レビュー
積極的に6MTのシフトチェンジを楽しもう

登場から8年! 完熟したスバル「BRZ」はMTが超絶オススメ

「MT車に乗る楽しさ」を皆様にお伝えするにあたり、絶対にスルーできない超絶オススメ車と言えるのが、スバルの「BRZ」です。

スバル「BRZ STIスポーツ」

スバル「BRZ STIスポーツ」

トヨタとのコラボにより2012年に登場

2012年、トヨタとのコラボによりスバルの量産車初のFR(後輪駆動)として誕生。8年間にわたりほぼ毎年改良が重ねられ、2020年モデルは完熟を極めるにいたりました。2020年7月20日をもって新車の販売は終了し、次期型の発売が待ち焦がれる状況にありますが(トヨタブランドの「86」は7月20日以降も販売継続)、BRZの最大の美点である「Pure Handling Delight」と称された運転の楽しさや気持ちよさは、新旧を問わず味わえるので、もし新車を買い逃してしまったとしても、落胆することはありません。

毎年改良が重ねられ、機械としての完成度は高まったものの、生まれながらにして卓越したスポーツカーとしての素性のよさを備えているので、BRZの本質的な魅力は、たとえ古めの中古車になっても色褪せることはないのです。

BRZのスポーツカーとしての素性のよさとは、低重心で全長の短い水平対向エンジンを最適なレイアウトで搭載するところにあります。BRZ以外のスバル車も、水平対向エンジンを搭載することで得られるバランスのよさをはじめとした物理的な美点が注目されますが、BRZはそんなスバル車の中でも「もっとも水平対向エンジンのメリットを生かしたクルマ」なのです。

BRZはスバルとトヨタの技術/開発ノウハウを活かし、運転する楽しさを多くの人へ伝えたいという両社の想いのもとに誕生。類稀な低重心、軽量でコンパクトなボディのFRスポーツとして企画されました

スバルのBRZもトヨタブランドの「86」も、群馬県太田市にあるスバルの工場で生産されます。まだ見ぬ次期型もこの関係を踏襲すると言われています

水平対向エンジンを積む稀有なFR車

(多くのスバル車が採用する)四輪駆動のようにフロントに駆動システムを備える必要がないため、エンジンをより低く、より車体の中心部に近い位置に搭載できたことが、類い稀な運動性能の高さの源となりました。開発時にはトヨタ側が想定していたよりもさらに低くエンジンが搭載されたことで、トヨタのエンジニアたちは大いに驚いたと言います。トヨタとしても往年の人気スポーツカー「86(ハチロク)」を現代に甦らせるにあたり、スバルの水平対向エンジンの美点を生かすことを狙ったわけですが、その期待を超える素性のいいFRスポーツカーが生み出されたのでした。

水平対向エンジンを軸とした「シンメトリカルAWD(常時四輪駆動)」がもたらす走行安定性のよさに惹かれ続けてきたスバル車のファンもまた、2012年にFRスポーツのBRZが登場したときは驚き、いささか戸惑いました。しかし、コーナリングでの旋回フィールの圧倒的な気持ちよさを味わうと、それまでのスバル車より水平対向エンジンのメリットを生かしきった素性のよさに感動。誰もがBRZの走りのよさを認め、新たなスバル車の魅力を発見できた喜びに浸ったのでありました。

視覚的にも低く収まる水平対向エンジン。バッテリーを車体の中心部に配置するなど、ほかのスバル車にはない工夫が見られます

水平対向エンジンを軸としたFRスポーツカーは、世界的にも稀な存在。200馬力強のパワーを使い切れる痛快な操縦性は、バランスのいいレイアウトによってもたらされます

スバル車のラインアップにおいては「WRX」ブランドがトップスポーツモデルに位置付けられ、モータースポーツ競技でも高い戦闘力を発揮し続けましたが、純粋なハンドリングの気持ちよさにおいては、BRZが歴代スバル車ナンバーワンと言えるでしょう。

国内レースのトップカテゴリー「スーパーGT」に、2リッター4気筒の水平対向エンジンを軸としたFRレイアウトで参戦。大排気量の欧州製スーパーカーと互角以上の速さを発揮するなど、運動性能の高さを証明しています

基本的には市販のBRZ/86をベースとしたワンメイクレースも人気が高く、トップレベルのドライバーたちによる激戦が繰り広げられます

BRZはMTに限る!

