レビュー
よりスポーティーに、スタイリッシュに生まれ変わった新型アコード!

外観だけじゃない、中身もスポーティーに生まれ変わった新型「アコード」に試乗

ホンダの主力セダンである「アコード」が、フルモデルチェンジを受けた。

日本では2020年2月に発売された、ホンダ 新型「アコード」

日本では2020年2月に発売された、ホンダ 新型「アコード」

ただし、正確には「新型」とは言い難い。なぜなら、日本国内では2020年2月の発売であるが、北米では2年以上前の2017年10月にはすでに発売されていたからだ。昨今の新型車におけるフルモデルチェンジの周期は、以前に比べて長期化しているが、それでも6〜8年ほど。日本国内での発売が、北米に比べて2年以上も遅れると、新型車の発売を待ち望んでいたユーザーは待ちくたびれてしまうだろう。

世界同時に発売することが難しいのはわかるのだが、期待しているユーザーの心情からすれば、待っていられるのは長くても1年くらいだ。クルマの購入は、80%以上が乗り替え時なので、所有車の車検期間が満了したタイミングで新車に買い替えたい。そのため、欲しいクルマの発売時期が遅くなれば、別のクルマを買うことも考えられる。

しかも、このアコードは新規投入車種ではなく、フルモデルチェンジだ。北米で新型が発売された後も、日本では旧型のアコードが販売されていた。新型はプラットフォームを刷新しており、衝突安全性を大幅に向上させている。衝突被害軽減ブレーキも進化した。そうなると、2017年後半から2020年初頭まで、日本では北米などの海外に比べて安全性の劣ったアコードを販売していたことになってしまう。この点を開発者にたずねると、「先代アコードの安全性が、新型に比べて劣っていたとは考えていない。また、北米に続いて中国などで販売を開始したため、日本の発売は2020年になった」と説明する。

ちなみに、2019年の新型アコードの販売台数は、北米では259,000台、中国では218,000台。日本では1,056台だが、日本の販売台数は前述のとおり旧型モデルだ。そして、新型アコードの日本における販売計画は月間300台、1年間で3,600台と、北米のわずか1.4%にとどまる。つまり、北米に比べて発売時期が大幅に遅れた背景には、市場規模の違いがあるということなのだろう。

ホンダ 新型「アコード」のフロントイメージとリアイメージ

ホンダ 新型「アコード」のフロントイメージとリアイメージ

そんなわけで、新型アコードは基本的に海外向けのクルマだが、外観はセダンとしては新鮮なスタイリングを持つ。リア側のピラーを大きく寝かせ、ボディ側面のウィンドウを3分割させた「6ライトスタイル」が採用されている。ファストバック風の形状は、今のセダンの流行にも沿っている。トヨタ「クラウン」やアウディ「A6」なども同様のスタイルだが、新型アコードではリヤウィンドウをさらに寝かせ、1940〜1950年頃のアメリカ車などに見られた「流線形」の雰囲気もあわせ持っている。

ホンダ 新型「アコード」のサイドイメージ

ホンダ 新型「アコード」のサイドイメージ

新型アコードのボディサイズは4,900(全長)×1,860(全幅)×1,450(全高)mmと大柄で、ホイールベースも2,830mmと長い。最小回転半径は5.7mと小回り性能はあまりよくないが、ボディの四隅は比較的把握しやすい。ボンネットはしっかりと見えて、サイドウィンドウの下端を水平基調で極端に高めていないためだ。ボディ後端のピラーは少し太いが、同サイズのセダンに比べれば視認しやすく、運転しやすい。

ホンダ 新型「アコード」のインパネ

ホンダ 新型「アコード」のインパネ

インパネは水平基調で、視認性やエアコンの操作性は良好だ。ただし、質感についてはいまひとつだ。木目調パネルなど、日本のユーザーから見るとLサイズセダンとしては物足りなく感じられるかもしれない。スイッチで操作するタイプのATも、違和感がともなう。

ホンダ 新型「アコード」のフロントシート

ホンダ 新型「アコード」のフロントシート

シートは、先代型に比べて着座位置を25mm下げている。歴代アコードでは着座位置が高められており、見晴らし感覚や空間効率は向上したのだが、スポーティーな感覚は薄れてしまった。そこで、新型アコードでは、着座位置を低くすることで、スポーティーな運転を楽しめる姿勢に変更している。

前席の座り心地は、体がシートに沈む感覚は控えめだが、体重が加わる背もたれの下側と座面の後ろはしっかりと造り込まれている。肩まわりのサポート性もいい。長距離移動は快適で、峠道を走っても着座姿勢が乱れにくい。

ホンダ 新型「アコード」のリアシート

ホンダ 新型「アコード」のリアシート

前席の着座位置が下がると、スライド位置が後退して後席の足元空間は狭くなりやすいが、新型アコードは十分な広さを持っている。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ3つ分にも達する。

室内高の高さが40mm下がっていることから、後席の着座位置も前席のように少し低めの印象だが、腰が落ち込むような違和感は抑えられている。後席は、座面の前方が適度に持ち上がっていて、乗員の大腿部も浮き上がりにくい。座面の前端はやわらかく仕上げられているから、小柄な乗員が座っても膝の裏側に圧迫感が生じにくい。開発者は「シート内部のパッドは、使われる部分に応じて硬さを細かくチューニングした」と言う。

天井を後方に向かって下降させ、リヤウィンドウを寝かせているから、後席に乗り込むときは頭を下げる姿勢になる。乗降性では不利だが、足元空間は広いので乗降時の足の取りまわし性はいい。

