バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂
圧倒的人気の原付二種スポーツモデルがフルモデルチェンジ

小さな車体に操る楽しさ満載! ホンダの新型「グロム」は乗ったらトリコになること間違いなし!!

近年、バイク市場では、原付二種(排気量125cc未満)が着実に販売台数を伸ばしている。スクーターが主流のクラスではあるが、変速ギアを備えたスポーツタイプの人気が高まっており、今回紹介するホンダ「グロム」は、その原付二種スポーツモデルの人気に火をつけた立役者とも呼べる存在だ。そんなグロムが、5年ぶりにフルモデルチェンジ。新型の進化や魅力を、試乗でじっくり感じてみた。

本格的な走行性能を持つレジャーバイク登場

グロムの初代モデルが登場したのは2013年のこと。タイで生産され、アジア圏で販売されていた「MSX125」というモデルが、日本国内で2013年に発売される際、「グロム」と名を変えて登場したのだ。そんなグロムは、前後12インチの小径タイヤを履き、排気量を124ccまで拡大した、「スーパーカブ」シリーズなどに採用されていたシリンダーが水平に近い角度まで前傾したエンジンを搭載していた。

初代「グロム」のエンジン出力は9.8PSとパワフルではなかったが、倒立式のフロントフォークにモノショックのリアサスペンションを装備するなど、スポーツバイクに多い本格的な足回りだった

初代「グロム」のエンジン出力は9.8PSとパワフルではなかったが、倒立式のフロントフォークにモノショックのリアサスペンションを装備するなど、スポーツバイクに多い本格的な足回りだった

原付二種クラスの変速ギア付きモデルは任意保険などの維持費が安く、それでいて排気量50cc以下の原付一種とは異なり、時速30km制限や二段階右折といった法規に縛られないことから、大型バイクに乗っているライダーのセカンドバイクなどとして以前から人気がある。このモデルは、大径タイヤを装備した「フルサイズ」と呼ばれるタイプと小径タイヤを履いたタイプに大別されるが、小径タイヤのタイプは小回りが効いて“遊べる”雰囲気を持っているのが特徴だ。そうした小径タイプらしい特徴に加え、本格的な足回りを装備した初代「グロム」は、パワフルとは言えない空冷エンジンであったものの、走りを楽しむ層やエントリーユーザーにヒット。久々に発売されたホンダのレジャーバイクは、熱い支持を得て迎えられたのだ。

そんなグロムは、2016年に早くもモデルチェンジ。ヘッドライトはLED化され、マフラーはダウンタイプとなったほか、ハンドルもやや下げられスポーティな性格がさらに強まった。ワンメイクレース「HRC GROM CUP」も開催されるようになり、サーキット専用のHRCコンプリートモデルも登場したことから、ミニサーキットを走るような遊び方ができるモデルとしてグロムの人気はさらに上昇する。

マフラーがアップタイプからダウンタイプに変更されるなど、スポーティーなイメージが増した2代目「グロム」

マフラーがアップタイプからダウンタイプに変更されるなど、スポーティーなイメージが増した2代目「グロム」

走りの性能が高いのにコンパクトな車体で気軽に乗れ、実用燃費がすぐれていることもあり、セカンドバイクとしてだけでなく、実用的なメインバイクとして選ぶユーザーも増加。他メーカーからも12インチの原付二種スポーツモデルが発売されるなど、グロムの登場により、このジャンルが活性化されていった。ただ、グロムの人気を超えるライバル車は現れず、現在では「原付二種スポーツモデル=グロム」というイメージが定着するほど、グロムひとり勝ちの状況となっている。

実は、同社「モンキー125」のベース車となったのはグロム。グロムという成功があったからこそ、モンキー125は生まれたとも言えるかもしれない

実は、同社「モンキー125」のベース車となったのはグロム。グロムという成功があったからこそ、モンキー125は生まれたとも言えるかもしれない

<関連記事>感嘆するほどの“モンキーらしさ”にすぐれた走行性能をプラス!「モンキー125」の完成度を見よ!!

