント・エックス)」だ。2019年4月19日、その500Xに大幅な改良が施されるとともに、500Xへ試乗する機会が得られたのでレポートしたい。

2019年4月19日に大幅改良が施された、フィアット「500X」。フィアット初採用の新世代ターボエンジン「Fire Fly」の搭載や、エクステリアの刷新などが主なトピックだ

■フィアット「500X」のグレードラインアップと価格
500X:2,980,000円
500X Cross:3,340,000円

改良ポイントはエンジンとエクステリア

2015年10月に導入されて以来、3年ぶりになる500Xの改良は、主にエンジンとエクステリアに重点が置かれている。

エンジンは「Fire Fly」と呼ばれる1.3リッターターボエンジンを搭載。先代の1.4リッターターボエンジンからは100ccサイズダウンしながらも、出力は11psアップの151ps、トルクは40Nm増えて270Nmとなった。燃費に関しても10%ほど向上しているという。

改良が施されたフィアット「500X」へ新たに搭載されたのは、新開発の1.3L直列4気筒ターボエンジン。最高出力151ps、最大トルク270Nmを発生し、前モデルよりも11ps、40Nmのパワーアップを果たしている

さらに、音や振動が先代と比べてはるかに静かになったことも特徴的だ。特に「アイドルストップからの再始動が非常にスムーズになりました」とは、FCAジャパン マーケティング本部プロダクトマネージャー 生野逸臣さんの弁。

フィアット「500X」のフロントエクステリア

フィアット「500X」のフロントエクステリア

フィアット「500X」のリアエクステリア

フィアット「500X」のリアエクステリア

エクステリアについては、バイキセノンヘッドランプからLEDヘッドランプに変更されたことが大きい。それにともない、デザインも精悍さを増している。また、ライトハウジングが上下で2分割しており、これは500のエンブレムが上下で2つに分かれているものをモチーフにすることで、500ファミリーであることを強調している。さらに、同様のモチーフはテールランプでも見られる。

フィアット「500X」のヘッドランプやテールライトは、500のエンブレムをモチーフに上下に分割されたデザインが採用されている

ラインアップは、上級グレードの「500X Cross」と標準の「500X」の2種類で、先代の4WD(四輪駆動)モデルは導入されず、FF(前輪駆動)のみとなった。

500Xは、なぜFFのみに統一されたのだろうか。生野さんは、「販売動向を見ると、四駆の販売は3割程度で少なくはありませんでした。しかし、購入理由は四駆が欲しい人とSUVライクなデザインが欲しい人とが混ざっていました。一方、500Xの不満理由は燃費でした。当然、二駆よりも四駆のほうが燃費は悪化します。他社の動向を含め、こういったクルマを選ばれるユーザーは、SUVのエクステリアが欲しいのであって、本格的なオフロード性能が欲しいわけではないという傾向が見られたことから、エクステリアデザインはSUVらしさに振りつつ、駆動方式は燃費のいい二駆だけに絞ったのです」と説明した。

日本におけるフィアット「500X」の購入理由は、デザインのよさとレアであることが圧倒的に高いという

日本におけるフィアット「500X」の購入理由は、デザインのよさとレアであることが圧倒的に高いという

日本では、これまで4,300台ほどの500Xが販売されているが、台数は決して多いとはいえない。実は、購入理由を見ると「デザインがダントツで高く、これはほかのメーカーやFCAの中でも高いパーセンテージです。同じように他社と比較すると、レアであるということも高い割合です。人が乗っていないものに乗りたいと思っているお客様がこのクルマを選んでいる傾向にあるのです」と結果を分析し、FCAジャパンとしては痛しかゆしといったところだろう。

500と思って見るとかなりの大きさを感じる

さて、500Xを間近で見ると、意外とその大きさを感じてしまう。その印象は正しく、500と比較して全長で710mm、全幅は170mm、全高は95mmサイズアップしている。一見500に近いデザインをまとっているため、写真などではその大きさがわからないのだ。そのぶん、室内の居住性は高く、特に後席ははるかに広くなっている。

