バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
ネオスポーツカフェ系統に追加された4気筒エンジンモデル

シリーズ60周年の節目に登場したホンダ「CB650R」はベストバランスと言える完成度!


ホンダのバイクの“顔”とも言える「CB」シリーズ。2019年は、CBシリーズの初代モデル「ベンリイ CB92 スーパースポーツ」誕生から60周年であり、ホンダ製バイクの性能を世界のトップレベルに引き上げた歴史的モデル「ドリームCB750FOUR」の発売から50周年に当たる年だ。そんな節目の年に新たにラインアップに加わった「CB650R」の実力を体感してきた。

栄光の歴史を刻んできた「CB」シリーズ

「CB」の名を冠したモデルが発売されたのは1959年のこと。130km/hの最高速を誇り、ベストセラーとなった「ベンリイ CB92 スーパースポーツ」を皮切りに、量産車としては世界初となる空冷のSOHC4気筒エンジンを搭載し、最高出力67馬力を発揮した「ドリームCB750FOUR」(1969年発売)、そして、1,284ccの水冷4気筒エンジンを搭載した堂々たる車格ながら、軽快な走行性能でビッグバイクブームを巻き起こした「CB1000 SUPER FOUR」(1992年発売)など、ざっとかいつまんだだけでもCBシリーズは歴史に残る多くの名車を生み出してきた。

排気量は124ccながらも、精密な2気筒エンジンを搭載した「ベンリイ CB92 スーパースポーツ」(1959年発売)は、当時としては破格の15PSを10,500rpmで発揮し、浅間山で開催された第2回全日本モーターサイクル・クラブマンレースで優勝を果たす。高性能な市販スポーツバイクの元祖的な存在だ

初代モデルの翌1960年に発売された「ドリームCB72 スーパースポーツ」は、レース向けのキットパーツも用意され、多くのレースで活躍。“小排気量車で日本製=高性能”というイメージを築いた、CBシリーズの歴史を語るうえでは欠かせないマシンだ

「CB」と聞いて多くの人がイメージするのは、名実ともに日本製バイクが世界のトップレベルであることを示した歴史的名車「ドリームCB750FOUR」(1969年発売)だろう。このモデルが売れたことで、他メーカーも相次いで750ccモデルをリリースし、日本国内に“ナナハンブーム”が巻き起こった

日本国内にとどまらないビッグバイクブームが起こるきっかけとなった「CB1000 SUPER FOUR」(1992年発売)も、現代につながる血統を語るうえで避けては通れない存在

現行モデルにも多くの名を連ねるCBシリーズには、大きく分けて3つの系統が存在する。ひとつは、ビックバイクブームを巻き起こした「CB1000 SUPER FOUR」のプロジェクトネーム「BIG1」のコンセプトやデザインを受け継ぐ「CB1300SF」。ハイグレードな足回りを与えられた「CB1300SF SP」や、ハーフカウルを装備した「CB1300SB」や「CB1300SB SP」といったバリエーションモデル、そして教習車として採用されている「CB400SF」もラインアップされており、この系統にはなじみのある人も多いのではないだろうか。

専用設計のオーリンズ製サスペンションやブレンボ製ブレーキを装備した「CB1300SB SP」。大柄な車体を自在に操れる走行性能を持ち、今でもファンが多いシリーズだ

2つめは、空冷エンジンを搭載した「CB1100」の系統。空冷エンジンらしい乗り味が人気で、足回りの装備が異なる「CB1100 EX」や「CB1100 RS」といったバリエーションモデルが揃う。

空冷4気筒という「CB」シリーズの特徴のひとつを現代の技術で体現している「CB1100」

空冷4気筒という「CB」シリーズの特徴のひとつを現代の技術で体現している「CB1100」

そして3つめが、CBらしい丸目ライトのネイキッドバイクという基本構成はそのままに、現代的なデザインとされた「ネオスポーツカフェ」の系統だ。「CB125R」「CB250R」「CB1000R」と排気量125ccクラスから1,000ccクラスまで幅広くリリースされており、現行のCBシリーズの中核を担う系統と言える。

