バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
電子制御化されたサスペンションでコントロール性がアップ!

長距離ツーリングしたくなる! 安定感バツグンで街乗りにもいいカワサキ「VERSYS 1000 SE」


バイクの楽しみ方のひとつであるツーリングでは、まだ見ぬ景色を求めて数100km走るという人も少なくない。そんな長距離ツーリングを快適にこなせそうなのが、カワサキ「VERSYS(ヴェルシス) 1000 SE」だ。2019年にモデルチェンジし、さらに各部が熟成されたこのマシンの魅力を探ってみた。

オンロードでの性能にフォーカスした車体設計

アップタイプのハンドルにカウルを装備したツーリングモデル「VERSYS」シリーズには、現在、250ccクラスの「VERSYS-X 250 TOURER」と、1,000ccクラスの「VERSYS 1000 SE」がラインアップされている。このタイプの中にはオフロードも走行できる車種(アドベンチャーモデルと称される)もあるが、VERSYSシリーズはオンロード走行にフォーカスしたモデル。日本国内では未舗装路の道は減少しているので、ツーリングバイクとしてはオフロード走行できなくてもデメリットにはならないはずだ。

今回紹介するVERSYS 1000 SEは、歴代のVERSYSシリーズの中でもオンロードでの性能が高い。オフロード走行も視野に入れたアドベンチャーモデルはスリムな車体と軽量を実現するため、大排気量でも2気筒エンジンが採用されることが多いのに対し、VERSYS 1000 SEは1,043ccの並列4気筒。パワーがあり、かつ、スムーズな吹け上がりが望めるので、低速でも高速でも安定した気持ちのよい走りが楽しめるだろう。タイヤもオンロードでのグリップを意識し、太さのある前後17インチのホイールを採用している。

今回試乗したVERSYS 1000 SEには、車体後方にトップケース(メーカー希望小売価格35,000円/税別)とパニアケース(左右セットのメーカー希望小売価格90,000円/税別)、前方にフォグランプキット(メーカー希望小売価格52,400円/税別)が装備されていた

オプションを装備しない車体は、このような感じ

オプションを装備しない車体は、このような感じ

エンジンは120PSを発揮する1,043ccの4気筒。ロードモデル「Z1000」のものをベースに電子制御スロットルを装備して扱いやすさを向上させている

フロントのタイヤサイズは120/70ZR17M/C。ラジアルマウントのダブルディスクブレーキを採用している

フロントのタイヤサイズは120/70ZR17M/C。ラジアルマウントのダブルディスクブレーキを採用している

出口が2本になった迫力のあるマフラーは、よく消音されている

出口が2本になった迫力のあるマフラーは、よく消音されている

さらに、オフロードの走行は想定していないものの、荒れた路面やギャップを乗り越えるような走りにも対応できるよう、フロントに150mmのロングストロークを誇るサスペンションを装備。リアサスペンションには、「BFRC lite(バランスフリー・リアクッション・ライト)」に電子制御を追加した「KECS(カワサキ・エレクトロニック・コントロール・サスペンション)」が備えられている。この電子制御化されたサスペンションにより、コーナリング時に車体各部の状態をリアルタイムにモニタリングし、パワーやブレーキ効力を最適な状態に調整するKCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクション)のコントロール範囲が拡大。加減速時の挙動がよりスムーズになるとともに、ライダーが意図したとおりにバイクを動かすことができるようになった。また、後輪のスリップを感知してすべらないように駆動力を調整する「KTRC(カワサキ・トラクションコントロール・システム)」も装備されており、トラクション性能も向上している。

フロントフォークは、路面追従性にすぐれる直径43mmのショーワ社製倒立式

フロントフォークは、路面追従性にすぐれる直径43mmのショーワ社製倒立式

電子制御のリアサスペンション「KECS」は、パニアケースで隠れているため見えない。なお、リアタイヤのサイズは180/55ZR17Mで、迫力ある太さと安定したグリップを誇る

長距離ツーリングに対応した充実の装備

ツーリングモデルだけに、高さ調整できるシールドや変速時にクラッチを切らなくてもギアチェンジできるクイックシフターなど、長時間走っても疲れにくい装備が随所に施されている。さらに、グリップにはヒーターが備えられており、寒い時期の快適さにも配慮。もちろん、長距離ライドできるように、ガソリンタンクの容量は21Lとなっている。カタログの定地燃費値は25km/Lだが、実際の走行でもガソリンを満タンにした状態で400kmの航続距離を実現しているという(走行条件などによって異なるが)。ガソリンスタンドの数も減っている昨今、長距離ツーリングをする人には心強い数値だ。

写真ではわかりにくいかもしれないが、シールドは最大10cmほど無段階に高さが調整できる。数値的にはわずかな差だが、体に当たる風は格段に違う

グリップにはヒーターが内蔵されているので、冬場にも操作しやすい薄手のグローブで乗れそうだ

グリップにはヒーターが内蔵されているので、冬場にも操作しやすい薄手のグローブで乗れそうだ

手全体を覆うほど大きなナックルガードも装備。手に直接風が当たらないだけで、寒さはかなり違う

手全体を覆うほど大きなナックルガードも装備。手に直接風が当たらないだけで、寒さはかなり違う

クイックシフターも完備されており、素早いシフトアップやシフトダウンが可能。左手を握らずに済むので、長距離走行では疲れ方も大きく変わってくる

個人的に気に入ったのは、ラジアル式のマスターシリンダーが標準装備されていること。繊細なブレーキタッチが望め、コントロール性にすぐれるため、あとから交換する人も多い装備だ

