レビュー
スポーティーな「RS」の6MTとCVTを乗り比べ!

ホンダ 新型「N-ONE RS」は6MTもCVTも走りが楽しすぎる!

2020年11月、ホンダの軽自動車「N-ONE」が、2代目へとフルモデルチェンジされた。新型N-ONEにおける大きなトピックのひとつとしては、MT搭載モデル(6速MT)が、初めてN-ONE(RSグレード)に追加されたことだ。また、RSグレードは6速MTのみならず、CVTにもRS専用の独自チューニングが施された。

ホンダ 新型「N-ONE」のRSグレードには、新たに6速MTが加わったほか、CVTにもRS専用のチューニングが施されている

ホンダ 新型「N-ONE」のRSグレードには、新たに6速MTが加わったほか、CVTにもRS専用のチューニングが施されている

そこで、今回はRSグレードの6速MT車とCVT車をそれぞれ乗り比べてみた。その印象を、開発担当者のインタビューも交えながらレビューしよう。

N-ONEの製品画像
ホンダ
4.21
(レビュー191人・クチコミ6262件)
新車価格:159〜202万円 (中古車:8〜231万円

運転の楽しさを追求した、新型「N-ONE」

新型N-ONEは、「グランドコンセプトの“末永く愛せるクルマ”を踏まえ、いつまでも乗り続けて満足してもらえるよう、“軽快快適ミニツアラー”をキーワードにしました」と、開発責任者である、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンターの宮本渉さんは語る。新型N-ONEでは、乗り心地や静粛性の向上によって快適性が進化しているとともに、ハンドリング性能や加速性能にも磨きがかけられ、運転の楽しさをさらに追求したクルマへと仕上げられている。

ホンダ 新型「N-ONE」では、全グレードにおいて新しいエンジンとトランスミッションへと刷新されている

ホンダ 新型「N-ONE」では、全グレードにおいて新しいエンジンとトランスミッションへと刷新されている

パワートレインについては、エンジンとトランスミッションがすべて刷新されている。エンジンは、NAとターボの2種類が用意されており、ターボエンジンは電動ウエストゲートを採用することで、低燃費とレスポンスの向上が図られた。スペックは、NAエンジンが最高出力58ps/7,300rpm、最大トルク65Nm/4,800rpm、ターボエンジンが最高出力64ps/6,000rpm、最大トルク104Nm/2,600rpmになる。なお、RSグレードには6MT、CVTともに、ターボエンジンのみが組み合わせられている。

「6速MT」「CVT」ともに、走りがさらに快適に

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレードの6速MTシフトノブ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレードの6速MTシフトノブ

さて、6 速MTの魅力について宮本さんは、ターボエンジンとS660のギアレシオの組み合わせによる“軽快な走り”、ショートストロークによる“爽快なシフトフィール”、しっかり感があって疲れにくいセッティングが施されている“快適なクラッチフィール”をあげる。また、急なクラッチペダルの操作によるシフトショックを低減する「スピードコントロールピークトルクリミッター」や、クラッチペダルからの振動を軽減する「クラッチダンパー」を採用することによって、バランスのとれたスポーティーなポジションを実現できていると説明する。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレードのAT(CVT)シフトノブ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレードのAT(CVT)シフトノブ

また、新型N-ONEのCVTには、全車共通の改良点として、2つの新たな制御が投入されている。ひとつめの「G-Design Shift」制御は、従来のCVTに比べてアクセル開度に対するGが素早く立ち上がり、さらにそのGが長く持続することによって、リニアな加速感を実現していると言う。また、2つめの「ブレーキ操作ステップダウンシフト」制御は、坂道やコーナーなどでブレーキをかけることで強めのエンジンブレーキがかかり、坂道では下り坂で加速してしまう不安を解消するとともに、コーナーでは出口に向かって力強く加速することができる制御が施されている。

さらに、RSグレードに搭載されているCVTは、SレンジがRS専用のG-Design Shift制御になっており、低開度からのアクセルレスポンスのさらなる向上が図られている。また、ブレーキ操作ステップダウンシフト制御においても、RSグレードではほかのグレードよりもするどい加速力を実現しているという。

スポーティーな「S660」と、商用車の「N-VAN」の中間を狙った

本田技研 パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 小型ドライブユニット開発課 アシスタントチーフエンジニアの鹿子木健さん