新世代の「CB」シリーズの形を実現した「CB1000R」

新世代の「CB」シリーズの形を実現した「CB1000R」

扱いやすい648ccの 4気筒エンジン「CB650R」

今回紹介する「CB650R」は、ネオスポーツカフェ系統に追加された新モデルとなる。そもそもこの系統とルーツとなったのは、2017年の東京モーターショーに出展された「Neo Sports Cafe Concept(ネオ・スポーツ・カフェ・コンセプト)」というマシン。伝統的なバイクらしいシルエットながらも、随所に近未来的な造形を採り入れて話題となった。このマシンが4気筒であったことから、ネオスポーツカフェ系統でも単気筒よりも存在感のある4気筒エンジンを好む人も多いのだが、同系統の現行モデルに存在する4気筒エンジンのマシンは「CB1000R」のみ。Neo Sports Cafe Conceptのスタイルをほぼそのまま継承したCB1000R が市販化された時にはたくさんのCBファンを驚かせたものだが、排気量が998ccと大きめなこともあり、もう少し扱いやすい排気量の4気筒モデルを心待ちにしている人もいただろう。

東京モーターショー2017」に出展された「Neo Sports Cafe Concept」。ひとつ上で紹介したCB1000RはNeo Sports Cafe Conceptのコンセプトを受け継いでいることがよくわかる

そんな期待に応えるかのように登場したのが、排気量648ccのCB650Rだ。4気筒は、エンジンは回転の上昇がスムーズで気持ちよく伸びやかに走れるのが魅力のひとつだが、排気量998ccのCB1000Rは同社のスーパースポーツモデルでレースなどでも活躍する「CBR1000RR」と同じものを搭載しており、ストリートに適するようにチューニングされてはいるものの、最高出力145PSと、一般公道ではパワフル過ぎて扱いきれるものではなかった。その点、排気量が648ccとされたCB650Rの最高出力は95PS。CB1000Rよりもアクセルを開けやすく、回転上昇のなめらかさをたっぷり堪能できる。

CB650Rは、丸目のヘッドライトとボリューム感のあるガソリンタンクなど、CBシリーズの持つ普遍的な魅力は押さえつつ、先進的な雰囲気を上手に融合させたスタイリングとなっている

コンパクトな水冷4気筒エンジンを搭載。エキゾーストパイプの造形も美しい

コンパクトな水冷4気筒エンジンを搭載。エキゾーストパイプの造形も美しい

トラディショナルな丸型ながら光源はLEDとされ、近未来的なイメージに仕上げられている

トラディショナルな丸型ながら光源はLEDとされ、近未来的なイメージに仕上げられている

ライダーの耳にエキゾーストノートを届けられるように、マフラーは短く、やや跳ね上がった形状とされた

ライダーの耳にエキゾーストノートを届けられるように、マフラーは短く、やや跳ね上がった形状とされた

メーターは、小ぶりで軽量なデジタルタイプを採用

メーターは、小ぶりで軽量なデジタルタイプを採用

スタイリングだけでなく、走行に関する機能も先進的なものとなっている。エンジンに空気をとり入れるためのエアクリーナーは、エンジン内部にストレートに導風する形状とされ、さらにガソリンタンクの左右に配置されたシュラウド一体型チャンバーによって、安定的に空気を充填することが可能に。吸気充填効率が向上したことにより、鋭いエンジンの吹け上がり感を実現している。また、長距離ツーリング時の疲れを軽減できるよう、シフトダウンなどで急なエンジンブレーキがかかった時に後輪がホッピングするのを緩和し、クラッチ操作も軽くする「アシストスリッパークラッチ」を採用。アクセルを開けた際に後輪がスリップすることを防ぐ「Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)」も装備している。

タンクの横に張り出したシュラウドはエアチャンバーを兼ねた構造となっており、空気の導入をスムーズにしている

前方から取り入れた空気をチャンバー内に貯めることで、安定した吸気を実現

前方から取り入れた空気をチャンバー内に貯めることで、安定した吸気を実現

レースマシンなどと同様のマウント方式を採用したブレーキキャリパーは、制動力とコントロール性を高めている

ショートタイプのシートを採用することで、マスの集中化(重いものを車体中心に集め、中心から離れた部分は軽量化すること)を実現。2人乗りも可能だ

剛性の高い倒立式のフロントフォークを装備。コーナリングでの俊敏なハンドリングを実現する

剛性の高い倒立式のフロントフォークを装備。コーナリングでの俊敏なハンドリングを実現する

「CB650R」を街乗りでテスト!