シート下にはETC車載器も搭載。長距離ツーリングでは高速道路を使うことも多いので、非常に役立つ

シート下にはETC車載器も搭載。長距離ツーリングでは高速道路を使うことも多いので、非常に役立つ

メーターはアナログ式のタコメーターの横にカラー液晶を装備。ギヤポジションや燃料計に加え、航続可能距離やバンク角/最大バンク角、路面凍結警告灯、加減速度インジケータ、スロットル開度、フロントブレーキ圧計などの情報を表示できる

オプションだが、パニアケースやトップケースがあると荷物を収納できるようになる。VERSYS 1000 SEで旅やキャンプに出かけるなら、用意しておくといいだろう。

容量47Lのトップケースは5kgまでの荷物を積載可能。フルフェイスのヘルメットが2個収納できるサイズ感だ。荷物を固定するベルトが装備されているので、着替えなどを入れておいても荷物が動くことはない

パニアケースは2つセット。車体の左右に装着するため荷物は横向きになるが、こちらも固定ベルトがあるので収まりは上々だ。1ケースの容量は28Lで、積載重量は5kg

大柄な車体ながら重さを感じさせない走り

いよいよ試乗へと移るのだが、VERSYS 1000 SEは大柄に見えるため、エンジンをかけずに押し歩きできるのだろうか……と心配な人もいるだろう。車重は257kgなので、実際に押し歩きするとやはり重さを感じる。普通の道では押し歩きできたが、傾斜した駐車場などに後ろ向きで入れるのは苦労しそうだ。また、見た目どおりに車体サイズは2,270(全長)×950(全幅)×1,490(全高)mmと大きく、またがってみると、ストロークが長めのサスペンションが深く沈み込んでくれるとはいえ、身長175cmの筆者でも両足のつま先が接地する程度の足付き。ただ、車体のバランスがいいので支えるのに苦労することはない。

底が厚めのシューズを履いているにもかかわらず、なんとかつま先が付く程度だった。大型バイクに慣れていない人は、ちょっと躊躇してしまうかもしれない

大きく重い車体にやや緊張しながらもエンジンをかけて走り出す。試乗は街中と高速道路を中心に行ったが、クラッチをつないでゆっくり走り出すと、不思議な感覚にとらわれた。先程まで感じていた大きさや重さが、スーッと消えて行くように感じられたのだ。4気筒のエンジンは、回転がスムーズなのでトルク(車体を前に押し出す力)の変動が少ない。しかも、VERSYS 1000 SEは排気量が1,043ccもあるので、アイドリング+αくらいの回転数でも安定して車体を加速させることができるのだ。

街中の低速域でも車体は安定しており、走ってさえいれば車体の重さは感じない

街中の低速域でも車体は安定しており、走ってさえいれば車体の重さは感じない

重さを感じないのは、コーナリングでも同様。カーブで車体を左右に傾ける操作も軽快だ。大柄な車体ではあるものの、せまい路地でも緊張することなく走ることができた。それでいて、車体を寝かしてからの安定感も高く、安心してコーナーを曲がって行ける。この感覚は高速道路に入っても変わらず、安定感は高いのだが車体を傾ける操作は軽快。安定感を重視したツーリングバイクの中には、寝かす操作が重い“立ちが強い”ものもあるが、VERSYS 1000 SEにいたっては、そのような心配はまったくいらない。この特性は、カワサキ独自のシステム「KCMF」が搭載されているおかげだろう。

軽快に倒し込むことができ、その状態での安定感も高いので、大型バイクに不慣れなライダーでも走り出してしまえば苦労しないだろう

最後に、高速走行の感想を伝えておこう。ずばり、これまでのとおり、非常に快適。安定感が高く、まるで自動車に乗っているかのような気分になった。シートの座り心地もよく、長時間乗ってもお尻が痛くなることもない。また、高速走行時には高さを変えられるシールドのありがたみを実感。もっとも高い位置にセットしておくと、走行風がヘルメットにも当たらなくなるので、体への負担がずいぶん軽減された。

肉厚のシートは座り心地がいい。前方の左右が絞られた形状になっているのは、足付き性を考慮したものだ

肉厚のシートは座り心地がいい。前方の左右が絞られた形状になっているのは、足付き性を考慮したものだ

高速で走る際にはシールドは高くしておくほうがいい。ただ、夜に街中を走る際に、シールド越しに見ると光がやや曲がって見えることもある。街乗りでは低い位置に戻しておいたほうがいいだろう

試乗を終えて

初めて VERSYS 1000 SEを目にした時、予想以上の大きさにやや緊張していたのだが、走り出してしまえば、そんな緊張はどこへやら。いつまでも乗っていたいと思うほどの軽快さと快適さで、最近は長距離ツーリングする機会がめっきり減ってしまった筆者だが、出かけたい気持ちが沸々とこみ上げてきた。

そして、驚いたのが日常使いにもよさげなこと。大型のツーリングバイクなので、高速道路などでの安定感が高いのは当然だが、街中での扱いやすさが想像以上にいい。試乗車を借りている間、近所にちょっと出かける時にも乗ってしまうほど気に入ってしまった。この乗りやすさは、電子制御化されたスロットルやサスペンション、そしてそれらを統合して制御する「KCMF」の恩恵であると思われる。高速でも低速でも安心感のある走りで気持ちよく走行したいなら、VERSYS 1000 SEは理想的なマシンだろう。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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