レビュー
8年ぶりにフルモデルチェンジを遂げた新型3シリーズ

BMWの手離し運転「ハンズ・オフ機能」も使ってみた! 新型「3シリーズ(320d)」1,200km試乗

昨年、2019年に8年ぶりとなるフルモデルチェンジが実施され、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2019-2020」の「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた、BMW 新型「3シリーズ」。

2019年に、7代目(G20)へとフルモデルチェンジされた、BMW 新型「3シリーズ」。新型3シリーズの特徴は、エクステリアやインテリアの刷新のほか、3眼カメラによる運転支援システムの精度アップ、トレッド幅やホイールベースの拡大による走行安定性の向上など多岐にわたる

BMW 3シリーズは、1975年に登場以来40年以上に渡って市場から支持され、世界累計販売台数1,500万台を達成したプレミアムスポーツセダンだ。2019年に発売された新型3シリーズは、3眼カメラや高性能画像処理プロセッサーの採用によって精度が高められた運転支援技術を全車に標準装備し、スポーティーな走行性能だけでなく実用性も兼ね備えているモデルである。

そして、最近のBMW車で注目の機能と言えば、手離し運転ができる「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」(以下、ハンズ・オフ・アシスト)だろう。高速道路上で渋滞時という条件のもとではあるが、ステアリングやアクセル、ブレーキを離したままでも自動で走行してくれるという便利な機能だ。

今回、ハンズ・オフ・アシストが搭載されたディーゼルターボモデルの「320d xDrive M Sport」を借り出し、1,200kmほどの長距離試乗へとおもむいてみた。新型3シリーズとハンズ・オフ・アシストの実力が、どれほどのものなのかをレビューしていきたい。

■BMW 320d xDrive M Sportの主なスペック
駆動方式:4輪駆動
全長×全幅×全高:4,715×1,825×1,440mm
ホイールベース:2,850mm
車重:1,680kg
最低地上高:125mm
最小回転半径:5.7m
搭載エンジン:2リッター直列4気筒DOHCディーゼル
最高出力:140kW(190PS)/4,000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgm)/1,750-2,500rpm
トランスミッション:電子油圧制御式8速AT
燃費(WLTCモード):15.3km/L

試乗したBMW「320d xDrive M Sport」に搭載されている、「2L直4 BMWツインパワーターボディーゼルエンジン」

今回テストしたBMW「320d xDrive M Sport」は、低回転域と高回転域で切り替わる2ステージターボシステムをBMWとして初めて2L直4 BMWツインパワーターボディーゼルエンジンに採用しており、低回転域での加速性能を向上させている。

また、BMWの四輪駆動システム「xDrive」は、走行中にセンサーが常に路面状況を検知し、車両速度やドライバーのステアリング操作に応じて前後トルク配分を電子制御によって最適化することで、ウェット路面や雪道などのほか、急なコーナーリングなどの際にもアンダーステアやオーバーステアを検知して制御することで、安定した走行を実現している。

路面の変化を常に把握し、4輪のトラクションを最大限に保つことで、さまざまな状況下で安全かつ気持ちのいい走りを実現するBMWの4輪駆動システム「xDrive」

xDriveと、低回転から大きなトルクを発生する新世代のBMWディーゼルエンジンとの組み合わせによって、新型320d xDriveは、燃費効率の向上とともにダイナミックかつ安定した走りを実現している。

エンジンの最高出力は、190PS(140kW)/4,000rpm、最大トルクは400Nm/1,750-2,500rpmで、WLTC燃費消費率は15.3km/Lと公表されている。

M Sportの足回りは硬すぎ!?

「M Sport」は、日本市場において過半数を占めており、それにともなって今回の試乗車(メーカー広報車)もM Sport仕様となっていた。だが、グローバルで見るとM Sportの割合は実のところかなり低いというのが現状だ。そこで、新型3シリーズではグローバルでの台数とユーザーの好みを鑑みて、M Sportはかなりスポーティーな味付けとしている。したがって、M3とまでは言わないが、M Sportは実用上では相当に足が硬く、お腹いっぱいに食べたあとなどはちょっと遠慮したくなるくらいで、正直に言えば明らかにやりすぎなのである。

新型3シリーズ M Sportの足回りは、先代と比べてかなり硬めだが、その後改良が加えられたという情報も

新型3シリーズ M Sportの足回りは、先代と比べてかなり硬めだが、その後改良が加えられたという情報も

と、ネガティブな印象から始めてしまったが、実は2019年7月の生産モデルから、サスペンションにかなりの改良が加えられたとの情報が入ってきている。さすがに本国のドイツでもやりすぎたという見解であることと、BMWジャパンからもこれはちょっと硬すぎという意見が通ったようなのだ。まだ、改良が加えられたモデルに試乗できていないので詳細は語れないものの、少なくとも先代3シリーズのM Sport程度にはなっているのでは、と思われる。

サスペンションの硬ささえのぞけば、新型3シリーズ(320d)のパワフルさや走行安定性の高さはとても魅力的で、1,200kmの行程もまったく苦にならず楽しむことができた

さて、サスペンションの硬さを除いた印象としては、8速ATとエンジンのマッチングは非常によく、うまくエンジンのトルクピークを使いながら走ることができる。変速ショックもほとんどなく、4WDで1,680kgと少々重い車重ながら、ぐいぐいと望む速度まで引っ張り上げていく走り味はとても魅力的だ。

ハンドリングに関しても、M Sportの場合はステアリングの握りが太いため、手のひらが小さい人は疲れるかもしれないが、それ以外で気になるところはない。特に、高速道路での安定性は抜群で、多少のわだちも関係ないとばかりに、ひたすらビシッと直進してくれる。今回、都内と京都を往復したのだが、その行程はとても楽なものであった。

