レビュー
ホンダ復権の鍵はこのクルマに託された!

まもなく発売の新型「フィット」プロトタイプに先行試乗!見えてきた“e:HEV”の実力

ついに、このときがやってきた。2019年10月23日の「第46回東京モーターショー2019」で発表された、4代目となるホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)の試乗である。

2020年2月に発売予定のホンダ 新型「フィット」を、クローズドコースで試乗する機会が得られた

2020年2月に発売予定のホンダ 新型「フィット」を、クローズドコースで試乗する機会が得られた

いったい、新型フィットはどのように進化して2020年2月に発売されるのだろうか? 短時間の試乗ではあるが、その実力を探ってみた。

ホンダのコンパクトカーの歴史をおさらい

今回で4代目となる、新型フィット。まず、初代からの歴史について簡単に触れておきたい。

元々、ホンダの小型車は「シビック」がけん引していたが、市場の要求に応えてボディサイズが徐々にではあるが拡大傾向にあった。その中で登場したのが1981年に登場した「シティ」である。

1981年に発売されたホンダ「シティ」(初代)

1981年に発売されたホンダ「シティ」(初代)

1986年に初めてフルモデルチェンジされたホンダ「シティ」(2代目)

1986年に初めてフルモデルチェンジされたホンダ「シティ」(2代目)

シティは、「トールボーイ」と呼ばれた独特のデザインが受け入れられ、瞬く間に大ヒットモデルとなった。だが、1986年にフルモデルチェンジした2代目シティは、ほぼその真逆であるロー&ワイドなボディに切り替えたことで販売台数が減少。そして、1996年には実質的な後継車種として「ロゴ」が市場に投入された。

1996年に「シティ」の後継車種として登場したホンダ「ロゴ」(初代)

1996年に「シティ」の後継車種として登場したホンダ「ロゴ」(初代)

ただ、このロゴもそれほどのヒットにはつながらなかった(筆者所有経験あり)。そこで、これまでのコンセプトをすべて刷新し、2001年6月に登場したのが初代フィットである。

初代フィットは空前の大ヒット!

月販目標台数はやや控えめな8,000台としていた初代フィットだが、ふたを開けてビックリ。発表後約1か月で、約4万8,000台を受注する大ヒットモデルとなったのだ。

2001年の登場から、大ヒットを記録したホンダ「フィット」(初代)

2001年の登場から、大ヒットを記録したホンダ「フィット」(初代)

コンパクトカーの定義はさまざまだが、Bセグメントに該当するフィットのボディサイズは、全長3,830×全幅1,675×全高1,525mm(初代)と、シビックの2代目と3代目(ハッチバック)の中間ぐらいのボディサイズであった。さらに、多彩なアレンジが可能な「ULTR SEAT(ウルトラシート)」の採用や、特許でもある「センタータンクレイアウト」などによって、外観以上の居住空間を作り出すことに成功したのだ。

余談だが、フィットが初めて世に出たとき、他社で同クラスのクルマを開発する担当者が「あれはルール破りですよ」と言っていた。だが、そもそもルールなんてもの自体はないわけで、同価格帯でありながらデザイン、広さ、燃費、走りのすべてをワンランク上げることによって、フィットはこのクラスのベンチマークとして君臨することになった。

ちなみに、フィットの累計販売台数は268万台で、2018年末におけるホンダ車の保有台数としても最多の180万台を誇っている。

軽、SUV人気がフィットの牙城を崩した

これまで、ベストセラーカーの代名詞であったフィットと言えども、昨今の軽自動車やSUVブームに後塵を拝しているのは、多くの人が感じていることだろう。ホンダのデータによれば、2019年1〜8月における登録車販売台数をカテゴリー別に見ると、SUVの「ヴェゼル」は4万1,858台と1位なのに対し、フィットは5万9,263台と、健闘してはいるものの5位という結果である。

4代目となる新型フィットは、コンパクトカーのシェア奪回ととともに、「N-BOX」などに代表される販売好調な軽自動車に対して、登録車全体の引き上げを狙うという大きな役割をも背負っているのだ。

新たな潜在ニーズに応える

前述したロゴからフィットへとバトンタッチしたとき、ホンダは「コンパクトカーではあきらめていた、小さいのに広い室内と若々しいデザイン」という、ユーザーが持っていた“潜在ニーズ”に応えるクルマを開発してヒットに結びつけたと言っている。その後の歴代フィットでも、時代の要求に応えるクルマ作りが行われてきたが、新型では今の時代に求められる潜在ニーズを再定義することで、新たな価値を提供しようと考えた。

