レビュー
ディーゼルエンジンとガソリンエンジンを乗り比べ!

2.2Lディーゼルターボ搭載の三菱「エクリプスクロス」をオフロードで試乗!

三菱自動車のコンパクトSUV「エクリプスクロス」のラインアップに、2.2Lクリーンディーゼル直噴ターボエンジン搭載車が追加された。

今回、2019年6月13日に発売された三菱「エクリプスクロス」2.2Lクリーンディーゼル直噴ターボエンジン搭載車を試乗した

エクリプスクロスは、三菱の強みである「SUV」と四輪駆動システム「S-AWD」が組み合わされたクルマだが、そこへSUVとの相性がいいディーゼルエンジンが搭載されることで、魅力がさらに増している。今回、ディーゼルエンジンを搭載したエクリプスクロスに試乗して、特設オフロードコースと一般道を試すことができたので、その印象をお届けしよう。

エクリプスクロスは、三菱自動車における重要な世界戦略車

少しだけ、エクリプスクロスについて振り返っておこう。エクリプスクロスは、競争の激しいコンパクトSUVセグメントで戦うために、従来の三菱自動車の強みであるSUVとしての基本性能の高さや、S-AWCに代表される走行性能の高さといった部分だけでなく、新たな挑戦として「スタイリッシュクーペ」の世界観を取り入れることを目標として開発された。

三菱「エクリプスクロス」は、フロントフェイスに三菱のアイデンティティ「ダイナミックシールド」を採用し、スタイリッシュなクーペフォルムとSUVの機動力を融合させたクロスオーバーSUVだ

エクリプスクロスのデザインは、スタイリッシュなクーペスタイルを追求しつつも、SUVとして最低地上高やアプローチアングル、デパーチャーアングルがしっかりと確保されている。さらに、後方視界のよさや乗降性の向上など、デザインだけではなく実用性を高める様々な工夫が凝らされている。

また、ドライバーの直感的な操作を可能とするために「ヘッドアップディスプレイ」や「タッチパッドコントローラー」など、三菱車として核となる装備を積極的に採用。

ドライブフィールは、4WD車全車にS-AWCが標準装備されたのを始め、構造用接着剤の使用個所を増やすなどボディ剛性の強化に取り組むことで、軽快なハンドリングを実現している。

これらの特徴を備えたエクリプスクロスは、2017年10月の欧州への発売を皮切りにグローバル展開されており、約100の国と地域へ出荷。2019年5月末時点では、世界で19万7,000台が販売されているという。

エクリプスクロスディーゼルにはデリカD:5と同じエンジン、トランスミッションを搭載

日本では、2018年3月に発売されたエクリプスクロスだが、およそ1年と少しが経過した2019年6月、新たにクリーンディーゼルエンジン搭載車がラインアップに追加された。

三菱「エクリプスクロスディーゼル」に搭載されているエンジンは、新型「デリカD:5」と同様の「2.2Lコモンレール式クリーンディーゼル直噴ターボエンジン」。最大トルク380N・mを2,000rpmの低回転から発生させる

搭載エンジンは、2.2Lコモンレール式クリーンディーゼル直噴ターボエンジンで、2019年2月15日に発売された新型「デリカD:5」と同じエンジンが搭載されている。エクリプスクロスの1.5Lガソリン直噴ターボエンジンとの比較では、低速域からレスポンスよく立ち上がるトルクが特徴的なガソリンエンジンに対して、ディーゼルエンジンでは約1.6倍ものトルクを発生。ディーゼルエンジンは、低回転からの豊かなトルク特性が特徴で、走り出しや追い越しなどでもストレスフリーな加速が得られるなど、ディーゼルエンジンならではの走りが味わえる。

エクリプスクロスやデリカD:5に搭載されているディーゼルエンジンは、従来の三菱車に採用されていた「4N14型」をベースとし、時代が求める環境性能に対応しながら性能と効率向上を両立させたエンジンへと改良が施されている。また、欧州の排出ガス規制に対応するため、排ガスの後処理システムとして「尿素SCRシステム」が採用されている。

ディーゼルエンジンに搭載されるトランスミッションは、デリカD:5にも搭載されている8速ATだ。従来型の4N14型では6速ATであったが、6速から8速へ多段化することで、従来型に対してローギアではより低めに設定することで力強い発進加速を、また高速域ではトップギアのハイギヤード化が可能となることで燃費性能の向上に寄与している。また、変速時のエンジン回転数の変速幅が小さくなることでシフトショックが抑えられ、ドライバビリティも向上している。

