レビュー
市街地から高速、ワインディングまで試乗テスト!燃費も計ってみました

スカイライン史上最高の“405PS”を誇る「400R」に試乗!

日本のスポーティーサルーンとして、長い歴史を紡いできた日産「スカイライン」。初代のスカイライン「GT-R」が4ドアセダンであったことや、GT-Rの登場前にもスカイラインにグロリアの6気筒エンジンを無理やり搭載した「S54B」を登場させていたことを踏まえると、スカイラインは日本においてもっともスポーツ性の高いセダンブランドなのではないかと言える。

2019年7月16日にマイナーチェンジモデルが発表された、日産「スカイライン」。ハンズフリーによる運転が可能な「プロパイロット2.0」の搭載(ハイブリッドモデルのみ)や、スカイライン史上でもっとも高い最高出力(405馬力)を誇る「400R」グレードがラインアップされるなどで話題となった。画像の車両は、その400Rだ

現在のスカイラインには、大きく2つのパワーユニットが存在する。ひとつは「VQ35HR」と呼ばれる、3.5リッターV型6気筒ハイブリッド。そして、もうひとつは「VR30DDTT」と呼ばれる、3リッターV型6気筒ツインターボエンジンだ。

そして、VR30DDTTにはさらなる高性能バージョンが存在する。それが、2019年のマイナーチェンジによってスカイラインのラインアップへ新たに加わった「400R」に搭載されたエンジンだ。400Rの最大出力は405ps/6,400rpm、最大トルクは475Nm/1,600-5,200rpm(標準のV6は304ps/6,400rpm、400Nm/1,600-5,200rpm)を発生させる。この405psという値は、スカイライン史上でもっともパワフルなものだ。今回、このハイパワーエンジンを搭載した400Rを、400kmほどの試乗テストに連れ出してみたのでレポートしよう。ちなみに、今回は400Rと比較するため、V6ターボの「GT Type P」にも試乗した。

日本国内に初めて投入された、V6ツインターボエンジン

2019年に登場した新型スカイラインでは、これまでの「4気筒シングルターボエンジン」を廃し、前述したV型6気筒ツインターボエンジンが新たに投入された。このV6エンジンは、日本国内においては新型スカイラインへの搭載が初となるが、海外では2016年にインフィニティ「Q50」「Q60」に搭載されたものである。

その特徴は、シャープなレスポンスを実現する小径タービンコンプレッサーのターボチャージャーをはじめ、吸気側に採用した「電動VTC(バルブタイミングコントロール)システム」、高い精度の燃料噴射制御を実現する「筒内直接燃料噴射」、ミラーボアコーティングシリンダブロックや電制可変容量オイルポンプなどの低フリクション技術、安定した冷却効果をもたらしダイレクトなトルクレスポンスを実現する日産国内初採用の「水冷式インタークーラー」など、最新の高性能ターボエンジンにふさわしいテクノロジーが採用されているという。また、そのパフォーマンスとともにすぐれた燃費・低排出ガス性能、アイドリング時の静粛性など、プレミアムスポーツセダンにふさわしい高い洗練性も身につけていると日産は説明する。

400Rと通常モデルのV6ツインターボエンジンは何が違う!?

では、400RとV6ターボに搭載されているエンジンの違いは何なのだろうか。それは、さらなるパフォーマンスの要求に対して、「ターボチャージャー」の性能が極限まで引きあげられたことだ。具体的には「ターボ回転センサー」を用いて、ターボを回転限界領域まで使いきることで、過給圧を極限まで高めた過給圧制御が採用されている。

さらに、400RとV6ターボの違いをもうひとつあげると、400Rには「インテリジェントダイナミックサスペンション」が標準で装備されていること(V6のGT Type SPにはオプション)があげられる。これは、タイヤの回転速度や車両の旋回角速度、横加速度、操舵角などから総合的に車両挙動を演算し、常に最適な減衰力を発生させる電子制御ショックアブソーバーである。「DAS(ダイレクトアダプティブステアリング)」との組み合わせによって、すぐれた快適性やハンドリング、運転の楽しさを実現しているという。従来の電子制御サスペンションは「ステッピングモータ式」を用いていたのに対し、今回は「ソレノイド式」にすることで、これまでの日産のシステムに対し、高応答かつワイドレンジな連続可変制御を可能にした。

日産「スカイライン 400R」のフロントエクステリアとリアエクステリア

日産「スカイライン 400R」のフロントエクステリアとリアエクステリア

さて、標準のV型6気筒エンジンでも十分にパワフルなのだが、あえてさらに上を行く400Rを、なぜ投入したのだろうか。その理由について、「(スカイラインのターゲットユーザーは)年齢に関係なく“想像を超える性能と独自性”をいいものの基準として持っておられる、感度の高いお客さまになります。そこで、400Rは日産、そしてスカイラインの走りの象徴といえるモデルととして位置付けました。通常のV6モデルよりも、さらなる刺激を求めるお客さまに、走るよろこびを提供する目的として投入したのです」と、日産広報関係者は説明する。

