レビュー
外見からは想像できない魅力が詰まった、ホンダ初の量産EV!

後輪駆動×EVの走りが楽しい!ホンダ「Honda e」に試乗

ホンダ初の量産電気自動車「Honda e」が初披露されたのは、2019年9月にドイツで開催された「フランクフルトモーターショー」であった。それから1年と少しを経た2020年10月30日、Honda eがいよいよ発売される。

ホンダ初の量産電気自動車「Honda e」が、2020年10月30日にいよいよ発売される

ホンダ初の量産電気自動車「Honda e」が、2020年10月30日にいよいよ発売される

だが、ホンダの販売店であるホンダカーズへHonda eについて問い合わせたところ、担当者から以下のような回答があった。「Honda eの受注は、今は(一時)停止している。受注の予定台数に達したためだ。受注は2020年8月27日に開始したが、9月上旬には停止した。9月下旬時点で、受注の再開時期は不明だ」。

Honda eが、執筆時点で何台受注したのかは公表されていないが、受注を止めた理由はそもそも日本国内における年間販売予定台数が1,000台と少ないことも起因しているのだろう。1か月当たりでは83台にとどまる。たとえば、「N-BOX」の販売台数は2020年1〜8月の1か月平均で16,500台に達しており、Honda eの販売予定台数はN-BOXに比べるとわずか0.5%だ。ホンダカーズは、国内に2,100店舗以上を展開しているから、2店舗に1台の割合で契約しても、計画台数の1,000台を超えてしまう。

このように日本国内の販売計画は少ないものの、欧州では1年間に1万台、つまり日本の10倍の販売台数を見込んでいる。この背景には、欧州で2021年から実施される企業別平均燃費規制「CAFE(Corporate Average Fuel Economy)」の存在がある。CAFEは、車種ごとではなく、自動車メーカー別の平均燃費に対して規制をかけることで、CO2排出量を削減しようというものだ。そして、Honda eなどCO2排出量がゼロの電気自動車を多く販売すれば、ほかの燃費値がかんばしくない車種を補うことができる。そこで、ホンダはCAFE対策としてHonda eの欧州における販売計画台数を増やしている。

日本の販売計画が欧州のわずか10%で、日本国内での販売が(執筆時点で)一時中断しているという点は多少引っかかるのだが、Honda eが多くのユーザーに注目されているのは間違いない。今回、そんなHonda eに試乗することができたので、後輪駆動ならではの走りのフィーリングを中心にレビューしよう。

「Honda e」のフロントイメージとリアイメージ

「Honda e」のフロントイメージとリアイメージ

「Honda e」には、サイドミラーがカメラになった「サイドカメラミラーシステム」が全グレードに標準装備されている

「Honda e」には、サイドミラーがカメラになった「サイドカメラミラーシステム」が全グレードに標準装備されている

日本も欧州も、電気自動車は基本的に市街地における移動が主になる。そのため、Honda eの全長は3,895mm、全幅は1,750mmに収まる。全幅は1,700mmを超えて3ナンバー車になるが、「サイドカメラミラーシステム」(ボディサイドにカメラを装着して、後方の様子をインパネ両端の液晶画面に映す機能)が標準装備されていることによって、ミラーの両端で測った実質的な車幅は5ナンバー車と同等だ。

「Honda e」は、前方、側方ともにウィンドウが立っているので視界がよく、フロントオーバーハングが短くボンネットが見えるので、フロント先端もわかりやすい

「Honda e」は、前方、側方ともにウィンドウが立っているので視界がよく、フロントオーバーハングが短くボンネットが見えるので、フロント先端もわかりやすい

うしろのCピラーは少し太いが、視界を大きくさまたげるほどではない

うしろのCピラーは少し太いが、視界を大きくさまたげるほどではない

運転席に座ると、ボンネットが視界に入るのでボディの先端や車幅がわかりやすい。また、フロントウィンドウの角度を立てているので、前方や側方の視界もいい。後端のピラーは少し太いが、後方視界も悪くはない。