本田技研 パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 小型ドライブユニット開発課 アシスタントチーフエンジニアの鹿子木健さん

ここからは、トランスミッションの開発担当者にうかがった話をお届けしたい。本田技研 パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 小型ドライブユニット開発課 アシスタントチーフエンジニアの鹿子木(かなこぎ)健さんによると、新型N-ONEに6速MTを導入することができた背景には、さまざまな要因が重なったことがあったと言う。

「S660」のMTシフトノブ

「S660」のMTシフトノブ

「N-VAN」のMTシフトノブ

「N-VAN」のMTシフトノブ

まず、S660でターボのMT車が採用されたことによって、ギアの強度関係などがクリアになった。次に、FF車のN-VANへ、NAエンジンのMT車が新たに設定された。N-ONEもFF車なので、トランスミッションケースがそのまま使える。しかし、N-VANは商用車なので、「N-VANのギア比は、1〜3速がローギヤードで、4〜6速は少し離れた設定になっています。しかし、普通の乗用車であれば、3〜4速は比較的多用するギアなので、そのレシオが離れてしまうのはあまりよくありません。そこで、S660のギアレシオを選びました」と言う。

さらに、新型N-ONEの6速MTは、シフトノブそのものにもこだわって作られている。シフトストロークに関しては、S660はスポーツカーなのでストローク量が短く、いっぽうのN-VANは商用車なので、ゆったりと乗れるように長めに作られている。では、新型N-ONEの目指すところはどこなのだろうか。鹿子木さんは、「S660とN-VANの中間の、しっかり感を持たせるために、ストローク量は短すぎず長すぎずというところを選びました。どのくらいの長さがいいかは、開発担当者が実際に、一生懸命触りながら『このぐらいが、いいのではないか』とセッティングを出しています」と言う。また、シフト操作のスムーズさにおいては、シフトノブのウエイトも効いてくる。そこで、「シフトノブは、S2000のものをベースに使いました。これも、担当があらゆるものを試して、『これがベスト』と提案してくれたのです」と教えてくれた。

さらに、シフトレバーの下のブラケットについても、最初はN-VANのものが使われていた。インパネシフトなので、N-VAN用のものがそのまま流用できたからだ。だが、最終的には「CR-V」のものが使われた。「これは、剛性感を出すためで、このブラケットでないとスポーティーな走りには似合わないと考えて、採用しました。もちろん、このベースブラケットはあくまでもCR-Vのものなので、そのまま付くわけではなく、モディファイして使っています。かなりごついので、デザイナーも最初、このブラケットが来た時は『びっくりした』と言っていました (笑)」とのことだった。

シンクロも、S660と同じカーボンシンクロとダブルコーンシンクロを使っている。使用頻度より、差回転に対するシンクロ容量の観点から2速にマルチシンクロ、3速にカーボンシンクロが採用されている。特に、3速はシフトノブを前方に押し付けるような操作となるため、よりタフな仕様になっているという。

クラッチペダルの操作荷重も、S660とN-VANの中間を狙ってセッティングされている。「極端に言うと、スポーツカーは重くてもいいのです。商用車は、逆に重くては困るのですが、軽すぎるとスポーティーさには欠けます。そこで、中間の部分をしっかりと狙いました」。クラッチはS660のものを使用しているのだが、そのままでは少し重すぎると判断されたため、「スポーティーではありますが、普段使いなども考えて重すぎず、軽すぎずといった、絶妙なチューニングを施しています」と、こだわりを語った。

当初、ここまで改良する予定はなかったRSグレードの「CVT」

6速MTだけでなく、CVTもスポーティーなRSグレードとしてしっかりと個性を出さなければいけないと、まずはブレーキ操作ステップダウンシフト制御に手を入れたという。この制御は、あくまで減速のためにエンジンブレーキを使うことに主眼を置いたセッティングとなっている。だが、RSではスポーティーに走ることを目的として、加速準備のために同制御のデータをセッティングした。「ドライバーのアクセル開度やブレーキ操作に対して、ダイレクトに駆動力が出ることをメインに考えてセッティングしました」と説明する。

