レビュー
N-BOXを超える数々の魅力を身に付けた!

超人気のN-BOXに挑む!三菱 新型「eKスペース」「eKクロススペース」試乗

三菱自動車と日産は、2011年に合弁会社の「NMKV」を立ち上げてからは軽自動車を共同で開発している。その共同開発によって最初に発売されたのが、2013年に登場した三菱「eKワゴン」、日産「デイズ」であった。そして、2014年にはスライドドアを持つ軽ハイトワゴンの三菱「eKスペース」、日産「デイズルークス」が発売された。

2020年3月に発売された、2代目となる三菱 新型「eKスペース」(左)と「eKクロススペース」(右)

2020年3月に発売された、2代目となる三菱 新型「eKスペース」(左)と「eKクロススペース」(右)

そんなNMKVの提携も第2世代に入り、2020年3月には2代目となる三菱「eKスペース」「eKクロススペース」が発売された。今回、ノーマルエンジン車のeKスペースとターボエンジン車のeKクロススペースに試乗したのでレビューしたい。

試乗したグレードは、ノーマルエンジンを搭載するeKスペースの「G」(1,542,200円)と、ターボエンジンを搭載したeKクロススペースの「T」(1,859,000円)だ。

三菱「eKクロススペース」のフロントエクステリア

三菱「eKクロススペース」のフロントエクステリア

eKクロススペースの商品開発は巧みだ。フロントマスクは、「デリカD:5」などと同様に、昨今の三菱車に共通する「ダイナミックシールド」デザインに仕上げられている。2019年に発売された「eKクロス」と同じ手法だ。

三菱「eKクロススペース」のリアエクステリア

三菱「eKクロススペース」のリアエクステリア

また、フェンダーのホイールアーチやボディの下側には、SUVの定番パーツであるブラックのガーニッシュを備える。天井が高い軽ハイトワゴンは売れ筋のカテゴリーで、さらに今はSUVの注目度も高い。つまり、eKクロススペースは軽ハイトワゴンとSUV、この好調に売れている2つの要素をあわせ持ったクルマに仕上げられているのだ。

三菱「eKスペース」のインパネ

三菱「eKスペース」のインパネ

三菱「eKクロススペース」のインパネ

三菱「eKクロススペース」のインパネ

インパネなど内装のデザインは、標準ボディのeKスペース、SUV風のeKクロススペースともに基本的には同じだ。立体的な形状で、メーターの視認性やスイッチの操作性もいい。車内全体の質も高い。

特に、eKクロススペースにメーカーオプションの「プレミアムインテリアパッケージ」(55,000円)を装着すると、合成皮革とファブリックを使った撥水シート生地が採用され、インパネにはやわらかなパッドが採用される。糸を使った本物のステッチも施され、質感はコンパクトカーを飛び越え、ミドルサイズカー並みになる。

収納設備は豊富で、助手席の前には、上からトレイ、引き出し式の収納設備、グローブボックスが備わる。インパネ中央のトレイも手前に引き出せるから、車内で軽食を採ったりするときなどに便利だ。

三菱「eKスペース」のフロントシート

三菱「eKスペース」のフロントシート

フロントシートの座り心地は、背もたれが腰を包む形状で、おおむね快適だ。サイズにも余裕がある。ただし、着座位置の上下調節機能は改善が必要だ。座面だけが上下するので、調節位置によって腰から大腿部の支え方が変わってしまうのだ。これは、シート全体を上下させる一般的なタイプのほうが好ましいだろう。

三菱「eKスペース」のリアシート

三菱「eKスペース」のリアシート

リアシートは、座面の奥行寸法が短い。しかも、座り心地が硬めで床と座面の間隔が大きく確保されているので、大腿部を押された感覚になりやすい。小柄な乗員に配慮して、座面の奥行を短く抑えたことは理解できるが、もう少しやわらかく仕上げてほしいと思う。座り心地も、いまひとつだ。

だが、リアの居住空間は相当に広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ4つ分だ。センチュリーの3つ半をも上回る。頭上にも握りコブシ2つ分の余裕を持たせた。

