レビュー
2代目へフルモデルチェンジされた、トヨタの燃料電池車(FCV)に試乗!

トヨタ 新型「MIRAI」の乗り心地のよさはレクサスLSを超える!

水素を燃料として走るトヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI」は、環境技術への関心が高いユーザーならずとも、一度は乗ってみたいクルマではないだろうか。MIRAIは、車両の水素タンクに充填されている水素に酸素を化学反応させることによって、電気を作る。その電気を使って、モーターを駆動して走行するという仕組みだ。

2020年12月9日にフルモデルチェンジされた、トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI」。先代に比べて、スタイリッシュな外観へ変更されたほか、最新のFRプラットフォーム「GA-L」が新たに採用されている。プラットフォームに合わせて、駆動方式も前輪駆動から後輪駆動へと変更されており、FCシステムが最適に配置されているために前後重量バランスがよく、走りがいいことも特徴のひとつとなっている

2020年12月9日にフルモデルチェンジされた、トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI」。先代に比べて、スタイリッシュな外観へ変更されたほか、最新のFRプラットフォーム「GA-L」が新たに採用されている。プラットフォームに合わせて、駆動方式も前輪駆動から後輪駆動へと変更されており、FCシステムが最適に配置されているために前後重量バランスがよく、走りがいいことも特徴のひとつとなっている

MIRAI (ミライ)の製品画像
トヨタ
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(レビュー15人・クチコミ782件)
新車価格:710〜860万円 (中古車:138〜858万円

初代MIRAIは2014年に登場しているが、2020年12月にフルモデルチェンジを受けて2代目になった。今回、その新型MIRAIへ試乗したので、レビューしたい。

FR高級車向けの「GA-L」プラットフォームを採用

まず、初代(先代)MIRAIは前輪駆動だったが、新型では後輪駆動になったことが大きな変更点だ。プラットフォームは、レクサス「LS」やトヨタ「クラウン」などに採用されている、FR高級車向けの「GA-L」プラットフォームが採用されている。

新型MIRAIのボディサイズ(全長×全幅×全高)は、4,975×1,885×1,470mmで、ホイールベースは2,920mm。クラウンとボディサイズを比べると、全長は同程度でホイールベースも同じ数値だが、全幅はMIRAIが85mm広い。

通常、エンジンが積み込まれているボンネット内部には、水素と酸素を化学反応させて電気を作り出すための発電装置「FCスタック」が搭載されている。また、LSやクラウンには、ボディ中央にエンジンの駆動力を後輪へ伝えるプロペラシャフトが通っているが、新型MIRAIではこの部分に水素タンクが配置されている。さらに、水素タンクは後席の下や後輪のうしろなど、計3本が搭載されている。また、駆動用モーターやバッテリーは、リヤの低い位置に搭載されている。

燃料電池車としては、必ずしも全長の長い4ドアセダンのようなスタイルである必要はないのだが、新型MIRAIは前述のように、水素タンクやFCシステム、駆動用モーターやバッテリーなどの各メカニズムがバランスよく配置されているので、前後輪の荷重が50:50と理想的な値であることも、特徴のひとつとなっている。

インパネ中央には大型のセンターディスプレイを装備

新型MIRAIの内装は、上質だ。インパネのパッドにはやわらかな素材が使われ、そのパッドに沿うようにして金属調の加飾があしらわれており、高級感を漂わせる。また、インパネ中央には大型の「12.3インチTFTワイドタッチセンターディスプレイ」が備えられている。このセンターディスプレイは、画面が横に2分割されており、カーナビの表示とそのほかの情報が分かれて表示されている。これによって、多くの情報を素早く認識することができるのが特徴だ。また、メーターパネルには水素の残量などが表示されるが、燃料電池車だからといって凝ったデザインにはされていない。普通の乗用車と同じような表示なので、すぐになじむことができる。

フロントシートの座り心地は、サポート性がいい。シートは、背中から大腿部をしっかりと支えてくれるので、長距離の移動でも疲れにくそうだ。また、リアシートも同様に、乗員の体をしっかりと支えてくれるのだが、クラウンに比べると床から座面までの間隔が少し足りないので、やや膝が持ち上がった座り方になりやすい。さらに、リアシートはトランクスペースの奥に2次バッテリーを搭載していることもあって、取り付け位置が少し前寄りだ。身長170cmの大人4名が乗車した場合、クラウンのリアシートは膝先に握りコブシ2つ半の余裕ができるが、MIRAIは2つ分になる。クラウンに比べると、ホイールベースは同じでも、リアシートの足元空間はMIRAIのほうが少し狭いので、注意したい。

一充填走行距離は、Gグレードが850km、Zグレードは750km

新型MIRAIの駆動用モーターの最高出力は182PS、最大トルクは30.6kgf・mで、1回の水素充填で走れる距離(WLTCモード)は、Gグレードが850km、Zグレードは750kmになる。たとえば、電気自動車の日産「リーフ」が満充電で走行できる距離は、大容量の駆動用電池が搭載されている62kWh仕様のe+Xやe+Gグレードでも458kmだ。つまり、燃料電池車のMIRAIは1回の水素充填で、リーフの2倍近い距離を移動できることになる。

今回、試乗した新型MIRAIのグレードは、ベースグレード「G」の「Aパッケージ」だ。試乗すると、まず加速がとても静かで、滑らかなことに気付く。基本的な運転の感覚は電気自動車と同じなのだが、プラットフォームがLSやクラウンと共通で、遮音も入念に行われていることから新型MIRAIの走りはとても上質に感じる。

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トヨタ
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新車価格:710〜860万円 (中古車:138〜858万円

