バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
未舗装路での安心感も高く、バイクらしい走りだからオンロードも気持ちいい!

再来のハンターカブに試乗!ホンダ「CT125・ハンターカブ」と「クロスカブ110」の乗り比べも!!


2018年にホンダ「クロスカブ110」が登場した際、むき出しのエンジンや湾曲した造型のリアフェンダーを備えた車体と、未舗装路も走れる走行性能に「ハンターカブの再来か!?」と心躍らせながら試乗していた筆者。その当時は「ハンターカブ」の名を冠したモデルが再び発売されるとは思ってもいなかったのだが、2019年に開催された東京モーターショーでプロトタイプがお披露目され、バイクファンのみならず多くの注目を集めた新型「CT125・ハンターカブ」が、2020年6月についにリリースされた。今回は、新型ハンターカブをオフロードも含めたショートツーリングに連れ出すとともに、クロスカブ110との乗り比べにもトライ!

歴史的名車の雰囲気を現代の技術で再現

「スーパーカブ」シリーズをベースに、アップタイプのマフラーを装備した「ハンターカブ」はオフロードとオンロードを区別することなく走れ、釣りやキャンプなどにも使えるトレッキングバイクとして親しまれていた。そもそもハンターカブというのは愛称で、海外にも複数のモデルが展開されているが、日本国内では「ホンダ CT50」(1968年発売)や「ホンダ CT110」(1981年発売)がこれに当たる。特に、1980年に輸出モデルとして登場したホンダ CT110にはコアな支持層が存在し、日本ではわずか2年間しか販売されなかったにも関わらず、今でも人気が高い。

ルーツであるスーパーカブの雰囲気が色濃く残る「ホンダ CT50」。「スーパートルク」と呼ばれる副変速機を搭載し、49ccの排気量ながら強力な登坂能力を誇った

排気量を107ccに拡大し、フロントフォークをテレスコピック式とするなどした「ホンダ CT110」は、走破性の高さで現在もなお根強い人気を維持している

新型「CT125・ハンターカブ」の造形は、アップタイプのマフラーやエアクリーナーの導入口だけでなく、ハンドルやウィンカー、ミラーなど随所に「ホンダ CT110」のテイストを感じられるものとなっている。作り込みも細部までていねいで、手を抜いたところが見当たらないほどだ。操作系の部分については、オフロード走行を想定したものとしつつも、スーパーカブシリーズらしい機構を残し、かつ、一般的なバイクから乗り換えたライダーが違和感なく使えるような配慮も見て取れる。

サイズは1,960(全長)×805(全幅)×1,085(全高)mmで、重量は120kg。ホイールベースは1,255mm

サイズは1,960(全長)×805(全幅)×1,085(全高)mmで、重量は120kg。ホイールベースは1,255mm

ブラックに塗られたアップタイプのハンドルや角型のウィンカーは、ホンダ CT110と共通するもの。細部まで作り込みが感じられる

丸型のミラーもホンダ CT110のイメージに寄せられている。メーターはシングルタイプで、スッキリとしたコックピットを実現

ホンダ CT110の赤く塗られたヘッドライトステーへのオマージュが感じられる

ホンダ CT110の赤く塗られたヘッドライトステーへのオマージュが感じられる

フロントフェンダーが金属製なのもホンダ CT110と共通。ステーの造形も似ている

フロントフェンダーが金属製なのもホンダ CT110と共通。ステーの造形も似ている

アップタイプのマフラーはヒートガードが二重に装備され、タンデムライダーの足を熱から守る配慮も

アップタイプのマフラーはヒートガードが二重に装備され、タンデムライダーの足を熱から守る配慮も

エアクリーナーの導入口はリアのキャリア部分に設けられている。これも、ホンダ CT110で採用されていたシステムだ

グリップは、オフロードバイクに採用されるリブが立っていて滑りにくいタイプ。スーパーカブシリーズに共通する自動遠心クラッチなので、クラッチレバーは存在しない

セルスターターのほかにキックペダルも装備。フットペグは可倒式となっており、ゴムを取り外すとすべりにくいオフロードタイプになる

シフトパターンはスーパーカブシリーズ共通のロータリー式だが、シフトペダルの前側は、一般的なバイクのものと同様につま先でかき上げる操作も可能な形状

このように、ホンダ CT110をイメージさせる外観だが、ベース車は2019年に発売された「スーパーカブ C125」。124ccのエンジンの最高出力は8.8PS/7,000rpmと、9.7PS/7,500rpmのスーパーカブ C125より抑えめとしながら、最大トルクは11Nm/4,500rpmと、スーパーカブ C125の10Nm/4,000rpmよりも低回転で強いトルクを発生する特性とされた。また、フロントフォークがテレスコピック式なのはスーパーカブ C125と共通ながら、ハンドルをマウントするトップブリッジの位置まで伸ばされ、ストローク量も10mm増した110mmとなり、ギャップの多い路面をより走破しやすくなっている。ブレーキも前後ともにディスク式となっており(スーパーカブ C125はリアブレーキがドラム式)、制動力やコントロール性が向上。さらに、未舗装路での走行を視野に入れ、ホイールベースが10mm延長されたほか、シート高も20mm高められ、フレームの剛性も最適化されている。

