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ライバルのPHEVより買い得かも!?

日産の新型EV「アリア」2021年発売!最高出力394ps、航続距離610kmのスペックが魅力的!

2020年7月15日、日産は新型クロスオーバーEV「アリア」を発表した。

アリアは、リーフに続く純粋な電気自動車だ。「東京モーターショー2019」でコンセプトモデルが先行公開されていたが、今回は市販モデルの発表となる。発売日は、2021年7月頃を予定。正式な価格は、現時点では未定となっている(予想価格を後述)。当記事では、電気自動車であるアリアの最大の魅力となるパワートレーンや走行性能、航続距離などを中心に解説していきたい。

アリアのボディサイズ(全長×全幅×全高)は、4,595×1,850×1,655mm。この大きさは、マツダ「CX-5」やトヨタ「RAV4」に近いサイズだ。

フロントマスクは、エンジンが搭載されていない電気自動車らしく、ラジエーターグリルのない精悍なデザインが採用されている。フロントマスクの中央には、アリアから採用が始まった日産の新たなエンブレムが装着されている。さらに、昨今の日産の象徴とされているVモーショングリルも新しい形状へと進化した。

アリアのボディは、フロントウィンドウやリヤゲートの角度を寝かせたスタイルが採用されている。後方視界はあまりよくないが、スポーティーな雰囲気を感じさせる。全長は4,595mmだが、ホイールベースは2,775mmと長く、外観には引き締まり感がともなう。大径タイヤ(19〜20インチ)の装着によって、最低地上高は175〜185mmに達し、SUVらしい存在感の強い外観に仕上げられている。

実用性については、1,655mmの全高や2,775mmのホイールベースによって、車内は広い。後席の頭上や足元にも十分な余裕があり、大人4名が長距離を快適に移動できる。リヤゲートは寝ているが、荷室面積は十分に確保されている。

アリアで、もっとも注目されるのがパワートレーンだ。駆動方式は、前輪にモーターを搭載するFF(2WD)と、前輪と後輪の両方にモーターを搭載する「e-4ORCE(イーフォース)」と呼ばれる4WDの2種類が用意されている。リチウムイオン電池の容量は、2WDと4WDのそれぞれに、65kWhと90kWhの2種類が設定されている。グレードごとの、性能に関する詳細は以下の通りだ。

アリアのグレード毎の走行性能一覧

■65kWh[2WD]モデル
・バッテリー総電力量:65kWh
・最高出力:160kW(218馬力)
・最大トルク:300Nm(30.6kg-m)
・0-100km/h加速タイム:7.5秒
・最高速度:160km/h
・航続可能距離(WLTC):450km
■65kWh[4WD]モデル
・バッテリー総電力量:65kWh
・最高出力:250kW(340馬力)
・最大トルク:560Nm(57.1kg-m)
・0-100km/h加速タイム:5.4秒
・最高速度:200km/h
・航続可能距離(WLTC):430km
■90kWh[2WD]モデル
・バッテリー総電力量:90kWh
・最高出力:178kW(242馬力)
・最大トルク:300Nm(30.6kg-m)
・0-100km/h加速タイム:7.6秒
・最高速度:160km/h
・航続可能距離(WLTC):610km
■90kWh[4WD]モデル
・バッテリー総電力量:90kWh
・最高出力:290kW(394馬力)
・最大トルク:600Nm(61.2kg-m)
・0-100km/h加速タイム:5.1秒
・最高速度:200km/h
・航続可能距離(WLTC):580km

上記のスペックを見るかぎり、実用レベルで考えれば65kWh[2WD]仕様の性能でも十分だろう。リーフにも2種類のリチウムイオン電池が用意されていて、大容量の62kWhタイプの航続可能距離は458kmになる。背の高いボディを備え、リーフよりも車重が200kg以上重いアリアが450kmなら立派だろう。また、長距離を移動する機会の多いユーザーには、航続可能距離が610kmと長い90kWh[2WD]仕様を推奨したい。仮に、NA(自然吸気)のガソリンエンジンを搭載するSUVの燃費が16km/L、燃料タンク容量が45Lなら、1回の給油で走れる距離は720km。それを考えると、アリアの90kWh[2WD]仕様の610kmという航続距離は、十分な性能だろう。なお、この610kmの航続可能距離は、国産の電気自動車では最長で、世界を見てもテスラ「モデルS ロングレンジプラス」の400マイル(644km)に匹敵する。

そして、アリアで大きな魅力のひとつとなっているのが、4WDシステムのe-4ORCEだ。前輪に加えて後輪もモーターで駆動するために、高い動力性能を発揮する。65kWh仕様で2WDと比較してみると、e-4ORCEの最高出力は1.6倍、最大トルクは2倍近くになる。その割に航続可能距離は430kmと、2WDの450kmに比べてさほど悪化していない。e-4ORCEは、通常の巡航時にはFF(2WD)で走り、モーターは永久磁石を使わない誘導モーターなので、エネルギー損失も小さい。また、モーターを前後に搭載しているので、減速時の回生による充電を4輪で行えるというメリットもある。そのため、e-4ORCEは2WDモデルに比べて1.6〜2倍近いパワーを発揮しながらも、通常走行時の電力消費量はあまり変わらず、長い航続可能距離を実現しているのだ。

e-4ORCEでは、走行状態や路面状況に応じて、前後輪の駆動力を自由自在に制御することが可能となっている。たとえば、峠道を走るときには前輪の駆動力を抑え、後輪の駆動力を高めることで旋回軌跡の拡大が抑えられる。しかも、電子制御で4輪のブレーキを独立して作動させて、ステアリングの操舵角に応じて忠実に曲がる機能なども採用されている。これらの機能によって、e-4ORCEはドライバーの操作と車両挙動の間に生じる格差を少なく抑えている。言い換えれば、タイヤのグリップ力を最大に引き出す走りが行えるとも言えるだろう。

