レビュー
走りから質感の高さまで、もはや「軽」を超えた!

“軽とは思えない” 新型「N-WGN」に乗って感じたレベルの高さ

ホンダの軽ハイトワゴン「N-WGN」がフルモデルチェンジされて、2019年8月9日に発売を開始した。それを機に、わずかな時間ではあるが新型N-WGNを試乗することができたのでレポートしよう。

発売後、わずか2週間で2万台を受注

ホンダ 新型「N-WGN」と「N-WGNカスタム」

ホンダ 新型「N-WGN」と「N-WGNカスタム」

まず、新型N-WGNの概要について触れておこう。背が高く、車内が広い軽自動車「軽ハイトワゴン」と呼ばれるカテゴリーは、ホンダ「N-BOX」などが属する軽スーパーハイトワゴン系と、N-WGNなどが属する軽ハイトワゴン系を合わせると、軽自動車全体のうち8割を占める重要なカテゴリーだ。販売好調なN-BOXは、同セグメントでナンバーワンを獲得。いっぽう、N-WGNは2013年のデビュー当時こそ好調であったが、近年では他車の商品強化の影響を受けるなどによって、同カテゴリーで5位と苦戦を強いられていた。

そこで、新型N-WGNでは「(ターゲットユーザーを)毎日クルマを使う、1人ひとりのお客様ととらえ、安全性能や洗練されたデザインを重点的に商品強化し、お客様の日々の生活を豊かに、パーソナルな日常を心地よくしてくれるクルマを目指して開発しました」と、本田技研工業 商品ブランド部 商品企画課の矢野達也さんはコメントする。

新型N-WGNの発売から2週間たった時点での受注状況は、およそ2万台。グレードは、ノーマルではLグレード、カスタムではLグレードとL・ターボと、上位グレードが選ばれる傾向にあるという。

また、新型N-WGN購入者の声としては、「従来型と比較して、特に安全性能や日常の使い勝手といった部分が好評です」とのことだ。

体が包み込まれるようなシートは、腰に負担がかからず快適

では、さっそく走り出してみよう。新型N-WGNの試乗会は、神奈川県川崎市の工場エリアで開催された。

最初に試乗した新型N-WGNは、標準車の「L」グレードだ

最初に試乗した新型N-WGNは、標準車の「L」グレードだ

最初の試乗車は、標準車の「L」グレードだ。室内に乗り込みシートに座ると、ふわっとした上質な触感と高いクッション性で、じんわりと体が包み込まれるような感覚を覚える。若干、座面の前後長が短く感じるものの、それ以外は満足がいくものだ。また、こういったやわらかいシートは、長く座ると腰が痛くなることがあるが、今回の試乗時間(約1時間程度)ではそのような兆候すらまったく感じられず、快適に試乗することができた。

ホンダ 新型N-WGNのフロントシート

ホンダ 新型N-WGNのフロントシート

新型N-WGNのシートについて、本田技術研究所 オートモービルセンター 開発責任者の古舘茂さんは、「体を包み込んで、安定感のある運転席を目指しました。その構造は、シート下の構造をパン構造からバネ構造へと変更。また、シート表皮はより伸びるようにして、中のウレタン密度を若干上げることで、座り始めのところはよりソフトに、そして底付き感がないようなシートを作り上げています」と説明してくれた。また、「クッション部分と腰の部分をしっかりとホールドして保持できるような、安定感のある仕様になっています」とのことで、それらが十分に効力を発揮しているのだろう。

また、ステアリング調整がチルト(上下方向)だけでなく、テレスコピック(前後方向)が可能となったこともうれしい装備だ。これも、毎日快適に運転しやすいようにという考え方のもと、ドライビングポジションが見直された結果だ。古舘さんは、「小柄な方から大柄な方まで、快適な姿勢をとれるようにしています」と述べた。