CT125・ハンターカブのベースとなったスーパーカブ C125。1958年に誕生した初代モデル「スーパーカブC100」を思わせる見た目だ

フロントフォークのマウント方式がベース車のものと変わったこともあり、CT125・ハンターカブはフレームにも手が加えられている。赤い部分が、スーパーカブ C125からの変更点だ

エンジンの基本設計はスーパーカブ C125と共通としつつ、独自の特性を与えられている

エンジンの基本設計はスーパーカブ C125と共通としつつ、独自の特性を与えられている

スーパーカブ C125とCT125・ハンターカブの出力特性比較図。CT125・ハンターカブのほうが最高出力は抑えられているが、低回転での力強さを重視していることがわかる

ストローク量が延長されたフロントフォークは一般的なバイクと同じ形式とされ、摺動部分には汚れを防ぐ蛇腹が装着されている

ABSに対応したフロントディスクブレーキには、片押し式の2ポッドキャリパーを装備。ホイールはオフロードバイクらしいスポークタイプだ

リアブレーキもディスク化。リアサスペンションはスプリングが露出したタイプとなった

リアブレーキもディスク化。リアサスペンションはスプリングが露出したタイプとなった

クロスカブ110と乗り比べ! オフロードも走るショートツーリングに出発

オフロードでの走破性や登坂性能を重視した車体やエンジンを備えているCT125・ハンターカブは、やはり、未舗装路を走ってみたくなる。オンロードからオフロードまで試すため、郊外の林道まで足を伸ばしてみよう!

CT125・ハンターカブにまたがってみると、身長175cmの筆者で両足のかかとがギリギリ接地しない感じだった。シリーズの中ではもっとも高いシート高だが、足つき性は悪くない

試乗に出かける計画を立てている時に、なんと、筆者の友人がクロスカブ110(2018年発売)を購入したという情報が入ってきた。クロスカブ110は、CT125・ハンターカブ同様にオフロード走行を前提とした装備をまとった原付二種のモデル。冒頭でお伝えしたように、ハンターカブを想起させる仕上がりに筆者が心を躍らせたマシンだ。これはなんとしても、CT125・ハンターカブと乗り比べしてみたい。ということで、友人にクロスカブ110の出動を依頼。一緒にショットツーリングに出かけてみた!

右側が、友人が購入したクロスカブ110だ。カスタマイズされているが、同じシリーズなので雰囲気は似ている

右側が、友人が購入したクロスカブ110だ。カスタマイズされているが、同じシリーズなので雰囲気は似ている

2台を並べてみると、シート高に結構差がある。CT125・ハンターカブのシート高はクロスカブ110より16mm高い800mmとなっている。なお、CT125・ハンターカブのベース車であるスーパーカブ C125のシート高は780mmだ

排気量はCT125・ハンターカブのほうが15cc大きい程度だが、乗り味には結構差が感じられた。もっとも違ったのは、アクセルを開け始めた際のトルク。CT125・ハンターカブが出だしからグッと車体を押し出すようなトルク感があるのに対し、クロスカブ110は、ある程度エンジンを回してからパワーが出てくる印象だ。これは、低回転域でも力強さを発揮するエンジン特性のおかげ。最高出力も1.8PS高いくらいなのだが、クロスカブ110より最大トルクが2.5Nm大きく、発生回転数が1,000rpm低くなっているのだ。特に、この特性は登り坂で顕著に表れ、同じスピードで登ろうとすると、クロスカブ110はかなり大きくアクセルを開けてエンジンを回さなければならず、CT125・ハンターカブのスタート直後からのパワフルさを実感した。また、車体の剛性感もかなり差があるようで、CT125・ハンターカブのほうがしっかりしていて一般的なバイクに近い乗り味。コーナーリング中もピシッと安定し、攻めるというほどではないもののスピードを上げて曲がることもできた。

バイクらしく車体を傾けたコーナーリングを積極的に楽しむことも可能。速度を上げていっても車体は安定している

CT125・ハンターカブに搭載されているエンジンは横型と呼ばれるタイプで、トコトコと歩いて行くようなフィーリングと、幹線道路でも流れをリードできるパワーを合わせ持っている。筆者は同じタイプのエンジンを採用した同社の「スーパーカブ C125」や「モンキー125」にも試乗しているが、それらよりも低回転のトルクを太らせたCT125・ハンターカブはトコトコ感がさらに強調された感覚があり、のんびり田舎道を流すような走り方がとても気持ちいい印象。それでいて、アクセルを開ければどの回転域からでも車体を加速させるトルクがあるので、追い越し加速などでもストレスを感じることはない。

