バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
現行のMTシリーズすべてに試乗しているバイク野郎が新型「MT-03」をレビュー

マシンのポテンシャルを使い切って走れる感覚! ヤマハ「MT-03 ABS」の楽しさに激ハマり!!


ヤマハバイクの中核を担うMTシリーズの中でも人気の高い軽二輪クラス「MT-25」と「MT-03」が2020年3月にモデルチェンジ。正直なところ、車検が不要な排気量のMT-25(249cc)のほうが売れ筋だと思うが、先代モデルで乗り比べた際、MT-03のほうがバランスがよい印象だったのと、加速力を重視したMTシリーズのキャラクターにも合っていると感じたので、今回は新型「MT-03 ABS」に試乗してみた。

上位モデルとイメージを共通し、走行性能も向上した新型「MT-03」

現行のMTシリーズには、排気量249ccの「MT-25」、320ccの「MT-03」、688ccの「MT-07」845ccの「MT-09」、997ccの「MT-10」の5車種がラインアップされている。2014年に登場したMT-09が火付け役となり、その後、排気量の異なる車種を追加しながらシリーズを拡充。アップライトなハンドルに加速性能を重視したエンジン特性、そして先鋭的なデザインがMTシリーズに共通する特徴となっている。

846ccの3気筒エンジンを搭載し、パワフルな加速感で発売と同時に大きな支持を集めたMT-09は、現行シリーズの源流となったマシン。2017年にモデルチェンジし、より先鋭的なデザインに一新された

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2015年に発売された「MT-25」と「MT-03」は排気量が小さく、エントリーモデル的位置付けとなる。エンジンやフレームなどのプラットフォームは同社のスーパースポーツモデル「YZF-R3」「YZF-R25」と共通ながら、YZFシリーズのようなフルカウルはなく、MTシリーズらしくアップタイプのハンドルを装備。スポーツネイキッドという世界観で人気を博した。

MT-25/03とプラットフォームを共有するYZF-R3は、低いセパレートタイプのハンドルを装備。2019年モデルから倒立フォークを採用している

2019年に発売された先代のMT-03。カラーバリエーションの変更は行われているものの、2015年に登場したモデルと車体構成は変わらない

そんなMT-25/03が今回、大幅なフェイスリフトを行い、モデルチェンジ。ABSが標準装備され、車名は「MT-25 ABS」「MT-03 ABS」となった。フレームやエンジンは変わっていないものの、フロントマスクやタンクカバーなどのデザインを一新するとともに、フロントフォークを倒立式に変更。テールカウルまわりもよりシャープさを際立たせるなど、迫力のあるモビルスーツ的なルックスとなっている。メーターもフルデジタルとなり、シリーズの上位モデル「MT-09 ABS」とイメージが共通された印象だ。アップタイプのバーハンドルである点は従来同様だが、先代モデルより高い位置となり、プラットフォームを共有するYZF-R3/R25とはキャラクターの違いがさらに明確となったと言えるだろう。なお、今回取り上げるのはMT-03 ABSだが、排気量が異なるだけで、車体構成やエンジン関連以外のスペックはMT-25 ABSも同じ。

新型「MT-03」は、前述の先代モデルと比べるとイメージが大きく異なる

新型「MT-03」は、前述の先代モデルと比べるとイメージが大きく異なる

ヘッドライトはLED化。2灯のポジションランプに超小型のヘッドライトを備えている

ヘッドライトはLED化。2灯のポジションランプに超小型のヘッドライトを備えている

剛性の高い倒立式フロントフォークになったことで迫力が増しただけでなく、走行性能もブラッシュアップされている。インナーチューブ径は38mm

ガソリンタンクを覆うカバーも刷新。先代モデルより幅が51mm拡大され、MTシリーズの大排気量車に負けない存在感ある見た目となった

サイドにある大型化されたエアスクープも、フロントまわりのインパクト向上に貢献

サイドにある大型化されたエアスクープも、フロントまわりのインパクト向上に貢献

テールカウルは先代モデルにあったグラブバーを廃し、よりシャープなイメージに。タンデムシートは小さいので、2人乗りは少し大変そう

テールランプやウインカーもLEDとなり、スリムな印象に

テールランプやウインカーもLEDとなり、スリムな印象に

アナログとデジタルを組み合わせたメーターから、コンパクトなフルデジタルタイプに変更。ギアポジションインジケーターも追加され、利便性が増している

ハンドル高が従来モデルより40mmアップ。より上体が起きたライディングポジションとなる

ハンドル高が従来モデルより40mmアップ。より上体が起きたライディングポジションとなる

ブレーキがシングルディスクという点は変わらないが、ABSが標準装備に

ブレーキがシングルディスクという点は変わらないが、ABSが標準装備に

ラバーのない、ソリッドなイメージのステップは従来モデルと同様

ラバーのない、ソリッドなイメージのステップは従来モデルと同様

排気量以外のスペックはほぼ同じMT-25 ABS とMT-03 ABSだが、MT-03 ABSにのみラジアルタイヤが装備されている。タイヤサイズは両モデル共通ながら、ラジアルタイヤのほうが路面状況を問わず高いグリップ力が発揮されるほか、ハンドリングの軽快さや乗り心地も向上するという。

