レビュー
滑らかでスムーズな乗り味に、思わず「いいクルマ」

マツダ 新型「MAZDA3」に試乗!ディーゼルとガソリンはどっちがいい!?

マツダ「アクセラ」の後継車種である新型「MAZDA3」が、2019年5月24日に正式発表された。MAZDA3の発売日については、エンジンタイプと排気量によってそれぞれ異なる。1.5Lガソリンエンジンと1.8Lディーゼルエンジンの発売日は発表と同日の5月24日だが、2Lガソリンエンジンは発表から2か月後の2019年7月18日に、新エンジン「SKYACTIV-X」を搭載したモデルは発表からおよそ5か月後の2019年10月に発売が予定されている。

マツダ 新型「MAZDA3」セダン(左)と「MAZDA3」ハッチバック(右)

マツダ 新型「MAZDA3」セダン(左)と「MAZDA3」ハッチバック(右)

今回は、2019年5月24日に発売された1.8Lディーゼルエンジンと、2019年7月18日に発売される2Lガソリンエンジンについて、クローズドコースで試乗することができたのでレポートしよう。

「MAZDA3」という名前でなくてもよかった

今回、日本における車名が「アクセラ」から世界で販売している「MAZDA3」へと改名された

今回、日本における車名が「アクセラ」から世界で販売している「MAZDA3」へと改名された

まず、なぜ従来のアクセラではなくMAZDA3という車名でデビューしたのか、というところから話を始めよう。MAZDA3という名前そのものは今回が初めてではなく、これまでもアクセラの輸出向けの名称として使われていた。マツダ商品本部主査の別府耕太さんによると、「最初はアクセラのまま、というのが販売現場の声でした。しかし、僕らとしてはグローバルで揃えたいということよりも、ゼロから産んだクルマなので新しい名前をつけてほしいというのが一番の要望でした。したがって、MAZDA3でなくてもよかったのです」と言う。

また、「アクセラの後継車であることを我々からは表明したくなくて、まったく新しいゼロから産んだクルマだということをいかに伝えるか。それであれば、グローバルで揃うということもあり、MAZDA3に変えてしまおうということになりました。マツダという看板を背負ってもいいぐらいの出来であることも、確認していましたから」とコメントする。

“誰もが羨望するクルマ”を目指した

新型「MAZDA3」ハッチバックのフロントエクステリアとリアエクステリア

新型「MAZDA3」ハッチバックのフロントエクステリアとリアエクステリア

MAZDA3は、これからのマツダを作っていく新世代商品群の幕開けを飾るモデルだ。「このモデルを契機とし、マツダブランドをより一層飛躍させたいという強い思いを持っている。この大きな命題に応えるために、そしてMAZDA3が再び世界中のすべてのお客様に驚きと喜びを感じてもらうために、“誰もが羨望するクルマ”を目指しました。

奇をてらうことなく、クルマとしての当たり前の走る、曲がる、止まる、そして室内空間の快適さ。これらを人の心が動く、感動するレベルにまで磨き上げています。理屈抜きに、心で、直感で乗りたくなる、欲しくなる。そんなクルマがMAZDA3なのです」と別府さんは紹介する。

骨盤を使ってしっかりと座れるように設計されたシート

今回、試乗したのは1.8Lディーゼルエンジンを搭載したハッチバック(ファストバック)の「XDプロアクティブツーリングセレクション」と、2Lガソリンエンジンを搭載したセダンの「20S Lパッケージ」だ。

新型「MAZDA3」のシートには、脊柱のS字カーブを維持できる構造が取り入れられている。これによって、無意識に骨盤や脊柱を動かして、自然に体の重心バランスが取れるようになっている

最初にドライバーズシートに座ったのは、ハッチバックのXDだ。着座して、しっかりとシートの奥に腰を落ち着けて、シートポジションを合わせる。このセグメントには珍しく、シート後端だけでなく、前端部分についても上下調整ができて、ステアリングもチルトだけではなくテレスコピック機能を備えている。これなら、どんな体格の方でも好みのドライビングポジションが取れるだろう。

新型「MAZDA3」に搭載されている「10WAYパワーシート」では、シート位置を細かく調整することができる(一部グレードではオプション、ハッチバックの15Sグレードには非搭載)

ここで重要なのは、きちんと腰をシートの奥に下ろすことだ。つまり、ちょっとだらしなくお尻を前のほうに出すのではなく、シートバックと座面がつながるL字型の部分にしっかりと押し付けるくらいのイメージで座る。これによって、マツダが考える理想的なドライビングポジションで座ることができる。

