レビュー
デミオからの進化はどれほどなのかをチェック!

「デミオ」から「MAZDA2」へ、車名以外に何が変わった!?比較試乗

マツダのコンパクトハッチバック「デミオ」が、車名を「MAZDA2(マツダ・ツー)」に変更するとともにマイナーチェンジが実施された。MAZDA2は、デミオからどのように進化したのか。わずかではあるが、触れる機会が得られたのでレポートする。

マツダ 新型「MAZDA2」(左)と先代モデルの「デミオ」(右)

マツダ 新型「MAZDA2」(左)と先代モデルの「デミオ」(右)

「My First マツダ」と呼ばれるために

MAZDA2の位置付けについて、マツダ商品本部 MAZDA2開発主査の和田宜之さんは「マツダブランドの入り口を担う、世界に誇れるコンパクトカー」と言う。そして、「お客様視点からも、『My First マツダ』と呼ばれるような存在でありたい」と述べ、「自分に合った初めてのクルマで、運転の基本やドライブの楽しさなどのすべてをこのMAZDA2から学び、カーライフが始まったと言ってもらえるようなお客様がひとりでも増えたらうれしいと思い、このクルマを開発しました」と、このクルマにかける想いを語る。

マツダ 新型「MAZDA2」のエクステリア

マツダ 新型「MAZDA2」のエクステリア

それらを踏まえ、MAZDA2では「クラス概念を打ち破る、質感の高さにこだわって開発しました。日常を豊かにする、上質なパーソナルカーをコンセプトに、今回は進化を果たしています」とコメントした。

フロントフェイスを中心に、さらなる質の高さを目指した

今回の改良ポイントは、大きく3つ。まずは、エクステリアデザインだ。「お客様とクルマとの初めての出会い、ファーストコンタクトの瞬間に、ひと目見て心が動き、興味が湧く。大人に似合う、質のよさを感じてもらえるクルマを目指しました」と和田さん。

先代モデルのマツダ「デミオ」(左)と新型「MAZDA2」(右)

先代モデルのマツダ「デミオ」(左)と新型「MAZDA2」(右)

MAZDA2チーフデザイナーの木元英二さんは、「デミオは、デビュー以来、クラスを超えた競合車をも凌駕するようなデザインにしてきました。今回のMAZDA2でも、欧州プレミアムコンパクトと比較して遜色のない、安心して乗ってもらえるコンパクトカーを作り上げるということを使命と考えています。それにより、ちょっとした日常がプレミアムになるような、パーソナルカーを目指してデザインしました」と、そのコンセプトを述べる。そのうえで、「今回、デミオからMAZDA2へと名称を変更しました。これは、つまりマツダブランドとして(MAZDA2を)選んでもらう方向へとシフトする、という意味になります」と話す。

「Make You Feel Alive」という、マツダの新しいデザインテーマがある。これは、「人間の五感を刺激して、人生を生き生きとさせる。マツダを通じて、そういった体験をしてもらいたいということです。また、『美しく走る』という表現もしますが、根っこの部分は同じで、マツダ車に乗ることで、そこにドラマが生まれるという意味です」。そのテーマを踏まえて、MAZDA2でも「生き生きとした、人生の輝きを持つ人のためのMAZDA2。乗る人すべてが、主人公になるようなクルマということを考えながらデザインしました」とのことだった。

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントエクステリア

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントエクステリア

今回、エクステリアデザインで特に大きく変更が施されたのは、フロント周りだ。「シンプルで凛とした美しさを追求し、乗る人をしっかりと引き立てるような、上質な質感表現を行っています」と木元さん。そのために、あえて「シンプルな面構成を採用しました。シンプルですが、グリルやランプに深みを与えて、その対比によって美しさやエレガンスさを表現しようと考えました」と説明する。

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントフェイス

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントフェイス

上質さの表現について、木元さんは「加飾の多さや強さと考えがちですが、我々はしっかりとベースを整えたうえで、加飾しています」とし、MAZDA2では、バンパーの下部左右に水平方向のキャラクターを加え、そこへメッキを施している。これにより、上質さに加えて低重心でワイドなフォルムを印象付けている。また、フロントグリルのグラフィックもできるだけワイドな方向に広げ、そこにマツダのデザインモチーフである「シグネチャーウイング」を、ヘッドランプからグリルにかけてメッキで施した。

マツダ 新型「MAZDA2」のリアエクステリア

マツダ 新型「MAZDA2」のリアエクステリア

リア周りも、フロントと同様にバンパー下に水平方向のメッキが施されている。また、デミオでは黒の樹脂を上方まで広げることで躍動感を強調していたが、MAZDA2では上質感を目指したことから、低いところでも水平のキャラクターをしっかりと印象付けたのだ。同時に、ボディカラーの面積を増やしたことなどによって、「非常に、上質なクルマが完成したと思っています」と木元さんは言う。