新パターンのラジアルタイヤが装備されていることも、今回、試乗車にMT-03を選んだ理由のひとつだ

新パターンのラジアルタイヤが装備されていることも、今回、試乗車にMT-03を選んだ理由のひとつだ

タイヤサイズは前110/70、後140/70。複雑な造形ながら軽量そうなホイールは、デザイン的にも所有欲をくすぐる

「楽しい!」のひとことにつきたMT-03 ABSでの試乗

先代のMT-03に試乗した時にもバランスのよさを実感しているが、足回りやライディングポジションが改良されたことで、新型はどのような乗り味となったのだろうか。街中を中心に、高速道路や郊外のワインディングにも足を伸ばしてみた。

サイズは2,090(全長)×755mm(全幅)×1,070mm(全高)mmで、重量は169kg。伸長75cmの筆者がまたがってみると、両足のかかとまで接地した。シート高は780mmだが、シートの両端が絞り込まれたデザインなので足付きは数値以上に良好だ

車体にまたがり、最初に感じた大きな変化は乗車姿勢がラクになったこと。ハンドル位置が先代モデルより高くなったことで、上体が起きた姿勢となるからだ。加えて、このライディングポジションは前方の見通しもいい。

より自然なライディングポジションになったので、長時間乗車しても疲れにくそう。また、ハンドルの形状が絶妙! 手前に少しベンドしているため、グリップを外側から握る姿勢が自然に取れる

320ccのエンジンは最大トルクが29Nm(MT-25 ABSは23Nm)で低速トルクも太いため、クラッチ操作に気を遣うことなく大排気量車のように走り出すことが可能。街乗りでも、加速したい時にいちいちシフトダウンをしなくてもアクセルをひねるだけでスピードが乗せられる。排気量が70cc小さいMT-25 ABSでは、この走行感は得られない。

排気量320ccの水冷直列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載。最高出力は42PSで、MT-25 ABSより排気量は71cc大きく、最高出力も7PS高い

それでいて、公道の速度域でエンジンを高回転まで回せる320ccクラスならではの魅力も健在。回転上昇もスムーズで、1万回転オーバーまで気持ちよく回せる。これは、エンジンのストローク値はMT-25 ABSと共通だが、ボアのみ8mmアップで排気量を上げたショートストロークエンジンを搭載しているからこそ味わえる特性だろう。

高回転までスムーズに回るエンジンはバランスが絶妙

高回転までスムーズに回るエンジンはバランスが絶妙

そして、フロントサスペンションが倒立化されたことでブレーキングの安定感が向上しているようだ。とはいえ、むやみに硬い印象ではなく、よく動く特性なので街乗りでも扱いやすい。コーナーリングでの寝かし込みは非常に軽快で、スパッと曲がることができる。筆者は現行のMTシリーズすべてに試乗しているが、街中での扱いやすさはMT-03 ABSがもっともすぐれていると感じた。また、タンクカバーの幅が広くなり、またがっただけで自然にニーグリップできる形状となったことでマシンとの一体感が高まった。

ハンドリングが軽快なので、なんてことない曲がり角を曲がるだけでも十分に楽しい。トルクが太いため、立ち上がりの加速も俊敏だ

街乗りを堪能したあとは、高速道路へ。ただ、ここ最近、筆者は排気量が大きなモデルにばかり乗っていたので、320ccのMT-03 ABSをアンダーパワーに感じてしまいそうだったのと、上体が起きたライディングポジションになったことで風圧を受けやすそうだったことから、正直、高速走行については期待していなかった。しかし、実際に走行してみると印象は一変。42PSというパワーは、高速道路を走っても十分な余裕がある。合流車線を登って行くシーンでも大きめにアクセルを開ければ予想以上のダッシュ力を見せてくれ、追い越しなどでもギアをひとつ落とすだけで素早い加速が可能。大排気量車の場合、アクセル操作だけで加速できるので、この辺の操作をおこたりがちだが、ギアチェンジでパワーバンドをキープしながら走るのは、マシンを使い切っている感覚があって非常に楽しかった。

試乗を終えて

大排気量車はアクセルの一捻りで圧倒的な加速を得られ、コーナーリングでも絶大な安定感があるが、逆に言うと、公道でパワーバンド(エンジンがもっとも効率よく力を発揮できる回転域)を使って走るのは、速度が出すぎるため難しい。その点、MT-03 ABSのような中間排気量車は、ギアチェンジを駆使して公道でもおいしい回転数を使って走れるうえ、コーナーリングも軽快。マシンのポテンシャルを使い切って走っているような感覚が得られるのが最大の魅力だ。このクラスの排気量車に試乗するのは久しぶりだったが、マシンを操る楽しさを存分に感じることができた。

ただ、終始楽しかった分、サスペンションの調整機構について少し欲が沸いてくる。現状ではリアのプリロード(スプリングに対する初期荷重)くらいしかいじることができないが、前後ともに減衰力調整があれば、より走るシーンに合わせてセッティングすることができるのに……と。MTシリーズの上位モデル「MT-09 ABS」には、前後ともにフルアジャスタブルのサスペンションを採用した「MT-09 SP ABS」というバリエーションモデルもラインアップされているので、そのような選択肢をMT-03 ABSにも用意してほしいものだ。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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