過酷なオフロードコースを拍子抜けするほど簡単にクリアしていく

では、試乗コースへと乗り出してみよう。今回は、前述のとおりオフロードコースとオンロードコースの2パターンで試乗することができたのだが、まずはオフロードコースへ。

「デリカD:5」のオフロードの走破性はミニバンでNo.1と言っていい

「デリカD:5」のオフロードの走破性はミニバンでNo.1と言っていい

最初はコースの状況を確認するために、インストラクターの運転によってデリカD:5でコースを一周する。オフロードコースはかなりハードで、モーグルなどでは片輪が確実に浮いてしまう。また、急坂の上り下りでは、フロントウィンドウには空しか映らなくなるようなシーンもあった。そんななか、インストラクターの駆るデリカD:5は難なくクリアしていく。よく考えると、デリカD:5はミニバンなのだ。そんな車高の高いクルマが、苦も無く厳しいオフロードコースを走破できるというのは、それだけ三菱のS-AWCの実力が高いということだろう。それが、よりコンパクトなエクリプスクロスに搭載されているというのだから、期待は高まっていく。

そして、エクリプスクロスディーゼルの運転席に乗り込み、シートポジションを決めながら各部の説明を受ける。エクリプスクロスの「S-AWC」には、走行条件に合わせて「オート」「スノー」「グラベル」の3種類の走行モードを選択することができ、今回はオートを選択した。これは、本来はグラベルを選択すべきだったようだが、試乗会スタッフに確認したところオートでいいとのことだったので、それで走り出すことになった。

三菱自動車 EV・パワートレイン技術開発本部 ドライブトレイン開発部 ドライブトレイン制御開発の小笠原友栄氏に、S-AWCのオート、スノー、グラベルの差について伺ったところ、「前後の駆動配分を変更している」とのこと。ちなみに、スノーでは雪道を想定しておよそ80対20から45対55に、グラベルはダートや深雪の際に安全に走れるようトルク配分を70対30から40対60に設定しているそうだ。また、オートでは80対20から55対45まで配分するので、ある程度は雪道や深雪でも走れるとのことだが、オートはあくまでも乾燥舗装路を想定したモードなので、できれば切り替えてもらいたいそうだ。今回のようなシーンだとグラベルがふさわしく、よりリアに多く配分をするので、そのトラクション制御とブレーキAYCによる操舵性が体感できたようだ。

なお、ディーゼルに関してはオートの“味付け”を変えている。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりもトルクが増しているため、前輪がスリップしやすくなるからだ。それをガソリンエンジン並に抑えるために、前輪への伝達トルクを10%ほど増やしている。その結果、走りやすくなっているはずとのコメントだった。

今回は、前述のとおりオートで走り出す。デリカD:5の印象とともに、三菱というブランドの四駆性能の高さから、多少の無理は利いてくれるだろうという安心感もあるのだが、いっぽうで今回のオフロードコースはかなりハードだった。

試乗会当日は、多少雨が降ったことによって深く掘れてしまった泥濘が乾き始め、その深みへ下手にはまるとボディをいじめてくるような状況で、かなり神経を使う。さらに、エクリプスクロスには坂道を下る際に車速を維持してくれる「ヒルディセントコントロール」が備わらないのも不安要素のひとつだった。

まずはお手並み拝見と、ゆっくりとコースに乗り出した。そこで気付かされたのは、すべてのコントロールがしやすいということとともに、乗り心地のよさだった。実は、このひと言ですべてが完結してしまうのだが、乗り心地について細かく述べてみたい。

悪路を走破するうえで重要なのは、前後左右のタイヤへのトルク配分と、サスペンションストロークだ。しっかりとサスペンションをストロークさせて、ショックを吸収。かつ、剛性の高いボディでサスペンションを支えることで、乗り心地のよさを確保することは重要だ。エクリプスクロスディーゼルは実に乗り心地がよく、衝撃に備えて体を固く強ばらせていても、「あれ?」と拍子抜けするくらいしなやかに凸凹を吸収していく。これは、エクリプスクロスディーゼルの後に試乗したデリカD:5でも同様だった。

また、車重がデリカD:5よりも軽いため、ほとんどのコースで走りやすく感じた。特に、すり鉢状のコースでは、頂上から下り始めながら左にステア。かなり急な斜面を半周して、そこから上によじ登るようなルートが設定されていた。デリカD:5は、車体が斜めの状況から登っていく際にかなりの車重を感じたのだが、エクリプスクロスディーゼルは実に軽く、やすやすとすり鉢コースをクリアしていったのは印象的だった。

また、エクリプスクロスはアクセルとブレーキのコントロールがしやすい。どのくらいアクセルペダルを踏むと、どのくらいのトルクが発生するのか。あるいは、どのくらいブレーキペダルを踏むと、どのくらいの減速Gが発生するのか。それらが、エクリプスクロスディーゼルでは手に取るようにわかるのだ。したがって、急な登りや下りでも、自信を持ってペダル操作が可能になる。特に急な下り坂では、下手にロックさせてしまうとずり落ちるしかないのでブレーキはかなり慎重になるのだが、エクリプスクロスディーゼルではぎりぎりのコントロールが実に容易であったのには感銘を受けた。また、登りにおいてもディーゼルエンジンのトルクの出方が自然なので、コントロールしやすい印象であった。

