レビュー
ボタンひとつで、車両の追い越しも自動で運転

自動運転レベル3のホンダ新型「レジェンド」へ試乗。快適さはすばらしいが注意点も

近年、自動車業界では「自動運転」について取り上げられることが多くなってきている。その自動運転で、いま注目したいのが、2021年3月5日に発売されたホンダの高級セダン「レジェンド」へ新たに搭載された先進安全技術「Honda SENSING Elite」だ。

レジェンドの製品画像
ホンダ
4.45
(レビュー41人・クチコミ946件)
新車価格:724万円 (中古車:16〜548万円

そのHonda SENSING Eliteの機能のひとつに、高速道路での渋滞時にシステムがドライバーに代わって運転してくれる「トラフィックジャムパイロット」と呼ばれる機能が搭載されている。この機能が、「自動運転レベル3」に適合しているのだ。トラフィックジャムパイロットの作動中は、運転をクルマにまかせてドライバーはインパネ中央のモニター画面でDVDやTVなど映像を見ることができるようになった。

今回、そのHonda SENSING Eliteが搭載されている新型レジェンドへ試乗したのでレビューしたい。なお、レビューへと入る前にひとつだけ。実は、今回は試乗時間が短く、さらに運が悪い(?)ことに高速道路を試乗中に渋滞に遭遇することができなかった。そのため、残念ながらトラフィックジャムパイロットを実際に体感することができなかった。だが、それでもHonda SENSING Eliteの魅力は十分に感じ取ることができた。さらに、今回は開発者も同乗していたので、トラフィックジャムパイロットの詳細なども交えながらレビューしていきたい。

新型レジェンドに乗り込み、高速道路へと入る。そして、ステアリングスイッチの右側に備えられているセットスイッチを押すと、「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」が作動する。この時は、まだハンズオフはできないので、ステアリングを握っている必要がある。この状態でしばらく走行すると、通知音が聞こえるとともに、ステアリングホイールの中央付近がブルーへと点灯した。これによって、運転支援機能のハンズオフが可能になったので、ステアリングホイールから手を離して膝の上へ置くことができた。

だが、この時点では、まだ自動運転レベル3のトラフィックジャムパイロットは作動していないので、TVやDVDなどを鑑賞することはできない。それでも、作動中はペダル操作だけでなく、ステアリング操作からも解放されるので、とても楽で快適だ。また、ハンズオフ時の直進安定性はすぐれており、先行車が加速した時の反応の遅れなどが見られないのも良好だ。

ハンズオフ機能は、日産「スカイライン」に搭載されている「プロパイロット2.0」に似ているものの、制御の違いも見受けられる。プロパイロット2.0も、高速道路を走る時にハンズオフが可能だが、追い越し車線へと移るときにはドライバーがステアリングをにぎる必要があった。だが、Honda SENSING Eliteではステアリングをにぎらなくても、ウィンカーレバーを少し下げた状態を数秒保持するだけで、ハンズフリーのままで車線変更することができるのだ。

さらに、ステアリング右下の「高度車線変更支援機能」のスイッチをあらかじめ入れておけば、先行車に追い付くと後方確認をうながすアナウンスが流れ、自動的に追い越し車線へと車線変更してくれる。その後、設定速度を上限として追い越し車線を走行し、追い越しが完了すれば再び走行車線へと戻ってくれる。この、追い越しに関する一連の操作は、すべて自動で行われる。

また、プロパイロット2.0ではハンズオフ時に高速道路の標識を読み取って走行速度を合わせる制御を行っているが、Honda SENSING Eliteでは設定速度のほうが優先されている。カーブの手前などでは自動的に減速してくれるのだが、最高速度の標識に車速を合わせる制御は搭載されていない。この速度制御については、実際の走行に基づいて決められたのだという。日本の高速道路の最高速度は、不適切なことが多い。たとえば、時速100kmの道路を走っていると、いきなり時速70kmの標識が設置されていたりする。この時に、車両の流れは時速90km以上であることが多いので、標識を読み取って時速70kmまで下げると、たとえ一番左側を走っていても後続車との距離が急速に接近する可能性がある。この責任は、プロパイロット2.0ではなく道路行政側にあると思うのだが、以前プロパイロット2.0を試乗した時に感じたのは、ドライバー側が危険を覚えてアクセルペダルを踏み、周囲の速度に合わせることが多いのでは考えられる。だが、Honda SENSING Eliteでは最高速度の標識に合わせる制御はしない。たとえハンズオフでも、システムを監視するのはドライバーであるため、速度の管理もドライバーに任せられている。

ちなみに、試乗していると路上の白線が薄かったり、日陰になるような場所では、時々ハンズオフ制御が解除される場面もあった。また、ステアリングホイールの操舵角が45度を超えた時も、すぐれた操舵制御は行われるものの、状況に応じて操舵をドライバーに戻すこともあった。したがって、アクセルとブレーキの制御は続くが、ハンズオフは常に作動しているとはかぎらないので注意が必要だ。

また、冒頭で述べたとおり、今回の試乗では渋滞に遭遇できず、トラフィックジャムパイロットを試すことはかなわなかったのだが、その機能についても述べておきたい。まず、渋滞などで時速30km以下になると、通知音とともにトラフィックジャムパイロットが作動を開始する。この時は、インパネ中央のモニター画面や助手席前側の表示灯がブルーになる。そこからは、インパネに設置された画面で、DVDやTVを見ることができるようになる。

