レビュー
クラス上の乗り心地と後席の広さを手に入れた

走りも居住性も大きく変わった! アウディ 新型「A1 Sportback」に試乗

アウディのコンパクトハッチバック「A1」が2代目に進化して、2019年11月25日より販売開始された。先代のA1は、3ドアのA1と5ドアの「A1 Sportback」の2つのラインアップであったが、新型A1は5ドアのSportbackのみとなる。今回、そんな新型A1 Sportback(以下、新型A1)の試乗会が開催されたので、その第一印象をお伝えしよう。

2019年11月25日に発売された、アウディ 新型「A1 Sportback(35TFSI)」の試乗会が箱根で開催された

2019年11月25日に発売された、アウディ 新型「A1 Sportback(35TFSI)」の試乗会が箱根で開催された

■アウディ 新型A1 Sportbackのグレードラインアップと価格
35 TFSI advanced:3,650,000円
35 TFSI S line:3,910,000円

初代A1は、グローバルで90万台以上、日本でも2011年に導入されて以降3万台以上が販売されて、人気を博した。「高いボディ剛性や洗練されたデザインなど、アウディらしさを凝縮したクルマでした」と振り返るのは、アウディジャパン マーケティング部 プロダクト&リテールマーケティング部 プロダクトマーケティングの宮本夏音さんだ。そして、新型A1もその点を踏襲したうえで、「価値観の多様化やデジタル化のニーズなど、変化に対して柔軟に対応したクルマです」と紹介する。

新型A1の特徴は、大きく3つ。まずひとつ目は、エクステリアとインテリアデザインの品質のよさ。2つ目は、先代モデルよりも広くなった室内空間。そして最後は、インフォテインメントシステムやアシスタンスシステムなどのデジタル化だ。

まず、デザインは「アウディスポーツクワトロ」をモチーフにしており、特にフロントから見たときのワイド&ローなデザインや、シングルフレームグリルの上の三分割のスリットなどのモチーフが特徴的だ。さらに、太くて直線的なCピラーなども、アウディスポーツクワトロのイメージを踏襲している。

アウディ 新型「A1」のフロントイメージ

アウディ 新型「A1」のフロントイメージ

アウディ 新型「A1」のリアイメージ

アウディ 新型「A1」のリアイメージ

室内の広さは、全長が55mm長くなり、さらにオーバーハングを短くしたことでホイールベースを95mm延長。それにより後席のレッグルームを大幅に拡大しているほか、パッケージングが見直された。また、ルーフラインを下げることなく後方に延長したことで、ヘッドクリアランスも十分に確保されている。

全長とホイールベースの拡大によって、走行安定性が高められているほか、後席のレッグスペースが大きく拡大され、居住性を向上させている

また、ラゲッジ容量は先代より65リットル拡大して、335リットルとなった。さらにリアシートを倒すと1,090リットルにまで拡大する。

新型「A1」では、ラゲッジ容量も65リットル拡大している

新型「A1」では、ラゲッジ容量も65リットル拡大している

デジタル化については、「Apple Car Play」や「Android Auto」を利用することができるスマートフォンインターフェイスが、オプションで用意されている。同時に、「Qi(チー)」規格対応のワイヤレスチャージングによって、スマートフォンを充電できる機能もオプションとして用意された。また、これもオプションだが、従来のメーター部分が液晶となってカーナビの地図画面やさまざまな車両情報などをメーターとともに表示してくれる「Audiバーチャルコクピット」も選択可能となっている。

アシスタンス&セーフティシステムは、先代と比べてかなり充実している。フロントのレーダーセンサーを用いた、衝突被害軽減システムの「アウディプレセンスフロント」が標準装備された。このシステムは、万が一前方で衝突の危険性が迫るとドライバーにアラート音と視覚によって警告を発し、ドライバーが反応しない場合にはブレーキペダルに短い振動を伝える。それでも反応しない場合には、走行条件や周囲の状況に応じて自動的に減速を行って車両を停止させるというものだ。そのほか、車線をはみ出すとステアリングを修正して車線内に戻してくれる「アクティブレーンアシスト」や、0〜200km/hまで作動する「アダプティブクルーズコントロール」などもオプションで用意されている。

