レビュー
4代目の新型「フィット」は抜群の“心地よさ”!

やるじゃん、ホンダ 新型「フィット」!超快適な乗り心地にびっくり!

この“開放感”は、驚かずにいられない!ホンダ 新型「フィット」に乗り込んだら、だれもがそう感じることだろう。Aピラーが驚異的なまでに細く、まるで「小田急ロマンスカー」の展望席にいるかのような開放感に浸れるのだ。

ホンダ 新型「フィット」のフロントシートに乗り込めば、視界の広さにだれもが驚くはずだ。その理由は、細くなった「Aピラー」にある

衝突安全性を向上させるためなどによって、クルマのAピラーは年々太くなっている。そして、Aピラーの根元を前へ出しているクルマはほぼ例外なく、太いAピラーが視界を妨げて開放感をスポイルする。開放感だけならいいのだが、ななめ前方視界に死角を作ることで、特に右折時に歩行者を発見しづらい欠点があるのは否めない。

そこで、新型フィットはAピラーの考えかたを変えて「車体の補強ではなく、ガラスを支えるだけ」のピラーとしたことで、断面が55mm(先代は116mm)という細いAピラーを実現したのだ。

ホンダ 新型「フィット」では、Aピラー(画像の赤丸で囲ったピラー)の太さを先代よりもおよそ半分ほどに細くすることで、死角が少なく広い視野角を実現している。そのぶん、Aピラーより手前にある「Aダッシュピラー」を太くすることで、衝突安全性などを確保している

強度や衝突時の安全性を心配する人もいるだろうけれど、その点も心配はいらない。Aピラー後方でフロントドア開口部の直前にある「Aダッシュピラー」と呼ばれる柱を太くすることで、安全面での要求をしっかりと満たしているのである。

細くなったAピラーによって視界が広がるとともに、フードの無い水平基調のダッシュボードやシンプルなデザインによって、インパネ周りは全体的にすっきりとしている

新型フィットの前席に座ると、スッキリとした視界や開放感を狙った空間作りが行われていることがよくわかる。前述の細いAピラーを始め、メーターフードを廃して上部をフラットにするとともに厚みを抑えたダッシュボードや、一般的な3本タイプではなく2本スポークとしたステアリング。そして、シンプルな表示のフル液晶メーター。すべてが、開放感と心地よさのためのアイデアなのだ。その質感も、インパネにまでソフトパッドを張っていることも見逃せない(「BASIC」グレードを除く)。

新型フィットには、大型の7インチ液晶メーターが搭載されており、カラフルで明るく、とても見やすい。また、ACC(アダプティブクルーズコントロール)がオンになっているときなどは、新型フィットの絵柄が正面に現れ、左右のウィンカーやブレーキランプなどが実際のクルマの動作と連動するのもユニークだ

インテリアデザイナーによると、メーターは「全面液晶だからと言って欲張った表示ではなく、シンプルな見やすさにこだわった」と言う。そうは言いつつも、新型フィットのイラストが描かれている先進機能の作動表示では、ブレーキランプやウィンカーに加えてヘッドライトの点灯まで実写の状況に応じて描かれるなど、直接の機能とは関係ない部分で凝っているところもうれしい。

ホンダ 新型「フィット」のフロントエクステリア

ホンダ 新型「フィット」のフロントエクステリア

ホンダ 新型「フィット」のリアエクステリア

ホンダ 新型「フィット」のリアエクステリア

新型フィットの開発は、いい意味で“肩に力が入っていない”のだ。一般的に、新型車を開発する際は「1mmでも広く」とか、「0.1Lでも燃費をよく」「1psでも力強く」といった数値的な進化に力を入れがちだ。しかし、今回はそういった数値的なことではなく、「心地よく付き合える」ことをテーマとしたのだと言う。

とは言え、「心地よさ」と言う曖昧なものを具体化するのは難しい。そこで、新型フィットではいくつかの要素で快適性を追求することで、心地よさへとつなげている。

新型「フィット」のフロントシートに採用されている「ボディスタビライジングシート」は、腰まわりをやわらかく包みこんでくれてクッションが厚く、上級セダンのように座り心地が抜群にいい。「仕事中も、ずっとこのシートに座っていたい」と思ってしまうほどだ

たとえば、「シート」は移動の心地よさに直結するから、新型フィットでは特に重視されている部分だ。実際に座ってみると、本当にやわらかくて座り心地がよく、長時間座っても体がズレないことに気がつく。

その秘密は、フロントシートの構造そのものにある。新開発のシートフレームを採用したうえに、体を支える方法を従来の「Sばね式」から、樹脂のマットで骨盤から頸椎まで支えてくれる「面支持構造」へと変更することで、支持性を高めているのだ。さらに、座面パッドを従来比で30mm以上も厚くすることで、まるで上級セダンのようなやわらかな座り心地を実現している。