それが、「人の日常生活を支える『心地よい』体験と『美しさ』を有する、世界で唯一のスモールカー」という、従来とは異なるコンセプトだ。少々前置きが長くなったが、新型をより深く感じてもらうためには必要な内容と理解していただきたい。

ホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)のフロントエクステリア

ホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)のフロントエクステリア

そして、いよいよご対面となった新型フィットの実車だが、現行モデルである3代目がスポーティーなイメージで、特にフロントマスクの精悍さが印象的だったのに対し、4代目の新型フィットは少し印象が異なる。

ひとことで言えば、「やさしい」印象だ。ただ、回り込んで見てみると、基本的にはこれまでフィットが培ってきたショートノーズ&ロングルーフはしっかりと継承している印象を受けた。

ホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)のリアエクステリア

ホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)のリアエクステリア

コンセプトは“柴犬”

フロントマスクを見て現行型と異なる印象を受けたのも、大型化したヘッドライトやグリル周りのデザインによるものだが、エクステリアデザインの責任者によれば、そのコンセプトは“柴犬”だそうである。

ホンダ 新型「フィット」のフロントフェイスは「柴犬」をイメージしてデザインされたのだそう

ホンダ 新型「フィット」のフロントフェイスは「柴犬」をイメージしてデザインされたのだそう

いきなり何を言うのか、と思ったのだが、新型は長く付き合っていけるデザインを目指したそうで、フロントマスクは「親しみ」が感じられる表情とし、そのイメージは“柴犬”なのだそう。たしかに、現行モデルのキリッとした顔つきも悪くないが、新型が目指す「心地よさ」とは時代の違いを感じる。では、ユルユルな感じのデザインかと言えばそうでもなく、前述したように初代からのコンセプトを継承しつつ、そのワンモーションフォルムは停まっていても動きが感じられるようなデザインに仕上げられている。

圧倒される前席からの風景

車内に乗り込むと、驚きの風景が目に飛び込んできた。「広い・・・」。思わず口から言葉が出た。

ホンダ 新型「フィット」(プロトタイプ)のインテリア。ダッシュボードはフラットで、Aピラーが細く設計されていることなどによって、室内は広々と感じる。画像は東京モーターショー2019で撮影したもの

新型フィットのインテリア、特にインパネ周りのデザインはいい意味で衝撃的とも言えるものだ。インパネ上部にはメーターバイザーやオーディオ、カーナビ、空調吹き出し口などによる上方向の出っ張りがまったくない。つまり、ほぼ完全に水平方向にフラットな形状なのである。

ホンダの担当者によれば、水平かつ薄型な“爽快”とも言える骨格とすることで、圧迫感や閉塞感の少ない「気分が明るくなる」デザインとしたそうだ。また、部品同士の合わせ線など(これをノイズと呼んでいる)を隠すことで、各機能をわかりやすく表現しているとのこと。

デザインの話は少々難しくなるが、要は「インパネ周辺がガチャガチャしておらず、広々とした視界や空間が得られる」ということだろう。そして、何よりも驚いたのがフロントウィンドウの視界の広さである。「パノラマフロントウィンドウ」と呼ばれる、圧倒的に広く感じるその理由は、新設計の極細のフロントピラーによるもの。こんなに細くて衝突時には大丈夫なのだろうかと感じたが、万が一における衝撃の荷重はこの極細ピラーではなくAピラー側で吸収するので大丈夫とのこと。ちなみに、現行型ではこのフロントピラーに荷重が流れるとのことなので、そもそも構造自体が大きく進化していることがわかる。

これにプラスして、フロントワイパーも現行型のようにインパネ正面から飛び出して見える構造ではなく、配置自体を改善している。

つまり、これらの要素がうまく組み合わされることで、全体的にシンプルかつスッキリとした印象となっている。勝手なイメージだが、日本で言えば「無印良品」、海外で言えば「カッシーナ」と言えば、少々褒めすぎだろうか。シンプルで飽きの来ないデザインには派手さはないが、使えば使うほど日々の生活になじんでいくような感覚を受けた。

驚きの前後シートの出来のよさ

室内でもうひとつ、いやもっともすばらしいと感じたのが、シートの出来だ。新開発の「ボディスタビライジングシート」は、従来の線で支えるSバネ構造から大きく進化させた、面で支える「MAT構造」と呼ばれるものに変更された。

