ホンダ「フリード+」やスズキ「ハスラー」、トヨタ「シエンタ」といった車中泊に向いている自動車をピックアップし、実際に車内で1泊してリアルな寝心地を確かめている筆者。今回選んだのはSUVの人気モデル、トヨタ「RAV4」のプラグインハイブリッド(PHV)バージョン「RAV4 PHV」だ。大容量のバッテリーを搭載しており、その電力で家電製品を使うこともできるので、調理家電で食事を作ったり、暖をとるなどしながら車中泊してみた。
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「RAV4 PHV」は一般的なハイブリッド車とは異なり、外部からの充電にも対応しているPHV(プラグインハイブリッド)車。国産のPHV車はまだまだめずらしく、ほかの代表的な車種を挙げると、トヨタ「プリウスPHV」や三菱自動車「アウトランダーPHEV」など、数車種しか販売されていない。その中でもRAV4 PHVは、18.1 kWhという大容量のバッテリーを搭載しているのが特徴。プリウスPHVは8.8kWh、アウトランダーPHEVは13.4kWhであることからも、RAV4 PHVのバッテリーの大きさがわかるだろう。ちなみに、RAV4 PHVの場合、バッテリーへの充電は外部から行えば100%まで溜まるが、走行中に発電して充電する「バッテリーチャージモード」では80%程度しか溜まらない。だが、バッテリーチャージモード以外の走行モードで走るとバッテリーの電力を消費してしまうので、車中泊で使用する電力をなるべく残しておきたい時はバッテリーチャージモードで走行しよう。
大容量のバッテリーを搭載したPHV車というだけでなく、前輪にハイパワーなモーターを装備することで動力性能を格段に高めたRAV4 PHVは、469万円〜という価格にも関わらず注文が殺到。発売されて1か月も経たないうちに受注が年間の販売予定台数を超え、2021年1月18日時点でも、まだ受注を一時停止している状況だ
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左上の「EV/HVモード切替スイッチ」を長押しすると、バッテリーチャージモードに切り替えられる。バッテリーチャージモードでの最大充電量は、外部から充電した際の満充電量の約80%となっており、100%までは充電できない。なお、EV/HVモード切替スイッチの隣にある「AUTO EV/HVスイッチ」で「HV(ハイブリッド)モード」に切り替えれば、バッテリー容量をほぼ保持したまま走行できる
バッテリーの電力は走行時だけでなく、エンジンを停止した状態でカーエアコンを稼働させる電力としても使え、コンセントが装備されている車種であれば家電製品を使うことも可能だ。RAV4 PHVも最大1,500Wの出力に対応した100Vコンセントを備えている。最近では1,500Wまで給電できる車種も増えており、めずらしいものではなくなりつつあるが、RAV4 PHVはその中でもバッテリー容量が大きく、その分、電力を長く使えるのが強み。アイドリングせずに長時間電力を使えるのは、車中泊においては大きなメリットだ。
消費電力1,500W以下の家電製品が使えるコンセントは、ラゲージスペースにひとつ装備されている。コンセントの横にあるのはシガーソケットだ
コンセントはひと口しかないので、同時に複数の家電製品は使えない。たこ足配線は、万一のこともあるのでやめておきたい
エンジンを切った状態でラゲージスペースのコンセントを使う時は、パワーユニットをオンにした状態でハンドル右側にある「AC100V」スイッチを押しておく
車中泊をしている人からドライヤーを使いたいという声をよく聞くが、RAV4 PHVなら可能。使用したのは、パナソニック「ナノケア EH-NA0E」。水分発生量が従来の18倍となった高浸透「ナノイー」とミネラルマイナスイオンを風とともに放出することで、キューティクルの密着した、内部までうるおう髪になるのだそう。消費電力1,200Wだが、余裕で使えた(下の動画参照)
アイロンや衣類スチーマーも使える。車内で泊まって、そのまま会社や取引先に行くという人に役立つかも!? 使用したのは、ハンガーに衣類を吊したままシワ伸ばしができるパナソニックの衣類スチーマー「NI-FS750」(消費電力950W)
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ヘアドライヤーと衣類スチーマーを使用していても、もちろんエンジンは始動しない。18.1kWhものバッテリー容量があるのだから、当然といえば当然だが……。消費電力1,500W以下の家電製品に対応しているので、IH炊飯器やホットプレート、コーヒーメーカーなども余裕で使えそうだ。
ただし、バッテリーの残量が走行に影響が出るレベルまで減ると自動でエンジンがかかる。車中泊をしている場所がアイドリング禁止の場合、意図せず条例にふれてしまうおそれがあるので気をつけよう。
