レビュー
フロントモーターの出力をアップすることで、ハイパワーを手に入れた

トヨタ「RAV4 PHV」300ps超のパワーと95kmのEV航続距離が魅力!

トヨタは、近年SUVのラインアップを次々と増やしているが、その中でも2019年に発売された「RAV4」の人気が高い。2020年1〜6月の小型、普通車販売ランキングを見ると、1位はコンパクトSUVの「ライズ」だが、2位にRAV4が入っている。ライズは、売れ筋グレードの価格が200万円前後なので販売台数が多いのもわかるが、RAV4の人気グレードは320万円前後で、4WDをメインとする大型SUVだ。そんなRAV4が、トヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」などよりも売れているのだから、相当な人気となっていることは間違いない。

トヨタ「RAV4 PHV」のフロントエクステリアとリアエクステリア

トヨタ「RAV4 PHV」のフロントエクステリアとリアエクステリア

そんなRAV4へ、充電が可能なPHV(プラグインハイブリッド)モデルが新たに加わった。

■トヨタ「RAV4 PHV」のグレードラインアップと価格
G:4,690,000円
G“Z”:4,990,000円
BLACK TONE:5,390,000円
※価格はすべて税込み

「RAV4 PHV」には、容量(総電力量)が18.1kWhと、大容量のリチウムイオン電池が搭載されている。これによって、1回の充電で走行できる航続可能距離は、WLTCモードで95kmにも達する。たとえば、ライバル車の三菱「アウトランダーPHEV」は、リチウムイオン電池の容量が13.8kWh、航続可能距離は57.6kmだ。RAV4 PHVは、アウトランダーPHEVのおよそ1.6倍の距離を、モーターのみで走行することができる。RAV4 PHVには、国産プラグインハイブリッド車の中ではもっとも大きな容量のリチウムイオン電池が搭載されているのだ。

トヨタ「RAV4 PHV」には、AC200V、AC100Vの普通充電ポートしか用意されておらず、急速充電には対応していない

RAV4 PHVで注意したいのは、急速充電器が使えないことだ。RAV4 PHVのバッテリーが空の状態から満充電するまで、自宅などに設置された200Vの普通充電器を使うと約5時間30分を要する。いっぽうのアウトランダーPHEVは急速充電器に対応しているので、約25分で80%を充電することができる。また、トヨタ「プリウスPHV」も同様に、約20分で80%まで充電できる。

三菱「アウトランダーPHEV」は、急速充電に対応するポートを備えている

三菱「アウトランダーPHEV」は、急速充電に対応するポートを備えている

外出先で急速充電器が使えれば、エンジンを始動させずモーター駆動だけで走る距離を大幅に長くすることが可能だ。今は、公共施設やコンビニエンスストア、高速道路のサービスエリアなど、設置されている急速充電器の数も増えているので、RAV4 PHVも急速充電器を利用できるようにしてほしい。前述のとおり、リチウムイオン電池容量が大きく、80%の充電でも70km前後を走れるので、急速充電器の利用価値が高いからだ。

もうひとつ、RAV4 PHVの注目点としては、すでに用意されているRAV4ハイブリッドに充電機能を加えただけの仕様ではないということだ。RAV4 PHVの前輪側の駆動用モーターは、RAV4ハイブリッドよりもパワーアップされている。RAV4ハイブリッドの前輪に装着されたモーターは、最高出力が120ps、最大トルクが20.6kg-mだが、RAV4 PHVでは182ps、27.5kg-mにまで高められている。後輪のモーターは、どちらも54ps、12.3kg-mと共通だが、RAV4 PHVがフロントモーターの出力を向上させた効果は大きい。

トヨタ「RAV4 PHV」に搭載されているエンジンは、トヨタ「カムリ」などにも採用されている177psの2.5Lダイナミックフォースエンジンだが、182psのフロントモーターや54psのリアモーターを備えていることによって、システム最高出力は306psに達する

また、エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力も、RAV4ハイブリッドは222psだがRAV4 PHVは306psと、かなり強化されている。同様のPHVモデルであるプリウスPHVでは、モーターなどの基本的なメカニズムは「プリウス」と同じなのに、RAV4 PHVがハイブリッドモデルよりも出力を高めた理由は何なのだろうか。

その点を開発者にたずねると、以下のような回答があった。「プラグインハイブリッドは、容量の大きなリチウムイオン電池や充電機能を搭載するので、ハイブリッドに比べて車重が増える(RAV4 PHVはハイブリッドに比べて210kg重い)。そこで、前輪側のモーターは北米で売られているボディの重い『ハイランダーハイブリッド』と共通化した。モーターを強化することで、重量増を補っている」。

