バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
どちらを買うか迷っている人が多い「MT-09」との違いも紹介

地味に見えて超楽しいヤツ! 軽快な操作性と強力なダッシュ力のトリコになるヤマハ「MT-07 ABS」


ずっと乗ってみたいと思いながら、なかなか試乗の機会がなかったヤマハ「MT-07 ABS」。2014年に初期型が登場し、モデルチェンジされたのは2018年だが、乗りたい気持ちが抑えられず、ついに試乗にこぎつけた! 実際に乗った人の多くが高く評価するMT-07の魅力を探ってみよう。

隠れた人気車種「MT」シリーズ

カウルのないネイキッドタイプでありながら、近未来的でスポーティーなルックスとすぐれた運動性能を備える「MT」シリーズは、現行のヤマハバイクの中核を担う存在だ。ラインアップは、排気量250ccクラスの「MT-25」、320ccの「MT-03」、688ccの「MT-07」、845ccの「MT-09」、997ccの「MT-10」の5種類。4気筒と2気筒のいいとこ取りを目指した3気筒エンジンを搭載するMT-09や、同社のレーシングマシンにも採用されるクロスプレーン(不当間爆発)4気筒エンジンを搭載し、160PSというハイパワーを誇るMT-10など、個性の強いマシンが揃っている。

今のMTシリーズの人気を作るきっかけとなったMT-09。845ccのエンジンは現状では国産唯一の3気筒で、のちに登場した同社の「NIKEN」や「XSR900」にも搭載される。その強烈な加速感に魅せられるライダーも多い

<関連記事>ライダーの理想をかなえてくれるバイク! 一体感がたまらない新デザインのヤマハ「MT-09 ABS」

同社のスーパースポーツモデル「YZF-R1」譲りのクロスプレーンエンジンを搭載したMT-10。不当間爆発の4気筒エンジンも、国産の市販車用エンジンとしては唯一のものだ

このような中において、MT-07に搭載されているエンジンは688ccの2気筒で、最高出力73PSと、このクラスでは平凡な数値。スペックだけ見る分には突出したところはない。デザインがクラシックであれば、そうしたテイストが好きな層に支持されるのもうなずけるが、MT-07のデザインはほかのMTシリーズ同様に近未来的でアグレッシブなもの。一見、中途半端ともいえるマシンなのだが、実は人気が高い。日本国内でもファンは多いが、もっとも人気を集めているヨーロッパでは同クラスで高いシェアを誇り、2014年に初期型が登場して以来、4万台以上を販売している。この人気は、2018年に前後のサスペンションを新設計し、さらに運動性能を高めたモデルチェンジが行われても健在だ。

突出した部分はない車体まわり

MT-07が支持される理由を探るべく、車体まわりにも目を向けてみた。差し色にオレンジと朱色の中間のような「バーミリオン」カラーを使っている外観は目立ち度が高いが、装備はかなりスタンダードな構成だ。フロントフォークは近年のスポーツモデルでは一般的な、見るからに剛性の高そうな倒立式ではなく、太さ41mmの正立式。ブレーキもダブルディスクだが、スポーツ性を強調したモデルに装備されるラジアルマウントではなく、通常のマウント方式となっている。メーターにおいても、デジタル式を採用してはいるが、走行モードの切り替えやトラクションコントロールなどの電子制御機能は非搭載で、クイックシフターやスリッパークラッチなども装備されていない。

「バーミリオン」と呼ばれるカラーの前後ホイールが目を引く。車体サイズは2,085(全長)×745(全幅)×1,090(全高)mm

このクラスのスポーツバイクとしては決して太くない正立式のフロントフォークを採用

このクラスのスポーツバイクとしては決して太くない正立式のフロントフォークを採用

ダブルで装着されるフロントブレーキも流行りのラジアルマウントではなく、一般的なマウント方法。タイヤサイズは120/70ZR17

リアタイヤのサイズは180/55ZR17。ブレーキは一般的なシングルディスク

リアタイヤのサイズは180/55ZR17。ブレーキは一般的なシングルディスク

270°クランクによる不等間爆発の2気筒エンジンは73PS/9,000rpmの最高出力と68Nm/6,500rpmの最大トルクを発揮。数値的には特筆するほどパワフルではない

MTシリーズのイメージを受け継ぐフロントフェイスだが、シリーズの中では尖った印象は薄い

MTシリーズのイメージを受け継ぐフロントフェイスだが、シリーズの中では尖った印象は薄い

エアスクープを備えたタンクまわりのデザインはなかなかアグレッシブな印象だ

エアスクープを備えたタンクまわりのデザインはなかなかアグレッシブな印象だ

絶妙のバランス! 乗りやすさに感動

2気筒エンジンを搭載した車体はかなりコンパクト。車両重量は183kgあるが、押して歩くのも軽快で、排気量的には大型バイクに属するものの、中型バイクのような取り回しのよさがある。タンク長があるので、着座位置はロードモデルとしては一般的なものだ。

身長175cmの筆者では、両足のかかとがギリギリで接地するかしないかくらい。シート高は803mmとやや高めに感じる数値だが、このクラスとしては足つきは良好だ。ただ、シートとステップの位置関係の問題で、ステップに足が当たることがあった