さらに、走り込んで行くとG-Design Shift制御のCVTマップが気になり始めたという。N-ONE向けにアクセルの中間開度を上げ、かつRSではSレンジのCVT制御が専用になっているのだが、前述のブレーキ操作ステップダウンシフト制御だけでは、「通常走行領域において、走りが物足りなくなってしまったのです。そこで、G-Design Shift制御もセッティングを改めないと、お客様の操作についていけないと考えました。実は、G-Design Shift制御の改良は、元々は実施する予定ではなかったのです」。鹿子木さんは、以前はCVTの開発者だった。そこで、今回はテストコースでほかの車種を担当している人たちにも試乗してもらったという。「まず、新型N-ONE RSのMT車に乗ってもらうと、『やっぱり、楽しいね』と言って帰ってきました。その後、CVT車に乗ってもらうと、「ヤバイよ(笑)!」と言ってくれました。それなりにCVTでも走り込んでいるみなさんが、しっかりとアクセルコントロールしながら走らせた結果、『これはいい!』と言ってくれた時、私は本当にガッツポーズしました」と、その完成度に自信を見せた。

積極的にシフトしたくなる6速MTと、高回転を好むエンジン特性

前置きが長くなってしまったが、こだわりぬかれたトランスミッションを搭載する新型N-ONE RSグレードの6速MT車から、まずは試乗に出かけよう。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)のインテリア

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)のインテリア

ドアを開け、室内に乗り込むと、まずはその質感の高さに驚かされる。新型N-ONE RSのインテリアは、「これがいい、これが欲しい」と、積極的に選びたくなるほどのものだった。

エンジンをスタートさせ、少しだけ踏み応えのあるクラッチを踏み込み、1速へとシフトする。そして、クラッチをつなげると、N-ONEはするするとストレスなく発進した。そこから、アクセルを踏み込むと、パワフルな加速を開始する。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

あっという間にレッドゾーンが迫るので、2速へとシフトアップ。続いて3速と、空いた国道では頻繁なシフトアップが必要とされる。だが、これが面倒かと言われると、まったくそんなことはない。若干、シフトフィーリングは硬めな印象だが、強引なシフトチェンジも受け付けてくれる重厚さ、タフネスさが感じられるのだ。ただ、古くからMTに乗りなれている人からすると、もう少しだけ、軽くスコッとシフトできる、繊細な感覚のほうが好ましく思われる人もいるかもしれない。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

積極的にシフトチェンジを繰り返しながら市街地を走っていると、エンジン特性が高回転を好むことに気付いた。4,000回転あたりを保ちながら積極的に走らせていると、ギア比がぴったりで、気持ちよく加減速を楽しむことができる。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(6速MT)の走行イメージ

また、ワインディングロードを走らせてみても、思わず笑みがこぼれてしまうような走りが楽しめた。4速、5速、時々3速を使いながらコーナーを駆け抜けていくと、ボディサイズがコンパクトなので、万が一何か起きたとしても、車線内で収束できてしまうという安心感をもたらしてくれる。さらに、ライン取りも狙った通りのトレースを描けるのがたまらない。安全を考えて、若干強めのアンダーステアにしつけけられているので、少々オーバースピードと思えば、アクセルペダルを戻せば、スッと鼻先がイン側へと戻ってくれる。また、ペダルレイアウトもよく考えられており、ヒールアンドトゥが非常にしやすく、乗り手を楽しませてくれる。ボディがしっかりとしているので、コーナー上にうねりや段差があった場合でも、タイヤが路面を追従し、飛び跳ねるようなことはまずなかったことを付け加えておきたい。

ホンダ 新型「N-ONE」RSの6速MTには、フットレストが用意されていない

ホンダ 新型「N-ONE」RSの6速MTには、フットレストが用意されていない

そういったシーンで、あえて不満に思ったことを2つだけ。ひとつは、フットレストがないことだ。せっかくこういった走りを楽しめるクルマであるのなら、フットレストくらい用意してほしかった。もうひとつは、シートだ。シートが若干小さめなので、1時間以上乗っていると腰が痛くなってくることがあった。これは、腰部分のサポートやホールド性が若干弱いためと思われ、また、大腿部分のホールドも少し弱いので、このあたりは少々物足りない印象だ。乗り降りを損なわない範囲で、改良を望みたい。