新型A1に搭載される1.5リッター直4ターボエンジン「35TFSI COD」は、高圧の直噴システムの採用などにより最高出力150ps、最大トルク250Nmを発揮。いっぽうで、気筒休止システム「シリンダーオンデマンド(COD)」によって、効率のよさも追求。従来の「1.4リッターTFSI」 に代わる新開発のエンジンだ。トランスミッションは、全車「7速Sトロニック」を採用。また、1.0リッター直列3気筒エンジンを搭載する「25 TFSI」も、今後の発売が予定されている。25 TFSI は、これまでの「1.0TFSI」に変わるエンジンで、「先代は9割ほどこのエンジンが占めており、将来的にはこのエンジンがメインになるでしょう」と宮本さん。2020年第2四半期に導入予定となっている。

「大人っぽくなった」しっとりとした乗り心地に

今回の試乗車は、ミラノレッドのボディにミストブラックのルーフのツートーンカラーだった。先代A1にも、ルーフカラーが変えられる仕様があったが、先代ではCピラーまでカラーが変わっていて、カジュアルでおしゃれなインパクトが感じられ、それがA1全体の印象にもつながっていた。

新型「A1」のエクステリアデザイン

新型「A1」のエクステリアデザイン

いっぽう、新型A1ではCピラーがボディカラーと同色なので、先代ほどのインパクトはない。それでも、ミラノレッドとのコントラストはきれいで、エクステリアデザインとも相まって大人っぽいイメージを醸し出している。

これは乗り心地にも表れており、先代が若干落ち着きなくひょこひょことした印象が付きまとっていたのに対し、新型A1ははるかにしなやかで、しっとりと落ち着いた乗り心地になっている。

特に、中〜高速域でのサスペンションはきれいに動いて、ショックを吸収してくれる。まるで、上級セグメントのクルマに乗っているかのような印象だ。これらは、ボディ剛性がしっかりと保たれた結果、十分に足を動かすことができるようになった証拠だろう。

新型A1は、先代のような過敏な動きがなく、サスペンションがしっかりと動いてコーナーをきれいにトレースしてくれる

また、ホイールベースが長くなったことも乗り心地に貢献しており、高速での直進安定性も良好だ。確かに旋回性では先代に分があるが、それは限界領域でのこと。少しハイペースでワインディングを駆け巡る程度ではその差はほとんど感じられないだろう。それよりも、そのコーナーにうねりや段差などがあった場合のトレース性がはるかに向上している点に注目したい。先代では少し跳ね気味になったところをなめるようにきれいにコーナーリングしていくのは快感でもあった。

多少の段差などもひょこひょこと跳ねることなく、しっかりといなしてくれる

多少の段差などもひょこひょこと跳ねることなく、しっかりといなしてくれる

箱根でも軽快に回る、ボディとよくマッチしているエンジン

新エンジンは、新型A1のボディにちょうどよくマッチしている。箱根の山坂道では、パワー不足を感じることはなかったが、決してパワフルな印象ではないので、モアパワーを望む向きには、将来発売されるであろう「S1」あたりを待ったほうがいいだろう。また、来年2020年に登場する「25TFSI」がどのような走りを提供するかも、興味深いところだ。

気筒休止機構の「シリンダーオンデマンド」を搭載した1.5リッターエンジン「35TFSI COD」

気筒休止機構の「シリンダーオンデマンド」を搭載した1.5リッターエンジン「35TFSI COD」

また、市街地における使い勝手に貢献しているのが、ボディサイズだ。特に全幅は1,740mmと、日本国内で走るにはちょうどいいサイズ感。ワインディングでは、車線内でライン取りを考えられるし、市街地ではすれ違いにそれほど気を遣わずに済む。小田原市街で路地にも入ってみたが、車幅に関して気になることはなかった。

1,740mmの車幅は、日本の市街地やワインディングを走るにはちょうどいいサイズ感だ

1,740mmの車幅は、日本の市街地やワインディングを走るにはちょうどいいサイズ感だ

そういったシチュエーションで、気になることは2つ。まず、ドアミラーがピラーにマウントされていることだ。先代ではドアにマウントされていたことで、ピラーとミラーの間に空間が生まれ、それによって右前方の死角などを減らしていたのだが、今回は廃されてしまった。そのため、特に右折時の歩行者に気を遣うようになった。また、デザイン上致し方ないのだが、Cピラーが太いことから、左後方の視界は決していいとは言えないので、注意が必要だ。

