レビュー
試乗でわかった、性格がまるで異なる2台のSUV

メルセデス・ベンツの新型SUV「GLA」「GLB」に試乗!

SUV攻勢を強めているメルセデス・ベンツ日本から、初のフルモデルチェンジとなる「GLA」と、新たに追加された「GLB」の販売が2020年7月から開始された。今回、その2モデルの試乗会が開催されたのでレビューしつつ、2車種の違いについても比較したい。

SUVの販売比率が高まっているメルセデス

現在、メルセデス・ベンツが日本に導入しているSUVは、今回のGLBを含めて9車種にのぼる。メルセデス・ベンツにおけるSUVの販売台数は、グローバルで約35%、日本でも約20%に迫る勢いで、その台数はさらに増える見込みだという。

2014年に発売され、今回初のフルモデルチェンジを受けて2代目となった、メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」

2014年に発売され、今回初のフルモデルチェンジを受けて2代目となった、メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」

そのSUVラインアップの中で最もコンパクトなGLAは、全長×全幅×全高が4,415×1,835mm×1,620mm(AMGラインの全高は1,605mm)というボディサイズに、メルセデス・ベンツのSUVの技術が凝縮されている。GLAは、都市での日常生活にも適したスタイリッシュかつオールラウンドなコンパクトSUVという位置付けだ。

今回、日本へ初めて導入された7人乗りのSUV「GLB」

今回、日本へ初めて導入された7人乗りのSUV「GLB」

そして、今回新たにデビューしたGLBは、「Gクラス」からインスピレーションを受けたスクエアなエクステリアデザインに、SUVの走破性を兼ね備えたSUVだ。GLBの室内空間は広く、7人乗車が可能となっている。また、ボディサイズは4,634×1,834×1,706mm(AMGラインの全高は1,700mm)と、都市部でも取り回ししやすい。

搭載エンジンは、GLAには2L直列4気筒クリーンディーゼルターボが採用され、最高出力150ps、最大トルク320Nmを発揮する。GLBは、GLAが搭載するエンジンに加えて、ガソリンの2L直列エンジンターボエンジンもラインアップ。ガソリンエンジンは、最高出力224ps、最大トルク350Nmを発生させる。

末弟は、ちょっとやんちゃな味付け

まずは、GLAから試乗してみた。今回の試乗車は、「GLA 200d 4MATIC」に「AMGライン」が装備されたもので、内外装が若干スポーティーな仕様になっていた。

「GLA 200d 4MATIC」AMGラインのフロントエクステリアとリアエクステリア

「GLA 200d 4MATIC」AMGラインのフロントエクステリアとリアエクステリア

パッと見は、「『Aクラス(ハッチバック)』の車高を上げただけ?」と思われるかもしれないが、実際に車両を目の前にすると、その印象は大きく異なる。特に、デザインにおいてはフロントがやや逆スラントしていること以外は共通なところがないくらいの変更が施されており、SUVにも関わらず、かなりスタイリッシュだ。また、後述するGLBと比較して、GLAは曲面を多用しており、サイドデザインは豊かな面質を表現。ホイール周りの黒いクラッティングもいやらしさを感じさせず、ぎりぎりのところに収まっているなど、その印象は良好だ。

「GLA 200d 4MATIC」のインテリア

「GLA 200d 4MATIC」のインテリア

ドアを開けて室内へと乗り込むと、そこは最新のメルセデスの世界そのものだ。横長のディスプレイは賛否の分かれるところだが、見やすさという点ではいい。ただし、5か所(左右1か所ずつ、中央に3つ)ある、ジェットエンジンを模したとされるエアアウトレットは少々煩雑で、オプションでアンビエントライトが装着される仕様では、ここもアンビエントライトと同じ色(全部で64色選べる)に光るので、その色によっては目障りになるかもしれない。ただし、風のオン/オフの切り替えなどは吹き出し口を回転させるタイプだが、そのクリック感や剛性などは高く、チープさは一切感じられない。

また、エアコンの温度設定などに物理スイッチを採用している点は評価できる。しかし、その中央にハザードランプのスイッチを置くのはミスタッチに繋がり、とっさに操作がしにくいので改良が必要なのではと思える。

また、2018年にデビューしたAクラスと同様に、GLAには対話型インフォテインメントシステム「MBUX」が搭載されている。その認識率は、当時のAクラスのものと比較してはるかに向上している。当初のAクラスのテストの際に試したところ、何度も「Hi ! メルセデス!」と呼びかけるも認識せずに何度もイラっとしたが、GLAは一発で反応するようになっていた。また、操作できるものとできないものの区分けも、ある程度明確になってきたことも評価したい。当時は、してほしい操作そのものが音声でできるのかどうかも、わからなかったからだ。エアコンの温度設定なども、スイッチに頼らずに音声で簡単に設定できる点などは便利に感じた。

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

走り出してみると、全体を通して乗り心地は硬めだ。これは、AMGラインに設定されている「スポーツコンフォートサスペンション」の影響が大きいようで、後述するGLBよりもはるかに硬く感じられた。また、路面からのロードノイズも大きめで、第一印象は「ちょっとやんちゃなSUV」という雰囲気だ。

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

市街地では、適度なボディサイズによって走りやすい。しかし、ドアミラーがAピラーの付け根あたりに取り付けられているため、死角が発生してしまっている。ぜひ、ドアにマウントして少しでも死角を減らしてほしい。現状では、特に右折時に前方からくる歩行者を見落としがちになってしまうためだ。