骨盤を立てて座る「シート」で一体感がさらに増した

MAZDA2では、クルマの基本性能にも手が入れられた。「さまざまなドライバーが運転するMAZDA2は、ベテランだけではなく初めてクルマに乗るような方にとっても、夜道でも山道でも、そして高速道路でも、雨や雪が降っても、安心して運転してもらえるクルマの基本性能をしっかり持たせたかったからです」と和田さん。

具体的には、先代デミオの基本骨格や自然な姿勢で運転できるドライビングポジション、踏み間違いが起こりにくい「オルガン式ペダル」や前方視界を向上させる「ヘッドアップコックピット」、「スカイアクティブAWD」などを踏襲したうえで、新たに「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー)」を採用した。

SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTUREとは、人間が本来持っているバランス能力を運転に活用できるよう、クルマ全体をコーディネートしながら開発することによって、人馬一体の感覚や走る歓びなどをさらに高めていくための車両構造技術のことだ。

それに伴い、MAZDA2では前後ダンパーを変更するとともに電動パワーステアリングの制御を最適化。また、車両の挙動を制御する「GVC(Gベクタリングコントロール)」も「GVCプラス」へと進化させている。さらに、タイヤも新たに開発したものが装着されている。「操安性と乗り心地という、従来であれば相反関係にあるものをうまくブレイクスルーし、思いどおりの運転感覚としなやかな乗り心地の実現を目指しました」と和田さんは説明する。

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントシート

マツダ 新型「MAZDA2」のフロントシート

そして、大きな変更が施されたのがシートだ。「MAZDA2には、(MAZDA3から新たに採用された)『骨盤を立てる』という考え方を採用し、疲れにくく上体を動かしやすい運転姿勢が取れるシートが採用されています。シート表面は、高減衰ウレタンによって余分な振動を吸収することによって、乗り心地のよさを実現しています」と話す。

詳しく説明すると、人間は歩行時(骨盤が立った状態)には無意識にバランスを保持する力を発揮し、頭部が安定した状態を作り出している。この状態を理想形として、シートを開発。その結果、脊柱がS字カーブを描くように、骨盤がしっかりと立った状態のシートに進化させた。これによって、カーブやレーンチェンジなどで目線がぶれることなく、クルマとの一体感が高まり、運転のしやすさが実現できるというのだ。

安全性能については、車間距離を一定に保つ「レーダークルーズコントロール」が、これまでは30Km/h以下では解除されていたものが、0km/hで停止するまで作動できるように設定速度が拡大されている(0km/hで保持する機能はなし)。また、車線を逸脱しないように制御してくれる「レーンキープアシストシステム(LAS)」が新たに採用された。さらに、ヘッドライトの照射範囲を状況に応じて変化させる「アダプティブLEDヘッドライト」は、片側11分割から20分割になってハイビームで走行できる時間や照射範囲が拡大されている。同時に、カーブの先を照らしてくれる配向制御を2段階から6段階へと引き上げることで、より緻密な制御によって夜間のコーナーでも安心して走ることができるようになった。

会話を楽しんでもらうために、室内の静粛性を向上

最後のポイントは、室内空間だ。見た目だけではなく、静粛性を向上させている。「車内での会話を楽しむこと。そこを向上させるために、音の聞こえ方に着目しました。従来の音圧レベルだけではなく、音の到来方法や音の時間変化に着目し、改善させています」と言う。

マツダ 新型「MAZDA2」のインテリア

マツダ 新型「MAZDA2」のインテリア

MAZDA2は、吸音性能を向上させることによって、空間の中の無用な残響音を残らないようにしている。具体的には、室内のトップシーリングによって、天井材の吸音性能(高周波領域)を、デミオ比で35%向上した。ドアを閉めたときの室内の残響音の少なさ、高速道路を走るときのパターンノイズの高い周波数の音や風切音など、従来のデミオでは少し残っていた音がなくなり、スッキリしたという。

そのほか、快適装備として「運転席6Wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能」が採用されている(15S L Package、XD L Packageに標準装備)。電動で前後スライド、シートの高さ、背もたれの角度が調整できるほか、メモリー機能が搭載されているので、ドライバーごとに最適なポジションをすぐに呼び出すことができる。

静粛性は向上しているが、気になる「エンジン音」

今回、試乗したグレードは、

MAZDA2 15S PROACTIVE S-Package(4WD)
MAZDA2 XD PROACTIVE S-Package(2WD)