フィアット「500X」は、500よりもボディサイズが大きいぶん、室内もかなり広く快適だ

フィアット「500X」は、500よりもボディサイズが大きいぶん、室内もかなり広く快適だ

そんなことを思いながら、クルマを一回りしてから乗り込もうとドアを開けて、驚いた。ドアの開閉音が、非常に高い品質の音がするのだ。まるで2クラスは上のクルマになったかのような高級感があり、エンジンをかける前にもかかわらず、今回の大幅改良への期待が否応なく高まってしまった。

さっそくエンジンをかけると、さすがに4気筒だけあってツインエアのような振動はほとんど感じられず、スムーズなものだ。セレクターレバーをDに入れ、ゆっくりと走り出すと、若干クルマの重さが気になった。それは、足の硬さが要因と思われる。路面からの突き上げが強く、かつサスペンションがストロークせず、つっぱった印象なのだ。ただし、これは試乗車の走行距離が500kmと、足回りに関しての慣らしが終了していなかったことも要因のひとつかもしれない。

フィアット「500X」の走行イメージ

フィアット「500X」の走行イメージ

走りに関してのネガティブな印象はこのくらいで、それ以外は非常に好印象だった。まず、前述したアイドルストップからの再始動は特筆すべきスムーズさだ。500Xよりもはるかに上級クラスでも、ここまでスムーズなクルマは少ない。そのくらいのレベルを保っていた。もし助手席で気にしていなかったら、たぶん再始動したことすら気付かないほどだろう。

フィアット「500X」の走行イメージ

フィアット「500X」の走行イメージ

ステアリングは若干重めで、むやみに軽くはない。ただ、できるならもう少し路面からのフィードバックが感じられれば、より安心感があるだろう。

デュアルクラッチの6速ATも非常にスムーズで、500のATモード付5速シーケンシャル(デュアロジック)とは比較にならないほどだ。都内の流れに乗る程度であれば2,000rpm程度でどんどんシフトアップしていく。一方、積極的に走りたければより深くアクセルを踏み込めばいい。4,000rpmも回せば小気味よくシフトアップしながら十分に流れをリードして走ることができるはずだ。

フィアット「500X」のインパネとエアコンスイッチ

フィアット「500X」のインパネとエアコンスイッチ

その一方で、装備に関しては良い面と物足りなさが同居している。良い面は、物理スイッチが目的別にレイアウトしてあることから、ブラインドタッチが可能なことだ。エアコン関係はセンターパネルに丸形のスイッチが3つ設けられており、それぞれを操作することで好みの設定ができる。それぞれが大きく、かつ機能がきちんと分かれているのでそれさえ覚えてしまえば、どんなときでも自由にかつ危険なく設定を変更できる。

しかし、カーナビが装備されないのは唯一残念なところだ。たしかに、Android autoやApple car play対応なので、自分のスマートフォンを接続すれば、カーナビの代用は果せるだろう。しかし、その都度スマートフォンとの接続をしなければならないので、やはり専用でカーナビを設定してほしいと、個人的には思う。

フィアット「500X」の走行イメージ

フィアット「500X」の走行イメージ

今回は、1時間半ほどのわずかな試乗時間であったので、いずれも第一印象でのレポートであったことをお断りしておくが、冒頭でも記したとおり、500Xの品質の高さは驚くばかりであった。一時のイタリア車のように華奢な感じはまったくなく、本当にしっかりと作り込まれている印象だ。デザインに関しても、500のファニーさに加え、バンパー周りでSUVテイストが感じられ、車高も若干高くなっていて視界も良好だ。あとは、もう少しだけ乗り心地にしなやかさが加われば、相当競争力のあるクルマになることだろう。そのあたりは、機会があればぜひ慣らしが終了した車両で再度テストしてみたいところだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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