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

高速道路へと乗り入れて、アクセルを強く踏み込むと、ディーゼルらしいエンジン音とともに力強い加速が始まる。乗り始めは軽く感じたステアリングも、高速道路では適度な重さに変わり、もともと高い直進安定性を持つこともあって、安心して走り続けられそうだ。

GLAは、エンジンパワー、トルクともに必要にして十分以上だ。さらに、4MATICの制御も適切なようで、コーナーなども不安をまったく感じさせずにクリアできる。今回の試乗では、悪路を試すことはかなわなかったが、メルセデス・ベンツはGクラスをはじめ多くのSUVを手がけていることから、その点も安心してよさそうだ。

なお、後席を試す時間はなかったのだが、先代のGLAユーザーからの意見を取り入れ、140mmスライドできるようになったことも評価したい。

大人な乗り味のGLB

「GLB 250 4MATIC Sports」のフロントエクステリアとリアエクステリア

「GLB 250 4MATIC Sports」のフロントエクステリアとリアエクステリア

いっぽう、GLBは本格的なオフローダーの雰囲気をまとっている。冒頭で述べた、Gクラスからインスピレーションを得たデザインをまとっていることから、当然と言えば当然だ。だが、GLAと比べるとスクエアなエクステリアデザインであることから、より武骨な印象を受ける。

「GLB 250 4MATIC Sports」のインテリア

「GLB 250 4MATIC Sports」のインテリア

GLBのインテリアはGLAと基本的には共通だが、助手席前のインパネ周りが若干異なっており、アシストグリップのバー形状となっている。そんな部分からも、GLBのほうが、いっそうSUVらしさを感じさせる。

「GLB 250 4MATIC Sports」の3列目シート

「GLB 250 4MATIC Sports」の3列目シート

GLBがGLAと大きく異なるのは、GLBは3列シートを持つ7人乗り仕様であることだ。3列目シートは、長時間の移動にはあまり向かないが、短時間であれば大人数の乗車に便利なうえ、ISOFIXにも対応しているのでチャイルドシートもかんたんに装着できる。さらに、USB Type-Cポートも備わっており、使い勝手も良好だ。なお、2列目シートは14cmのスライド機能が付いていて、2列目の快適性も上々だ。

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

テスト車は、「GLB 250 4MATIC Sports AMGライン」。つまり、ガソリン仕様である。走り出しての第一印象は静かであるとともに、足回りがGLAと比較してはるかにしなやかであるということだった。どちらかというとしっとりとした味わいで、ちょっとした段差などは軽くいなしていく。最初は「エアサスか?」と勘違いしたのだが、どうやらGLAのAMGラインは足を固めているのに対し、GLBの場合はAMGラインであっても特にサスペンションには手を入れていないからのようだ。

このしなやかな足回りを感じながら高速道路に乗り入れると、少しその印象は変わってくる。少々しなやかすぎる、つまり、言い換えるとちょっとやわらかすぎるのだ。その結果、段差などをクリアした後に一発で収まらないこともあり、若干ダンピング不足を感じた。

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

ガソリンエンジンということもあって、静粛性は高い。いっぽう、高速道路の合流などで強くアクセルを踏み込んだときのトルクの出方は、ディーゼルのGLAのほうが力強く感じられた。このあたりは、好みが分かれそうだ。個人的には、クルマの性格を考えるとディーゼルを選びたくなる。やはり、アウトドアレジャーなどに出かけることを考えると、それほどエンジンを回さずに分厚いトルクを味わいながら、長距離を無給油で行きたくなるのではないだろうか。

「GLB 250 4MATIC Sports」の2列目シート

「GLB 250 4MATIC Sports」の2列目シート

また、わずかだが2列目シートを試す時間があったのでその印象を記したい。着座位置はシアター形式で、前席よりも若干高くなっているので見晴らしなどは非常にいい。ただし、座面が少々短く、若干前下がりであることが気になった。乗り心地は、前席と同様に非常によく、ロードノイズも過大に入ってくることはない。足元は広く、スライドさせて最後端まで下げると、広大な空間が広がる。

最後に、安全運転支援装備に関しては触れなかったが、どちらも十分な仕様で最新のメルセデス・ベンツの装備が奢られているので、安心していいだろう。

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

「GLA 200d 4MATIC」の走行イメージ

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

「GLB 250 4MATIC Sports」の走行イメージ

2台を乗り比べた結果だが、元気なGLAに対して、落ち着きのあるGLBという印象だ。これは、足回りはもとよりエンジンの性格の影響が大きい。ガソリンエンジンのほうが、より大人しい印象だったからだ。ベースグレード同士の比較では、10万円の価格差(GLAは502万円、GLBは512万円で、どちらもディーゼル)なので、選択は非常に悩ましいところだ。

もちろん、どちらを選んでも間違いはないが、10万円の価格差を踏まえると、個人的にはGLBに触手を伸ばしたくなる。3列シートがあるからというよりも、広大な荷室空間や、長くなったホイールベース(GLAの2,730mmに対し、GLBは2,830mm)による居住性の広さに魅力を感じるからだ。今回は、サスペンションセッティングが違うため厳密な比較はできなかったが、100mmのホイールベースの違いによって直進安定性もより高くなっていることだろう。こういったことを踏まえると、SUVでありながらきびきびと走るGLAの印象は捨てがたいが、SUVとして市街地での使い勝手とともに家族でのドライブ旅行、いざというときの積載性を考えると、GLBを選びたいところだ。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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