新型「フィット」ではフロントシートだけでなく、リアシートの座り心地にもこだわって開発された。座面のクッションを厚くしているほか、シートの角度も最適化されている

リアシートも同様で、広さをキープしつつ居心地のよさがさらに高められている。座面は面積を広げるとともに、先代に比べて24mm厚くしたほか、背もたれの角度を最適化して前席下への足入れ性も向上。「フィット史上最高」と開発陣が誇るリアシートは、座ってみるとたしかに納得できる居心地のよさだ。

余談だが、リヤドアは普通車としてはめずらしく、ほぼ直角まで開く。乗り降りはもちろん、チャイルドシートへ子供を座らせるシーンなどでもメリットを実感できるだろう。

画像は、ハイブリッド車のラゲッジルーム。ガソリン車のラゲッジルームはフラットなのだが、ハイブリッド車のラゲッジルームは、画像のようにリアシートとの接合部分にわずかな段差がある。これは、リアシートの座り心地を改善したことなども影響している

ラゲッジスペースはどうだろうか?テールゲートを開けると、まずは床の低さに驚く。これは先代から受け継がれている美点で、格納時は低く沈むリアシートも同様に従来どおりだ。

ただ、ガソリン車とハイブリッド車では床の状態が少し異なり、前者はフラットで低い床だが、後者はわずかに高く(と言っても、普通のコンパクトカーに対して劣ってはいないが)、若干の段差がある。荷室の絶対容量を重視するなら、ガソリン車を選ぶべきと言える(床下収納スペースもガソリン車のほうが広い)が、ハイブリッド車でも十分に広いので、特別な事情がなければ気にする必要はないだろう。

心地よさと言えば、「乗り心地」も大切だ。フィットはこれまで、操縦安定性はクラスを超えた実力を持っていたが、乗り心地がいいとは正直言い難かった。しかし、新型フィットに乗ってビックリした。まるで、心を入れ替えたかのように快適になっていたからだ。

新型「フィット」は、サスペンションの低フリクション化やダンパースプリングを再セッティングすることなどによって、乗り心地は相当に向上している

驚いたのは、フラット感の高さである。一般道では、当然のことながら路面がデコボコしていたり、橋の継ぎ目といった乗り心地の良し悪しがわかりやすい部分がある。だが、そういった場所を走っても新型フィットはとても快適だ。サスペンションが滑らかに動くと同時に、車体が上下に揺さぶられにくい。乗員への衝撃が少なく、グラグラしないので乗り心地が実にいい。思わず、「フィット、やるじゃん!」と声に出してしまったほどである。

新型「フィット」のハイブリッド車には、2モーターを搭載したハイブリッドシステム「e:HEV」が採用されている。エンジンは主に発電機として動き、モーターで加速するので、電気自動車のような滑らかで力強い加速感を味わえる

■ホンダ 新型「フィット」のグレード毎のカタログ燃費
-1.5Lハイブリッド-
・e:HEV BASIC:29.4km/L
・e:HEV HOME:28.8km/L
・e:HEV NESS:27.4km/L
・e:HEV CROSSTAR:27.2km/L
・e:HEV LUXE:27.4km/L

-1.3Lガソリンエンジン-
・BASIC:20.4km/L
・HOME:20.2km/L
・NESS:ckm/L
・CROSSTAR:19.4km/L
・LUXE:19.6km/L
※上記の燃費値は「FF」の「WLTCモード」

パワートレインのオススメは、ハイブリッド車だ。新型フィットのハイブリッドシステムは、2モーターとあって燃費がいいのはもちろんのこと、加速も滑らかで力強い。これまでのフィットに搭載されていたハイブリッドシステムは、あくまでもエンジンが主体でモーターはそれをアシストするという仕組みだった。しかし、新型は高速域をのぞけば動力源となるのはモーターで、エンジンはモーターへ送る電気を生み出す発電機に徹している。そのため、加速フィーリングは電気自動車と同じ感覚で、未来を感じさせるようなものだ。

新型「フィット」では、1.3Lエンジンを搭載するガソリン車もアクセルと連動して伸びていく加速感がフラットで心地よく、CVTとの違和感も無く扱いやすい

ハイブリッド車は、価格をのぞくすべての面においてガソリン車の上をいく。だが、ガソリン車もかなり進化している。出来のいいCVTと相まって、低回転域でもしっかりトルクを感じさせるフラットな加速を生み、ドライブフィーリングでも加速時にエンジン回転と音だけが先行するような違和感も無い。心地よさをスポイルしないのだ。ただ、よくできているとはいえ、ハイブリッド車のスムーズさを味わってしまうとちょっと物足りない。さすがに、ハイブリッド車は一枚上手だ。

