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GT-R、スープラ、シルビア……アメリカで90年代「右ハンドル」日本車が超人気の理由

日産 R32、R33「スカイラインGT-R」や、S13、S14「シルビア」、トヨタ A80「スープラ」、スバル「インプレッサWRX」など、1980年代後半〜1990年代の日本車がいま、アメリカで大人気となっています。

2019年11月5日からアメリカのラスベガスで開催されていた自動車アフターマーケットの祭典「SEMA SHOW 2019」でも、80〜90年代の日本車が多くの来場者の注目を浴びていました。その理由のひとつが、「25年ルール」です

とくに最近では、スポーツタイプのクルマのみならず、日産「パオ」や「エスカルゴ」「フィガロ」など、バブル時代に相次いで発売された日産の「パイクカーシリーズ」や、なんと「農場での作業用に使いやすく信頼性が高い」という理由から軽トラにいたるまで、日本車の人気が上昇しているのです。

カナダでは15年、アメリカでは25年で「右ハンドル車」解禁!

日本ではまだ認知度は低いですが、カナダでは製造から15年、アメリカでは25年経過したクルマには、さまざまな優遇制度が適用されます。俗に言われる「25年ルール」というもので、条件を満たしたクルマは衝突実験や保安基準で審査を受けることなく、アメリカでの販売や登録、公道走行などが可能になります。

カナダの「15年ルール」の適用によって登録された、R34「スカイライン」

カナダの「15年ルール」の適用によって登録された、R34「スカイライン」

25年ルールを待たずとも、販売や登録をしない条件で展示用車両としての輸入や、自動車メーカーが各種のテストをするために輸入する場合には右ハンドル車の輸入が認められていますが、もちろんこれらは一般ユーザー向けではありません。

面倒な手続きや実際の衝突試験などなしに、製造から25年経過したクルマは「クラシックカー」として優遇され、アメリカ国内での販売や登録が可能となります。ほぼ同様の条件で、カナダでは15年でルール適用となるため、カナダに住所がある場合はカナダで登録するケースもあるようです。

昨年、2018年に筆者がラスベガスで話を聞いたR34スカイラインユーザーのクルマはカナダ登録で、ブリティッシュコロンビア州のナンバーがついていました。

カナダの「15年ルール」の適用によって登録された、R34「スカイライン」

カナダの「15年ルール」の適用によって登録された、R34「スカイライン」

いまさらですが「JDM」って何?

北米における日本車人気の話や25年ルールのことなどになると、必ず出てくるのが「JDM」という言葉。ここで、改めてJDMについて説明しておきましょう。

JDMとは、「Japanese Domestic Market」の頭文字をつなげたもの。直訳すると「日本国内市場」となりますが、要するに日本独自の仕様や装備、日本的なカスタム手法、また狭義では後述する「25年ルール」でアメリカに入ってきた右ハンドルの日本車のことを指します。

なんと、フロリダにある老舗JDM販売店「MONTU MOTORS」の在庫リストには、「R34顔のR32」が! 日産 R34「スカイライン」が、25年ルールの適用で合法的にアメリカで販売されるまで、あと3年ほど(GT-Rは4年ほど)です。 写真提供:montumotors.com

具体的には、右ハンドル車、オレンジ色のウィンカー、リバースギアに入れると鳴る警告音(トラックでは「バックします〜」のメッセージなど)、小径ハンドル、深リムホイール、水中花シフトノブ、「Pandem」や「ロケットバニー」などでおなじみのリベット留めのオーバーフェンダーなど……。

2019年に解禁となった、1994年式のスバル「インプレッサWRX」。アメリカでは、WRCをはじめとするラリー人気はいまひとつですが、JDMとなれば話は別。アメリカの走り屋たちに大人気! 写真提供:montumotors.com

ほかにもまだまだありますが、意外なものがJDMとして認知されているのには驚きますよね。なお、JDMの対語は「USDM」で、アメリカ独特の仕様(赤いウィンカーやサイドマーカー、5マイルバンパーなど)のことを意味します。

現在までに解禁され、人気となっているクルマにはどのようなものがある?

25年ルールの代表選手と言えば、1989年に発売された日産 R32「スカイライン GT-R」です。アメリカでは、2014年8月1日から25年ルールが適用となり、合法的にアメリカでの右ハンドルのR32 スカイライン GT-Rの輸入・販売・登録・使用が許可されました。(ただし、排ガステストなど各州の規則や車検をクリアする必要はあります)

25年ルール自体は昔からあった制度ですが、アメリカで超人気車種であるR32 スカイライン GT-Rがルール適用となってから一気に認知度が上がり、ほかの日本車にも注目が集まるようになったとも言えます。

JDMの中でも特に高い人気を誇るのが、日産 R32「スカイライン GT-R」(右)とR33「スカイライン GT-R」の2台です。 写真提供:montumotors.com

ところで、なぜR32、R33スカイライン、とくにGT-Rの人気が25年ルールで異常なまでの人気を博しているのでしょうか。これは、クルマ自体の魅力ももちろんありますが、R32もR 33もR 34も、アメリカでは「新車時に販売されなかった」ことが理由です。

そもそも、アメリカのカスタム&チューニングシーンで日本車の人気が拡大し始めたのは、90年代に始まるスポコン(スポーツコンパクト)ブームがあります。さらに、そこからの流れで多数の日本車が登場する映画「ワイルド・スピード」の大ヒットも大きく影響しています。

2001年に1作目が公開された映画ワイルド・スピードシリーズの大ヒットによって、アメリカのクルマ好きたちは80〜90年代の日本車に注目するようになり、やがて熱狂的なJDMフリークが多数生まれることになったのです。

アメリカで右ハンドルの日本車は「神」

近年はさらに、アメリカで販売されていたトヨタ「A80スープラ」やホンダ「シビック」「インテグラ」など、わざわざ25年ルールで解禁になるのを待って、日本から輸入された中古の右ハンドル車に乗る人も増えています。一体、なぜそんなことを?手間と時間とお金を掛けて、右ハンドル車に乗るのでしょうか。

「日本から輸入された、右ハンドルの日本車にこそ価値がある」と、アメリカの若者たちは話します

「日本から輸入された、右ハンドルの日本車にこそ価値がある」と、アメリカの若者たちは話します

これについて、若者たちが集まる集会で聞いてみたところ「JDMファンにとって、右ハンドルの日本車に乗ることは最高のステイタス。オーナーは『神』と崇められる(笑)。それくらい、すばらしいことなんだ。同じ車種でも、アメリカで中古車となった左ハンドルの日本車よりも、25年ルールで日本から輸入された右ハンドル車のほうが何倍も価値がある。熱狂的なJDMファンは、25年という長い時間、日本人オーナーによって所有されてきた、日本の道路を走ってきたというだけで感動だよ。お金では買えない、途方もない価値があるんだ」

右ハンドル車オーナーは「神」……!私たち日本人にとってはあたりまえのことが、アメリカではここまでの価値を生んでいるとは驚きです。こんなに愛され、熱望されて、アメリカに中古車として輸出される日本車が誇らしく思えてきますよね。

加藤久美子

加藤久美子

日刊自動車新聞社に入社し、自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。認定チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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