3眼カメラになった「アクティブクルーズコントロール」は進化を感じられず

「アクティブクルーズコントロール(ACC)」と「ハンズ・オフ・アシスト」のスイッチ。ハンズ・オフ・アシストは、高速道路上かつ渋滞時という条件のもと、右下の「MODE」ボタンを押すことで起動する

まず、ハンズ・オフ・アシストを試す前に、3眼カメラとなった「アクティブクルーズコントロール(ACC)」に関して試したが、2眼カメラから3眼カメラとなって、大きく性能が向上したとは感じられなかった。たしかに、これまでよりも少し精度が上がったものの、追い越し車線を走行中の右コーナーなどで左側のクルマを補足して減速することがあったり、白線が消えたときに別の車線をトレースしてしまい進路が乱れることもあった。また、前走車が車線変更した場合、それに続こうとする動きもあった。

ハンズ・オフ・アシストの動作はスムーズで良好

そして高速道路をACCで走行中、ラッキー(?)なことに渋滞に遭遇したので、これ幸いとハンズ・オフ・アシストを試してみた。

ハンズ・オフ・アシストは、使用に際してかなり制限が設けられている。まず、“高速自動車国道および指定都市高速道路”を走行中(ナビによって認識)に、渋滞に巻き込まれた場合にのみ作動するというもの。また、渋滞中であっても50km/hくらいに速度が上がるとハンズ・オフ・アシストは解除されてしまう。同時に、ドライバーがよそ見したり目をつぶったりした場合にも警告が発せられ、最終的には解除される。

「ハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能」(ハンズ・オフ・アシスト)作動中の様子。画像のメーターは「8シリーズ」だが、ハンズ・オフ・アシスト作動中の表示については3シリーズと同じなので、ご参考まで

ハンズ・オフ・アシストの動作そのものは非常にスムーズで、同乗者は気付かないレベルだ。ただし、高速道路での渋滞中のみの作動なので、急なコーナーなどにハイペースで侵入するようなことはないので、当然といえば当然かもしれない。ただし、ハンズ・オフ・アシストとともに、ACCでのブレーキングは若干急なことがままあったことを付け加えておこう。

ただ、ハンズ・オフ・アシスト作動中に渋滞で停止した場合には、時間の制限なく自動で再発進してくれるのは大きなメリットと言えるだろう。

気になるブレーキフィール

ブレーキを踏み、止まる直前のアイドルストップの介入タイミングや、ブレーキの踏力などが一定ではないため、乗りにくい場面がたびたびあった

市街地や高速道路などを走らせていて、もっとも違和感を覚えたのはブレーキフィールだった。ゆっくりとブレーキを踏んでいくと、停止前の減速途中でアイドルストップが介入。そのときに、サーボの踏力が変わったり、ブレーキ踏力を緩めてもそのまま圧力が変わらずに急にカツンと止まったりするなどといった違和感が生じた。しかも、そういったフィーリングやタイミングのズレには統一性がなく、そのためパターンがわからないので非常に乗りにくい。

また、現行3シリーズ以降のBMWに共通するシフトレバー周りの印象として、決して扱いやすいとは言い難い。特に、ブラインドタッチが非常にしにくく、いちいち視線を向けないと操作ができないのは不便であり、安全上の問題もあるだろう。また、事前にカーナビで目的地を設定しておいても、エンジンを止めてしばらくするとそれがリセットされてしまうのは不便だった。

高速道路の燃費は優秀

今回、1,200kmほど走らせた燃費は、市街地が11.9km/L、郊外路が13.3km/L、高速道路が20.1km/Lであった。高速道路で20km/Lオーバーは優秀な成績といえるが、市街地や郊外路ではいまひとつ伸び悩んだ印象だ。トルク配分が優秀なxDriveとはいえ、やはり重量増とともに走行抵抗が生まれていることがうかがえる。現在、3シリーズセダンのディーゼル車はxDriveしか選ぶことができないが、市街地などを主に走るユーザーであれば、いずれ出るであろうFRモデルを待つほうがいいかもしれない。いっぽう、高速道路を主体とするのであれば、迷わずxDriveをおすすめしたい。

ウィークポイントは、やはり乗り心地の硬さ

新型3シリーズは、乗り心地の硬さが一番気になるはずなので、購入検討されている方はできればM Sportと標準車の両方を乗り比べてみてほしい

さて、BMW 320d xDrive M Sportを1,200kmにわたってテストした結果だが、もし今回の試乗車と同じグレードを購入検討されているのであれば、ぜひ一度試乗してご家族など同乗する方と一緒に乗り心地を確認してみてほしい。それは、冒頭にお伝えした乗り心地の硬さが、最大のウィークポイントになる可能性が非常に高いからだ。

だが、もしこのサスの硬さが許容範囲であれば、スポーティーなハンドリングとともに3シリーズならではの爽快なドライブを楽しむことができよう。いっぽう、ちょっと厳しいと思われた方は、標準の足回りのモデルにも試乗していただきたい。残念ながら、メーカー広報車に同じ320dの標準サスペンション仕様車がまだ用意されていないのでコメントできないのだが、想像ではかなりしなやかな足になっているのではないかと想像される。その理由は、BMW本国の判断でM Sportは特化したユーザー向けになったという説明があったので、標準車との差がこれまで以上に大きくなっていると思われるからだ。

新型3シリーズは、パワフルなエンジンやトランスミッションとの相性、走行安定性の高さ、そしてハンズ・オフ・アシストの使い勝手のよさは抜群なので、ネックとなるのは乗り心地だ。気になる方は、ぜひいちど試乗してたしかめてみてほしい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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