バッテリー残量を示すメーター(駆動用電池残量計)は、燃料計の下に配置。グリーンとブルーで色が分かれているが、ブルーのゾーンに入るとEV走行はできなくなる。エンジンを切ってバッテリーの電力を使っている時も、ブルーのゾーンまで残量が減るとエンジンが作動し、充電が始まるとのこと
車中泊できる自動車としてRAV4 PHVを選定したのは、単に家電製品が使えるからだけではなく、当然ながら就寝に適したスペースが作り出せるからだ。SUVのラゲージスペースは広くても段差や傾斜があるモデルが多く、車中泊に向くものは意外と少ない。その点、RAV4 PHVはリアシートを倒すだけでフラットに近い寝床ができる。
リアシートを立てたままでも、ラゲッジスペースは1,355(最大幅)×996(奥行)mmの広さがある
リアシートは6:4分割式で、それぞれ倒すことができる
リアシートを完全に倒すと、広さは1,355(最大幅)×1,855(奥行)mmになる。この空間が、就寝スペースだ
若干、前方に向かって高くなる傾斜がついているが、SUVの中ではキツくないほう。隙間や段差がほぼないので、フラットで寝やすそうな寝床だと言える。ただし、クッション性はないため、マットなどを用意しておくほうがいい
就寝スペースの奥行きが1,855mmもあるので大人でも余裕で寝られるように思うが、RAV4 PHVに限らず、カタログ値の奥行きはフロントシートの背面までの距離となっている。その位置までフラットが床面は続いていないため、身長185cmの人がまっすぐ縦に横になって快適に就寝できるというわけではないので、注意が必要だ。
身長175cmの筆者が、車体に対してまっすぐ横になってみると、一見、キレイに収まっているように見える
しかし、頭は床面とフロントシートの間にできた隙間に落ちている。これでは眠れない
倒したリアシートのヘッドレストを引き出せば、頭を置くことができるのではないかと試してみると、うまくいった。だが、頭が左右に少しズレると落ちてしまうので現実的ではないだろう
ということで、車体に対して斜めに横たわるのがもっとも快適な就寝スタイルとなる
車体に対して斜めに横になれば、つま先から頭まで、きちんと寝床に収まる。床面に気になるほどの突起や隙間、硬い部分もない
コンセントの装備されているほうの壁面には、凹みが設けられている。ここに足を入れれば壁面に足が当たらず、冷たさが伝わってくるのも防げるのでありがたい
なお、ラゲッジスペースの高さは最大845mm。もっとも高さがあるところでなら、あぐらをかいた状態で座れた
就寝スペースの確認を終えたら、いよいよ車中泊スタート! 念のため、バッテリー残量を見ておこう。
バッテリーチャージモードで走行しなかったため、バッテリー残量は4割くらい減ってしまっている。この状態からひと晩過ごす
まず、調理家電を使って食事を作る。筆者の場合、車中泊では基本的に外食をしているが、今回は自炊だ。といっても、オーブントースターでパンを焼く程度だが……。
パナソニックのオーブントースター「ビストロ NT-D700」(消費電力1,300W)と、タイガーの電気ケトル「6SAFE+ PCK-A080」(消費電力1,300W)を使用する
腹ぺこなので、トーストを焼く。パナソニック「ビストロ NT-D700」はオーブントースターだが、予熱なしでオーブン調理も行える。今回は4枚切りの食パンを焼くので、自動メニューの「あつぎりトースト」を選んで加熱スタート
約3分後、焼き上がり。トーストしている時からいいニオイがしていたが、おいしそうな焼き上がりだ
食べてみると、見た目どおりサクサクだが、中はフワッとしている。ビストロ NT-D700は遠赤外線ヒーターと近赤外線ヒーターを装備することで、食品の表面を焦がさずに中まで熱々に加熱できるのが特徴というだけに、確かに、表面をほどよい焼き色に抑えつつ、中までしっかり熱が届いている印象だ
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トーストを食べつつ、電気ケトルでお湯を沸かす。今回、タイガーの電気ケトル「6SAFE+ PCK-A080」を選んだのは、カップ1杯分(140ml)の水なら約45秒で沸く早さと、湯沸かし中に蒸気が出ない構造であること。飲みたい時に素早くお湯が用意でき、車内に蒸気がモクモクしないのはありがたい
下の動画は150mlの冷水(6℃)が沸騰するまでの様子。蒸気はまったく出ず、約1分で沸騰した。
また、ロック状態にしておけば転倒してもお湯がこぼれにくい構造となっているのもポイント。本体が倒れた際、注ぎ口が上に向くように設計することでお湯漏れを防ぐのだそう
本体を倒しても水が漏れないのかテストしてみると、下の動画のようにまったくこぼれなかった。ただし、5秒くらい横にしておくと漏れてきたので、素早く起こしたほうがいいだろう。
お湯を注ぐだけのインスタントスープだが、これで十分!
