レビュー
コンパクトボディとパワフルなエンジンのバランスが絶妙!

市街地もワインディングも楽しくて快適! アバルト「595」長距離試乗

いくつものブランドを有するFCAジャパンの中でも、「ABARTH(アバルト)」はフィアットベースのハイパワーバージョンというだけでなく、乗り心地の向上をはじめ、魅力的なカラーコーディネートなど、創設者のカルロ・アバルトの意思を連綿と受け継いだクルマ作りを特徴としている。今回は、そんなアバルトの「595」に試乗しつつ、北関東に住むアバルト乗りの友人たちのもとへと出かけることにした。

アバルト「595」のフロントエクステリアとリアエクステリア

アバルト「595」のフロントエクステリアとリアエクステリア

フィアット「500(チンクエチェント)」をベースに、アバルトが手を加えた595。エクステリアの特徴は、500と比べて前後バンパーがより⼀層アグレッシブなデザインへと変更されていることだ。また、フロントバンパーのエアインテークには、ワンメイクレース仕様⾞ 「ASSETTO CORSE(アセットコルサ)」からインスピレーションを得た「ABARTH」の浮き⽂字があしらわれるなど、アバルトならではのレースの雰囲気を醸し出している。

その基本的なフォルムは、500のままと言っていい。その愛らしい“丸餅”のようなフォルムは、デビュー当時からかなりの時間が経過しているにもかかわらず、まったく飽きも古臭さも感じさせない秀逸なものと言える。元々、現在の500は1957年にデビューした「Nuova(ヌォーヴァ)500」がモチーフとなっている。そう、アニメ「ルパンIII世」の劇場映画「カリオストロの城」に登場したことでも知られるあのクルマだ。そこから、現行の500が生まれ、それをベースにフェンダーをふくらませたり、車高を落としたりなど、走行性能や空力などを考えたモディファイが加えられたのがアバルト595なのだ。

595は、エンジンにも改良が加えられている。今回試乗した595には、インタークーラー付きターボチャージャーによって加給される、1.4L 直列4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載。最⾼出⼒は107kW(145ps)/5,500rpm、最大トルクは180Nm(18.4kgm)/2,000rpm(スポーツモードでは210Nm(21.4kgm)/3,000rpm) を発揮する。ちなみに、フィアット500の最高出力と最大トルクは、1.2L直4エンジン搭載モデルが51kW・102Nm、0.9L 2気筒のツインエアエンジン搭載モデルが63kW・145Nmということを考えると、いかにアバルト595がパワフルかがお分かり頂けるかと思う。595は、1,110kgの車重に対しても十分以上のパフォーマンスを備えていると言えるだろう。トランスミッションは、5速マニュアルとATモード付5速シーケンシャルトランスミッションが用意されており、5速マニュアルではステアリング位置を左右で選ぶこともできるのもうれしい点だ(今回の試乗車は、5速マニュアルの左ハンドル車)。

現在、アバルト595シリーズのラインアップは、今回試乗したスタンダードモデルの595のほかに、121kW、210Nmにパワーアップされた1.4L直4インタークーラー付ターボエンジンを搭載し、17インチにサイズアップされたタイヤを装着する「595 TURISMO(ツーリズモ)」、その595ツーリズモのルーフが開閉できるようになった、カブリオレモデルの「595C TURISMO」。さらに、132kW、230Nmというハイパワーなエンジンを搭載し、スポーティーなサウンドを奏でるエキゾーストシステム「レコードモンツァ」や、Sabelt製スポーツシートなどが装備された「595 COMPETIZIONE(コンペティツィオーネ)」がラインアップされている。つまり、自分の求めるパフォーマンスに応じたクルマ選びができるのも、595の魅力のひとつとなっているのだ。

手頃なボディサイズとパワー感は、市街地でも運転が楽しい

今回の試乗は、まず東京を出発し、東北道で北上して那須まで移動。現地でアバルトの実力を確かめるためにワインディングロードを走り、那須(星野リゾート リゾナーレ那須)に宿泊。翌日は、一般道を走行してアバルト乗りの友人のガレージに立ち寄り、再び東北道で帰宅するという長距離の行程となった。

走り始めての第一印象は、とにかく楽しいということだ。全長3,660mm、全幅1,625mmというコンパクトサイズでありながら、パワーとトルクがあるので、市街地ではきびきびと楽しく走らせることができる。また、狭い路地でのすれ違いなどに、ほとんど気を遣わずに済むのもありがたい。ただし、最小回転半径が5.4mと、このボディサイズとしては非常に大きいことは、細い路地の右左折時などにややネックとなる。たとえば、フィアット「パンダ」は4.8mで、5.4mだとホンダのミニバン「ステップワゴン」くらいの数値だ。そのため、乗っていても「このサイズの割に、小回りが効かないな」という場面が何度かあった。