フロントシートは、体幹を支えて疲れにくい「MAT構造」に変更されたほか、クッションの厚さもアップしており、まるで上級車のような座り心地となっている

従来よりも30mm厚みを増やした高密度クッションに加えて、新しい構造によって体幹を支えて疲れにくくしている点が大きな特徴だ。

実際に着座して驚いたのが、最初は身体が少し沈み込む感じだが、その後ジワーッと身体を包み込むようにサポートしてくれる点だ。余談だが、筆者は腰と大腿部を痛めているのだが、このシートの着座感のよさと走行時の疲れにくさは、短時間でも十分に体感できた。

また、リアシートもこれまでのフィットと同様に多彩なアレンジが可能だが、リアシート自体のパッドも現行型より24mm厚くすることで、クッション性も含めて座り心地を向上させている。

待望の2モーターハイブリッドを搭載

搭載するパワートレーンは2種類。従来から噂にはなっていたが、「インサイト」などに搭載されている1.5Lガソリンエンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステム、そして1.3Lのアトキンソンサイクルのガソリンエンジンだ。

組み合わされるトランスミッションは、ハイブリッドの場合は2モーターを内蔵する電気式CVT、ガソリン車は全開加速時にステップアップシフトする制御を組み込んだCVTとなる。

新型フィットでは、初の2モーターハイブリッド「e:HEV(イーエイチイーブイ)」が搭載される。排気量やシステムの仕組みなどは「インサイト」と同様のものだが、小型化されたことでフィットのようなコンパクトカーに搭載することが可能となった

ハイブリッドは、これまで「SPORT HYBRID i-MMD」の名称で展開していたが、新型フィットでは新たに「e:HEV(イーエイチイーブイ)」というネーミングとなった。エンジンはインサイトと同様の1.5リッターだが、2モーターハイブリッドシステム自体の大幅な小型化に成功したとのこと。

同時に、モーターの上限回転数の向上、トルク効率の向上、モーター損失の低減、そして最大モータートルクは、現行型と比較して約1.6倍、1.5Lのターボエンジン以上という。

さらに、細かなスペックは出ていないが、バッテリー容量を小型化(48セルしかないが)することで、荷室床下の収納を可能にした。これにより、トランク容量やリアのレッグスペースを犠牲にするどころか、ライバル車以上の空間を生み出している。

大きく変わった「Honda SENSING」

ホンダが手がける先進安全技術である「Honda SENSING」は、軽自動車も含み数多くの車種に搭載されているが、新型フィットには新しい方式が採用されるようだ。現行モデルは「ミリ波レーダー」と「単眼カメラ」の組み合わせだったが、新型では初となる単眼のフロントワイドビューカメラに、フロントとリアそれぞれ4個ずつのセンサーを組み合わせる方式となった。カメラに関しては、日産のプロパイロットで採用実績があるインテル傘下の「モービルアイ」製を採用する。

前後4つのセンサーは、前方や後方における近距離の車両や外壁、ガラスなどを検知することで、不注意による急発進を防止して衝突回避を支援する。そのほかにも、対向車をカメラで検知し、警報とブレーキにより交差点の右折時に直進してくる対向車との衝突回避の支援も行う。この3つの機能に関しては、ホンダ車初となる。

どこまでもスムーズなハイブリッド

試乗は、北海道の鷹栖PG(プルービンググラウンド)の1周約6.8kmの高速周回コースと、ヨーロッパの走行環境を再現したEUコースの2か所を走った。特に、高速周回路は最高速度が120km/hに設定されていたので、その実力を試すのには理想的だ。

コースインするまでゆっくりと走ると、エンジンは始動しない。2モーター方式の利点は、発進から市街地走行までなるべくモーターで走らせようとすることで、ガソリン消費を抑えてくれるところだ。

ホンダ 新型「フィット」1.5L e:HEV搭載モデルの試乗イメージ

ホンダ 新型「フィット」1.5L e:HEV搭載モデルの試乗イメージ

前述したように、モーターや制御に関しては大きく進化していることから、出だしからスムーズで、さらに少しアクセルを踏み込むとダイレクトかつ力強さも加わってくる。ここから高速走行に入ると、クラッチを介してエンジンと直結するので、高速クルージング時の追い越し加速もスムーズだ。

モーターだけのEV走行モード、発電しながらのハイブリッド走行モード、エンジンだけのエンジンドライブモードの3種類のモードを持つのが新型フィットの特徴だが、これらの切り替えも違和感がない。もちろん、エンジンがかかればそれなりに音は発生するが、低速や定常走行時は、出しゃばらない程度に介入してくるレベルだ。