そして、比較として

デミオ15S Touring L Package(4WD)レザーシート

上記の3車種に試乗したので、改良点にポイントを絞って印象をお伝えしたい。

最初に、デミオに乗って会場周辺を走行した後、MAZDA2へと乗り換えドアを閉めた瞬間、確かに「静粛性が上がった」と感じた。MAZDA2のドアを閉めたときの反響音の残り方が、デミオとはまったくと言っていいほど違うのだ。

マツダ 新型「MAZDA2」の走行イメージ

マツダ 新型「MAZDA2」の走行イメージ

それは、走り始めてからも同様で、ロードノイズは確かに減少している。だが、逆に若干エンジンノイズが気になる結果となってしまった。つまり、エンジン以外の音が減少したため、そこが耳につく結果となったと想像する。いわば、もぐらたたきみたいなものだ。

新たに採用された電動パワーシートは、このセグメントとしてはありがたい装備だ。だが、パワーシートのモーター作動音が大きく、また微振動も伝わってくる。これは、実はほかのマツダ車のパワーシート搭載車に乗ったときも同様であった。このあたりの気配りはとても重要と思うので、ぜひ次のモデルでは改良を願いたい。また、シート前を軸としてヒップポイントのみ上下するのは、本来のマツダのドライビングポジションの考え方からすると意に反しているようにも思う。たしかに、コスト面の制約が大きいとは思うのだが、マツダの良心にしたがってぜひ可動位置の拡大を望みたい。

たしかにデミオよりも、さまざまな面で向上しているが……

ゆっくり走り出してみると、段差を超えたときに、確かにしなやかさが向上していることが伝わってきた。スッとショックアブソーバーが縮み、ショックが吸収され、突き上げ感が減っていることがわかる。また、シートに関してもサイドサポートが向上していることから、長時間のドライブにおける疲れは大きく減少していることがうかがわれた。ただし、座面部分に関してはデミオのほうがショックを吸収しているようで、MAZDA2では路面のざらついた感じが伝わってきた。

試乗した「デミオ」に採用されていたレザーシート

試乗した「デミオ」に採用されていたレザーシート

このシートに関しては、実はこれ以上の評価がしにくかった。と言うのも、デミオだけが「レザーシート」であったのだが、このレザーの張り具合が絶妙で、とても上手にショックを吸収し、乗り心地に大きく貢献していたからだ。もともと、デミオもMAZDA2も硬めの乗り心地ではあるのだが、意識せずに乗り比べると足回りの変更などまったく気付かないほど、このレザーシートはショックを吸収してくれていたからだ。そのため、正確な比較は難しかったのだが、MAZDA2が細かな凹凸を拾う感覚については、改善を望みたい点であることは間違いないところだ。

マツダ 新型「MAZDA2」の走行イメージ

マツダ 新型「MAZDA2」の走行イメージ

市街地を走行すると、デミオもMAZDA2もきびきびと走り回ることができるのだが、これはマツダのコンパクトカーならではだ。これは、高速道路においても同じだった。試乗会場となった横浜近辺の高速道路は、きついコーナーやジャンクションがいくつも存在するのだが、そこではMAZDA2の素直な回頭性のよさが目立った。特に、GVCプラスがうまく作動しているのか、若干Gのかかり方がスムーズでやさしくなっているようにも思える。ある程度元気よく走り回っても、体への負担はデミオよりも減っているように感じた。

また、高速道路では60Km/h以上でしなやかさが増してくる印象で、それ以下ではさまざまなショックをドライバーに伝えてくるが、その大きさがデミオよりも減っている印象を受けた。

今回、開発者の事前説明をもとにデミオとMAZDA2を試乗してその差異をレポートしたのだが、もしデミオという比較対象がなく、そのままMAZDA2に乗ったのならば、ここまでの変化が気づけたのかと言われると、正直微妙なところだ。

確かに、さまざまな面で仕様は向上しているが、それは乗り比べてはじめて気づくレベルだ。それよりも、もっと大きなところ、たとえばボディ剛性を向上させるべく、フロント周りの改良やステアリングポストの取り付けなどを見直すことで、はるかに直進安定性は向上するだろうし、静粛性も上がるはずだ。

もちろん、コンパクトカーであるからコストをかけるのは厳しい面もあるだろう。しかし、いまマツダは一括企画を取り入れ、他モデルと並行して技術開発を進めている。今回のシートやGVCプラス採用も、そのいい例だ。そこをもっと利用して、このMAZDA2からの先出し技術があってもよかったのでは、と思う。車名を変更するほどの意気込みを、技術面からももっと感じたかった。そうすることで、よくできたコンパクトカーがさらに時代に先駆けて進化したと言えたはずだし、より「My First マツダ」にふさわしいクルマになったことだろう。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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