乗車姿勢は、ハンドルを握った際に少しだけ前傾になるようにセットされている。上体が軽く起きるので街乗りやツーリングでは視界がよく、それでいて適度な前傾姿勢でやる気にさせてくれるライディングポジションだ。ガソリンタンクの存在感はあるものの、バイクの全長は2,130mmと排気量からすると短く、着座位置も現代のマシンらしくやや前方。エンジンに近い位置に座れるので、軽快なハンドリングが想像できる。また、この際、ヘッドライトは視界に入らない。薄型の形状であるだけでなく、車体側に寄せ、マスの集中化(重いものを車体中心に集め、中心から離れた部分は軽量化すること)に配慮されていることを感じた。

車体サイズは2,130(全長)×750(全幅)×1,150(全高)mm。身長175cmの筆者がまたがると、両足のかかとが少し浮くくらい。足付き性はかなりいい

またがった際に感じた軽快なイメージは、クラッチをつないで走り出すとさらに高まる。ハンドルより前に何もないように見えるビジュアルのとおり、ハンドリングは非常に軽く、寝かし込む操作も軽やか。街中の狭いカーブなどは大得意だ。重心に近い位置に着座していることや、ホイールベースが短い車体もあって、クルクルと向きが変わる感覚が楽しい。それでいて、高速コーナーの安定感はバツグンなので、不安を感じることは一切ない。すべてのカーブが楽しくなるハンドリングだ。

街中の狭いカーブを曲がるのが楽しい。アップライトなライディングポジションと軽快なハンドリングの恩恵だ

街中の狭いカーブを曲がるのが楽しい。アップライトなライディングポジションと軽快なハンドリングの恩恵だ

高速コーナーでの安定感もすばらしい。車体が意のままに動いてくれるような感覚が味わえ、それが最高に心地いい

そして、4気筒らしいエンジンの吹け上がりがとにかく気持ちいい。3,000〜8,000回転のレスポンスを高めているというだけあって、低回転からでもアクセルを開けるとタイムラグなく車体が加速するのだが、この時のスムーズなエンジンの回転上昇が、4気筒エンジンのバイクに乗っていることを実感させてくれる。同じ4気筒エンジンでも、1,000ccクラスだとパワーがあり過ぎて公道では気持ちいいところまで回せるシーンは限られるが、CBR650Rは4,000回転も回っていれば十分。その際にスピードが出過ぎることもないので、街中でも爽快なフィーリングをしっかり味わうことができる。

低回転から4気筒らしいスムーズで爽快な吹け上がりを堪能できる

低回転から4気筒らしいスムーズで爽快な吹け上がりを堪能できる

さらに大きくアクセルを開け、回転数が7,000を超えたあたりからは排気音が甲高い音に変わり、少々目がついていかないくらいの加速を味わえる。低回転での扱いやすさと気持ちよさ、そして高回転での速さを両立したこのエンジンと車体は、まさにベストバランスではないだろうか。

兄弟モデル「CBR650R」にも試乗してみた!