圧倒的とも言えるパワーは、市街地では持てあまし気味に

日産「スカイライン 400R」の市街地走行イメージ

日産「スカイライン 400R」の市街地走行イメージ

日産本社でクルマを受け取り、横浜の街を流していて気付いたのは、400Rの乗り心地のよさだった。実は直前までV6ターボに乗っていたので、より顕著に感じられたのかもしれない。具体的には、V6ターボは少々硬めでごつごつとした突き上げ感がともない、体もゆすられる感じがしていたのだが、400Rは同じく硬めながらもしなやかさがあり、より落ち着いた印象で、バネ下の重さがそれほど感じられないのだ。

ただし、コーナーの段差などではバタついたり跳ねたりすることがあったので、もう少し前後ともサスペンションストロークが欲しい。そこで考えられるのが、ボディ剛性の弱さだ。一見しっかりとしていそうにも感じるのだが、ステアリングを切って歩道などの段差を超えるときに、若干ブルブルとした振動が、ステアリングやフロア周りから伝わってくるのだ。つまり、ボディが弱いためにサスペンションをしなやかにしてしまうとボディがショックを受け止められないのだと考えられる。

いっぽう、ボディ剛性が高ければショックをボディでも受け止めることができるので、そのぶん足回りのセッティングの自由度が増し、よりストロークさせたり、硬いなりにも減衰力の調整が可能になり、乗り心地が犠牲になることは少なくなるはずだ。

スカイラインの場合は、足を硬めてショックをボディではなくサスペンションのみで吸収しようとした結果、ストロークが感じられず、跳ねることがあるものと想像される。もう少しボディ剛性が高まれば、特に前述したインテリジェントダイナミックサスペンションの優位性も高まり、乗り心地のいいスポーティーセダンに仕上がるのではと思う。

日産「スカイライン 400R」に搭載されている「VR30DDTT」V型6気筒ツインターボエンジン

日産「スカイライン 400R」に搭載されている「VR30DDTT」V型6気筒ツインターボエンジン

さて、エンジンについてだが、スカイラインというと「直列6気筒」が定番だったのだが、いまではV型6気筒だ。このV6エンジンはレスポンスもよく、かつスムーズさもあって気持ちのいいエンジンだ。特に、4,000rpmを超えるあたりから快音とともに、一気呵成(かせい)にレッドゾーンまで駆け上がるフィーリングは格別だ。特に、400Rに搭載された405psバージョンは一段とパワフルで、その加速力は圧倒的とも言える。公道では、そのパワーとトルクは持て余し気味だった。

それを強調しているのが、アクセルレスポンスだ。特に信号からのスタートで一気にトルクが立ち上がるので、場合によっては少々わずらわしく過敏に感じた。たとえば、「AMG」や「BMW M」などは、あえてアクセルの初期応答を鈍めにセッティングしている。このあたりは、考え方の違いとも言えるが、どちらが市街地をストレスなくジェントルに走らせることができるのかといえば、やはり鈍めのほうがよいように思う。必要な場合は、よりアクセルペダルを踏み込めばいいだけのことなのだから。

また、これは個体差かもしれないのだが、この400Rのエンジンはアイドリング状態でときどき不整脈が発生し、ときおりブルブルとエンジンが振動し、昔の高性能エンジンのようであったのが印象的だった。ただ、これは広報車両ゆえ、かなり荒く乗られた結果なのかもしれないが……。

豪快に楽しめるワインディング

日産「スカイライン 400R」の高速道路の走行イメージ

日産「スカイライン 400R」の高速道路の走行イメージ

次に、市街地から逃げ出すように高速道路へと乗り入れてみた。すると、エンジンの気持ちいいレスポンスが際立つ。必要に応じて強くアクセルを踏み込むと、力強い加速とともに背中を蹴とばされるようなGが感じられ、あっという間に法定速度をオーバーしそうになってしまう。ただ、そのときの車両姿勢はとても安定しているので、安心して加速を楽しめるだろう。

日産「スカイライン 400R」の高速道路の走行イメージ

日産「スカイライン 400R」の高速道路の走行イメージ

いっぽう、高速道路と淡々と走らせていると、やはり市街地の項で述べたボディ剛性の低さからくる直進安定性の甘さが気になった。そこへ、輪をかけて気になったのがDASだ。DASは、マイナーチェンジ前から採用されており、それと比較するとはるかによくはなったのだが、まだ不自然さがぬぐえない。特に、ステアリングの切り初めに不感帯がわずかにあり、そこから急激に操舵が始まるので、直進時などに微妙なコントロールがしにくいのだ。ただし、操舵が効き始めてからの操作感はかなり自然なので、路面からのフィーリングがもう少し感じられるようになれば、さらによくなるだろう。