広さはあるが、リアシートをもっとも後端まで寄せると、乗員の頭部とリアゲートが接近して追突時の不安を感じる。そこで、リアシートに座ったときには膝先空間が握りコブシ2つ分までスライド位置を前寄りに調節したい。それでも十分快適に座れるし、リアゲートとの間隔も確保できる。

三菱「eKクロススペース」のリアシート。リアシートには、前後の「スライド機能」が採用されている。スライド量は320mmと大きいので、リアシートを後ろへ下げてゆったりと座ったり、前へ動かして荷室に荷物をたくさん載せたりと、使い勝手が高そうな機能だ

シートアレンジは多彩だ。リアシートには、前後に320mm調節できる「スライド機能」が採用されている。リアシートにチャイルドシートを装着したときなどは、前寄りにスライドさせると信号待ちのときなどに運転席から子供のケアもしやすい。

三菱「eKクロススペース」のラゲッジルーム。リアシートを前方へ倒せば広大な荷室となり、多くの荷物を積むことができる

リアシートの背もたれを前方に倒すと、座面も連動して下がり、大容量の荷室に変更できる。広げた荷室の床には少し傾斜ができるが、天井が高いので自転車のような大きな荷物も積みやすい。前後スライド、格納機能ともに左右独立式だから使い勝手もいい。

三菱「eKスペース」は前方から側方、後方まで全方位で視界がよく、運転しやすい

三菱「eKスペース」は前方から側方、後方まで全方位で視界がよく、運転しやすい

市街地の運転感覚は、軽自動車らしく扱いやすい。フロントウィンドウとピラーの角度を立てて、前側には細長いサイドウィンドウも装着されているから、前方や斜め前の視界は良好だ。サイドウィンドウの下端も低めだから、側方も見やすい。ボディ後端のピラーは少し太いが、後方視界を損なう心配はない。周囲は見やすく、最小回転半径は14インチタイヤ装着車が4.5m、15インチは4.8mだから、小回りの利きもいい。

三菱「eKスペース」の試乗イメージ

三菱「eKスペース」の試乗イメージ

動力性能は、eKスペースGでも車重が950kgに達するから、660ccのノーマルエンジンではボディが重く感じる。それでも、最大トルクは6.1kg-m(3,600rpm)で、実用回転域で発生するため、背の高い軽自動車のノーマルエンジン車としては運転しやすい。エンジンノイズは抑えられてエンジンの回転感覚が滑らかなので、動力性能は大人しいが走りは上質だ。

三菱「eKクロススペース」の試乗イメージ

三菱「eKクロススペース」の試乗イメージ

ノーマルエンジン車を試乗してパワー不足を感じたり、高速道路などを走る機会が多いユーザーは、ターボエンジン車を検討しよう。最大トルクは10.2kg-m(2,400〜4,000rpm)なので、ノーマルエンジンの1.7倍に増強される。エンジン回転数が高まるほど速度上昇が活発化するターボの特性を少し感じさせるが、1Lエンジンを積んでいるような感覚で運転できる。ターボエンジン車は、ノーマルエンジン車に比べてアクセルペダルを深く踏む機会が減って、運転しやすい印象だ。

WLTCモード燃費は、ノーマルエンジンが18.8km/L、ターボエンジンは20.8km/Lだから、ターボになっても燃費数値は10%しか悪化しない。最大トルクが1.7倍に増えることを考えると、eKクロススペースのターボエンジンは効率がいい。

三菱「eKスペース」の試乗イメージ

三菱「eKスペース」の試乗イメージ

走行安定性は、全高が1,700mmを超える軽自動車としては満足できるものだ。峠道などを走ると、操舵に対する反応が鈍めで車両の向きが変わりにくいが、後輪の接地性は高い。幅が狭く背の高いボディでは、安定性を最優先させないと危険が生じるから、曲がりやすさよりも直進時を含めた安定性を大切にしている。

また、グレードとタイヤによる乗り心地の違いも見られた。eKクロススペースTは15インチタイヤ(165/55R15)を装着しており、14インチ(155/65R14)を履いたeKスペースGに比べると、後輪の接地性を優先させながら少し機敏に曲がる。その代わり、eKクロススペースTは乗り心地が硬い。

