バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
街中も高速道路の走行も快適! そして、未舗装路もイケちゃう

乗りやすくて楽しいヤツ! 150ccクラスのアドベンチャー系スクーター「ADV150」の人気に納得


未舗装路も走れるホンダのスクーター「ADV150」は、2020年2月に発売された時点で年間販売計画数の3,000台を大きく上回る4,000台の受注を集めた人気車種。その人気の理由を確かめてみた。

本気の作り込みを感じるアドベンチャー系スクーター

2019年に開催された「東京モーターショー2019」でADV150を初めて見た時、おもしろそうなマシンだとは思ったものの、正直、4,000台もの事前受注を集めるとは予想外だった。というのも、149ccのエンジンを搭載するADV150は、近年、売り上げを伸ばしているランニングコストの安い原付二種(排気量125cc未満)ではなく、その上の250ccクラスとなるためだ。原付二種とは異なり高速道路が走れるメリットはあるが、排気量が大きくパワーもある250ccスクーターと比較されることになるので、149ccという排気量は125ccほど維持費が安くなく、250ccほど速くもないやや中途半端な位置づけとなる。

ADV150のベースとなったのは排気量149ccの「PCX150」。PCXシリーズには、原付二種のスクーターとしては圧倒的な人気を誇る排気量124ccの「PCX125」というモデルもある。筆者はPCX150とPCX125を乗り比べたことがあるが、排気量が大きいPCX150のほうが加速力などに余裕があり、魅力的に感じた。しかし、実情、売れているのは圧倒的にPCX125。このことからも、ADV150も125ccクラスで出したほうが売れたのではないかと思えてならなかったのだ。

ベース車となったPCX150。このクラスのスクーターとしては大きめの前後14インチというタイヤを装備している点など、排気量以外は同シリーズのPCX125と大きな違いはない

原付二種のPCX125の排気量を拡大したPCX150をベースとするADV150の車体は決して大柄ではない。しかし、ADV150は排気量がはるかに大きい同社の排気量750ccクラスの「X-ADV」と見紛うほどの迫力がある。250ccクラスのスクーターでありながら、実車を目の当たりにすると存在感がすごいのだ。X-ADVに準じた外観は、大きめのスクリーンと2眼ヘッドライトで構成されるフロントフェイス、長めのストロークを与えられたサスペンションが目を引く。タイヤも未舗装路にも対応するブロックパターンとされており、アドベンチャー系の雰囲気をあふれさせているものの泥臭いところはなく、都会にも似合いそうな質感になっているところは4輪におけるSUVと共通する。

サイズは1,960(全長)×760(全幅)×1,150(全高)mmで、車重は134kg。ホイールベースはPCX150より10mm伸ばされ、1,325mmとなった

外観イメージは、同じアドベンチャー系スクーター「X-ADV」のもの踏襲。排気量が大きい分、車体サイズも2,230(全長)×910(全幅)×1,345(全高)mmと大きいが、ADV150はX-ADVと変わらないほどの存在感がある

<関連記事>予想以上に楽しい! オフロードも走行できるホンダの“遊べるスクーター”「X-ADV」

兄貴分の「X-ADV」と同じ雰囲気に仕上げられたフロントフェイス

兄貴分の「X-ADV」と同じ雰囲気に仕上げられたフロントフェイス

フロントのタイヤサイズは110/80-14M/C。クラス最長となる130oストロークの正立タイプのサスペンションを採用する

リアタイヤは130/70-13M/C。スクーターに多い前後同径ではなく、オフロード車のような前後異径とされている。サスペンションはリザーバー付きで、ストロークは120mm

フロントにはABSを搭載した油圧式ディスクを採用。未舗装路でタイヤをロックさせてUターンなどをしやすくするためか、リアにはABSが搭載されていない

幅広のバーハンドルも、アドベンチャー系の雰囲気を強めている。オフロードバイクなどに採用されることが多い、クランプ部が太く、手で握る部分に向かって細くなっていくテーパー形状となっているので、見るからに車体の押さえが効きそう。マウント個所もPCX150よりかなり高い位置になっており、ADV150は単にベースマシンの外装を変えただけでなく、基本設計から見直されていることが感じられる。

高い位置にセットされたテーパーバーのハンドルは、オフロードバイクのような雰囲気を強くする。ハンドル幅は、このクラスのスクーターとしては幅広だ

ハンドル中央に装備された大型の液晶メーターの質感も高く、プレミアムさを感じる

ハンドル中央に装備された大型の液晶メーターの質感も高く、プレミアムさを感じる

搭載されているエンジンは、「eSP」(enhanced Smart Powerの略)と呼ばれる、動力性能と燃費性能を両立したもの。基本設計はPCX150と同じだが、吸排気系のセッティングを見直すことで、より低中回転域での力強さ向上と高回転域での伸びを両立させている。駆動系も低中速域での加速性能を重視したセッティングだ。

最高出力15PSというスペックはPCX150と変わらないが、駆動系も含めて低中速域での加速を重視した仕上がり。出力とトルクの曲線を見ても、低中回転域の出力が向上しているだけでなく、高回転域の伸びもややアップしていることがわかる

マフラーはショートタイプでやや上方にアップしたデザインに

マフラーはショートタイプでやや上方にアップしたデザインに

オンロードからオフロードまで試乗!