動力性能は、NAのガソリンエンジンに置き換えると、排気量にして3Lから3.5Lに相当するものだ。車重が1,900kgを超えているので、巡航中にアクセルペダルを深く踏み込んでも軽量な電気自動車のように、速度が急激に高まるようなことはない。それでも、モーター駆動であるため、アクセル操作に対する反応はガソリンエンジンよりも素早く素直だ。この滑らかな加速感は、MIRAIのような上級セダンの性格には合っているだろう。

高剛性なボディや低重心化が生み出す上質な乗り心地

そして、乗り心地は上級セダンの中でも特にすぐれていると言える。段差の突き上げ感は小さく、振動の伝達を無理に抑えているような不自然なフィーリングもない。レクサスLSと比較しても、新型MIRAIのほうが乗り心地は上質に感じるほどだ。新型MIRAIは、重量物が低い位置に搭載されており、水素タンクを搭載することもあってボディの各部も補強されている。さらに、最新の溶接技術も使われていることなどから、乗り心地が快適なのだろう。

新型MIRAIは、乗り心地だけでなく走行安定性もいい。乗り心地を重視した足まわりに設定されているので、ボディが大きく傾いても挙動の変化は穏やかに進み、4輪の接地性が下がりにくい。この走行安定性も、前述した高剛性なボディや低重心化、ワイドなボディによるものだろう。

試乗車の「G“Aパッケージ”」に装着されていたタイヤ銘柄はダンロップ「SPスポーツマックス050」で、タイヤサイズは19インチ(235/55R19)だ。指定空気圧は、前後輪ともに230kPaになる。これまで述べた、すぐれた走行安定性と乗り心地のバランスには、装着されているタイヤもいい影響を与えていると思える。上級グレードの「Z」になると、20インチのアルミホイールとタイヤ(245/45ZR20)がオプションで装着できるが(価格は127,600円)、19インチと乗り比べて判断したい。

購入時の注意点は、狭い市街地や駐車場などでの取り回しだ。前述のとおり、全幅は1,885mmとワイドで、最小回転半径も5.8mと大回りになる。クラウンは、全長は同程度でも全幅は1,800mmで最小回転半径も2WDなら5.3mなので、運転感覚がかなり異なる。試乗の最中も、やや細い路地などではボディが大きく感じたので、注意したいところだ。

水素ステーション数は全国で137か所

そして、燃料電池車で重要な課題が、水素ステーションだ。先代MIRAIが発売された2014年あたりに比べると、今はステーション数も大幅に増えたが、それでも全国で137か所しかない(2020年12月時点)。さらに、そのうちの53か所は首都圏に集中している。給油所は、最も多かった1994年に比べると燃費の向上もあって約半数に減ったが、それでも全国に約3万か所が営業している。水素ステーションの数は、燃料電池車の増加に応じてこれから少しずつ増えていくだろうが、今は少ない。

そのため、MIRAIを購入するには、自宅付近や通勤途中などに水素ステーションがあることが条件になるだろう。水素ステーションは、給油所に比べると営業時間が短い場合もあるので(14〜16時といったステーションもある)、事前に確認しておきたいところだ。

ちなみに、水素の充填そのものは給油のように短時間で終了する。専門のスタッフが充填作業を行うのだが、給油とほぼ同じような感覚だ。電気自動車の充電に比べて、手間を要さないのは利点のひとつだろう。郊外への観光など、長距離ドライブで水素を充填するといった使い方は現状では難しいが、それでも新型MIRAIはWLTCモードで850km(Zは750km)走行できるので、電気自動車のように残走行距離を常に気にせずに走ることができる。

最も買い得なグレードは、G“Aパッケージ”

■トヨタ 新型「MIRAI」のグレードラインアップと価格
※価格は、すべて税込
G:7,100,000円
G“A Package”:7,350,000円
G“Executive Package”:7,550,000円
Z:7,900,000円
Z“Executive Package”:8,050,000円

新型MIRAIで最も買い得なグレードは、今回試乗したG“Aパッケージ”だ。後退時に、歩行者を検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させる機能なども含め、実用装備を充実させて価格は7,350,000円になる。

燃料電池車は、クリーンエネルギー自動車に位置付けられており、経済産業省から2020年度実績で1,173,000円の補助金が交付される。車両価格から、この金額を差し引くと6,177,000円だ。クラウンに、2.5Lエンジンのハイブリッドを搭載するRSアドバンス(5,979,000円)に近い。燃料電池車の新型MIRAIを、クラウンハイブリッドと同等の金額で手に入れられると考えれば、割安だろう。

また、予算に余裕があるならば、最上級のZ“Executive Package”を選びたい。価格は8,050,000円で、補助金額を差し引くと6,877,000円だ。Zでは、「本革シート」や「JBLプレミアムサウンドシステム」などが標準装備され、さらにExecutive Packageになると内装に「吸音ファブリック」が採用されて、車内がさらに静かになる。新型MIRAIは、電気自動車などと同じようにエンジン音が発生しないため、外部の音がより目立つ。そのため、吸音ファブリックによって快適な車内空間を満喫できるExecutive Packageをおすすめしたい。

新型MIRAIは、環境性能にすぐれているだけでなく、快適な乗り心地や居住空間を高い水準で提供してくれる。それは、かつて高級指向だったクラウンのイメージと重なる。現時点では、水素ステーション数が少ないことから、誰でも所有できるクルマではないが、運転しているとかつてのクラウンを思い出した。先進的なのに、どこか懐かしく感じる。新型MIRAIは、トヨタの本質を突いたクルマなのだろう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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