アリアのラインアップの中で、もっともパワフルなのが90kWh[4WD]仕様だ。0-100km/h加速タイムは5.1秒と、3.7リッターV型6気筒エンジンを搭載するスポーツカーの「フェアレディZ」と同等だ。しかも、モーターはアクセル操作に対して機敏に反応するため、巡航中にアクセルペダルを踏み増したときの加速感やトルクが沸き上がる感覚はフェアレディZよりも力強く、相当にパワフルだ。

リチウムイオン電池を使い切った状態から満充電になるまでの所要時間は、普通充電の場合65kWh仕様で12時間、90kWh仕様で17時間を要する。電池容量が増えると、充電の所要時間も長くなる。だが、アリアでは急速充電器を使えば、375kmの距離を走れる量の充電がわずか30分で行える。急速充電器の高効率化を達成できた背景には、バッテリー温度を一定に保つ「温度調節システム」の採用があげられる。PTC素子ヒーターとヒートポンプシステムを活用することで、温度変化を抑えているのだ。さらに、温度調節システムは充電時間の短縮だけでなく、急速充電器の使用に対するリチウムイオン電池の耐久性も向上させている。従来は、急速充電器を頻繁に使うと充電の最大容量が減って航続可能距離が短くなるため、普通充電を時々行う必要があるとされていた。この性能劣化が、アリアの温度調節システムの採用によって改善されている。

日本では、総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住むことから、自宅に充電器を設置できないユーザーも多い。そうなると、電気自動車を所有するには販売店や公共施設に設置された急速充電器に頼ることになる。それなのに「普通充電を時々行う必要がある」ということから、電気自動車の購入を諦めるユーザーは多かった。この不安が解消されれば、集合住宅に住んでいても電気自動車を安心して購入できるユーザーは増えるだろう。

装備については、衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能の「プロパイロット1」がベーシックグレードに標準装備され、90kWh[4WD]仕様については、高速道路上で手放し運転が可能な「プロパイロット2」が採用されている。準天頂衛生システムなどから高精度測位情報を受信して、自車位置を一層正確に把握することが可能だ。

アリアの価格についてだが、冒頭で述べたとおり正式な価格については公表されていないが、メーカーでは実質購入価格が500万円からになる見込みと発表されている。そのため、65kWh[2WD]のベーシックグレードは500万円少々になるだろう。リーフに62kWhのリチウムイオン電池を搭載した「e+G」が4,998,400円なので、アリアのベーシックグレードはリーフと比較すれば割安だ。車内が広いSUVのボディ、新たなプラットフォームやサスペンションによるすぐれた走行安定性と乗り心地、2つのモニター画面を備えたインパネなどが、リーフe+Gと同等の価格で手に入る。タイヤサイズも19インチで、外観上は上級グレードとほとんど変わらない。

ライバル車の、充電機能を備えたプラグインハイブリッドSUVの価格と比較してみるとどうだろうか。たとえば、トヨタ「RAV4 PHV」は2.5Lエンジンに18.1kWhのリチウムイオン電池、後輪をモーターで駆動できる「E-Four」などを搭載している。充電された電気で走行可能な距離は、WLTCモードで95kmだ。売れ筋になる「G・Z」グレードの価格は499万円だ。

また、三菱「アウトランダーPHEV」は2.4Lエンジンが搭載され、駆動は前後輪のモーターが担う。13.8kWhのリチウムイオン電池を搭載して、1回の充電によりWLTCモードで57.6kmを走行できる。価格は、「Gプラスパッケージ」が4,991,800円だ。

つまり、アリアのベーシックグレードである65kWh[2WD]は、リチウムイオン電池を搭載して450kmの航続可能距離を確保しながら、価格はRAV4 PHVやアウトランダーPHEVの売れ筋グレードと同等ということになる。さらに、リーフの上級グレードとも同程度に抑えることで、割安感が追求されている。いっぽう、高い動力性能を持つ90kWh[4WD]の最上級グレードは、プロパイロット2.0も搭載していることから、価格は750〜800万円くらいになるだろう。

なお、アリアに関して日産の販売店に問い合わせると「2021年7月の発売となっているが、メーカーからは何の話も聞いていない。SUVの電気自動車とあって、お客様からはすでに問い合わせをいただいている。情報がわかれば積極的にお伝えしたいが、それができない」という。これでは、せっかくの魅力的な新型モデルに興味を示した顧客の満足度を、下げてしまいかねないのではないだろうか。日産は、アリアの概要を発表したのだから、いつごろ価格を明らかにして、いつごろ受注を開始するのか。購入を検討するときに実車を見たい顧客にはどのような手段があるのかといった予定くらいは、明らかにすべきだろう。

日産は、2020年3月の連結決算で6,712億円の赤字に陥った。そこから復活するために、今後は商品ラインアップを刷新して国内の販売促進にも力を入れるという。これまでの日産の状況を振り返れば、すばらしい変革だ。特に、前述のとおり、アリアは機能と価格のバランスを考えれば買い得であり、電気自動車の流れを変える可能性をも秘めている。日産の、新たなイメージリーダーにもなり得るだろう。

この新しい方針を成功させるには、日ごろからユーザーに接している販売店に対する説明と理解が不可欠だ。メーカーにとって、お客様はいつも販売店の向こう側にいる。このことを、忘れないでほしいと思う。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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