この姿勢、実は人間が歩くときの骨盤の位置や動きに関係しているという。人間は、歩くときに骨盤や脊柱(背骨)を動かして重心のバランスを取っている。歩いている人を見ると、腰の位置は動くものの、頭はそれほど動かないことがわかるだろう。そういったことを参考にシートが設計されているので、ドライビングポジションが非常に重要となってくる。正しい姿勢でシートに座ることによって、疲れを軽減し、さらには安全にもつながっていく。

理想的な姿勢でステアリングを握ってみると、若干ヒップポイントが高めになるかもしれない。つまり、骨盤を立たせてすっぽりと入る形状になっているからだ。そして、ここからは少しおもしろい経験ができる。通常シートを作るときにはしっかりと腰をホールドして、と考えるものだが、実はMAZDA3のシートは少し違う。もちろん腰はホールドされているのだが、がっちりと、ではなく、実は若干ゆるめなのだ。そうするとわずかに骨盤が動き、前述の立っている姿勢と同じように頭の動きが少なくなる。たとえば駐車場から幹線道路に出るときにステアリングを切りながらゆっくりと加速していくシーンにおいても、何となく骨盤が動き、バランスを取っていることが伝わってくるという少し不思議な感覚が味わえる。これは常に感じることではなく意識した結果であって、普段であれば無意識、つまり歩いているときに骨盤の動きを意識しないように、MAZDA3に乗っていても普段は気にならないはずだ。ただし注意して観察すると、そういったことがシートの基礎技術に盛り込まれ、有効に活用されていることが見えてくるのだ。

ステアリングとブレーキのフィールは絶品

今回のテストコースは、高速バンクから20km/h以下で走るシケインまでさまざまなシーンが用意されたが、そこでMAZDA3を走らせると相当に完成度の高いクルマであることがうかがえた。

新型「MAZDA3」では、クルマのポテンシャルの高さや「Gベクタリングコントロールプラス」機能などの相乗効果によって、自然かつ正確にステアリングを操舵することができる

特に、ステアリングとブレーキのフィーリングは特筆に値する。初めて乗ったクルマの場合、ステアリングがどの程度切れるのかを探りながら操作する。あるいは、慣れたクルマであっても、切り足したり少し戻したりすることがあるだろう。しかし、MAZDA3の場合は最初から一発で舵角が決まる。したがってステアリング操作が少なくなり、それによるGの変化も軽減されるという効果も生まれるので、同乗者も快適に過ごせるだろう。これは、ステアリングがクイック過ぎないことと同時に、コーナーリングの安定性を高めてくれる機能「Gベクタリングコントロールプラス」が効いているからだ。その結果、一気に切り込んだとしてもGが急激に立ち上がらず、かつステアリング操作も切り込みすぎることなく、かといって遅れることもない自然な感覚で操舵できる。

ブレーキについても同様だ。ブレーキペダルを踏み始めてから停まるまで、正確に減速Gをコントロールできるのだ。踏み過ぎたとか踏み足りないということがないので、むやみに減速Gが変化しない。これならば、同乗者も安心だろう。MAZDA3では、こういった1つひとつの所作がきわめて精巧に作り込まれている。ちなみに、これはディーゼルであってもガソリンであっても変わらない。

また、遮音性もこのセグメントとしては高いほうだ。ディーゼルエンジンもガソリンエンジンも、エンジン音はそこそこ車内に侵入してくるものの決して不快なことはなく、きちんとエンジンが働いているという印象を与えてくれる。ロードノイズに関しても同様だが、これは路面がいいこともあるので、一般道で改めて確認したいところだ。

しなやかでしっとりとした乗り心地のディーゼルエンジン

新型「MAZDA3」1.8Lディーゼルエンジンの試乗イメージ

新型「MAZDA3」1.8Lディーゼルエンジンの試乗イメージ

ディーゼルエンジンは、乗り心地がしなやかでしっとりとした印象だ。これは、低速域から高速域まで変わらない。また、高速域での直進安定性も高そうだ。また、パドルシフトを使ってコーナーを攻め立てると、活発な走りが楽しめる。ディーゼルエンジンの車重はガソリンエンジンと比較して50kgほど重く、そのほとんどがフロントにかかっているのでその影響は免れず、ガソリンと乗り比べると回頭性は若干落ちるが、決して劣っているわけではないことを付け加えておく。

ただし低速、というよりも微速域においてはセッティングに気になる点が見られた。特に20km/h以下の速度域において、一定速度を保つのが難しいのだ。これは、シフトアップポイントが重なってしまう点とともに、ほんのわずかなアクセルの踏み込み量に対して過敏にエンジンとトランスミッションが反応してしまうためだと思われる。特にスーパーなどの駐車場では常用される速度域であるため、セッティングの変更などが望まれる。

