レビュー
ヤリスにSUVならではの魅力を詰め込んだ!

人気のトヨタ「ヤリスクロス」ハイブリッドとNA車に比較試乗!

2020年8月31日、トヨタから新型コンパクトSUV「ヤリスクロス」が発売された。

今回、発売前から注目を集めていた、トヨタ「ヤリスクロス」のハイブリッドとNAエンジン車に試乗した

今回、発売前から注目を集めていた、トヨタ「ヤリスクロス」のハイブリッドとNAエンジン車に試乗した

ヤリスクロスは、コンパクトカーの「ヤリス」と同様、「TNGAプラットフォーム(GA-B)」が採用されており、走行性能が高められている。また、SUVならではのラゲッジルームの広さやオフロードの走破性を高める4WDモードも搭載(一部グレード)されているのも、魅力のひとつだ。今回、ヤリスクロスのNA(自然吸気)エンジン車とハイブリッドの両方に試乗することができたので、両車を比較するとともに、悪路の走破性を試す機会も得られたのでレビューしたい。

「ヤリスクロス」のフロントイメージとリアイメージ

「ヤリスクロス」のフロントイメージとリアイメージ

まず、ヤリスクロスのボディサイズは、全長が4,180mm、全幅が1,765mmと少しワイドな3ナンバー車となっている。また、全高はSUVということもあって1,590mmなので、一般的な立体駐車場(1,550mm)に対する利便性が下がるのは致し方ないところか。ホイールベースは2,560mmと、ベース車のヤリスに比べて10mm長くなっている。開発者によると、「ホイールベースの拡大は、フロントサスペンションの配置が少し異なるためで、前後席のシート間隔などは同じ」とのことだ。余談だが、実はスポーツモデルの「GRヤリス」も同様に、全長が10mm長い。ヤリスクロスは、3ナンバー車ではあるものの全長は4.2m以下で、最小回転半径も5.3mと小回りが利くので、大柄に見えるエクステリアとは相反して、狭い道や駐車場などでの取り回し性がいい。

「ヤリスクロス」のサイドイメージ

「ヤリスクロス」のサイドイメージ

ヘッドランプは高い位置に装着されており、ボンネットにふくらみがあって視野に収まるので、車幅やボディの先端がわかりやすい。また、ボディサイドは水平基調なので、側方視界は良好だ。ただし、後方視界は少し削がれるので注意したい。

「ヤリスクロス」のインパネとATレバー

「ヤリスクロス」のインパネとATレバー

インテリアは、インパネ周辺の配置がヤリスに似ており、メーターの視認性やスイッチの操作性などは良好だ。ATのセレクトレバーは、NAでもハイブリッドでも同様に前後に操作する従来型タイプなので、操作性しやすい。また、インパネの上側にはやわらかいソフトパッドが入っているなど、コンパクトSUVのインテリアとしては満足できる質感だ。

「ヤリスクロス」のフロントシート

「ヤリスクロス」のフロントシート

「ヤリスクロス」のZグレードとハイブリッドZグレードに採用されている「電動パワーシート」のスイッチ。従来のスイッチと配置が異なるほか、操作感や作動音がかなり異なるので注意したい

「ヤリスクロス」のZグレードとハイブリッドZグレードに採用されている「電動パワーシート」のスイッチ。従来のスイッチと配置が異なるほか、操作感や作動音がかなり異なるので注意したい

フロントシートの座り心地は、もう少し柔軟でもいいと感じたが大きな不満はない。背もたれのサポート性がよく、峠道などを走っても着座姿勢が乱れにくい。少し注意したいのは、上級のZとハイブリッドZグレードに装着される「電動パワーシート」の操作性だ。これまでの電動パワーシートに比べてスイッチが大きくて反応が鈍く、モーターのノイズ音も大きく感じる。開発者は「従来は複数のモーターを使っていたが、ヤリスクロスではモーターをひとつに抑えて、クラッチを使ってリクライニング、前後スライド、上下調節を行っている。そのため、操作感覚が少し異なる。これによりコスト低減が可能になり、Zの価格を抑えられた」とのことだ。Z、ハイブリッドZグレードを購入予定の方は、購入前に販売店の試乗車などで試してみたほうがいいだろう。