もうひとつ、メーターナセルが若干高めなので、少し視界を遮られてしまうのが気になった。だが、市街地を走行していて気づいた点といえばそのくらいである。乗り心地は、硬めではあるものの角が取れたもので、不快さはまったくないし、何よりも5速マニュアルを駆使すれば、他車の流れに沿って、楽しく走ることができる。

ワインディングに持ち込めば、いっそう輝くアバルト595

アバルト595の魅力は、ワインディングに持ち込めばさらに増す。コンパクトなボディサイズを生かしてコーナーを駆け巡るさまは、水を得た魚のようである。2〜4速を駆使してコーナーを駆け抜けると、ボディのコンパクトさと軽量であることのメリットが、手に取るようにわかるのだ。

若干、腰高感はあるものの、適度にホールドするシートに身をまかせながら、路面のさまざまな情報を伝えてくれるステアリングフィールによって、安心して走らせることができる。

ただ、ワインディングを走らせているうちに、2つだけ気になった。まずひとつは、コーナーでステアリングの舵角が一発で決まらないことだ。特に、高速コーナーにおいてそれは顕著で、狙ったラインを取ろうとするとわずかに切り足したり、少し戻したりと修正舵が求められる。どうやら、ステアリング、あるいは足回りの一部の取り付け剛性が若干低いことが起因となっているようである。

もうひとつ、気になったのがシフトフィールだ。市街地では、ゆっくりとていねいにシフトチェンジするのであまり気にならなかったのだが、ワインディングで積極的にシフト操作すると、シフトしたいポジションにギアシフトした際、かっちりとした印象が希薄で、ゴムの弾性のような少しぐにゃっとした印象がともなう。できることなら、もう少しかっちりとしたシフトフィールが感じられると、積極的な走りがさらに楽しくなるに違いない。

ちなみに、アバルト595のワインディングの楽しさには、大きな理由がある。それは、ドライバーの座る位置がほぼホイールベースの中央にあるためだ。つまり、自分を中心に曲がっていくので、クルマの挙動がつかみやすいのだ。ホイールベースが短いことから旋回性能が高く、さらにクルマの挙動がつかみやすいことが、ワインディングの楽しさへとつながっているように思える。

高速道路は、やや退屈だが快適

直に言うと、アバルト595の高速道路での移動は退屈だ。淡々とアクセルペダルを踏み続けるだけなので、このクルマのよさである旋回性能の高さなどを楽しむことができないからだ。さらに、ワインディングで感じた、高速コーナーでの舵角が一発で決まらない症状が、高速道路でも感じられるのもその要因のひとつである。

ただ、退屈ではあるが、快適でもある。ボディ剛性が高く、しっかりと足を動かしており、さらに肉厚なシートのおかげで、路面の継ぎ目による段差の突き上げをきれいにいなし、体に直接伝わってこないのは秀逸と言える。

6速が欲しくなる燃費

燃費についても、少し触れておこう。

市街地:9.6km/L
郊外路:13.9km/L
高速道路:17.0km/L

燃費については、上記の結果となった。市街地の9.6km/Lという値は、朝晩の渋滞で長い走行を強いられてしまったため、かなり下限の数値と思ってもらっていいだろう。そして、郊外路では高回転まで引っ張って走行したワインディングも含んでいることを考えると、優秀な値と言える。いっぽうで、高速道路の燃費は淡々と走らせた割には伸び悩んだように思える。5速100km/hで、2,500rpm前後であったことから、6速にしてもう少しギア比を下げることができればより燃費は伸びることだろう。

ちなみに、ガソリンタンク容量は35リッターと少なめであったが、今回の旅程においては不都合に感じることはなかった。

進化している乗り味

今回、アバルト乗りの友人たちにアバルト595の魅力などを聞いてみた。すると、以前乗っていた「アバルト500C」や以前の595と比較して、ステアリングの剛性が高くなっており、また足回りもよく動き、鋭いピシッとした突き上げなどの角が取れている印象だと言う。全体として、前期モデルよりはるかに洗練された印象を受けたのことだ。また、乗り心地に関しては、500と比較してもさらに上質な印象がともなうとのことで、595のほうが好感を持たれていた。

また、595はマニュアルで普通の市街地などでも元気に楽しく乗れるクルマなので、通勤も楽しくなるだろうとのコメントも聞かれた。

その楽しさは、アバルトの魅力にもつながっている。古いアバルトから脈々と受け継がれている、小さくすばしっこいクルマというイメージは595にも現れており、それが楽しさへとつながっているのだ。特に、デザインと走りのギャップがたまらないのだという。