ただし、渋滞時の状況によっては、自動運転の制御が続けられずに、渋滞中であってもドライバーに運転操作を求められることがある。したがって、ドライバーは映像を見ながらも、常に運転できる状態を保たなければならない。そのため、たとえば視線を大きく落としてスマートフォンを見るといったことはできない。

新型レジェンドには、「ドライバーモニタリングカメラ」が搭載されていて、ドライバーの状態を常に監視している。そのため、スマートフォンを見るなどで視線を大きく落としたり、居眠りをするなどで目を閉じたりと、ドライバーがシステムからの運転操作要求に応えられない状態になると、クルマ側で警報を発してくれるという安全機能も備わっている。

走行速度が時速50kmを超えるとトラフィックジャムパイロットが終了し、モニター画面やメーターにはドライバーが運転操作しなくてはならない状況になったことが表示される。トラフィックジャムパイロットが終了すると、いったんすべての運転支援機能が解除される。技術的には、トラフィックジャムパイロットが終了しても、そのままハンズフリーに戻すことも可能だそうなのだが、ドライバーが切り替わったことを実感しにくい。そこで、運転支援機能をいったん解除して、ドライバーに運転操作をしてもらうようにしたのだという。

短い時間ながら体感したかぎりでは、Honda SENSING Eliteはトラフィックジャムパイロットを使わずにハンズオフで走るだけでも、十分に疲労が軽減されとても快適であることがわかった。特に、「高度車線変更支援機能」によって自動的に車線変更が開始された時は、少なからず感動すら覚えたほどだ。

だが、注意点も少なくはない。まず、ハンズオフの作動中でも、正しい運転姿勢を取ることが大切なように思える。背筋を伸ばして座れば、ハンズオフが解除された時にも違和感なく運転状態へと戻れるだろう。しかし、もし背もたれを寝かせたようなルーズな姿勢で運転していると、たとえ前方を見ていたとしても緩んだ気分になってしまう。その状態で、ドライバーに操作を求められても迅速に対応できないかもしれない。したがって、ハンズオフやトラフィックジャムパイロットの作動中でも、運転姿勢をルーズな姿勢へと変えるべきではない。

また、カーナビで目的地を設定している場合などは、高速道路から降りる手前で運転支援機能が自動で解除される。この時に、ドライバーの運転操作が遅れないように、車両側からさらに注意をうながす必要があると感じた。高速道路を下りる前には、制御の終了がメーターなどに表示されるものの、少々分かりにくいので、トラフィックジャムパイロットが終了した時のように、音や表示ではっきりと警告してほしい。

今回の試乗によって、さまざまな課題も見えてきた。そのひとつが、視線を大きく外すことができないことだ。Honda SENSING Eliteは、渋滞時にはインパネ中央のモニター画面でDVDやTVを視聴することができる。しかし、現時点の技術ではモニター画面を高い位置に設置することが、条件のひとつとなっている。モニター画面が高い位置にあれば、たとえ画面を見ていてもドライバーの視界に前方の様子も入り込むからだ。たとえ突発的な異常が生じても、気付きやすい。ところが、もし画面が低い位置にあったら、システムが警報を発するまで、前方の異常には気付かない可能性がある。そうなると、低い位置で見ることが多いスマートフォンなどは、使うことができない。Honda SENSING Eliteのトラフィックジャムパイロットで許されている視線のはずし方は、高い位置に装着されたモニター画面を見ることが、現時点では限界となっている。

また、トラフィックジャムパイロットを安全に利用するには、TVやDVDを視聴するモニター画面の位置やサイズ、精細度も重要になってくるだろう。画面サイズが小さかったり精細度が低ければ、見にくいので注視してしまう。逆に、サイズが大きくて精細度が高過ぎても、画面に集中して周囲の状況把握が低下することが考えられる。ドライバーの視界に入り、前方の状況把握を妨げない範囲で見やすいモニター画面の開発を、今後進める必要がありそうだ。

最後に、新型「レジェンドハイブリッド EX Honda SENSING Elite」は、3年間のリース専用車となっている。1か月のリース料金は約29万円で、3年間の支払いは約1,044万円に達する。メンテナンス費用なども料金に含まれているが、これだけの金額を支払って、3年後には車両を返却しなければならない。そして、販売計画は100台とかなり少ない。2021年4月下旬に販売店へ問い合わせると、「現時点で契約して、納車は11月頃になる。生産は12月に終了するから、受注台数はすでに100台に近づいていると思う」との返答であった。

要は、今回の新型レジェンドは、実験的な意味合いの強いクルマなのだ。運転支援機能を含む自動運転にはレベル分けがあり、Honda SENSING Eliteはレベル3で自動運転の領域に入るので、メーカーも初めてのシステムとあって慎重にならざるを得ない。さらに、ユーザー側も使い方はよく分からない。そこで、販売計画は100台に抑えられた。

万が一、誤った使い方で事故が発生すればドライバーの責任になるが、「自動運転」という言葉を使うと道義的にはメーカーにも責任が生じかねない。国土交通省による自動運転の定義や、ドライバーとの関わり方などについて、改めて考えさせられる試乗だった。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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