新型N-WGNでは、さまざまな体型の方が快適に乗ることができるよう、細かく開発、設定されている。当然のことながら、167cmの筆者もまったく不具合を感じることなくドライビングポジションを取ることができた。さらに、大柄な方は屋根に頭がぶつからずに座れるように、小柄な方は足が地面に届くように、といった乗降性が考慮されたうえで、シートのヒップポイントが設定されている。

ホンダ 新型N-WGNのリアシート

ホンダ 新型N-WGNのリアシート

同時に、リアシートも高齢の方の乗車が多いと考えられることから、ホンダが独自で作った「高齢者再現キット」を使った研究がなされた。その結果、高齢者はいったんシートに腰をかけてから乗り込むことが多いことが判明したので、腰の位置の開口を少しでも広げる対応をしているとのことだった。

「これが軽自動車!?」と思ってしまうほどの仕上がりのよさ

ホンダ 新型「N-WGN」の試乗イメージ

ホンダ 新型「N-WGN」の試乗イメージ

新型N-WGNのエンジンをかけ、アクセルをゆっくりと踏んでスタートする。その第一印象は、軽自動車にもかかわらず乗り心地がしなやかで、音が静かということだった。これまでの軽自動車では感じたことのない、上質な仕上がりだ。

それと同時に感じたのは、視界のよさだ。Aピラーが適度に細く、フロントワイパーがウインドウ下段にかからないように配されているため、視界のじゃまにならないのだ。リアに関しても、ワイパーモーターが下に隠されていることで後方視界もいい。ただし、ドアミラーがドアパネルにマウントされず、ピラーに配置されてしまったのは惜しい。せっかくここまで視界にこだわったのであれば、特に右折時の死角を極力なくすためにドアマウントにしてほしかった。

さて、試乗会会場からわずか数分で高速道路の入り口に到着。ETCレーンを徐行で抜け、一気に本線に流入する。多くの軽自動車では、こういったシチュエーションではエンジンがうなり、その割に加速が追い付かないという現象に直面するのだが、N-WGNは決してそんなことはない。CVTの悪癖である、エンジン回転が上がって、そこから速度が追い付いてくるということはまったくなく、通常のAT車のようにアクセルを踏んだだけ、スムーズに加速していくのだ。高速道路の上り坂においても同様で、非常にパワフルでぐいぐいと登っていくのは、ターボではない軽自動車ではこれまで経験したことがないような力強さだった。

高速道路では強めの横風が吹いていたのだが、その際には若干横風に弱いことが露呈した。しかし、新型N-WGNの「レーンキープアシスト」を使うことで、多少風であおられてもクルマは車線内を保持してくれて、ドライバーは横風に注意することなく軽くステアリングを握っているだけなので、非常に走行は楽であった。

ロードノイズは静かで、特に高速道路における静粛性は軽自動車としては驚くべきレベルに達している。また、乗り心地に関しても、荒れた路面での突き上げはたしかにあるものの、決して不快なほどではなく、さらにボディの弱さをまったく感じないので、安心して高速道路を走行することができた。

また、渋滞路で「アダプティブクルーズコントロール」を使用してみたが、若干ブレーキングが急だと感じるときがあるものの、停止寸前の挙動はまるで人間がブレーキペダルを操作しているようにスムーズで、再発進に関しても急にスタートするような挙動もなく快適だった。

市街地の走行もスムーズで快適

ホンダ 新型「N-WGN」の試乗イメージ

ホンダ 新型「N-WGN」の試乗イメージ

高速道路から一般道へと降りて、混んだ市街地を走り始めても、高速道路と同じようにスムーズさや乗りやすさが際立っていた。アイドルストップからのエンジン再始動も非常にスムーズで、また、便利な「オートブレーキホールド」が装備されたことで、疲労を感じずに市街地を走ることができる。ただし、このオートブレーキホールドは一度エンジンを切ると、デフォルトではオフとなってしまうので注意が必要だ。たとえば、コンビニに寄った後にふたたび走り始めたのち、ついついオフになったことを忘れ、ブレーキペダルから足を離し、アイドルストップ中のエンジンが再スタートして驚くことが何度もあった。

