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ホンダ初の量産電気自動車がいよいよ発売!

まもなく正式発表! 後輪駆動採用のEV「Honda e」を徹底解説

日本は、ハイブリッドカーの普及率が高い。2019年度に販売された新車(小型、普通乗用車)のうち、約40%がモーター駆動を採用している。だが、ハイブリッドカーと違ってエンジンを搭載せず、充電された電気だけで走る電気自動車(EV)の販売数は少ない。日本の自動車メーカーが販売する電気自動車として、もっとも有名な日産「リーフ」こそ、2020年1〜6月には1か月平均で1,000台少々を販売しているが(マツダ「CX-8」やトヨタ「カムリ」などと同等の台数)、三菱自動車の電気自動車「i-MiEV」の販売台数はわずか6台だ。これは、日本の自動車メーカーが販売する電気自動車の車種数そのものが少なく、実質的にリーフしか選べない状態になっていることも原因のひとつだろう。

2020年8月に正式発表される、ホンダ初の量産EV「Honda e」

2020年8月に正式発表される、ホンダ初の量産EV「Honda e」

だが、この状況が今後は少しずつ変わってくるかもしれない。2020年7月16日に、日産はSUVスタイルの電気自動車「アリア」を発表し(発売は2021年中盤)、さらにホンダも同社初の量産型電気自動車「Honda e」を、まもなく発表するからだ(2020年8月中の正式発表を予定)。また、ホンダはHonda eの発表に先駆けて、日本仕様のプロトタイプ車両をメディア陣に公開した。当記事では、現在判明しているHonda eの詳細(価格やグレードなど一部情報のみ、正式発表まで不明)に加えて、実車に触れた印象などを交えて解説したい。

報道陣に公開された、「Honda e」の日本仕様モデル

報道陣に公開された、「Honda e」の日本仕様モデル

Honda eは、コンパクトな5ドアハッチバックタイプの電気自動車だ。日本仕様の詳しいボディサイズは明らかにされていないが、欧州仕様はすでに公表されている。欧州仕様の全長×全幅×全高は、3,894×1,752×1,512mmで、ホイールベースは2,538mm。日本仕様も、欧州仕様とほぼ同サイズと判断していいだろう。Honda eのボディサイズを既存のコンパクトカーに当てはめると、全長はホンダ「フィット」に比べて約100mm短く、スズキ「スイフト」などに近い。

「Honda e」のサイドミラーには、カメラタイプの「サイドカメラミラーシステム」が標準装備されている

「Honda e」のサイドミラーには、カメラタイプの「サイドカメラミラーシステム」が標準装備されている

車内には「サイドカメラミラーシステム」の液晶モニターが、左右にひとつずつ備えられている

車内には「サイドカメラミラーシステム」の液晶モニターが、左右にひとつずつ備えられている

「Honda e」の「サイドカメラミラーシステム」は、一般的な電動サイドミラーと同様に、映像の角度を上下左右に変えることができる

Honda eには、全車に「サイドカメラミラーシステム」が標準装備されている。170万画素の高精細カメラをサイドミラーに装備し、インパネの左右に配置された6インチモニターによって、後方の映像を映し出すものだ。

「Honda e」の上級グレードには、ルームミラーがカメラタイプの「センターカメラミラーシステム」が備わる

「Honda e」の上級グレードには、ルームミラーがカメラタイプの「センターカメラミラーシステム」が備わる

なお、ルームミラーにカメラを使った「センターカメラシステム」は、上級グレードにのみ設定される。Honda eは、全幅こそ1,700mmを超える3ナンバー車ではあるが、小型のサイドカメラミラーシステムによって、サイドミラーの両端で測る実質的な車幅は、5ナンバー車と同等のコンパクトさだ。

画像は、「Honda e」日本仕様のフロントエクステリアとリアエクステリア

画像は、「Honda e」日本仕様のフロントエクステリアとリアエクステリア

Honda eのエクステリアは、シンプルなデザインが採用されている。Honda eのベースとなったコンセプトカー「Honda Urban EV Concept」のデザインコンセプトである「キビキビした走りの楽しさ」や「愛着を感じる親しみやすさ」が、Honda eにも表現されている。