安定性と乗り心地のバランスは、14インチタイヤを履いたeKスペースGが良好だ。若干硬めながら、段差を乗り越えたときのショックの伝わり方は、eKクロススペースTよりも穏やかに感じる。操舵感は少し鈍いが、もともと背の高い軽自動車はスポーティーに走るためのクルマではないから、不満は生じないだろう。

三菱「eKスペース」のステアリング右側に備えられている「マイパイロット」作動スイッチ。日産車に採用されている「プロパイロット」と基本的に同じものだ

装備については、「先進快適パッケージ」(71,500円)に含まれる「マイパイロット」と「電動パーキングブレーキ」に注目したい。車間距離を自動制御できる全車速追従型クルーズコントロールと、車線の中央を走れるように操舵を支援する機能を併せ持つ。日産「ルークス」の「プロパイロット」と同じ内容だが、セレナに採用された初期のタイプに比べて、制御が進化している。直進時に、ハンドルが左右に振られるような不都合がかなり解消されているので、使い勝手は高いだろう。

マイパイロットの進化には、センサーの充実も影響を与えている。eKワゴン、eKクロスでは「単眼カメラ」のみだが、eKスペース、eKクロススペースでは「ミリ波レーダー」が加わっている。そのために、マイパイロットの精度も高い。

また、センサーの充実によって、「衝突被害軽減ブレーキ」は2台先を走る車両も検知する。ドライバーから見えない部分で生じたトラブルにも反応して、早い段階で警報を発してくれる。

eKスペースをルークスと比べたときの不満点は、三菱では日産と違って「SOSコール」(ヘルプネット)が用意されていないことだ。SOSコールがあると、前席の天井に装着された専用スイッチでオペレーターに通報することができ、エアバッグの作動に連動して自動的に救急や消防に連絡してもらえる。衝突被害軽減ブレーキなどと同様に、すぐれた安全装備なので、eKスペース、eKクロススペースにも設定してほしい。

逆に、eKスペース、eKクロススペースのメリットと言えば、標準ボディとなるeKスペースにもターボが用意されていることだ。ルークスのターボは、「ハイウェイスターGターボプロパイロットエディション」のみだから、価格が1,932,700円と高い。その点、標準ボディとなるeKスペースTは、ターボを装着しながら1,635,700円に収まる。eKスペースTは約30万円安い。

買い得感が高いのは、今回試乗した「eKスペース」のノーマルエンジン車「G」グレードだ

買い得感が高いのは、今回試乗した「eKスペース」のノーマルエンジン車「G」グレードだ

そこで、eKスペースのグレードを選ぶときは、買い得感を重視するなら標準ボディにノーマルエンジンを搭載したeKスペースGを検討しよう。

そして、eKスペースGを試乗してパワー不足を感じたのなら、ターボのeKスペースTを検討したい。eKスペースTの価格は、eKスペースGに比べて93,500円高いが、装備も充実していてアルミホイール、パドルシフト、本革巻きステアリングホイールなどが加わる。これらの装備を価格に換算すると、少なくとも5万円以上になるため、動力性能が高く燃費の悪化を抑えた高効率なターボが実質4万円で装着されることを考えれば、eKスペースTも買い得だ。そして、SUV風の外観が好みならノーマルエンジンのeKクロススペースG、あるいはターボのeKクロススペースTを選びたい。

昨今の軽ハイトワゴン市場は、ホンダ「N-BOX」が圧倒的に売れていて揺るがない。N-BOXは車内が広く、燃料タンクを前席の下に搭載しているので荷室の床も低い。荷物の収納性をeKスペース、eKクロススペースと比べると、N-BOXが勝る。だが半面、走行安定性や運転支援機能においては、eKスペース、eKクロススペースのほうがすぐれている。

各社、N-BOXの一強を崩そうと、軽ハイトワゴンへ相当な力を注いでクルマを作りこんでいる。そのため、表面的な外観は似ていながらも、それぞれ個性的な魅力を有していて、乗り心地などもかなり異なる。eKスペース、eKクロススペースのように走りがいい軽ハイトワゴンもあるので、選ぶ際には展示車に触れるだけではなく、実際に乗り比べてみて判断したほうがいいだろう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る