景色を楽しみながらのんびり走るのが心地いいが、その気になれば結構なペースでも走れるので長距離移動も苦にならないだろう

サイズ409(幅)×477(長さ)mmのキャリアも装備されているので、キャンプ用品などを積んで出かけられるほか、タンデムもできる

キャリアの下側に車載工具などを収納できるケースが装備されているのも、けっこう便利

キャリアの下側に車載工具などを収納できるケースが装備されているのも、けっこう便利

ここからは、いよいよオフロード走行! 未舗装の林道なので大きなギャップはないものの、ところどころ水たまりや掘れている部分もある。このコースは何度も試乗の際に走っているが、CT125・ハンターカブで走った今回が1番楽しかったかもしれない。排気量などのスペックや得意とする速度域がコースと合っていたこともあるだろうが、ダートを走るのがとにかく最高! アクセルを開けると、リアタイヤが地面を蹴っている感覚がシートを通して伝わってくる。グリップの低い路面で少し大きめにアクセルを開けると、リアタイヤを少しすべらせながら加速していくこともできるが、駆動輪のトラクションがきちんと感じられるので、それを怖くない低い速度域で味わえた。同じようなことをクロスカブ110でやろうとしたが、これがなかなかできない。エンジンを高回転まで回す必要があるため、リスクもあって気軽に楽しめる感じではないのだ。15ccの排気量差と、低回転のトルクを重視したエンジンがここまで楽しさに差をつけるとは……。

オフロードの登り坂もグングン登って行ける。リアタイヤのトラクションが感じられて、走っているだけで楽しい

街乗りバイクでオフロードを走っているというより、小さなオフロードバイクで走っている感覚。積極的にオフロード走行を楽しめる

車体の剛性感も十分あり、サスペンションもよく動くので、大きめのギャップを乗り越えても車体が振られることもない。オフロードバイクっぽくステップの上に立ち上がって乗ってみると、腰の下でショックを吸収しながら走ることができた。そして、前後に採用したディスクブレーキは、クロスカブ110の前後ドラムブレーキよりも断然高いブレーキの効きとコントロール性を発揮。グリップの低い未舗装路でも、安心して速度コントロールが可能だ。また、リアにABSが装備されていないので、後輪をロックさせて向きを変えるような乗り方ができるのも気がきいている。

オフロード走行でありがたさを痛感したのが、エンジンのアンダーガード。飛び石がこのガードに当たる音が何度も耳に届いたが、エンジンの心配をしないで済んだ

いっぽう、クロスカブ110にはアンダーガードがないため、石が直接エンジンに当たる。ちなみに友人は、この状況を目の当たりにし、アンダーガードを付けると話していた

CT125・ハンターカブはクロスカブ110より約16万円高いが、実際にオフロードを交えたコースを走ると、その価格差に見合うだけの性能差があることを感じられる。細かい部分の品質が高いということもあるが、乗り味の差が大きい。ビジネスバイクっぽさ(よく言えばスーパーカブらしさ)が残るクロスカブ110に対して、CT125・ハンターカブはフレーム形状こそアンダーボーンタイプだが、乗り味は完全に一般的なバイクなのだ。オフロード走行はもちろん、長距離ツーリングに出かけるようなバイクらしい走りを味わいたいなら、CT125・ハンターカブを選んだほうがいいだろう。

試乗を終えて

プロトタイプを目にした時から大きな期待を抱いていたモデルだが、実際に乗ってみると、期待を大きく上回る楽しさだった。走り出した瞬間から、より鼓動感を増したエンジンは気持ちよく、急がされない特性ではあるものの交通の流れをリードするキャパシティも持っているので、目的地までストレスなく、むしろ楽しみながら移動できる。少しアップダウンがあるような田舎道は、このエンジンのおいしいところをもっとも感じられるシーンだが、こうした道はおそらく日本全国にたくさんあるので、特別な場所に出かけなくても比較的近場でCT125・ハンターカブの魅力を堪能することができるだろう。

そして、オフロードを走行すると、CT125・ハンターカブのさらなる懐の深さにトリコになるはず。低回転のトルク重視に振った124ccのエンジンは、フラットな林道を積極的に楽しみながら走るのに最適な特性。車体の剛性感は増しているものの、前後のサスペンションはよく動くので、スピードを出さなくてもオフロードのおもしろさを満喫できる。これまでオフロードを走ったことがない人でも、CT125・ハンターカブなら怖さよりも楽しさを体感できるだろう。林道をかっ飛ばすような走りはできないが、ベテランライダーが乗っても、初めてオフロードを走った時に感じた気持ちよさがよみがえり、また違った楽しさが味わえるかもかもしれない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
バイク本体・パーツのその他のカテゴリー
ページトップへ戻る