「サイドカメラミラーシステム」は、普通に走行している分には高精細で見やすいが、バックするときなどには鏡のサイドミラーと異なり、のぞきこめないなどの不便さを感じた

「サイドカメラミラーシステム」は、普通に走行している分には高精細で見やすいが、バックするときなどには鏡のサイドミラーと異なり、のぞきこめないなどの不便さを感じた

だが、サイドカメラミラーシステムの欠点も見受けられた。鏡を用いた一般的なサイドミラーであれば、たとえば少し高い位置からのぞき込めば、後輪付近まで確認できる。しかし、液晶画面に映すサイドカメラミラーシステムでは、のぞき込んでも液晶画面が映し出す範囲は変わらないので、駐車場にバックで入れるときなどに見づらく感じた。サイドカメラミラーシステムには、ギアをバックに入れると視界を下方に切り替えるバックビュー機能が備わっているものの、それでも鏡のサイドミラーに比べると視認できる範囲が限られているので少々使いづらい。

今回の「Honda e」試乗会では、ホンダが用意した狭い路地を再現した特設コースを試乗することもできた。かなり狭く、コンパクトカーでも壁に当たってしまいそうなほどに狭いコースなのだが、切れ角が大きくて見切りのいいHonda eなら、すいすいと進んでいける

今回の「Honda e」試乗会では、ホンダが用意した狭い路地を再現した特設コースを試乗することもできた。かなり狭く、コンパクトカーでも壁に当たってしまいそうなほどに狭いコースなのだが、切れ角が大きくて見切りのいいHonda eなら、すいすいと進んでいける

また、Honda eには、駆動用モーターをボディの後方に搭載する後輪駆動方式が採用されている。それによって前輪の切れ角が大きく、最小回転半径は4.3mとかなり小回りがきく。軽自動車と同等か、それ以上の小回り性能だ。道幅が狭く、直角に曲がる狭い路地などでも運転がしやすい。

「Honda e」標準グレードの試乗イメージ

「Honda e」標準グレードの試乗イメージ

まず、標準グレード(価格は451万円)から試乗してみた。発進させてすぐに、動力性能の高さに驚く。モーターの最高出力は136psだが、最大トルクは32.1kg-mと高い。モーターは加速の立ち上がりが機敏で、速度を一気に上昇させる。発進加速に加えて、巡航中の追い越し加速も力強い。

「Honda e」標準グレードの試乗イメージ

「Honda e」標準グレードの試乗イメージ

さらに、加速時には後輪駆動がメリットになる。加速すると、車両の荷重が後輪に加わるので、駆動力の伝達効率が高まるからだ。前輪駆動では空転したり、空転の防止機能が作動して加速力を下げてしまうような場面でも、後輪駆動のHonda eは車両を前方へと押し出してくれる。

Honda eでは、「NORMALモード」と「SPORTモード」の2種類の走行モードを選ぶことができる。SPORTモードにすると、アクセル操作に対するモーターの反応がさらに機敏になり、3リッターV6エンジンのような力強い加速を味わうことができる。また、Honda eにはクリープ動作がなく、アクセルペダルのオン、オフのみで車両の加速から停止までコントロールできる「シングルペダルコントロール」が備わっている。シングルペダルコントロールをオンにすると、アクセルペダルを戻した瞬間から積極的に回生ブレーキが働き、減速エネルギーによってモーターが発電することで、駆動用電池に充電される。

「Honda e」のステアリングホイールには、パドルシフトのような「減速セレクター」が装着されており、回生ブレーキによる減速Gの大きさを調節することができる

「Honda e」のステアリングホイールには、パドルシフトのような「減速セレクター」が装着されており、回生ブレーキによる減速Gの大きさを調節することができる

また、Honda eのステアリングホイールには、パドルシフトのような「減速セレクター」が装備されている。マイナス方向に操作すると、シングルペダルコントロールがオフのときには最大0.1Gの減速がかかり、オンにすると最大0.18Gに増える。ただし、通常のブレーキペダルを踏む油圧ブレーキとの協調制御も働くため、どのモードでも回生による充電量に差はほとんど生じないという。たとえば、シングルペダルコントロールがオフの状態で、減速時にドライバーがブレーキペダルを踏んだとしても、車両は積極的に回生を行ってくれるので減速エネルギーがムダになることはない。

