レビュー
積極的に6MTのシフトチェンジを楽しもう

エグいくらいによく曲がる! ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー(6MT)

初めは2ペダルのみの導入だった……

「市場の要望により、MT(マニュアルトランスミッション)車をカタログモデルに設定」

夢や幻、あるいはフェイクニュースかと疑うような事実に、思わず泣きそうになったクルマ好きは多いことでしょう。2019年の秋に発売された「ルノー・メガーヌ」のスポーツグレード「R.S.(ルノー・スポール。以下同)」をさらに高性能化した「R.S.トロフィー」には、マニア待望のMTが設定されているのです!

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー

そもそも、今のメガーヌ(4代目)の「R.S.」が発売されたとき(2018年夏)、日本市場向けは2ペダル車のみでした。クルマの高性能化もあり、サーキットでの速さを追求するには手動変速よりも自動変速のほうが合理的ということで、時代の流れを象徴する設定ながら、MT派のドライバーとしては寂しく感じたものです。

その後、2019年2月に100台限定で発売された「R.S.カップ」という高性能版はMT仕様のみにて、これが大人気を博して瞬く間に完売!

「やはりR.S.には、MTが欲しい!」との要望がさらに高まり、ルノー・ジャポンはそれに応えてくれました。2019年10月に発売された「メガーヌ R.S.トロフィー」は、2ペダル/MTの両方が選べるように設定されたのです。

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー 運転席

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー 運転席

積極的なMT派を標榜する筆者も、サーキット走行でいいタイムを出したい時は、正直2ペダルの方がはるかにラクだと思います。ラップタイムを0.1秒(場合によっては0.01秒単位)でも詰めるには、ステアリングとアクセル、ブレーキの操作に全神経を集中したくなるもの。特に筆者のような未熟なドライバーは、MT車でのシフトダウン時の見せ場でもある技術「ヒール&トゥ」を実施すると、ブレーキに意識が行き過ぎてアクセルをあおる力が弱くなる、あるいはアクセルをあおることを意識しすぎてブレーキングが甘くなるなど、タイムを悪化させる要因のひとつになってしまうのです。

しかし、それでもなお、MT車でもAT車と同じかそれ以上にいいタイムを出すべく努力するところに、MT車に乗る醍醐味もあるワケなので、やはりサーキットでもMT車で練習がしたくなるのでした。一般的なドライバーのカーライフにおいて、99.9%はサーキットではない公道を走るのですから、やはり変速は手動で行って、日常的にMT車の気持ちよさを噛みしめたいもの。クラッチを切ってシフトを操作し、またクラッチを繋ぐ一連の操作は、公道でもサーキットでも独自の心地よいリズム感をもたらしてくれるのです。

今回、「メガーヌ R.S. トロフィー」にカタログモデルとしてMT車が選べるようになったのは、AT大国・日本にもMT好きはまだまだ多いという事実を雄弁に物語るものだと言えるでしょう。

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー サイドビュー

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー サイドビュー

エンジンも傑作として讃えたい

そんな「メガーヌ R.S. トロフィー」に乗ってみると、「やっぱりMTは最高だ!」と感激せずにはいられませんでした。まず、エンジンのフィーリングが最高レベルで気持ちよく、かつパワフルなので、これを手動で変速しながら性能を引き出す行為がすさまじく快感なのです。

300馬力まで高められた1.8Lターボは、低速トルク感、ピークパワー感、アクセルワークに対する反応の速さ、高回転域まで回したときのスムーズさや頭打ち感のなさ、サウンドなど、クルマ好きがスポーツモデルのエンジンに求めるすべての項目で満点レベル。傑作エンジンとして讃えたくなるユニットです。

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー 1.8L直列4気筒ターボエンジン

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー 1.8L直列4気筒ターボエンジン

今時のダウンサイジング系エンジンらしく基本はフラットトルク型ながら、回転の上昇に伴う炸裂感が強烈で、メリハリにも富み、かつレッドゾーン手前になっても炸裂感が衰えず、もっと上まで回りそうだと思わせるなど、ひと昔前の世代のエンジンのような情緒を感じました。

あえて言えば、今時の欧州製高性能エンジンの例にもれず、スポーツ/レースモードでアクセルオフ時に爆発音が鳴り、演出過多なところがあります。しかし、エンジンが本質的に気持ちいいので、多少パンパン鳴ってもあまり気になりません。これが好きな人には高揚感を高める効果は高いでしょう。

「四駆か!?」と思うくらいの曲がりっぷり

2ペダル版の「EDC」はデュアルクラッチ式のATなので、2ペダルでもMTと変わらないダイレクト感が得られます。パドル操作だけで瞬時に変速が完了する感覚もまたレーシングカー的であり、これはこれで素晴らしいミッションだと感じルものの、やはりクラッチを切ったりシフトを入れたりする一連のリズミカルな操作を伴うMT車のほうが、エンジンの素晴らしさをより濃密に満喫できている気がします。「クルマとの対話が濃くなる」効果は明らかでしょう。