デザインもエンジンもすべて新設計された新型「グロム」

そして2021年、フルモデルチェンジした新型「グロム」が登場する。塊感のある大柄なタンクとフラットなシートを備えるなど、外観デザインを一新。フロントライトも丸目っぽいデザインとなり、イメージが変わった印象を受けるが、実は、2段のLEDとなっており、先代モデルとイメージを共通化させている。もちろん、外観だけでなくエンジンも新設計され、最高出力が10PSにアップ。さらに、従来4速だったミッションが待望の5速化とされたのも大きなポイントだ。先代モデルでは、スピードが乗ってきた時にさらにシフトアップしようと“幻の5速”を探した経験のあるライダーも少なくないはず(筆者も経験あり)だが、5速となった新型では、もう肩透かしをくらうことはない。

サイズは1,760(全長)×720(全幅)×1,015(全高)mmで、重量は102kg。メーカー希望小売価格は385,000円(税込)

サイズは1,760(全長)×720(全幅)×1,015(全高)mmで、重量は102kg。メーカー希望小売価格は385,000円(税込)

従来と同じ横型に見えるエンジンだが、ボア×ストローク値まで異なり、排気量も123ccとなる完全新設計。最高出力は0.2PS向上した10PSに留まるものの、ミッションは5速となった

従来と同じ横型に見えるエンジンだが、ボア×ストローク値まで異なり、排気量も123ccとなる完全新設計。最高出力は0.2PS向上した10PSに留まるものの、ミッションは5速となった

シュラウドと一体型となったカバーの効果でタンクが大柄になったように見えるが、容量は0.3Lしかアップしていない

シュラウドと一体型となったカバーの効果でタンクが大柄になったように見えるが、容量は0.3Lしかアップしていない

シートは前後に段差がないフラットな形状となり、厚みも増している

シートは前後に段差がないフラットな形状となり、厚みも増している

ライトは丸型となっても2段のLEDとなっており、先代モデルのイメージも受け継いでいる

ライトは丸型となっても2段のLEDとなっており、先代モデルのイメージも受け継いでいる

ハンドル位置はやや高くなった印象。コックピットは開放感がある

ハンドル位置はやや高くなった印象。コックピットは開放感がある

デジタル式のメーターにはギアポジションインジケーターが追加され、利便性がアップ

デジタル式のメーターにはギアポジションインジケーターが追加され、利便性がアップ

タンクカバーとサイドカバーは6角レンチで簡単に取り外せる。カスタマイズのアイディアがふくらむ機構だ

タンクカバーとサイドカバーは6角レンチで簡単に取り外せる。カスタマイズのアイディアがふくらむ機構だ

サイドカバーの取り外しやすさはメンテナンス性の向上にも役立つ

サイドカバーの取り外しやすさはメンテナンス性の向上にも役立つ

マフラーはダウンタイプを継続採用しているので、他メーカーのものへの交換もしやすい

マフラーはダウンタイプを継続採用しているので、他メーカーのものへの交換もしやすい

倒立式のフロントフォークにモノショックのリアサスペンションという足回りの構造は従来どおりだが、ブレーキがABS化されて安心感が高まった。このほか、ホイールのデザインを5本スポークタイプに一新するなど、細かい部分にも進化の跡が感じられる。

ゴールドのアウターチューブが目を引く倒立式のフロントフォーク。走りの性能を支える装備だ

ゴールドのアウターチューブが目を引く倒立式のフロントフォーク。走りの性能を支える装備だ

モノショックのリアサスペンションはサーキットなどでも扱いやすい。調整機構はプリロードのみ

モノショックのリアサスペンションはサーキットなどでも扱いやすい。調整機構はプリロードのみ

ブレーキには1チャンネルのABSが装備された。シングルディスクに、片押し2ポッドキャリパーという構成は先代モデルと同一だ

ブレーキには1チャンネルのABSが装備された。シングルディスクに、片押し2ポッドキャリパーという構成は先代モデルと同一だ

ホイールのデザインは変更され、5本スポークタイプとなった

ホイールのデザインは変更され、5本スポークタイプとなった

ちなみに、短いスパンでフルモデルチェンジするのは、それだけ人気が高い車種であることの現れでもある。それもそのはず。「グロム」は国内だけでなく海外でも多くのライダーに支持されており、シリーズ累計では30万台以上を売り上げる大人気車種に成長しているのだ。

先代モデルを凌駕する“楽しさ”を感じる走行性能

筆者は2016年発売の2代目グロムでサーキットを走ったことがあるが、車体と足回りが思った以上にしっかりしており、本格的な走行性能を持っていることに驚かされた。そんなグロムの新型は、どれほど進化したのだろうか。5速化されたミッションや新設計のエンジンなどが、乗り味や操作性にどれほどの変化をもたらせるのか特に気になる。

12インチタイヤのミニバイクなので、足つき性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでベッタリ着いたあげく、ヒザも曲げられるほど余裕がある。小柄な人でも安心して乗れそうだ

12インチタイヤのミニバイクなので、足つき性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足のかかとまでベッタリ着いたあげく、ヒザも曲げられるほど余裕がある。小柄な人でも安心して乗れそうだ