「Honda e」アドバンスグレードの試乗イメージ

「Honda e」アドバンスグレードの試乗イメージ

Honda eの走行安定性は良好だ。操舵の反応が機敏で車両がすばやく向きを変えるが、後輪の接地性が高いので不安定な状態には陥りにくい。前後輪間の床下に駆動用リチウムイオン電池が搭載されているので、重心も低い。さらに、モーターや電池の搭載にともなってボディ下部が入念に補強されていることもあって、コーナーリング時に挙動を乱しにくい。

乗り心地は、時速40km以下では少し硬いが、補強効果もあって重厚感を覚える。少々大きな段差を通過するときにも、突き上げるようなショックは抑えられている。標準グレードが装着していたタイヤは16インチで、銘柄はヨコハマ「ブルーアースA」だった。それが、上級グレードのアドバンス(495万円)になると、17インチのミシュラン「パイロットスポーツ4」が装着される。そのため、アドバンスは明らかにタイヤのグリップ性能が高いことが、試乗していて伝わってくる。特に前輪のグリップ力が高く、峠道などを走ると操舵角に応じて意図した方向に車両が積極的に向きを変えてくれる。

「Honda e」アドバンスグレードの試乗イメージ

「Honda e」アドバンスグレードの試乗イメージ

アドバンスでは、スポーティーな感覚が強まっている代わりに、乗り心地は標準グレードよりも硬めだ。段差を通過したときのショックの伝わり方が明確だが、それほど不快な粗さではない。アドバンスの17インチタイヤでは、指定空気圧を16インチの240kPaから230kPaに下げる工夫も施されており、乗り心地のバランスが図られている。

また、アドバンスでは標準グレードに比べて最高出力も異なる。154psを発生させるアドバンスでは、136psの標準グレードに比べて高速域まで加速したときの伸びがいい。ちなみに、最大トルクは両グレードともに32.1kg-mと共通だ。1回の充電で走れる航続可能距離(WLTCモード)は、標準グレードが283km、アドバンスは259kmだ。タイヤや指定空気圧が異なることから、アドバンスのほうが8%ほど短くなっている。

アドバンスの価格は標準グレードよりも44万円高いのだが、ルームミラーが液晶タイプの「センターカメラミラーシステム」や「プレミアムサウンドシステム」、駐車支援システムの「Hondaパーキングパイロット」などがセットで装着されている。また、前述の17インチタイヤもニーズの高い装備だろう。

さらに、電気自動車のメリットのひとつである100V・1500Wの電源コンセントもアドバンスには標準装備されている。電気自動車は、ハイブリッド車と異なりエンジン音や排出ガスを発生させずに長時間にわたって電力の供給が可能だ。そのため、たとえば災害時などに避難所で使用するのにも適しているだろう。100V・1500Wの電源コンセントは、ほかの快適装備と違って電気自動車として必須の装備と考えられることから、単品で装着可能にするか標準グレードにも装備してほしい。

「Honda e」のフロントシートとリアシート

「Honda e」のフロントシートとリアシート

座り心地については、フロントシートは快適だ。体をしっかりと支えてくれながら、ファブリックのシート生地が柔軟でリラックスできる適度なやわらかさをあわせ持っている。いっぽう、リアシートについては後部にモーターが搭載されていることもあって、足元空間が狭い。身長170cmの大人4名が乗車すると、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシひとつ少々だ。フィットの握りコブシ2つ半に比べるとかなり狭い。しかも、床下にリチウムイオン電池を搭載しているので床が高く、膝が大きく持ち上がってしまう。そのため、Honda eは2名乗車が基本になるだろう。

Honda eは、価格は高いもののホンダの先進技術がいくつも搭載されており、後輪駆動による走りの楽しさを持ち合わせている。さらに、ボディがコンパクトなので、買い物などに利用するセカンドカーに適している。電気自動車でありながら、どこか懐かしさを感じさせる個性的なデザインや運転の楽しさを追求したことが、Honda eの魅力だ。将来は、もっと多くのユーザーが購入できるよう、電気自動車の価格がさらに下がっていくことに期待したい。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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