ボディに内蔵されている、フラットな「アウタードアハンドル」。キーを持って近づくと、自動でポップアップされる仕組みだ

Honda eでは、ラジエーターグリルなどが不要な電気自動車の特徴を生かして、ボディ表面の凹凸を極力減らしている。ドアハンドルはボディに内蔵されており、鍵を差し込むキーシリンダーは(表面上)存在しない。キーを持ってクルマに近づくと自動的にポップアップし、アウタードアハンドルに触れることでドアロックが解除される仕組みだ(アウタードアハンドルの奥には、緊急用としてエマージェンシーキーの差し込み口が備えられている)。

「Honda e」のフロントイメージとリアイメージ

「Honda e」のフロントイメージとリアイメージ

フロントグリルやリアパネルはブラックアウトされており、その中にアイコニックな丸型のヘッドライトやリアコンビランプが備わっている。さらに、フロントやリアカメラ、安全運転支援システムのレーダー、バックライトなどもパネル内にすっきりと収められている。

「Honda e」のモーターは、リアに積み込まれている

「Honda e」のモーターは、リアに積み込まれている

Honda eは、モーターや駆動用電池、プラットフォームなどがすべて新開発されている。駆動用モーターは、最高出力が113kW(154PS)、最大トルクは315Nm(32.1kg-m)とされる。最大トルクが300Nmを上回るので、余裕ある加速を楽しむことができるだろう。駆動用電池の容量は35.5kWhで、航続可能距離はWLTCモード走行で283km、JC08モードで308kmになる。ちなみに、日産「リーフ」では、リチウムイオン電池が40kWhと62kWhの仕様を選ぶことができる。ベーシックな40kWhの場合、モーターの最高出力は110kW(150PS)、最大トルクは320Nm(32.6kg-m)と、動力性能はHonda eとほぼ同じだ。

「Honda e」の充電口は、ボンネットのフロント中央に備え付けられている。左が、急速充電ポートで、右が普通充電ポートだ

40kWhのリーフの航続可能距離は、WLTCモードで322km、JC08モードでは400kmに達する。駆動用電池の容量は、Honda eは35.5kWhだが、リーフは40kWhと大きいため、航続可能距離もWLTCモード走行でリーフのほうが39km長い。比率に換算すると、リーフの航続可能距離はHonda eを14%上回るが、この比率は、駆動用電池容量の比率にほぼ比例する。

「Honda e」は後輪駆動のために前輪の切れ角が大きく、小回りが利く

「Honda e」は後輪駆動のために前輪の切れ角が大きく、小回りが利く

Honda eの駆動方式は、モーターをうしろに搭載する後輪駆動だ。そのため、前輪の最大切れ角が大きく、最小回転半径は4.3mと小回りの利きにすぐれている。

なぜ、Honda eは後輪駆動を採用しているのだろうか。それは、Honda eはボディがコンパクトなので、モーターを前側に搭載して前輪を駆動させるとスペースに無理が生じるという事情もあったという。開発者は、「Honda eの開発は、最初は前輪駆動でスタートしたが、後に後輪駆動に変更した」と述べている。

そして、後輪駆動にしたことで前後のオーバーハングが短くなった。ホイールベースは2,538mmなのでフィットと同等だが、全長は先に述べた通りHonda eが約100mm下回っている。つまり、オーバーハングをフィットに比べて約100mm切り詰めたことになる。

316kgの駆動用電池は、前後輪の間の床下に搭載されている。前後の重量配分は50:50とバランスがよく、床下にあるので重心も下がる。これらによって、走行安定性と乗り心地にメリットが生まれる。