「ヤリスクロス」のリアシート

「ヤリスクロス」のリアシート

後席は、ヤリスも同様なのだが足元空間が少し狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ半だ。だが、ヤリスに比べて床と座面の間隔が20mm拡大しているので、腰が落ち込んで膝が持ち上がる着座姿勢は改善されている。後席の視線も少し高いので、視覚的にもヤリスに比べて開放感がある。また、ハイブリッドは後席の下側に駆動用電池を搭載するため、NAエンジン車に比べると若干座面の柔軟性が削がれているのだが、違和感が生じるほどではない。また、乗降性は良好だ。後席ドアは開口部の上側が少し下降しているので頭を下げる形になるが、ヤリスに比べると着座位置も適度なので乗り降りしやすい。

「ヤリスクロス」のラゲッジルーム

「ヤリスクロス」のラゲッジルーム

6:4分割アジャスタブルデッキボードは、荷室床面の高さを分割して2段階で調節することができる

6:4分割アジャスタブルデッキボードは、荷室床面の高さを分割して2段階で調節することができる

ラゲッジルームは、リアゲートのヒンジが前寄りに装着されていて、開閉時に後方への張り出しが少なく狭い場所でも開閉できる。また、デッキボードは高さを変えられて、なおかつ6:4の割合で分割されているので使い勝手がいい。たとえば、デッキボードの片方は高くして床下の収納を使い、もう片方は低い位置にセットして荷室高を拡大するといった使い方ができる。

「ヤリスクロス」NAエンジン車(Z・4WD)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」NAエンジン車(Z・4WD)の試乗イメージ

エンジンはすべて1.5リッター直列3気筒で、NAとハイブリッドがラインアップされている。まず初めに試乗したNAエンジン車は、4WDのZグレードであった。全般的には不満のない性能なのだが、3,000rpm以下の駆動力が少し不足している。信号が青に変わって加速するときなど、発進直後の加速が鈍く感じる。最大トルクの14.8kg-mは4,800〜5,200rpmで発生するが、同等のトルクを4,000rpm前後で発生させれば加速がよくなるはずだ。

「ヤリスクロス」NAエンジン車(Z・4WD)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」NAエンジン車(Z・4WD)の試乗イメージ

試乗した4WDのZグレードの車重は1,230kgなので、ヤリスの同グレードよりも約100kg重くなる。ヤリスクロスでは、最終減速比をローギヤード化して加速力を高めてはいるのだが、ややパワー不足という印象が残った。また、アクセルペダルを踏み込んだ際に、3気筒エンジン特有の少し粗いノイズが響くことも気になった。また、NAエンジン車にはアイドリングストップが装着されていない。今は信号待ちのアイドリングに罪悪感を抱くドライバーもいるので、標準装着でなくともオプションでは用意してほしいと思う。

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・FF)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・FF)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・4WD)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・4WD)の試乗イメージ

対するハイブリッドの運転感覚は、NAエンジンに比べて上質だ。エンジンの駆動力が下がる低回転域ではモーターがすばやく立ち上がって、アクセルペダルを深く踏み込む機会そのものが少ない。エンジンの負荷が減るので、ノイズもNAエンジンに比べてかなり小さい。登坂路などでアクセルペダルを踏み増すと、ハイブリッドでもそれなりにノイズは発生するものの、通常の走りは実に静かで滑らかだ。

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・4WD)の試乗イメージ

「ヤリスクロス」ハイブリッド(ハイブリッドZ・4WD)の試乗イメージ

走行安定性は、最低地上高が170mmに達するSUVとしては良好だ。ステアリングの支持剛性が高く、操舵に対して車両が正確に反応する。機敏でスポーティーという感覚ではないが、進路の細かな微調整などもしっかりと反応してくれる。ドライバーの操作に比較的忠実なので、クルマとの一体感が得られて運転が楽しく感じる。また、背の高いボディながらカーブを曲がるときに外にふくらみにくく、安全性も向上する。NAエンジンとハイブリッドを比べると、走行安定性は同等だが、操舵に対する反応はNAエンジンのほうが少し機敏だ。

乗り心地は、時速50km以下で市街地を走ると硬めに感じる。大きな段差を乗り越えたときの突き上げ感は抑えられているが、路上の細かな凹凸をコツコツとした感触で伝えやすい。路面の状態によっては、上下に揺すられる印象を受ける。試乗車のタイヤは、すべてダンロップ「エナセーブEC300プラス」で、サイズもすべて18インチ(215/50R18)であった。なお、購入の際には16インチ(205/65R16)装着車も選ぶこともできるので、エクステリアデザインを重視するか、乗り心地を重視するかで選びたい。

「ヤリスクロス」NAエンジンの4WD車に搭載されている「マルチテレインセレクト」スイッチ。左に回すと「MUD&SAND」、右に回すと「ROCK&DIRT」モードになり、スイッチを押すと「NORMAL」モードになる