■ホンダ 新型「フィット」のグレード毎の価格
-1.5Lハイブリッド-
・e:HEV BASIC(ベーシック):1,997,600円[FF]/2,195,600円[4WD]
・e:HEV HOME(ホーム):2,068,000円[FF]/2,266,000円[4WD]
・e:HEV NESS(ネス):2,227,500円[FF]/2,425,500円[4WD]
・e:HEV CROSSTAR(クロスター):2,288,000円[FF]/2,486,000円[4WD]
・e:HEV LUXE(リュクス):2,327,600円[FF]/2,536,600円[4WD]

-1.3Lガソリンエンジン-
・BASIC:1,557,600円[FF]/1,755,600円[4WD]
・HOME:1,718,200円[FF]/1,916,200円[4WD]
・NESS:1,877,700円[FF]/2,075,700円[4WD]
・CROSSTAR:1,938,200円[FF]/2,136,200円[4WD]
・LUXE:1,977,800円[FF]/2,186,800円[4WD]
※価格はすべて税込

ガソリン車とハイブリッド車では、30〜50万円程度の価格差(グレードによって異なる)があるから選択は悩ましいけれど、数年乗って手放すときの価値は一般的にはハイブリッド車のほうが高くなることも考慮したい。残価設定ローンを組んでみると、月々の支払額の差は意外と小さく感じられるだろう。

グレードラインアップは、シンプルな「BASIC(ベーシック)」、快適装備が充実した「HOME(ホーム)」、カジュアルな雰囲気を持った新提案の「NESS(ネス)」、クロスオーバーSUVテイストの「CROSSTAR(クロスター)」、そして豪華仕様の「LUXE(リュクス)」。全グレードでトランスミッションは無段変速で、いずれもガソリン車とハイブリッド車、FFと4WDが選択できる。

おすすめグレードは、「CROSSTAR(クロスター)」だ。CROSSTARは、ほかのグレードよりも最低地上高が高められている(CROSSTAR:160mm/他グレード:135mm、どちらもFFの場合)ことによって、乗降性がよく、乗り味もしなやかになっている

個人的な注目は、「CROSSTAR」だ、アウトドアテイストのスタイルが今どき(トレンドの反映も新車選びには大切だと思う)だし、一般的な(ミニバン対応ではない)機械式立体駐車場にも収まる全高なので、マンション暮らしの人でも買いやすい。そして注目したいのは、ほかのグレードに比べてわずかだが着座位置が高まっていることによって、乗降性がよくなっていることだ。クルマを使うたびに実感することになる乗り降りのしやすさは、地味ながら意外と大切なことだ。

「心地よさ」にこだわった新型フィットを今回試乗して感じたのは、新しいのではなく“原点回帰”のように思えたことだ。初代フィットも、それまでのヒエラルキーを無視した生活を豊かにするクルマで、使い心地を何よりも重視していた。しかし、2代目以降は「もっと頑張らなきゃ」という意気込みのもとに、さまざまな性能アップが図られた。その結果、2代目以降は先代のような心地よさや使い勝手よりも、高級感や上級志向を重視していたようにも思える。

「そんなに頑張ることよりも、いかに充実した時間を過ごせるかのほうが大事じゃない?」 新型フィットは「クルマが提供する価値」という、考え方の根本的な変化がもっとも大きなトピックなのかもしれない。

新型「フィット」で新たに搭載された「電動パーキングブレーキ」によって、ACCがオンの際に渋滞で止まっても、前方車の追従が解除されなくなったことも地味にうれしいところだ

個人的には、ACC(アダプティブクルーズコントロール)中に渋滞した際の追従発進に対応する「渋滞追従機能」がうれしい。ガチライバルのトヨタ「ヤリス」は、低速域になるとACCが解除されてしまうし、マツダ「マツダ2」は0km/hの停止まではしてくれるものの、停止保持はできないからだ。

最後に、蛇足ながら新型フィットに足りないものを挙げておくと、それはクルマの前後左右を画面に映す「360度モニター」が無いことだ。昨今は、軽自動車でも360度モニターの搭載例が増えており、一度使えば手放せなくなるほどに便利な装備だけに、今後はフィットにもぜひ用意してほしいと思う。

今回の試乗で、新型フィットの「心地よさ」が本物であることを大いに実感することができた。新型フィットは、購入した人をきっと幸せにしてくれるクルマに違いない。

工藤貴宏

工藤貴宏

自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに執筆中。心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」

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