「チューニングカーの祭典」として知られる「東京オートサロン」は近年、自動車メーカーがハイパフォーマンスモデルや純正カスタマイズモデルを発表する場ともなっている。「東京オートサロン2020」のホンダブースでは、まさに新車発表会の様相を呈していた。
「東京オートサロン2020」において、サプライズで公開された新型「シビックタイプR」
「シビック」シリーズと「S660」のマイナーチェンジ、そして「N-ONE」の6速MTモデルの参考出品などである。そのほか、2020年2月に発売される新型「フィット」の無限仕様やモデューロXのコンセプトモデルなど、さまざまな新型車やコンセプトカーが公開された。
まず、セダンとハッチバック、そしてタイプRのマイナーチェンジモデルが公開されたシビックシリーズからご紹介したい。
ホンダ 新型「シビックタイプR」のエクステリア
今回のホンダブースの目玉のひとつが、「シビックタイプR」のマイナーチェンジだ。新型シビックタイプRでは、各部がブラッシュアップされ、走りにいっそうの磨きがかけられていると言う。
グリル部が拡大された、ホンダ 新型「シビックタイプR」のフロントバンパー
デザインが変更されたフロントバンパーは、グリルの開口部が拡大され、冷却性能を上げている。開発担当者は、「出力・トルクを上げることだけがパワーアップではない。冷却性能を上げ、エンジンのポテンシャルを引き出すことも大切」と話す。また、ブレーキ性能の強化も行われたが、ストッピングパワーを向上させるため、あえてドリルドディスクを廃止したと言う。
インテリアでは、ステアリングのレザーがアルカンターラになり、シフトノブ形状が変更され、ドライビングフィールの向上が図られている。
今回の東京オートサロン2020では、車両こそ公開されたものの、スペックなどの詳細についてはほとんど明かされていない。その全容については、発売予定の2020年夏まで待つことになりそうだ。
ホンダ 新型「シビックセダン」のエクステリア
シビックセダンは、フロントバンパーを一新したことが最大の変更点だ。従来、3分割となっていたロアグリルを一体化してワイド感を強調するとともに、メッキのガーニッシュが追加され、上質さが演出されている。また、リアガーニッシュのデザインやアルミホイールのカラーも変更されている。インテリアでは、コンビシートが標準装備となった。
ホンダ 新型「シビックハッチバック」のエクステリア
ハッチバックもバンパーのデザインが変更されているが、こちらはセダンとは異なり従来からのスポーティーなイメージを強化。ハッチバックでは、リアロアガーニッシュやアルミホイールのデザインが変更されている。
なお、プレスリリースなどではアナウンスされていないのだが、開発担当者によるとハッチバックの防音性能を強化していると言う。セダンは、もともとポテンシャルが高いので、防音については手を入れていないとのことだ。
さらに、セダン、ハッチバックともに安全運転支援システムの「ホンダセンシング」が全車標準装備されているほか、ボディカラーも変更されている。発売日は、2020年1月23日だ。
ホンダ 新型「S660」のエクステリア
S660のマイナーチェンジは、2015年に発売されて以来、初めてのこと。今回のマイナーチェンジでは「デザインの深化」がコンセプトで、主にエクステリアの変更が実施された。
新色のボディカラー「アクティブ・グリーン・パール」に目が奪われてしまいがちだが、フロントピラーがボディ同色となり、ホイールデザインが一新されているところにも注目だ。さらに、フロントグリルのデザインとヘッドライトのインナーのカラーが変更され、リアコンビネーションランプはクリアレンズ化されている。これだけの変更によって、外観の印象は大きく変わったと言えるだろう。
インテリアでは、ステアリングホイールとシフトノブがアルカンターラ仕様となり、デザインが変更されたシートには「シートヒーター」が追加されたのがうれしい。発売日は2020年1月10日だ。
ホンダ「MUGEN S660 Concept」のエクステリア
そして、S660のカスタマイズモデルである「MUGEN S660 Concept」も展示されていた。エアロパーツやカーボンパーツ、鍛造アルミホイールのほか、スポーツサイレンサーやパフォーマンスダンパー、車高調整式スポーツサスペンションを装備。インテリアは、バケットシートやスポーツステアリングホイールが装備されている。これらのパーツは、すべて2020年夏に発売予定となっているので、S660ユーザーは必見だ。
ホンダ「N-ONE カフェレーサーコンセプト」のエクステリア
S660の隣に置かれていた「N-ONE カフェレーサーコンセプト」。N-ONEのドレスアップモデルかと思いきや、なんと「6速MT」が搭載されていた。「N-VAN」に6速MTが採用されたことで実現したもので、夏ごろに発売される予定だという。
ホンダ「N-ONE カフェレーサーコンセプト」のインテリア
インテリアをよく見てみれば、電動パーキングブレーキ(EPB)が採用され、ステアリングホイールがN-WGNやN-BOXと共通のものとなっていた。これは「ホンダセンシング」の採用を意味するものと思われる。予防安全機能で遅れを取っていたN-ONEにとって、待望のホンダセンシング搭載である。
新型フィットは2020年2月に発売予定だが、早くも無限仕様とモデューロXの発売を示唆するモデルが展示されていた。
ホンダ「MUGEN フィット」のエクステリア
「MUGEN フィット」は、左右で仕様を変えたユニークな展示方法がとられ、右サイドの赤い仕様が「Dash」、左サイドの白い仕様が「Skip」と名付けられていた。エアロパーツやデカール類のほか、スポーツサイレンサーも装備されている。
ホンダ「フィット モデューロXコンセプト」のエクステリア
いっぽうの「フィット モデューロXコンセプト」は、他のホンダ車にも設定されている、走りを磨き上げたスポーツモデルだ。「ステップワゴン モデューロX」などと共通性のあるデザインのフロントバンパーが目を引くが、エアロパーツは最小限で控えめなイメージ。ホイールも16インチと、必要以上の大径化は避けられている。どんなドライビングフィールを実現しているのか、気になるモデルだ。
東京オートサロン2020のホンダブースは、「走りを楽しみたい人のためのクルマ」が満載だった。これこそ「ホンダらしい」と感じる人も多いのではないだろうか。特にカスタマイズモデルは、どれも発売が楽しみである。
車メディアとSNSの編集者。編集者として企業メディアやSNSのコンテンツ制作を手がける他、自身もライターとして年間約100本の記事を執筆する。自動車の歴史から機能解説、ドライブデートまでその幅は広いが、その主軸はひとりの自動車ユーザーとして「役に立つこと」。1981年、神奈川県生まれ。