排気量は小さいものの、ADV150はアドベンチャー系スクーターなので、街中で使えるだけでなく、オフロード走行や高速走行もしやすい設計となっている。その実力を試すため、少し遠出し、未舗装路の林道なども走ってみた。

シート高はスクーターとしては高めの795mmだが、サスペンションが沈み込むため、足つき性は悪くない。身長175cmの筆者の場合、両足のつま先がしっかりと設置する。車重も軽めなので、小柄な人でも不安なく乗れそうだ

厚さが十分あるシートはクッションやコシがあり、座り心地は良好。前方が絞り込まれた形状となっており、これも足つき性に寄与する

シート下にある収納スペースはPCX150より1L小さい27Lとなったが、フルフェイスのヘルメットとグローブが余裕で入れられるので、買い物やちょっとした遠出の際にも役立つだろう

まずは、スクーターとしての使い勝手を街中でチェック。アクセルを開けるとグッと車体を押し出すようなトルクはベースとなったPCX150よりも強く、右手を軽くひねるだけで交通の流れをリードできる。大柄に見える車体だが、実際に乗ってみると取り回しはよく、狭い路地でもてあますこともない。安定志向が強い印象はあるが、このクラスのスクーターらしい小回りのよさは損なわれていないので、街中走行で多い、裏道を抜けるような走りも得意だ。

低回転域から力のあるエンジンなので、加速感も小気味よくキビキビと走れる

低回転域から力のあるエンジンなので、加速感も小気味よくキビキビと走れる

タイヤの径が大きく太めなので、バンクしている時の安定感も高い

タイヤの径が大きく太めなので、バンクしている時の安定感も高い

続いて、高速道路へ。排気量が149ccと小さいのでパワー不足を心配していたのだが、それは杞憂に終わった。トルクがあるため高速道路入口の合流もスムーズにこなせ、そこからの加速ももたつくこともなく巡航速度まで乗せられる。高回転域の伸びには限界があるので、追い越し加速などは少し気を遣う必要はあるものの、巡航時の安定感は高く、高速道路を使ったツーリングなどもストレスなくこなせそうだ。

高速走行時に役立ったのが、体に当たる風を防ぐスクリーン。2段階に高さの調整ができ、高い位置にセットしておくと想像以上に高い防風効果が得られた

カーブが連続するワインディング・ロードも、思った以上のハイペースで走ることができた。サスペンションストロークは長めなので挙動は大きいものの、動き方がスムーズで節度があるため、タイヤが路面に押し付けられている感覚が伝わってくる。カーブの途中でギャップがあるような路面でも、サスペンションがショックを吸収してくれるので安心だ。

そして、未舗装の林道に到着。恐る恐る走りだしたが、タイヤが思った以上にグリップしてくれたため、怖さはすぐに消し飛んだ。長いストロークのサスペンションがギャップを吸収してくれ、タイヤのグリップ感覚も伝わってくるので、砂利道程度のオフロードであれば不安はない。むしろ、積極的にライディングを楽しめる。幅広のハンドルで車体を押さえ込むことができるのも気分がいい。

問題なく走行できるだけでなく、楽しめるほどの走りができるのがうれしい

問題なく走行できるだけでなく、楽しめるほどの走りができるのがうれしい

途中、石がゴロゴロしている土の路面も出てきたが、ややペースを抑え気味にすることで、怖い思いをすることなく走破できた

ブロックがゴツゴツとした本格的なオフロードタイヤではないものの、思った以上にグリップしてトラクションもかけられた。舗装路の乗り心地も上々

試乗を終えて

街乗りでよく使う回転域のトルクが豊かなので交通の流れをリードしながら走れ、高速道路でも力不足を感じることもないADV150は、日常使いからツーリングまで“使える”だけでなく“楽しめる”バイクと言えるだろう。しかも、ちょっとした未舗装ならちゅうちょせずに進める走破性の高さもあるので、普段乗っているバイクでアクティブな旅に出かけることもできる。

今回、実際にそうしたルートを走ってみたところ、ADV150が原付二種ではなく、排気量125cc以上250cc以下の軽二輪としてリリースされた理由も見えてきた。原付二種スクーターは街中では速くて乗りやすいため、普段使いには最適だが、高速道路は走れないので遠出は不向き。峠道などでも、登りではパワー不足を感じる場面もあるだろう。しかし、150ccクラスのエンジンならば、そうしたストレスから開放される。路面にパワーを食われやすい未舗装路が楽しめたのも、+25ccの排気量があったからこそだろう。そう考えると、ADV150が149ccとされたのは必然。事前受注で4,000台を突破したのも、日常の足としてだけでなく、積極的にバイクを楽しみたいと考える人たちがそれだけ多いということなのかもしれない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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