イタリアのボートメーカー「リーヴァ」とアバルトとの限定コラボモデル、「695 Rivale(リヴァーレ)」

イタリアのボートメーカー「リーヴァ」とアバルトとの限定コラボモデル、「695 Rivale(リヴァーレ)」

また、アバルトはセンスのよさも感じられる。たとえば、色の合わせ方で「695リヴァーレ」などは、グレーとブルーのツートンの間に差し色が入っていたりする。そういったセンスのよさも、アバルトらしさを感じられるところだ。「独特の高級感と、独特のセンスで、日本人では考えつかないような組み合わせの色を出してくる」ところも、アバルトならではの魅力なのだという。

イタリアつながりで、アグリツーリズモリゾートに向かう

今回の試乗では、「星野リゾート リゾナーレ那須」に宿泊した。

ここへ決めた理由は、コンセプトが“アグリツーリズモリゾート”だからだ。イタリア発祥のアグリクルトゥーラ(農業)を語源としており、それとツーリズモ(観光)とをかけ合わせた造語で、都会の喧騒から離れ、その土地の農業体験や自然体験、文化交流を楽しむ旅のスタイルを指すのだという。以前、イタリアを訪れた際にアグリツーリズモを初めて知って、田舎町のあるホテルに宿泊したところ、地産地消の食事とともに、静かで穏やかな時間が流れている空間に身を置くことができたことから、ふたたびその体験ができるのではないかと感じたのだ。そして、595とともにイタリアつながりという点も外せない。

2019年11月にオープンし、リゾナーレブランドとしては4施設目となるリゾナーレ那須について、星野リゾート リゾナーレ那須総支配人の松田さんにポイントをうかがうと、まず、「那須の豊かな自然を感じてもらいたい」と思いを語る。その敷地は42,000坪で、森の中に点在するような形で客室が備わり、「43室のみなので、ゆっくりと時間を過ごすことができるでしょう。そういった環境の中で、那須の自然の恵みを感じてもらう食事を楽しんでもらいたいのです」と松田さん。

レストランのOTTO SETTE NASUでは、野菜をふんだんに使ったひと皿を用意しており、アグリツーリズモを体現している。また、那須は酪農なども盛んなことから、乳製品やハムなどを使った料理もふんだんに用意されている。実際に頂いた夕食では、前菜を含めて季節の地の野菜が使われており、その味付けも素材の味を生かし、妙に手の込んだものではないことに共感を覚えた。

ちなみに、ここでは農業を体験できるアクティビティも用意されている。それはファーマーズレッスンに代表されるようなもので、収穫体験だけではなく、その日ごとに必要な農作業、「本来であれば農家の方々が通常やっているようなことを、スタッフとともにお客様に実際に同じ作業を体験してもらうことで、野菜がどのようにできていくのか、本来どのような世話が必要かなどを学びながら楽しく体験できるようなファシリテートを案内しています」とアグリガーデンのスタッフ。実際に我々も唐辛子の種まきを体験し、久々に土の感触や温かさ、そして、唐辛子の種を素手で触ると少し指がひりひりすることなどを体感。まだ始めて数年のため試行錯誤しながら、いずれはすべて自製の無農薬肥料を目指し準備を進めているという。

我々の部屋は1階にリビングスペース、2階にベッドルームを設えた62平米の広々とした客室(バスルーム付)だった。その1階にはバーテーブルやソファが備えられ、ベランダからは広大な田んぼとその向こうには山々が見え、いったいどこにいるのだろうと錯覚を覚えるほど自然に抱かれた景色に目を奪われる思いだった。

今回は短期滞在であったが、可能であれば数日、家族で訪れてさまざまなアクティビティを体験することで、都会では味わえない自然の豊かさだけでなく、土や野菜などを直接自分の手で触れるなどの体験から、もう一度、自然のありがたさを思い起こさせる宿泊施設と感じた。

https://risonare.com/nasu/

アバルト595を駆り、那須のワインディングを走り抜け、リゾナーレ那須で農業を体験。翌日は、友人たちとアバルトの魅力について語り合った後、浮かんだ言葉は“アナログ感”だった。595の安全運転支援システムは、ABSやESC(滑り出し防止装置)などにとどまり、ドライバーの腕の差が顕著に現れるのだ。

また、友人たちと直接会うことで、微妙なニュアンスの違いを伝えあい、お互いの肌感覚で会話のキャッチボールを楽しめた。これらは、もしかしたら自動運転、近代的なホテル、オンラインミーティングに置き換えられ、そのすべてが時代遅れと言ってしまえるかもしれない。しかし、はたしてそれでいいのだろうか。自ら動かす車、自然と積極的に向き合う喜び、そして、友人たちとの語らい。まさに、人の心を潤すクルマや宿泊施設、そして友人との時間だった。そのすべてに共通するのは“笑顔”であると、改めて大切なことを考えさせられた試乗だった。

[Photo:内田俊一/内田千鶴子/星野リゾート/価格.com編集部]

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
アバルト 595の製品画像
フィアット
4.46
(レビュー13人・クチコミ47件)
新車価格:320〜421万円 (中古車:98〜545万円
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る