コントロールしやすくスムーズなガソリンエンジン

新型「MAZDA3」2.0Lガソリンエンジンの試乗イメージ

新型「MAZDA3」2.0Lガソリンエンジンの試乗イメージ

では、次にガソリンのセダン20S Lパッケージに乗り換えてみよう。当然とも言えるのだが、エンジンの印象はガソリンエンジンのほうがはるかにスムーズ。しかし、一気に加速するときなどはディーゼルエンジンに一歩置いていかれる印象だが、決して遅くはなく必要にして十分なパワーを引き出せる。特に、アクセルコントロールのしやすさはガソリンエンジンのほうが一枚上手だ。高速域はもちろんのこと、前述のディーゼルエンジンで苦手だった低速域での一定走行や速度の微調整は、はるかにガソリンエンジンのほうがやりやすい。また、コーナーリング時のきびきびとした感じも、軽量なガソリンエンジンに軍配が上がるだろう。

新型「MAZDA3」2.0Lガソリンエンジンの試乗イメージ

新型「MAZDA3」2.0Lガソリンエンジンの試乗イメージ

しかし、乗り心地に関してはディーゼルの圧勝と言ってもいい。まったく同じボディタイプではないので、正確な比較とは言えないのだが、ガソリンエンジンのほうがかなり締まった乗り心地で、路面からの入力を正確にドライバーへと伝えてくる。いっぽう、ディーゼルエンジンの場合も入力そのものは伝わってくるのだが、よりしなやかで角が取れており、乗り心地はかなり快適だ。サスペンションストロークは共通ながら、ディーゼルエンジンのほうがより快適に感じられたので、重量の要因が多分にあると思われる。

高速域でも印象は大きく変わらないが、ガソリンエンジンのフラット感が大きく向上するのは興味深い。低速域でコツコツ拾っていた乗り心地が、80km/hくらいから一気にフラットになるのだ。

ディーゼルエンジンとガソリンエンジン、どっちがいい!?

MAZDA3の2台をテストコースで試乗した印象は、全体的に高いレベルで性能が揃っており、非常に乗りやすいクルマだということだった。その印象を振り返ってみると、あぁ、いいクルマだったなということが口を突いて出る。これは決して悪いことではないのだが、印象を語るうえでは何か特化したものがあればそこがポイントになりやすい。つまり、ジャーナリスト泣かせのクルマと言い換えることもできよう。

もちろん、乗り心地の差や、ディーゼルエンジンの微速域で気になることはあるものの、すべてが自然で、滑らかな動きをするクルマであることはMAZDA3の大きなポイントと言える。

新型「MAZDA3」のディーゼルエンジンとガソリンエンジンと乗り比べると、ディーゼルエンジンのほうが乗り心地がよく、走りを楽しむことができる

では、どちらがよかったのかといえば、今回乗った2台ではハッチバックのディーゼルエンジンだ。乗り心地がよく、かつ、ハンドリングも楽しめるからだ。しかし、まだこの後にSKYACTIV-Xという本命が控えており、しかもその四駆モデルがもっともバランスが取れているというのが関係者の弁。発売までにはもう少し時間がかかるが、SKYACTIV-Xも期待できそうだ。

MAZDA3は“4人乗れるロードスター”

マツダ商品本部主査の別府さんいわく、「MAZDA3は4人乗れるロードスター」という

マツダ商品本部主査の別府さんいわく、「MAZDA3は4人乗れるロードスター」という

このMAZDA3の原稿をまとめるにあたり、前出の別府さんの言葉を借りたい。彼の言葉こそ、このMAZDA3の全体像を言いえているからだ。「パーソナルな生活を満喫する人か、結婚しているかどうかなどは関係なく、自分自身にリソースを注ぎ込みたいと思っている人にベストマッチなクルマです。したがって、僕らは“4人乗れるロードスター”とずっと言っています。本当はロードスターが欲しいのですが、物理的に無理という人もいるので、それであればMAZDA3を買ってほしいですね」。

さて、ひとつだけMAZDA3に対しての要望を付け加えて終わりたい。マツダは、以前からドライビングポジションが重要だとし、開発の要としてきた。そして、このMAZDA3ではそこをより強調している。確かにこれは重要なポイントで、正確な運転操作とともに疲労軽減にもつながり、結果として安全に直結する。しかし、多くのドライバーがおろそかにしてしまっているのも現実だ。当然我々ジャーナリストもその点は強調していくことはもちろんだが、ぜひディーラーでの試乗や納車の際に、各営業マンやサービスマンからドライビングポジションの重要性をレクチャーしていただきたい。

実は最近、筆者の周りでもマツダ車を購入する例が増えているのだが、ことドライビングポジションに関して説明を受けた人は皆無なのだ。せっかく開発者が丹精込めて仕上げたクルマだとしても、それを一番確実にユーザーに届けられるのは営業マンなどディーラーの人間だ。そのあたりをもう一度徹底することで、さらにMAZDA3の、そしてマツダ車のよさが伝わっていくに違いない。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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