前述のシートを除けば、高速道路での移動も楽にこなせる。6速100km/hで、3,100rpmと若干高回転気味だが、排気量等を考えれば妥当なところだろう。それよりも、走行安定性がすこぶる高く、このセグメントとは思えない足回りのしなやかさとともに、しっかりとしたボディ剛性を感じることができることを高く評価したい。特に、直進安定性は日本車としては上位の部類で、安心して高速道路を走ることができる。エンジン音などに関しては、やはりそこそこのペースを保つと耳障りにはなってくるが、これも排気量を考えれば妥当だろう。

N-ONEの製品画像
ホンダ
4.21
(レビュー191人・クチコミ6262件)
新車価格:159〜202万円 (中古車:8〜231万円

リニアなCVTは、パドルシフトを駆使してスポーティーな走りも

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(CVT)のイメージ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(CVT)のイメージ

このあたりで、RSグレードのCVTへと乗り換えてみよう。CVTは、アクセルペダルの踏み込み量に対してのレスポンスがきわめて自然で、これまでCVTによく見られたラバーフィーリングがほとんど感じられないのは、すばらしい完成度の高さと思えた。さらに、RSグレードではパドルシフトも装備されているので、思い通りの回転域を保ちながら、さまざまなシーンをスポーティーに走り抜けることが可能だ。ブレーキに関しても、急激な減速Gが立ち上がることはなく、思い通りにコントロールができることも、楽しさへとつながっている。

特に、ワインディングではアクセルとステアリングコントロールに集中することができるので、スポーティーにも、安全にスムーズにも走らせることが可能だ。トリッキーなコースであれば、6速MTよりも速く走らせることが可能かもしれない。そのくらい、よくできたCVTだった。

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(CVT)のイメージ

ホンダ 新型「N-ONE」RSグレード(CVT)のイメージ

解説でも触れたように、ブレーキ操作ステップダウンシフト制御やG-Design Shiftのセッティングも非常によくできており、コーナー手前では自然と回転数が上がり、減速させつつも、その回転をキープ。コーナー途中から、アクセルペダルを踏み込んでいった時に、ロスなくスムーズな加速に移れるので、まさに意のままにクルマを操っている感覚を味わうことができた。

回すと、それなりに悪化する燃費

今回、RSグレードの6速MT車とCVT車をそれぞれ走らせての燃費は、

■新型「N-ONE」RSグレード -6速MT-
市街地:14.7km/L(17.5km/L)
郊外路;16.7km/L(22.8km/L)
高速道路:21.2km/L(23.1km/L)
■新型「N-ONE」RSグレード -CVT-
市街地:13.7km/L(17.6km/L)
郊外路:15.4km/L(23.2km/L)
高速道路:20.1km/L(23.3km/L)
※( )内はWLTCモード燃費

どちらも、WLTCモード燃費との差が付いてしまったが、その理由は燃費を気にせずついつい引っ張り気味に走らせた結果なので、ここからの伸び代は期待できることと、元気に走らせてもこのくらいは走るということでもある。

さて、最後にRSグレードは6速MT車とCVT車のどちらを選んだほうがいいかという、非常に悩ましい選択についてだ。気楽に、かつスポーティーにも走らせたいのであればCVT車をおすすめするし、常に積極的に運転を楽しみたいのであれば6速MT車を買って後悔はないだろう。個人的には、6速MT車に後ろ髪を引かれるのだが、エンジニアがこだわりぬいたCVT車を選びたい。どんな時も、元気いっぱい走ることができるとはかぎらないからだ。そういった時は、のんびりとCVTにすべてをまかせて運転し、いざ元気に走りたい時はSモードを選択し、スポーティーなCVTセッティングを味わいつつ、ニヤリと笑いながらコーナーを駆け巡りたいと思うからだ。

いずれにせよ、軽自動車で運転も楽しみたい方に、新型N-ONE RSはおすすめできる1台である。もし、消極的に軽自動車を買うのなら、RSにかぎらず積極的に新型N-ONEを選択肢の中に入れてほしいと思えた。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

記事で紹介した製品・サービスなどの詳細をチェック
N-ONEの製品画像
ホンダ
4.21
(レビュー191人・クチコミ6262件)
新車価格:159〜202万円 (中古車:8〜231万円
関連記事
価格.comマガジン プレゼントマンデー
ページトップへ戻る