■トヨタ「RAV4 PHV」馬力などのスペック
-搭載エンジン-
A25A-FXS 型2.5L直4DOHCアトキンソン・サイクルエンジン(ダイナミックフォースエンジン)
-最高出力-
エンジン:130kW(177ps)/6,000rpm
フロントモーター:134k(182ps)
リアモーター:40kW(54ps)
システム最高出力:225kW(306ps)
-最大トルク-
エンジン:219N・m(22.3kgf・m)/3,600rpm
フロントモーター:270N・m(27.5kgf・m)
リアモーター:121N・m(12.3kgf・m)

トヨタ「RAV4 PHV」の走行イメージ

トヨタ「RAV4 PHV」の走行イメージ

RAV4 PHVに試乗すると、やはりRAV4ハイブリッドと比べて明らかにパワフルだ。動力性能をガソリンエンジンに当てはめると、RAV4ハイブリッドも3Lエンジン並みと十分な動力性能を持ち合わせているのだが、RAV4 PHVはV型6気筒の3.5L〜4.0Lエンジンに匹敵するほどのパワーを発揮する。さらに、走行モードを「ハイブリッドモード+スポーツモード」にすると、アクセルペダルを踏み増したときに駆動力が一気に高まる。不用意な操作をすると、前輪が空転してしまうほどだ。

トヨタ「RAV4 PHV」の走行イメージ

トヨタ「RAV4 PHV」の走行イメージ

そして、走行モードを「EVモード」にすると、エンジンを停止させて充電された電気を使って走行する。このときの動力性能も高い。モーターだけで走っても、2Lクラス以上の加速感を味わえた。少なくとも、通常の市街地や高速道路、峠道の走りでは、パワー不足などは感じない。これも、前輪側のモーターを強化したメリットだ。しかも、モーターのみの駆動ではとても静かで滑らかに加速するので、走りの質も高く感じる。

トヨタ「RAV4 PHV」の試乗イメージ

トヨタ「RAV4 PHV」の試乗イメージ

逆に、RAV4 PHVで欠点に思えたのは、コーナーを曲がったり車線変更したりするときに、ボディの重さが意識させられることだ。RAV4 PHVの車重は、RAV4ハイブリッドに比べて210kg重く、1,900kg(ブラックトーンは1,920kg)に達する。そのために、少し早めの操舵で車線変更する場面などでは、ボディの上側がRAV4ハイブリッドに比べて大きめに揺り返す。だが、走行安定性はそこまで悪化しない。また、乗り心地はボディが重いこともあって重厚だが、19インチタイヤ(235/55R19)を装着したブラックトーンでも、硬さは意識させないレベルに抑えられている。

RAV4 PHVの価格は、Gグレードで469万円。RAV4ハイブリッド G(4WD)に比べて約80万円高いが、装備はPHVのほうが少し充実しているので、実質的な価格差は約70万円に縮まる。そして、プラグインハイブリッドは申請によって経済産業省の補助金が交付される。2020年度の交付額は、22万円だ。つまり、最終的な実質差額は48万円になる。

トヨタ「RAV4 PHV」の外観イメージ

トヨタ「RAV4 PHV」の外観イメージ

仮にRAV4 PHVを購入したとして、ガソリンをまったく使わずに充電された電気だけで走っても、48万円の差額を走行コストの節約で取り戻すことはできないだろう。RAV4ハイブリッドの燃費もすぐれているので、単純に損得勘定を計算すればRAV4 PHVが不利になる。だが、前述の通り、RAV4 PHVは前輪に装着されたモーターの動力性能を高め、リチウムイオン電池の容量にも余裕を持たせている。それらによって、RAV4ハイブリッドとは異なるパワフルな運転の楽しさや上質な走りを味わえるのだ。RAV4 PHVでは、環境や燃費性能の向上とは異なる付加価値を得られる。したがって、RAV4 PHVはそういった走りの魅力を把握したうえで、購入を判断するのがいいだろう。

問題は納期だ。現時点で、RAV4 PHVの受注は生産能力を大幅に上回っており、2020年度(2020年3月末日まで)の受注枠を使い果たした。そのために、受注を一時的に中断している。受注再開の情報は、メーカーのホームページなどで告知するという。

昨今のクルマ販売は、約80%が乗り換えに基づいている。そのため、愛車の車検満了に合わせて新車を買いたいと思っているユーザーが大勢おられるはずだが、新車の納期が遅れると車検を取り直して中途半端な期間だけ乗り続けるといったムダが生じてしまう。すぐれたクルマを開発したのだから、なるべく早く受注を再開してほしいと願う。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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