実は、今回、諸事情でCB650Rと同時リリースされた「CBR650R」にも試乗することができた。CBR650Rは、CB650Rと同じエンジンやフレーム、足回りなどにフルカウルを装備し、低い位置にハンドルを備えたスーパースポーツモデルだ。せっかくなので、CB650Rとの違いを乗り味も含め、軽く紹介しておこう。

車体サイズは2,130(全長)×750(全幅)×1,150(全高)mmで、排気量は648cc。先に紹介したCB650Rと同じだ

車体サイズは2,130(全長)×750(全幅)×1,150(全高)mmで、排気量は648cc。先に紹介したCB650Rと同じだ

シート高はCB650Rと同じ810mmながら、前傾姿勢で腰の位置が上がるためか、かかとまで接地することはできなかった

CB650Rと比べるとライディングポジションは前傾だが、スポーツモデルの中ではハンドルは低過ぎないので、街乗りやツーリングでも疲れは少なそう

外観デザインとライディングポジション以外は基本的にCB650Rと共通だが、機能面で唯一異なる部分がある。それが、エンジンに空気を取り入れる「エアインテーク」の機構だ。CBR650Rのエアインテークには、走行時の風圧(ラム圧)によってエアクリーナーボックス内の気圧を高める機構が装備されており、高速走行時には、フロントカウルに設けられたエアの取り込み口にラム圧がかかることで、高速域での出力をより稼げるようになる。エアチャンバーを備え、中速域での充填効率を高める方向性のCB650Rに比べ、高速道路やサーキットなどで効果を発揮できるシステムだ。

ラム圧の導入口はフロントカウルに設けられている。速度が出るほど圧力が高まる仕組みだ

ラム圧の導入口はフロントカウルに設けられている。速度が出るほど圧力が高まる仕組みだ

フルカウルをまとってはいるが、4気筒エンジンやエキゾーストパイプが見えるようにデザインされている

フルカウルをまとってはいるが、4気筒エンジンやエキゾーストパイプが見えるようにデザインされている

実際に走ると、CB650Rとの性格の違いがよくわかる。大半はライディングポジションの違いによるものだが、アップハンドルのCB650Rが街中のタイトなカーブを得意としていたのに対し、セパレートハンドルのCBR650Rはもう少しスピードの乗るワインディング(峠道)のコーナーのほうが楽しい。前傾姿勢な分、フロントに荷重しやすく、より積極的にマシンを操るような乗り方がしっくりくるのだ。

ワインディングのコーナーを曲がるのが楽しく、何度も往復したくなってしまう

ワインディングのコーナーを曲がるのが楽しく、何度も往復したくなってしまう

高速道路に乗ると、乗り味の差はより明確に。上体を伏せればカウルで風圧を避けられるCBR650Rは、やはり高速シーンでの快適さが違う。また、エアクリーナーボックス内に装備された気圧を高める機構により、エンジン回転が高まるとラム圧が上昇し、吹き上がりがより鋭くなるのも気持ちいい。

カウルを装備しているので、前傾すれば風圧を体に受けずに走れる

カウルを装備しているので、前傾すれば風圧を体に受けずに走れる

試乗を終えて

648ccという排気量は、ある意味“中途半端”。たとえば、レースのカテゴリーの場合、600ccであれば世界選手権も開催されているが、648ccはどのクラスにも該当しない。つまり、CB650RとCBR650Rは純粋にストリートを楽しむために生まれたマシンだと言える。では、なぜレースなどで一般的な600ccではなく、648ccとされているのか。その意味は、実際に乗ってみるとわかる。わずか50cc程度の差ではあるが、600ccクラスのマシンに比べると低回転のトルクが豊かで発進時や極低速時などに走りやすいのだ。そして、600ccのレースを意識したマシンと比べると低回転から回り方が気持ちよく、ゆっくり走っていても4気筒エンジンの爽快感を味わえる。正直なところ、筆者は排気量の大きなストリートマシンでは4気筒は必要ないのでは?と思っていたのだが、今ではずっと乗っていたいほど魅了されている。

最後に、CB650RとCBR650Rのどちらを選ぶかを考えてみよう。街乗りをメインに使うのであればアップライトなポジションのCB650Rが乗りやすく、気持ちいい。しかし、高速道路での移動や、ややハイスピードなワインディングを走るのであれば、フルカウルのCBR650Rのほうが快適だ。ただ、どちらのマシンも苦手なシーンがあるわけではないので、デザインやライディングポジションの好みで決めても後悔することはないだろう。それくらい完成度の高いマシンだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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