新型「グロム」またがってみると、ニーグリップがしやすくなっていることに気付いた。大型のタンクカバーが、脚にフィットする形状となっていることが効いているようだ。また、シートが厚みを増したことで座り心地がよくなったほか、前後に着座位置をずらす動きも格段にしやすい。車体がコンパクトなバイクでは着座位置の変更が運動性能に大きく影響するので、これだけでも、先代モデルよりも走りがよくなっている予感がする。

上から見ると、タンクカバーがニーグリップしやすい形状であることがわかりやすい。下半身でのホールド性は、走行性能にも楽しさにも影響する

上から見ると、タンクカバーがニーグリップしやすい形状であることがわかりやすい。下半身でのホールド性は、走行性能にも楽しさにも影響する

シート上でお尻をずらし、かなり後方に着座してもニーグリップのしやすさは変わらない。細かい部分だが、操る楽しさへの影響は大きい

シート上でお尻をずらし、かなり後方に着座してもニーグリップのしやすさは変わらない。細かい部分だが、操る楽しさへの影響は大きい

走り出すと、先代モデルよりも車体との一体感が高まっていることが感じられた。ニーグリップがしやすくなっていることに加えて、シートの硬さも適度で、リアタイヤのインフォーメションがお尻に明確に伝わってくる。またがった際に気付いた着座位置の移動のしやすさは、走行中でも変わらず。前後の移動も、左右にお尻をズラすのも非常にスムーズだ。そして、ハンドリングは、12インチのタイヤらしくクイックに曲がる。狭い路地などではコンパクトに曲がれ、とても気持ちがいい。Uターンもしやすいので、出先で道を間違えても気軽に方向転換できる。

小回りが効くので、狭い路地も余裕。エントリーライダーでも気負わず乗ることができそうだ

小回りが効くので、狭い路地も余裕。エントリーライダーでも気負わず乗ることができそうだ

シートの外側角に座り、リーンアウトで倒し込む動きもやりやすい

シートの外側角に座り、リーンアウトで倒し込む動きもやりやすい

少しスピードの乗るRが大きめのコーナーでは、前後の足回りがしっかりしていて安定感が高いことを実感できた。内側に少し腰をズラすような乗り方を試したのだが、このやり方のほうがしっくりくる印象だ。着座位置を少し変えただけでもハンドリングに変化が感じられるのは、ミニバイクならではの楽しさだ。

ハンドリングは基本的にクイックだが、速度が乗るようなコーナーでも不安定な感覚は一切ない。着座位置を変えながら、その影響を感じながら走るのは“楽しい”のひと言につきる

ハンドリングは基本的にクイックだが、速度が乗るようなコーナーでも不安定な感覚は一切ない。着座位置を変えながら、その影響を感じながら走るのは“楽しい”のひと言につきる

エンジンパワーが増したことの影響はあまり感じられなかったが、先代モデルよりストロークが長くなったエンジンは、回して楽しむというより低回転から粘りのあるトルクの気持ちよさを味わえる。そして、5速化されたミッションに関してはメリットしか感じなかった。街中でもワインディングでも最適なギアが選べるので、走りの楽しさも1段階向上した印象だ。ギアが増えたことにより、忙しくなるような感覚もまったくない。

街中でも5速化されたことの恩恵は十分に感じられる。ロングストロークタイプとなったエンジンとの相性もよく、速度の伸びが気持ちいい

街中でも5速化されたことの恩恵は十分に感じられる。ロングストロークタイプとなったエンジンとの相性もよく、速度の伸びが気持ちいい

試乗を終えて

筆者が過去に試乗したことのあるグロムの先代モデルは、走りの性能と気負わず乗れるミニバイクならではの気軽さを高次元で両立しており、とても楽しい乗り物だった。一度乗って以来、セカンドバイクに欲しい! と思い続けていたほどだ。そのくらい好印象のバイクだっただけに、5速化された新型への期待度は相当なものだったのだが……実は、写真で外観を見た時は、先代モデルのほうがかっこよかったと感じたため、価格が落ちるであろう中古車市場で先代モデルを狙おうと思っていた。

しかし、今回、新型に試乗して、その考えは一変。5速になったというスペック的な部分だけでなく、スペックには現れない車体との一体感や、コンパクトに曲がれるミニバイクならではの楽しさが磨き上げられているではないか! その楽しさが街中でも感じられるため、もっと乗っていた気持ちがふくらみ、ついつい遠回りをしてしまった。そして、この操るおもしろさを感じたあとだと、スタイリングもかっこよく見えるようになってくるのだから不思議。グロムのこの楽しさは、バイクに乗り始めたばかりの初心者から、ベテランライダーまでトリコにするに違いない。

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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