そして、交互に土で山を築き、その中心を走破するモーグルコースでは、たとえば前輪が山を越える際、後輪は谷にはまり浮いてしまう。そこでもエクリプスクロスディーゼルは不安定さを一切感じさせず、あっさりとコースをクリアしていった。

オフロードを試乗していて、2つだけ気になる点があった。ひとつは、フロントウィンドウの1/3くらいのところにデフロスターが映り込んでしまい、前方の路面状況を把握するときに見えにくくなってしまうのだ。これは一般道でも同様だったので、ぜひ気を使ってほしいところだ。

もうひとつは、シートのホールド性だ。どうしても腰回りが動いてしまうので、悪路での走行などを考慮して、もう少しホールドしてほしいところだ。

ここからは、一般道へ試乗テストに出てみよう。一般道では、少しだけガソリンエンジン搭載車も試乗することができたので、ディーゼルエンジンとの差異を含めて述べてみたい。

まず、アクセルを踏み込んでみると、エンジンのスムーズさはガソリンエンジンに分があるが、ぐいぐいと引っ張っていくようなトルクの高さを生かした活発な走りはディーゼルエンジンだ。ガソリンエンジンのほうが軽快さを感じられ、コーナーリング時の回頭性もいい。対するディーゼルエンジンは、どっしりと落ち着いた走りを味わうことができる。

トランスミッションは、ガソリンエンジンがCVTであるのに対してディーゼルエンジンはトルコンATという違いはあるが、どちらもそれほど違和感はなく極めて自然だ。

静粛性に関してはガソリンエンジンのほうが優秀で、ディーゼルエンジンは他車と比較しても少々ノイズが耳につく。しかし、前述のとおりトルクを生かした走りは圧倒的で、停止時から一気にアクセルを踏み込んでスタートすると、豪快な加速が味わえた。

悪路で少々物足りなかったシートだが、オンロードでは非常に快適だ。シートの厚みを感じ、体を包んでくれるような心地よさがあった。また、乗り心地はもう少し、特にばねの縮み方向でのしなやかさがほしいという気もしたが、悪路走破性との両立を考えれば許容範囲だと感じられる。全体としてバネ下の重さはあまり感じられず、多少うねった路面でもまったくばたつくことはないので、タイヤサイズとシャーシのバランスがすごく取れていると言えよう。

エクリプスクロスのディーゼルエンジン投入の理由について、商品戦略本部CPSチーム(C&D seg1)の山慶之さんに話を聞くことができた。

「エクリプスクロスをワールドプレミアしたジュネーブショー2017のときから、ディーゼルエンジンを開発すると宣言していました。しかし、ほぼ同時期に欧州でディーゼル問題が勃発し、ディーゼルに対する逆風や市場ニーズの低下などの変化が起きてしまいました。我々三菱自動車として潤沢なリソースを持っているわけではありませんし、開発陣も人数が少ないなかでやっています。そこで、ディーゼルを最初に出そうとしていたのですが、はたしてディーゼルはいま出すべきなのか、まずはガソリンから開発をしたほうがいいのかを議論し、日本国内においてもガソリンを先行投入することを決めたのです。いったんこれでスタートし、ある程度欧州当局の基準値が明確になったところで、満を持して改めてディーゼルを投入しようとしました。それが、今だったのです」と、その経緯を説明する。

そして、あえて日本市場にもディーゼルを投入した理由として、「日本のユーザー層などを分析すると、三菱に対してディーゼルを期待して待っているお客様が一定数おられます。このニーズに応えたい、というのがひとつです。また、欧州向けに開発して環境対応させたエンジンを日本向けに転用することは、比較的簡単です。かつ、日本においては『エクリプスクロス発売時からディーゼルが出るといっていたのに』とか、『いつ出るのか』といった問い合わせがずっとありましたので投入を決めました」と言う。

生真面目な三菱が、満を持して登場させたエクリプスクロスディーゼル。もし、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンのどちらを選ぶかで迷ったならば、個人的にはSUVというクルマの性格を考えてディーゼルエンジンを推したい。しかし、エンジンを回して楽しく、かつフロント荷重の軽さを生かしてワインディングも楽しみたいというのならば、間違いなくガソリンエンジンだ。ディーゼルエンジンは、よりどっしりした落ち着いた走りで、たとえば大人数でどこかへ出かけるようなシーンなどにふさわしいように感じた。

いずれにしても、エクリプスクロスディーゼルは悪路走破性を含めた走行性能に大きな不満は感じなかった。あとは、安全運転支援システムのレベルがどうなのか、また取り回しを含めて扱いやすさはどうなのかについて、今回ほとんど試すことができなかったので一辺倒におすすめというわけではないが、今回の試乗においては他社のコンパクトSUVを圧倒する、魅力にあふれたクルマであることがじゅうぶんに伝わってきたことは間違いない。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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