焼きたてのトーストと熱々のスープで満足できる食事ができた。今回は中途半端な時間に食べたが、朝食によさそう
お腹も満たされたので、次は就寝の準備。筆者は基本的に冬場の車中泊でも就寝前にカーエアコンはオフにし、寝袋だけで一夜を明かしているが、今回は、せっかくなので電気ひざかけで暖をとる。車中泊した日が11月ということもあり、それほど寒くないため、カーエアコンはほとんど使わない予定。なお、バッテリーの電力を使ってカーエアコンを稼働させられるが、電力の消費が激しいので注意しよう。
普段は、キャンプ用のエアマットと寝袋、枕で寝ている。雪山で過ごせるほどの性能は備えていない寝袋だが、就寝前に車内をカーエアコンで暖めておけば、筆者の場合、これだけでたいていの場合、朝までぐっすりだ
今回は、パナソニックの電気ひざかけ「くるけっと DC-H5」も使用する。消費電力は75Wと小さい
サイズは93(幅)×125(長さ)cmと、ひざかけなので毛布ほど大きくない。だが、RAV4 PHVのラゲッジスペースにはちょうどいいサイズ感
ひざや肩にかけて使うこともでき、使い勝手がいい。この日は外気温が15℃くらいだったので、電気ひざかけで暖をとっていれば、カーエアコンの暖房はなくても十分快適だ
ふわふわな肌触りもなにげに気に入っている。洗濯もできるので、洗って干すことを考えるとこのサイズ感はベスト
ということで、本日の就寝スタイルはこれに決定! 現時点では寒さを感じていないが、明け方は冷えるため、電気ひざかけは足下を覆うようにかけることにした
ちなみに、就寝時、持ってきた家電製品はどこに収納しておくのか……というと、残念ながらRAV4 PHVにはそれほど大きな収納スペースはないため、横になった時に両サイドにできる空きスペースやフロントシートに置くことになる。ただ今回は、ひとり分の荷物と小さめの家電製品なので、置き場に困ったり、きゅうくつさを感じることはなかった。
ラゲッジスペースの下にスペースがあるが、充電ケーブルが収納されているので、ここに荷物を入れることはできない
昼間の写真しかないため、本当は車中泊していないのではないか? と疑われることも多いのだが、毎回、ガチで車中泊している。その証拠とは言えないが、夜間の様子を念のため載せておく。
外灯の明かりもまぶしくないほど暗いところで車中泊している。静かな場所なので、けっこう寝やすい
夜になっても外気温がそれほど下がらなかったので、カーエアコンの暖房は10分くらいでオフにし、あとは電気ひざかけを使用。途中で目覚めることもなく、ぐっすりと8時間寝てしまった。
電気ひざかけをオンにした状態で夜を過ごしたが、朝になってもバッテリー残量はほとんど減っていないようだった
バッテリー残量がたっぷりあるので、車内でゴロゴロして時間をつぶしたのち、モーニングコーヒーを飲むことにした。
電気ケトルでお湯を沸かして、ドリップコーヒーを淹れるだけだが、コーヒーの香りのする朝が車中泊でも体験できるのは幸せだ
足下が朝まで暖かく、身体もまっすぐ伸ばして寝ることができたので疲れはまったくない。淹れたてのコーヒーも飲めて、今回の車中泊はかなり快適だった
やはり、電気が使えると車中泊の快適性が格段に高まる。1,500Wの出力に対応するAC電源が装備されていてもバッテリー容量が小さいと、いつエンジンがかかるか気になってしまうが、RAV4 PHVのように18.1kWhの容量があると、今回使用した家電製品くらいではほとんど影響がなかった。ただし、カーエアコンを稼働させるとバッテリー残量の減りが早くなるので、併用する場合は注意が必要だ。個人的には、就寝前までカーエアコンで車内を暖めておき、就寝中はカーエアコンをオフにし、寝袋+電気毛布というスタイルでも十分快適に寝られると思う。今度はもう少し寒い時期に、カーエアコンを使ったRAV4 PHVでの車中泊にチャレンジしてみたい。
【この記事も見ておきたい!】
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・どこで泊まれる? キマリはある? 初めて車中泊する前に知っておきたい基本的なこと
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