エンジンは、同じ2リッターの水平対向4気筒でもWRXとは異なり、ハイパワーターボではなく自然吸気を採用。FA20型という、スバルとしては比較的新しい世代のユニットで、トヨタの直噴技術 D-4S(燃料噴射システム)との組み合わせにより、スバルの自然吸気エンジンとしては歴代最強の1リッターあたり100馬力の高出力を実現しました。最高出力の200馬力(2016年夏以降発売の後期型は207馬力)を7,000回転、最大トルクを6,400回転から発生させるという、現代のエンジンとしてはかなりの高回転型となっています。

AWDではなくFRということで、ミッションは従来のスバル車と異なり、アイシン製の6MTと6ATを搭載。6ATもダイレクト感に溢れた優秀なミッションながら、この高回転型のユニットを味わい尽くすには、やはり6MTに限ると言わせていただきましょう!

縦置きFRらしいダイレクト感に溢れたシフト。2016年夏以降の後期型は、わずかに出力アップした上、ファイナルギヤ比を低くするなど、加速フィールを向上しています

中間グレード「R」以上にはアルミ製スポーツペダルが備わります。全車ともペダル配置は適切で、操作しやすいレイアウト

その走りは、ひと言でいえば「FRならではの切れ味鋭いハンドリング」と「AWDのような高い安定感」を両立させたもので、とにかくコーナリングの気持ちよさが格別です! 水平対向エンジン搭載車のメリットを生かした鋭敏な旋回性能を際立たせながら、AWD車を得意とするスバルらしく、四輪の確かな接地感が得られるので、運転スキルを問わず、誰もが安全にFRスポーツドライブが楽しめるのです! 峠やサーキットのコーナーではもちろん、交差点を曲がるときでさえ、ドライバーの目の前にあるボンネットの下にエンジンが低く収まっていることが感じられます。

“清涼な”ステアリングフィール

AWD車のWRXも素晴らしいハンドリング性能を備えていますが、BRZに乗るとフロントにトルクが伝わらないクルマならではの美点を噛みしめることができるでしょう。FF(前輪駆動)やAWDから乗り換えれば「ステアリングフィールの清涼感」に感動するはずです。

STIスポーツにはボルドーレッドとブラックのシートにはアルカンターラと合成皮革、ドアトリムにも赤ステッチ付きボルドーレッドのアームレストとするなど豪華な内装となります

ゆっくり走ればリッター20kmも

比較的低速トルクが細めの高回転型エンジンということで、出力特性にはメリハリの強さが現れます。それゆえに、このエンジンをMTで操る楽しさもまた格別! パワーが盛り上がる回転域を探りながらシフト操作を行い、エンジンのポテンシャルを引き出す喜びに没頭できるでしょう。メリハリがある一方、実は低回転域が極めて粘り強いエンジンであることも美点のひとつ。

高速巡航では6速ギヤのままエンジン回転が2,000回転以下になってもノッキングしそうな気配をなかなか見せず、登り勾配でなければギヤを落とさずに走り続けられるフレキシブルさも備えているのです。ゆっくりと巡航すれば、リッターあたり20kmの低燃費を維持することも可能。エンジン回転を極力抑えたエコロジー運転ができるのもMTならではの利点と言えますね。

今回試乗したトップグレードの「STIスポーツ」は、ザックス製ダンパーやブレンボ製ブレーキなどの高性能パーツが装備される豪華仕様で、もっとも魅力的なグレードであることは間違いありません。しかし、何度もいうようにスポーツカーとしての素性がよいおかげで、これらの豪華装備が省かれる廉価なグレードでも前述したBRZの美点は十分に味わい尽くせます。BRZの気持ちよさや楽しさは年式やグレードを問わず全車で得られるため、新車が買えなくなったら中古車も超絶にオススメと言えるのです。

BRZは全車ミシュランタイヤを装着し、最上級STIスポーツは18インチの「パイロットスポーツ4」。GTグレード以上のダンパーはザックス製

上級「S」グレード以上には「TFTカラーマルチインフォメーション」が備わり、燃費や気温のほかに、パワー&トルクやGセンサーの数値などが表示されます

ちなみに、トヨタブランドの兄弟車「86」でもおおむね同じことが言えますが、「86」はサスペンションのセッティングがやや異なります。簡単にいうと、ドリフト車として人気を博した往年の「AE86」のイメージを踏襲し、BRZよりも後輪の限界がやや低く、ドライビングスキルがあればよりドリフトがしやすい仕様となっています。街乗りレベルではほぼ変わらず、スポーツドライビング時に若干の違いがでるという程度なので、2020年の後半になってBRZの新車を買い逃し、どうしても新車がいいという場合は86を選んでもいいでしょう。

どの年式、グレードを選んでも、BRZを運転する楽しさは変わりません!

どの年式、グレードを選んでも、BRZを運転する楽しさは変わりません!

本記事の試乗の模様は動画でもご覧いただけます。

資料写真:SUBARU

マリオ高野

マリオ高野

1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。2台の愛車はいずれもスバル・インプレッサのMT車。

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