ホンダ 新型「フィット」1.5L e:HEV搭載モデルの試乗イメージ

ホンダ 新型「フィット」1.5L e:HEV搭載モデルの試乗イメージ

燃費に関しては測定できなかったが、全体としてモーター走行領域が多かったことから、かなり高いレベルなのではないだろうか。また、乗り心地に関しても全体的に路面からの当たりはソフトだが、最終的にはしっかりと接地感が出ている点は好ましい。特に、リアサスペンションからの突き上げに関しては、現行型を大きくしのぐ性能だ。ホンダによれば、欧州車と同様の「入力分離構造」を取り入れたとのことだが、前述した前後のシートの出来のよさも手伝って、フランス車のようなソフトなのに腰がしっかりと入ったようなフィーリングを感じさせてくれた。プロトタイプ車であっても、1クラス以上の仕上がりと言ってもいい出来であった。

ホンダ 新型「フィット」1.3Lガソリンエンジン搭載モデルの試乗イメージ

ホンダ 新型「フィット」1.3Lガソリンエンジン搭載モデルの試乗イメージ

いっぽう、1.3Lのガソリン車に関しては「コレだ!」という特徴はつかみにくかったというのが、正直なところだ。決して出来が悪いのではなく、逆に市街地から高速道路までフラットで過不足なく走ることができるように感じたからだ。価格にもよるが、販売ではかなりの数が期待できるのではないだろうかと思う。

このほかにも、「VGR(バリアブルギアレシオ)システム」の採用により、舵角に応じた適切な操舵量が提供される機能も搭載された。駐車場などの入出庫時には、利便性の高さを感じるはずだ。

ホンダ自慢のコネクテッドも次世代に進化

今では当たり前になりつつある、「つながるクルマ」。CASE時代における「C」、つまりコネクテッドの部分に関しては、ホンダは1990年代後半から積極的に展開してきた。特に、ビッグデータを活用した渋滞回避機能などは今もなおトップレベルの性能を持ち、同時に通信費無料の「リンクアップフリー」なども高く評価されている。

しかし、ここ数年は競合他社の追い上げも厳しくなってきており、先駆者であったホンダにも“次の一手”が求められていた。そして今回、次世代のテレマティスクスサービスとなる「Honda CONNECT」を開発し、新型フィットに初搭載することが決まっている。試乗当日は、まだ何も情報が公開されていなかったが、通信の活用によりカーライフを充実させる仕組みが数多く搭載されるようだ。また、従来よりスマホアプリの積極活用や、今後のクルマにおいて重要となるセキュリティ面に関しても強化されることは間違いないだろう。

ライフステージに合わせたグレード選びが新しい

すでにホームページなどでも公開されているが、新型フィットには5タイプのバリエーションが設定される。

ホンダ 新型「フィット」のグレードバリエーションは、全部で5つ。詳細なグレード構成や価格などについては、まだ明かされていない

「BASIC(ベーシック)」「HOME(ホーム)」「NESS(ネス)」「CROSSTAR(クロスター)」「LUXE(リュクス)」と呼ばれる5つのグレードなのだが、これまでのグレードの概念は装備に応じて差別化を行ってきた「CMF」(カラー、マテリアル、フィニッシュの略)設定によるものだったのが、新型では視点を変えて生活や価値観から発想したバリエーションを展開するとのこと。

文字通りBASICをベースに、中核をなすHOME、上質なLUXEはマテリアルの部分に力を注いでいるように感じるが、気になるのはCROSSTARとNESSだろう。

ホンダ 新型「フィット」CROSSTARのエクステリア

ホンダ 新型「フィット」CROSSTARのエクステリア

ホンダ 新型「フィット」NESSのエクステリア

ホンダ 新型「フィット」NESSのエクステリア

CROSSTARは、「フリード」のマイナーチェンジでも投入されている新グレードだ。クロスオーバーモデルらしい専用の内外装はアクティブ派に似合いそうだし、NESSは従来になかった「みずみずしい」、言い換えればフレッシュな感覚をアピールする。

実車の発売まではまだ時間があるが、2020年はライバルも含めてコンパクトカーの大混戦が予想されている。今回の新型フィットが、発売までにどのように磨き込まれて我々の前に現れるのか、今からワクワクしているのである。

高山正寛

高山正寛

ITS Evangelist(カーナビ伝道師)/カーコメンテーター/AJAJ会員/20-21日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。1959年生まれ。リクルートで中古車情報誌「カーセンサー」の新車&カーAV記事を担当しフリーランスへ。ITSや先進技術、そしてカーナビ伝道師として純正/市販/スマホアプリなどを日々テストし布教(普及)活動を続ける。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
ページトップへ戻る