「ヤリスクロス」NAエンジンの4WD車に搭載されている「マルチテレインセレクト」スイッチ。左に回すと「MUD&SAND」、右に回すと「ROCK&DIRT」モードになり、スイッチを押すと「NORMAL」モードになる

今回は、ヤリスクロスの4WD性能を試すこともできた。NAエンジンの4WD車には「マルチテレインセレクト」と呼ばれるモード切り替えスイッチが備わっている。マルチテレインセレクトは、NORMALモードのほかに「ROCK&DIRT」(岩場や未舗装路などで空転した駆動輪を積極的にブレーキングして、駆動力を確保する機能)、「MUD&SAND」(泥道や砂地でホイールを積極的に回しながら車両を押し出す機能)が搭載されている。なお、「マルチテレインセレクト」以外に「SNOW」モードと呼ばれる、雪道で使用するためのモードも備わっている。

低μのローラー上で、「ヤリスクロス」の4WD性能を体験

低μのローラー上で、「ヤリスクロス」の4WD性能を体験

4WDの試乗は、片側の前輪と後輪が空転するローラー上で試すことができた。NORMALモードでは、前後タイヤがローラーで空転してしまい、クルマを動かすことがまったくできない状態だ。また、SNOWモードは基本的に駆動力を弱める機能だから、ローラー上での走破力はNORMALモードと同等で、脱出することができない。そこで、ROCK&DIRT、もしくはMUD&SANDにモードを切り替えたところ、数秒間の空転ののちに脱出することができた。なお、このローラーでもっとも効果的だったのは、ROCK&DIRTのほうだった。

滑りやすい悪路などでの脱出能力はわかったのだが、ひとつ気になったのは制御が効果を発揮するまでに時間を要したことだ。実際の使用場面に置き換えると、空転が生じた段階で横滑りを起こすなど挙動を乱すことも考えられる。昨今のクルマには各種センサーが装着されているから、車両が滑りやすい状態になったことをあらかじめ検知することも可能だろう。そして、滑りそうな段階で自動的にROCK&DIRTへ切り替えれば、危険な空転を生じさせず滑らかに走り続けられるはずだ。

ハイブリッドの4WDモードスイッチは、NAエンジンのものとは切り替えるモードが異なっている。ハイブリッドは、左に回すと「SNOW」モード、右に回すと「TRAIL」モードだ

ハイブリッドの4WDモードスイッチは、NAエンジンのものとは切り替えるモードが異なっている。ハイブリッドは、左に回すと「SNOW」モード、右に回すと「TRAIL」モードだ

また、ハイブリッドにも走行モードの切り替え機能が備わっているが、NORMALモードとSNOWモード以外には「TRAILモード」のみが備わっている。NAエンジンではROCK&DIRTとMUD&SANDの2つのモードがあるのに、なぜハイブリッドではTRAILモードのみなのだろうか。開発者によると、「ハイブリッドの後輪はモーターで駆動され(E-Four)、NAエンジンの4WDほど駆動力が強くない。そこで、細かなモード切り替えは設けなかった」とのことだ。

試乗を踏まえて、グレードやオプションの選び方などにも触れておこう。ハイブリッドの価格は、GやZの場合でNAエンジンよりも374,000円高いが、購入時に納める税額の違いを差し引くと約30万円に縮まる。この実質差額を燃料代の節約で取り戻すには10万km以上の走行を要するが、前述のようにハイブリッドはNAエンジンに比べて加速が滑らかでノイズも小さい。したがって、燃費だけでなく走りの質を高めるためにハイブリッドを選ぶという選択も十分にありだ。

また、価格をなるべく安く抑えたいのなら、NAエンジンの2WD・G(202万円)に、オプションでフルLEDヘッドランプ(71,500円)を加える。そこに18インチアルミホイール(83,600円)もプラスするなら、これらを標準装着した2WD・Z(221万円)にグレードアップさせたい。つまり、18インチアルミホイールを装着するか否かでGとZの選択が変わる。

ハイブリッドも、基本的には同様だ。実用重視ならハイブリッド2WD・G(2,394,000円)、各種の装備を充実させるならハイブリッド2WD・Z(2,584,000円)を選ぶ。前輪駆動の2WDと4WDの差額は231,000円だから、走行モードの切り替え機能も考慮すれば妥当な金額だ。ヤリスクロスは、NAエンジンとハイブリッドで価格やエンジン特性のみならず、快適性から4WD性能に至るまでかなり異なる。それぞれ一長一短あるので、ご自身の使用環境に合う、ベストな組み合わせを見つけてほしい。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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