「Honda e」17インチホイールには、ミシュラン「PILOT SPORT 4」タイヤが装着されており、走行性能の高さをうかがわせる

サスペンションは、前後ともストラットの4輪独立式だ。ホイールは軽量化が施されており、サイズは16インチ(185/60R16)と17インチ(205/45ZR17)の2種類が用意されている。撮影車に装着されていた銘柄は、16インチがヨコハマ「BluEarth-A」で、17インチはミシュラン「PILOT SPORT 4」だった。特にミシュラン「PILOT SPORT 4」は人気のスポーティータイヤで、Honda eが走りに力を入れていることがわかる。指定空気圧は、転がり抵抗を抑えるために前後輪とも240kPaと少し高めだ。

車内は、サイドウィンドウの下端が低めなので周囲は見やすい。全幅の数値は1,700mmを超えるが、ボディの四隅がわかりやすい。ボディ後端のピラーはやや太いが、最小回転半径は4.3mと小回りが利くので、車庫入れなどはしやすい。

「Honda e」のインパネは、ずらりと並んだ液晶画面が目を引く。左右の液晶画面は「サイドカメラミラーシステム」で、運転席正面の画面が「メータースクリーン」。そして、助手席前の2つの液晶画面が、ナビや音楽、音声アシスタントや各種設定、専用アプリなどを表示させることができる「ワイドスクリーン Honda CONNECTディスプレイ」だ

インパネには、サイドミラーに相当するディスプレイを含めて、5つの液晶画面が並んでいる。助手席前にある「ワイドスクリーン Honda CONNECTディスプレイ」には、カーナビやオーディオ、音声アシスタントなどさまざまな情報を分割表示できる。

ステアリングホイールは2本スポークで、液晶画面の手前はテーブルのように少し張り出している。この木目調パネルは、日本車にありがちな光沢の強さはなく、落ち着いた雰囲気のものが採用されている。開発者は、「Honda eは、当面は日本と欧州で販売する。木目調の仕上げは、こだわりの強い欧州の好みに合わせた」と言う。

「Honda e」のフロントシート

「Honda e」のフロントシート

シートは、リラックスできる仕上がりだ。表皮の素材は、少しザラザラしたメランジ調のファブリックで、座り心地は体が少し沈んだ部分でしっかりと支えてくれる。背もたれや座面のサイズにも余裕がある。

「Honda e」のリアシート

「Honda e」のリアシート

後席は、後部にモーターを搭載することもあって、取り付け位置が前寄りだ。そのため、足元空間は狭めで、身長170cmの大人4名が乗車して後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ分に留まる。また、床下に電池を搭載しているので、床と座面の間隔も不足している。腰が落ち込んで膝が持ち上がる座り方になり、大人4名の乗車はやや窮屈だ。

衝突被害軽減ブレーキは先進的で、各種の安全装備も充実させた。上級グレードには、自動的に駐車を行えるホンダパーキングパイロット、センターカメラシステム、100V・1500Wの電源コンセントなどを装着する。

最近の電気自動車は、ボディを拡大して電池容量も増やし、航続可能距離を長く伸ばす傾向が強い。エンジンを搭載した従来のクルマと比較して、走れる距離が短いといった欠点の払拭に力を入れている。

そういった進化は理解できるのだが、エコロジーを優先させる電気自動車本来の世界観には合わないだろう。電気自動車本来の世界観は、遠方に出かけるときにはひとり当たりのエネルギー消費量が大幅に少ない、公共交通機関を使うというものだ。そして、日常的な買い物など公共交通機関を利用しにくい地域内の短距離移動に、個人所有の電気自動車を使う。自宅から駅までは電気自動車で移動し、駐車場に入れてから先の長距離は電車で移動するパーク&ライドなどもそのひとつだ。この世界観に基づけば、電気自動車はコンパクトで小回りの利く運転しやすいクルマが好ましい。その意味で、Honda eは電気自動車の本質を押さえている。

「Honda e」のイメージ

「Honda e」のイメージ

内装のコンセプトを、「自宅からシームレスに繋がるリビングのような空間」としたのも興味深い。コロナ禍の今、他人との接触を避けられるクルマの移動が改めて注目され、自分の愛車なら車内に1人でいるときはマスクを着用する必要もない。クルマは移動時のリスクが少ない自宅の延長であり、リラックス感覚をともなうHonda eの車内は、こういったニーズにも適しているだろう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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