ホンダ 新型「N-WGN」のインパネ

ホンダ 新型「N-WGN」のインパネ

インパネ周りの使い勝手は、とてもいい。助手席前のトレイにはわずかに仕切りが設けられており、置いたものが横に飛んでいくことを防いでくれる。また、エアコン関係は物理スイッチが設けられており、場所さえ覚えてしまえばブラインドタッチも容易だ。ただし、使い勝手をさらに向上させるためにも、もう少しサイズを大きくしてもらえるとなおいいだろう。

「ターボ」のパフォーマンスの高さは、これまでの軽の基準を超える

次に、新型N-WGNのターボを試してみる。テスト車はカスタムの「L・ターボ」で、15インチタイヤ(これ以外は14インチ)を履いていた。

ホンダ 新型「N-WGN」ターボモデルの試乗イメージ

ホンダ 新型「N-WGN」ターボモデルの試乗イメージ

走り始めると、標準車で十分だったと感じたパワーが物足りなくなるくらいの力強い加速とスムーズさで、そのパフォーマンスの高さはこれまでの軽の基準を軽く超えるほどの領域に達していた。

サイズアップしたタイヤのデメリットはあまり感じられず、高速道路や一般道を含めてステアリングにはダイレクト感のあるフィードバックが感じられるとともに、高速道路ではしっかりと安定した走りが感じられた。特にカスタムのL・ターボは、リアにもスタビライザーが装備されるため、なおさらそのように感じられたのであろう。

標準車の項でも述べたが、ボディがしっかりしているのは特にターボのほうだった。つまり大径タイヤや少し固められた足などによって、もしボディが弱ければその影響がもろに乗員に伝わってくるのだが、このN-WGNに関してはそれがまったくないのだ。たしかにインチアップしたタイヤからくる硬さは感じられるものの、サスペンションが動いてショックを吸収しているさまがよくわかり、ボディもしっかりとしていることが伝わってきた。

もし、15インチになったことでデメリットをあえてあげるならば、14インチよりも過大になったロードノイズくらいだろう。

すさまじくよくできた軽自動車

新型N-WGNを今回の時間内でテストしたかぎりでは、すさまじいまでによくできた軽自動車、それ以上に「軽」という言葉を外してもいいくらいによくできた実用車と言っていいくらいだろう。

どんなシーンでも、きわめてスムーズで快適。必要に応じてパワフルで、安定した走行が可能だ。エクステリアデザインは好みが分かれるだろうが、インテリアは万人に好まれるデザインと言える。

高速道路でのコーナーリングもとても安定しており、トランスミッションとエンジンとのマッチングもよく、とてもリニアにトルクが出てくるので軽自動車とは思えない走りが楽しめる。

ホンダ 新型「N-WGN」と「N-WGNカスタム」

ホンダ 新型「N-WGN」と「N-WGNカスタム」

では、標準車とカスタムではどちらがおすすめだろうか。デザインがお好みのほうで、とお答えするしかないが、個人的には標準車を推したい。その理由は、標準車のほうがシンプルでN-WGNのよさが表現されているデザインだと思うからだ。

また、ターボかNAエンジンかに関しては、高速道路を積極的に使うのであればターボ、そうでなければ標準のNAエンジンで十分に満足感が得られるだろう。また、高速道路における走行では、15インチタイヤやリアのスタビライザーによる走行安定性から、必然的にカスタムL・ターボになってしまう。したがって、本音をいえば標準車のターボにリアスタビライザーが装着されればベストなのだが……。読者のみなさんも、ぜひ一度試乗してみることをおすすめしたい。きっと、新型N-WGNの完成度の高さに驚くはずだ。

[Text&Photo:内田俊一]

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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