日産「スカイライン 400R」のワインディングの走行イメージ

日産「スカイライン 400R」のワインディングの走行イメージ

やはり、スポーツセダンというからにはワインディングに踏み入れてみよう。すると、前述のステアリングフィールとアクセルレスポンスの過敏さによって、微妙で繊細なコントロールを楽しむというよりも、ちょっと荒く豪快な運転になりがちに思えた。そして、ヘアピンカーブなどで強引に切り込むと「トラクションコントロール」が反応し、一気に出力が絞られてしまうことがままあった。また、ある程度コーナーにカント(勾配)がついていると、リアの駆動力が抜けそうな雰囲気もあったので、やはりもう少しサスペンションストロークを取ってほしいと感じる。そのうえで、インテリジェントダイナミックサスペンションがうまく機能すれば、かなり上等なスポーツセダンが誕生するはずだ。

日産「スカイライン 400R」のワインディングの走行イメージ

日産「スカイライン 400R」のワインディングの走行イメージ

いずれにせよ、十分に減速し若干フロントに荷重を残しながらステアリングを切り、コーナー出口に向けて徐々にアクセルを踏み込んでいけば、安定した姿勢で猛然と加速が始まる。そのときは、FRならではの後ろから押される独特な感覚も味わえるだろう。ブレーキペダルのフィーリングも申し分なく、ストッピングパワーも必要にして十分と感じた。

設計年次の古さから気になる点も

日産「スカイライン 400R」のインパネ

日産「スカイライン 400R」のインパネ

ここからは、400Rを含む新型スカイラインを、日常的に使ってみて気になったところをあげてみたい。基本設計が一世代前のものなので、どうしても古さを感じてしまうところが多く見受けられたのだ。

日産「スカイライン 400R」中央のディスプレイ画面(上段)

日産「スカイライン 400R」中央のディスプレイ画面(上段)

そのひとつがナビ画面のサイズだ。上段が8インチ、下段が7インチのディスプレイとなっており、ナビは上段に映される。そのサイズが、今となってはやはり小さく、またドライバー側に傾けられていないため、まるで助手席側に傾けられているような錯覚すら覚えてしまう。さらにインパネにフラットに配置されていることから、光の加減によって反射して映像が見にくい場合多々あった。

また、細かなところではあるが、「電動格納式ドアミラー」はエンジンを切ってしまうとスイッチでの格納ができないことがわずらわしい。せめて、このくらいはマイナーチェンジの際に、エンジンオフ、あるいはドアロックすると自動で格納するくらいの機能は望みたい。

日産「スカイライン 400R」中央ディスプレイ脇に備えられているエアコンスイッチ

日産「スカイライン 400R」中央ディスプレイ脇に備えられているエアコンスイッチ

いっぽう、センターパネルに備えられているエアコンの物理スイッチは大いに評価できる。細かい温度設定も含めて、ブラインドタッチが可能だからだ。モニター画面でエアコンを操作するタイプのクルマも昨今では増えているが、その場合スイッチの位置を手探りで見つけることが難しく、また、操作ができたかどうかがわかりにくいので、ついついパネルを注視してしまい、危険に感じるのだ。そういったことを含めて、物理スイッチをうまく配していることは評価したい。そのスイッチでいえば、なぜだかステアリングにあるボリュームのスイッチだけ妙にストロークが大きく、またクリック感に乏しいのは残念だったが……。

「アクティブクルーズコントロール」に関しての評価は、微妙だ。なぜなら、基本的な機能はすべてそろっているのだが、サイドブレーキが「足踏み式」であることから、アクティブクルーズコントロールを使用時に完全停止を保持できないからだ。ハイブリッドモデルであれば「電動パーキングブレーキ」を採用していて保持が可能なので、なぜV6にも採用しなかったのか疑問に思う。全車速追従式のクルーズコントロールは、すでにこのセグメントであれば普通の装備になりつつあることから、積極的な採用を望みたい。

走りが豪快な分、燃費は……

400Rの実燃費については、以下の通りだ。比較参考として、V6ターボの実燃費も載せておこう。

画像は、左が「V6ターボ」で右が「400R」

画像は、左が「V6ターボ」で右が「400R」

※( )内はWLTCモードのカタログ燃費
<400R>
市街地:7.4km/L(6.5km/L)
郊外:10.4km/L(10.6km/L)
高速:14.7km/L(12.5km/L)
<V6ターボ>
市街地:6.8km/L(6.2km/L)
郊外:9.3km/L(10.6km/L)
高速:13.0km/L(12.9km/L)

いずれも400Rのほうがいい結果で、ほぼWLTCモード燃費とも誤差の範囲といえる。ただし、400Rの高速道路の燃費は大きくWLTCモード燃費を上回っているが、これは渋滞や周囲にクルマがいない深夜が多かったことから、一定速度をキープしての走行が燃費値に貢献したからと思われる。

数値自体は、正直に言うと高い評価は与えられないが、あの豪快な加速を考えれば致し方ないかもしれない。

少々、時代がかった感もある400Rだが、それはそれで味があるとも言える。あふれんばかりのパワーで、ドライバーが操縦しているという楽しみは十分に感じられた。プロパイロット2.0の搭載や、よりボディ剛性が高められるなどで乗り心地が改善されれば、もしかしたら新時代のスポーツセダンが現れるかもしれない。そんな、期待を持たせてくれる1台であった。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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