前方が絞り込まれたシートは、足つきのよさにも貢献。小柄な人でも乗りやすそうだ。タンデムシートは小さめなので、長時間の2人乗りはきついかもしれない

ハンドル幅も広すぎず、街乗りがしやすそう。中央にデジタルメーターを配置したコックピットは、シンプルだが視認性は高い

走り出しても軽快な印象はそのまま。コンパクトな2気筒エンジンは単体での重量が軽いだけでなく、3気筒や4気筒エンジンに比べて内部で回転するパーツが少ないため、慣性モーメントが少なく、左右の倒し込みがしやすい。大型バイクというと車重だけではない操作性の重さをハードルに感じてしまう人もいるかもしれないが、MT-07についてはその心配は無用だ。狭い路地の曲がり角などでも、スリムな車体と軽快な操作性で緊張感なく楽しめる。この特性には、エンジンと車体がコンパクトであることに加えて、剛性の高過ぎない足回りを採用していることも効いているのではないだろうか。前後のサスペンションは少ない荷重でもよく動くので、スピードの出ていない街乗りでも十分に仕事をしてくれる。

昨今の大型バイクとしては突出した部分はないが、扱いやすく乗りやすい

昨今の大型バイクとしては突出した部分はないが、扱いやすく乗りやすい

ここまで、コンパクトさや乗りやすさばかりを言及してきたが、少し大きめにアクセルを開けるとMTシリーズらしい過激な一面が顔を出す。68Nm/6,500rpmという最大トルクは決して大きい数値ではないものの、270°クランクを採用した2気筒エンジンはトラクション(地面に駆動力を伝えること)がよく、加速はかなり元気がいい。低回転から高回転までフラットなトルク特性なため、どんな回転数からでもアクセルをひと開けするだけで強烈なダッシュ力を味わえる。低回転では270°クランクらしい鼓動感が心地よく、6,000回転を超えると回転のスムーズさが増す。それでいて、トルクの谷のようなものもないので、回転数の上昇にともなってリニアな加速感を得られるのだ。軽快な操作感と、このダッシュ力を持ったMT-07は、乗りやすいだけでなく相当“速い”マシンなのだ。

コーナーでの倒し込みは軽快なうえ、強力なダッシュ力も備えているので、公道ではかなり速く、乗っていて楽しい

高速道路も走ってみた。カウルレスのネイキッドモデルなため、スピードを上げると体にかかる風圧は増す。ただ、上体が適度な前傾になるライディングポジションなので、風圧を受けるのがきついと感じることはなかった。6速3,000rpmくらいで巡航していると、エンジンの鼓動感が感じられて実に心地いい。そして、そこからアクセルをひと開けすれば、シフトダウンをしなくても追い越し加速が可能。この、どんな回転数でも必要な時にパワーが取り出せる特性はかなり楽しい。

真横から見ると、ライトの形状やメーターの配置などが空力を意識していることがうかがえる

真横から見ると、ライトの形状やメーターの配置などが空力を意識していることがうかがえる

試乗を終えて

MT-07の評価をするにあたり、排気量がひとつ上のMT-09についても語っておかねばならない。というのも、2つのモデルは3気筒と2気筒という違いはあれど排気量差はわずか157ccしかないにもかかわらず、同年(2014年)に発売されたため、当時からどちらを買うべきか迷っているという声が多いからだ。どちらのモデルにも試乗したことがある筆者が、MT-09と比較しつつ、MT-07を総評する。

【この記事も見ておきたい!】ヤマハ「MT-09 ABS」試乗レポート!

まず、購入を検討する際に気になるのは価格。MT-07のメーカー希望小売価格は72万円(税別)で、MT-09は93万円(税別)と、21万円の差がある。排気量差に比べると大きな差のに感じられるが、これは装備の違いによるところが大きい。倒立フォークを採用し、走行モードの切り替えやトラクションコントロールといった電子制御も備えているMT-09に対し、MT-07には電子制御機能や高価な足回りのパーツなどは装備されていない。しかし、実際に乗ってみると、基本的なバランスがすぐれているため、これらの装備がなくても不満に感じることはなかった。

さらに、着座位置も異なる。やや前方に座る形となり、ハンドルも広めなMT-09はロードスポーツとしては個性の強いライディングポジション。オフロードモデルやモタードモデルに乗り慣れた筆者にとってはMT-09のポジションは好みなのだが、ロードモデルに慣れたライダーからすると違和感を覚えることもあるかもしれない。その点、MT-07は一般的なロードモデルに近いライディングポジションで乗ることができる。

最高出力などはMT-09のほうが上だが、MT-07にはスペックだけでは測れない大きな魅力がある。軽い車体によく動く足回り、そして、どの回転域からでも強力なダッシュが可能なエンジンの組み合わせは、どこを走っても意のままに操ることが可能だ。大きくアクセルを開けた際のパワー感は兄貴分のMT-09に譲るものの、緊張感をともなうMT-09のパワーに対し、MT-07は身構えることなくアクセルを開けていけるので、公道ではMT-07のほうが速く走れるように感じるほどだった。2018年のモデルチェンジで足回りの剛性が高められたことも効いているのか、高い速度域でも不安感はまったくない。大型バイクに慣れていない人には、車体の大きさや扱いきれないほどのパワーが心理的なハードルになってしまう場合もあるが、MT-07はそのハードルが驚くほど低いので、すぐに楽しめるはずだ。「このバイクなら一緒に成長できそう」と感じさせてくれるようなフレンドリーさと、その気になれば兄貴分をしのぐほどの速さを発揮できる実力が、MT-07が人気である理由なのだろう。

乗りやすさの中に秘めた速さを持つMT-07は初心者でも取っ付きやすく、ベテランには改めてバイクに乗る楽しさを味わわせてくれる

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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