シフト操作の手応えは、街乗りだとやや節度感が乏しく、シフトフィールの面ではややガッカリする人がいるかもしれません。しかし、山道でエンジンを積極的に高回転まで回すなどスポーティーに走らせると、不思議と節度感が高まってギヤの入りもよくなり、手応えが気持ちよくなるので、問題にはならないと感じました。クラッチはやや重めながら、スポーツモデル好きにはまったく問題にならない重さです。ペダルの位置関係も適切で問題なし。

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー シフトノブ

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー シフトノブ

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー ペダル

ルノー・メガーヌ R.S. トロフィー ペダル


そして、「メガーヌ R.S.(ルノー・スポール)トロフィー」は、ハンドリングでも壮絶レベルの気持ちよさが味わえます。強烈に引き締められたサスペンションと、後輪にも操舵機構が備わる「4コントロール」の相乗効果により、尋常ではないレベルの旋回速度が味わえて、驚愕しました。

一般的なクルマでは、カーブがきつくなると遠心力でカーブの外にふくらもうとする作用が強まり、アンダーステアと呼ばれる現象が起こりますが、このクルマはアンダーステアが一切出ない!

公道を常識的な範囲で走る限りでは、FF車(前輪駆動車)としては史上最高レベルにアンダーステアの出ないクルマだと感じました。ひと昔前までのフランス車のスポーツモデルといえば、コーナーがキツくなると後輪を滑らせて向きを変えるような特性が特徴的でしたが、公道での速度域では、後輪は一切滑ることなく、「エグい」ほどのレベルで鋭く曲がります。

サーキットでの速度域になると、多少は後輪を滑らせて曲がるような挙動になるようですが、公道ではとにかく四輪の接地感がすさまじく高く、4本のタイヤを路面に押し付けながらグイグイ曲がる感覚に圧倒されました。まるで全輪への駆動力配分を緻密に制御して曲がる4WDのようでした。エグいほど鋭敏に曲がるわりに、コーナーの内側へ巻き込みすぎるような作用は働きません。曲がりすぎて恐怖感を抱くことはないのが、これまた不思議です。

スポーツモデルらしく、レカロ製のシートが標準で装備される

スポーツモデルらしく、レカロ製のシートが標準で装備される

不快ではない乗り心地

さらに不思議といえば、乗り心地のよさもまた摩訶不思議の領域。これだけ引き締められたサスペンションだと、“家族ウケ度ゼロ”のガチガチ感をともなうものながら、個人的にはファミリーカーとして使える範囲に収まると感じました。もちろん硬いことは硬いけれど、硬さにカドはなく、乗員の尾てい骨に響くような振動は伝わりません。基本的に足は硬いので路面が悪いと上下に揺さぶられますが、その上下動を抑え込む減衰力が極めて強烈。ひとつの揺れが一発で収まるため、不快な周波の揺れ残りがなく快適なのでした。

扁平率が35の薄っぺらいタイヤを路面に強く押し付けるようにして走るので、タイヤがたわむ物理的な余裕はなくなっているはずなのに、まるで接地面のゴムの厚さが増しているかのような感覚も不思議です。

試乗車に装着されていたタイヤはブリヂストンのPOTENZA S001。サイズは245/35R19

試乗車に装着されていたタイヤはブリヂストンのPOTENZA S001。サイズは245/35R19

高速域でのコントロールに重きを置いたブレーキ

唯一気になったのはブレーキのフィーリング。このままの状態でサーキットでの連続タイムアタックに没頭可能な性能を備えているものの、ブレーキペダルの踏み始めの初期制動が甘いので、一瞬頼りなさを覚えてしまうのです。ガツン!と強く踏めば強烈に効くものの、初期制動の甘さはどんな場面でも変わらなかったので、どういうセッティングになっているのかルノー・ジャポンの広報に尋ねたところ、「強く踏んでから戻す際のコントロール性を重視」した結果であるとのこと。フル制動状態からブレーキを戻しながら、その量に比例してステアリングを切り足していく際のコントロール性を求めたという、実にマニアックな味付けが施されているのでした。それを理解して乗れば、このセッティングの狙いや意味に納得できるようになります。

印象をまとめると、ドイツの超難関サーキット「ニュルブルクリンク」で「FF世界最速」を記録した走りのDNAに、ただひたすら圧倒され尽くしたという感じです。速さと気持ちよさを高度に突き詰めた、究極のロードカーのひとつでしょう。こんな素晴らしいスポーツモデルがMTで乗れるようになったことを感謝してやみません。

休日は目的地も決めず、ただひたすら山道を走り回りたくなるクルマでした……

休日は目的地も決めず、ただひたすら山道を走り回りたくなるクルマでした……

SPECIFICATION

■サイズ
全長:4,410mm
全幅:1,875mm
全高:1,435mm
車重:1,450kg

■エンジン
種類:1,798cc直列4気筒DOHCターボチャージャー付
最高出力:300PS/6,000rpm
最大トルク:400Nm/3,200rpm

■トランスミッション
6段MT

■駆動方式
前輪駆動

本記事の試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る