また、タイヤとのマッチングにも疑問が残った。215/45 R17スペックのブリヂストン「TURANZA T005」を履いていたが、はっきり言って決していい印象ではない。

装着されていたブリヂストン「TURANZA T005」は、かなりロードノイズが大きく感じた

装着されていたブリヂストン「TURANZA T005」は、かなりロードノイズが大きく感じた

具体的にはロードノイズが非常に大きく、特に市街地ではこれが耳障りになる。エンジン音が比較的静かで、その透過音も気にならないので余計にうるさく感じてしまうのだ。また、タイヤの当たりも硬く、細かい路面のざらつきもステアリングを通じて感じてしまい、一瞬ステアリングポストの取り付け剛性が低いのかと疑うくらいだった。よりコンフォートなタイヤを選ぶことでこの辺は解消するだろうし、そうなれば、いずれのシチュエーションでも不満は感じられないはずだ。

なお、「COD」に関しては、インジケーターランプでオン/オフが確認できた程度で、その作動にはまったく違和感がなかったことを記しておきたい。

上質なインテリアだが、やや違和感を覚える

インテリアに目を向けると、これまでのアウディとは違うデザインに感じられるだろう。特に横基調でありながら、運転席から見てナビ画面の左側までがドライバー側に向き、助手席前部分は少し外側に向いている。横基調の中で少し凸凹させることで広がり感を持たせたいという意図なのだろうが、少々違和感を覚えてしまった。

インパネは、運転席と助手席に向いており、広がり感を持たせるデザインとなっている。斬新ではあるが、やや違和感も覚える

スイッチ類の配置は、ほかのアウディ車に近く、すぐに乗ってもそれほど迷うことないだろう。エアコンのスイッチ類は物理スイッチになっているが、このあたりは上級車種もA1を見習ってほしいと感じた。ただ、ハザードランプのスイッチもほかのアウディ車と同様、並んだボタンの中央に配されているのでとっさのときに使いにくかった。

スイッチ類は、とくにエアコンダイヤルの感触などに高級感があって好印象だ

スイッチ類は、とくにエアコンダイヤルの感触などに高級感があって好印象だ

そういった気になるところはあったが、それ以外は上質で、たとえばエアコンのダイヤルスイッチのクリック感なども絶妙だ。あえて触りたくなるような感触で、こういったところで「ああ、いいクルマに乗っているな」と思わせる妙がある。

後席の居住性も向上

せっかくホイールベースが伸ばされ、後席の居住性が向上したというので、少しの間リアシートに収まってみた。そのときは、身長173cmの男性がゆったりと前席に座った状態だったのだが、ヘッドクリアランスも足元も十分に空間は確保されていて快適だった。

後席は、足下空間や頭上空間が広いものの、シート座面がフラットで少し座りづらい

後席は、足下空間や頭上空間が広いものの、シート座面がフラットで少し座りづらい

しかし、シートの座面がフラットでホールド性に欠けるのが玉に瑕(きず)だ。もう少し、サイドサポートが向上すれば、より快適に移動することが可能だろう。遮音性も高く、若干タイヤの影響はあるにせよ、それが解消されればかなりいい空間になるのではと感じられた。

いま、新型A1が属する輸入車セグメントは“熱い”状況だ。メルセデス・ベンツ「Aクラス」を筆頭に、BMW「1シリーズ」もフルモデルチェンジ。ジャーマン3それぞれが、最新車両を提供しているが、はっきり言うとどれを購入しても間違いはない。その中で、新型A1は“上質な大人っぽさ”を上手に演出している。先代はよりやんちゃな感じで、まさにアウディの末っ子的存在だったが、新型A1ではひとつ上のA3をも食ってしまうような完成度の高さだ。Aクラスがいち早く導入した音声認識システム「MBUX」やBMW 1シリーズのAI音声認識システムのようなものが搭載されないのは物足りないかもしれないが、なくて困ることはない。あちらの2台も、そのあたりは決して完成度が高いわけではないので、そこに関してはあまり気にすることはないだろう。

クルマそのもので比較すると、それぞれのブランドの個性が色濃く出ている。Aクラスは街中から高速まで万能選手で、安全装備も充実した“生真面目な”優等生。1シリーズはより“走りに特化”したスポーツマン(のイメージ)。そしてA1は、スポーツもそつなくこなす“洗練された”大人っぽいイメージだ。いずれ機会を見つけて、同じシチュエーションでの比較も行ってみたい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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