アコードのパワートレーンは、2L直列4気筒i-VTECエンジンに2モーターハイブリッドを組み合わせた「e:HEV(イーエイチイーブイ)」だ。e:HEVの基本的な機能は、先代アコードに搭載されていた「スポーツハイブリッドi-MMD」を踏襲している。

エンジンは、基本的に発電機の作動に使われ、駆動は専用のモーターが担当する。そのため、アクセル操作に対する反応の仕方や加速感は、電気自動車に近い。アクセルペダルを踏み増した直後から機敏に反応し、力強い加速を開始する。加速感は滑らかでノイズも小さい。加速力を従来のガソリンエンジンに当てはめると、3Lから3.5Lに相当する。

e:HEVでは、エンジンは発電を受け持つから、走行状態に関係なく高効率な回転域を保つことができる。このことはメリットなのだが、ドライバーは従来のガソリンエンジンに慣れているだろうから、速度と無関係にエンジンが回ってしまうと違和感が生じてしまう。そこで、e:HEVでは燃費を悪化させない範囲で、アクセル操作や速度変化とエンジン回転数を同期させている。さらに、エンジン音が全体的に小さいので走行時の違和感は抑えられている。

e:HEVでは、高速巡航時にはエンジンがホイールを直接駆動する制御も組み込まれており、燃料消費量を効果的に節約する。カタログなどに記載されるWLTCモード燃費は「22.8km/L」、JC08モード燃費は「30km/L」と、軽自動車のホンダ「N-WGN」と同等の値だ。

ホンダ 新型「アコード」の走行イメージ

ホンダ 新型「アコード」の走行イメージ

サスペンションには、走行状態に応じてショックアブソーバーの減衰力を変化させる「アダプティブダンパー」が標準装備されている。「ドライブモード」をスポーツにすると若干硬くなるが、Lサイズセダンとあって乗り心地は基本的に柔軟だ。カーブを曲がるときのボディの傾き方は少し大きく、車両の向きが機敏に変わることはないが、峠道を走っても曲がりにくさは感じない。車線変更時なども揺り返しが少し生じるが、安定性に支障はない。

ホンダ 新型「アコード」の試乗イメージ

ホンダ 新型「アコード」の試乗イメージ

設計の新しいクルマとあって、後輪の接地性も高い。下り坂のカーブで、危険を避けるためにステアリングホイールを内側に切り込みながらブレーキペダルを踏む操作を強いられても、後輪の接地性を損ないにくい。プラットフォームの能力を考えれば、もう少しスポーティーな性格に仕上げることもできそうだが、新型アコードでは安定性を重視して造り込まれている。

走行安定性は、先代モデルに比べて大幅に進化しており、事故を避ける能力も高められている。そのために、冒頭で述べた国内発売の遅れが悔やまれるところだ。

ホンダ 新型「アコード」の走行イメージ

ホンダ 新型「アコード」の走行イメージ

新型アコードでは、乗り心地にも注目したい。ボディとサスペンションの両方が入念に造り込まれており、足まわりも柔軟なので、路上の凹凸をしっかりと吸収してくれる。大きめの段差を乗り越えても、跳ねるような挙動にならない。

タイヤサイズは18インチ(235/45R18)でスポーツ指向と言えるが、銘柄は快適性を重視したブリヂストン「レグノ GR-EL」だ。指定空気圧は、前輪が235kPa、後輪は220kPaと適切で、すぐれた走行安定性と快適な乗り心地を両立している。

新型アコードは、タイの工場で生産される輸入車で、グレードは「EX」(465万円/税込)の1種類のみだ。自転車や歩行者を検知可能な「衝突被害軽減ブレーキ」、車間距離を自動制御できる「クルーズコントロール」などの運転支援機能、「本革シート」「ナビゲーションシステム」などが、すべて標準装備されている。

たとえば、トヨタのセダン「カムリ Gレザーパッケージ」(4,334,000円/税込)に、「パノラマムーンルーフ」「ブラインドスポットモニター」「カラーヘッドアップディスプレイ」をオプション装着して、新型アコードと条件を合わせると、合計で4,587,000円になる。そのうえで、新型アコードとカムリを比較してみると、動力性能は新型アコードのほうに余裕があり、性能の違いを考えれば新型アコードはカムリよりも少し割安だ。ただし、内装についてはカムリのほうが上質と言えるだろう。

さらに、トヨタで人気のセダン「クラウンハイブリッド」は、下位グレードの「2.5L HYBRID S」でも5,059,000円(税込)だ。価格は、新型アコードのほうが明らかに安い。そして、同じホンダ車のハイブリッドセダン「インサイト」(EXグレードで3,564,000円/税込)と比べると、装備の違いもあって新型アコードのほうが100万円ほど高い。なお、納期は、2020年6月上旬に注文して9月下旬だから、3か月少々。新型車としては、適切な部類に入る。

最近のホンダは、日本国内で販売する車種の見直しを図っており「シビックセダン」「グレイス」「ジェイド」などの車種が、残念ながら今後廃止される予定になっている。ホンダによると、シビックセダンの需要はハッチバックで補われ、グレイスは「フィット」、ジェイドは「フリード」などでカバーできるという。そして、新型アコードはこのような再編の中でも生き残った、とても貴重なセダンだ。前述したとおり、スポーティーさや乗り心地の快適さ、ハイブリッドのよさをあわせ持っているなど、セダンとしての魅力を凝縮させている。いまは1グレードのみのラインアップなので、今後は運転感覚の楽しいスポーティーグレードを追加するなど、日本で発売しているセダンとして大切に育ててほしいと願う。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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