レビュー
1.5L 直列3気筒とは思えないほどのパワー感となめらかさ

次期「エクストレイル」に搭載!? 直3なのにV6のような「VCターボエンジン」に試乗

日産のミドルサイズSUV「エクストレイル」は、2000年に初代モデルが発売されて以降、SUVを普及させるうえで大切な役割を担った存在だ。そのエクストレイルが、日本において2022年早々に新型へとフルモデルチェンジされる。

今回、海外で販売されている日産 新型「ローグ」に、新開発の1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジンを搭載した車両に試乗した

今回、海外で販売されている日産 新型「ローグ」に、新開発の1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジンを搭載した車両に試乗した

エクストレイルの製品画像
日産
4.12
(レビュー434人・クチコミ22771件)
新車価格:248〜400万円 (中古車:14〜369万円

だが、エクストレイルの北米モデルである「ローグ」は、2020年10月にはすでに発売されている。日本で現在販売されているエクストレイルは、北米などの海外においてはすでに旧型モデルになる。

実は、日本仕様のエクストレイルの発売が遅れている背景には、北米で販売されるローグとは異なる仕様を開発しているという事情もありそうだ。北米モデルのローグのエンジンは2.5L直列4気筒だが、日本仕様の次期エクストレイルには、圧縮比を変化させる先進機能が備えられた「VCターボエンジン」が新たに搭載されると考えられている。さらに、このVCターボエンジンをベースとした「e-POWER」モデルが加わる可能性も高い。当記事では、新型ローグに最新の1.5L VCターボエンジンが搭載された、いわば次期エクストレイルのプロトタイプとも呼べるテスト車両へ試乗することができたので、レビューしたい。

量産車として世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」を搭載した、インフィニティ「QX50」

量産車として世界初の可変圧縮比エンジン「VCターボ」を搭載した、インフィニティ「QX50」

まず、VCターボエンジンそのものは、日産の海外ブランドであるインフィニティのSUV「QX50」の2代目モデルが、(量産車で)世界初の可変圧縮比エンジン搭載車として、2018年からすでに販売されている。今回のトピックとしては、QX50に搭載されているVCターボエンジンは2L4気筒ターボであったが、次期エクストレイルに搭載されるVCターボエンジンは、最新技術が用いられた第2世代の1.5L3気筒ターボであることだ。

今回の日産 新型「ローグ」に搭載されていた1.5L 3気筒VC(可変圧縮比)ターボエンジン

今回の日産 新型「ローグ」に搭載されていた1.5L 3気筒VC(可変圧縮比)ターボエンジン

VCターボエンジンの仕組みについてだが、圧縮比を変化させるために従来のコンロッドに替わり、マルチリンク機構がクランクシャフトを回転させる構造となっている。リンクを、モーター駆動によるアクチュエーターによって可動させ、ピストンとクランクシャフトとの距離を変化させることで、圧縮比を8:1から14:1まで、走行状況に応じて無段階に変化させることができるという仕組みだ。

たとえば、平たん路で巡航している時など、アクセルペダルを軽く踏んでいるような負荷の少ない時には、高圧縮比の14:1に近づけることで燃料消費量が抑えられる。逆に、高い動力性能が必要な時には、圧縮比を下げて8:1に近づけ、ターボを積極的に作動させることによって大きな出力を発生させることができる。

従来のエンジンでは、圧縮比が固定されているために、極端に言えば低燃費型エンジンか高性能型エンジンかといったように、搭載エンジンの性格が分けられている場合も多い。だが、VCターボエンジンは、この両方の性格を兼ね備えていると考えてもらえればいいだろう。

また、VCターボエンジンは、e-POWERとの親和性も高そうだ。e-POWERでは、エンジン負荷が小さい場合には圧縮比を高め、もっとも効率のすぐれた回転域に固定する「定点発電」になる。エンジンは発電のために使われ、駆動はモーターが受け持つので、速度に応じてエンジン回転数を上下させる必要はないからだ。だが、ドライバーがアクセルペダルを深く踏み込み、高い動力性能を求める時には、高効率な定点発電では発電量が不足する。この時に、VCターボエンジンであれば、圧縮比を下げてターボを作動させ、積極的な発電を行うことで駆動用モーターに十分な電気を供給することができる。つまり、VCターボエンジンは、エンジン単体で搭載する時も、e-POWERと組み合わせる時にも、穏やかに走る時は高圧縮比を上げて燃料消費量を少なく抑える。そして、高い性能が必要な時には、圧縮比を下げてターボを積極的に使うことができるのだ。

今回、1.5L直列3気筒のVCターボエンジンに、CVTが組み合わせられている新型ローグ(左ハンドル車)へと試乗した。最高出力は、204PS(5,600rpm)、最大トルクは31.1kg-m(2,800-4,400rpm)だ。

日産 新型「ローグ」1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジン搭載車の走行イメージ

日産 新型「ローグ」1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジン搭載車の走行イメージ

VCターボユニットの搭載によって、車重は1,600kgと少々重い。そのため、1,500rpm以下の極低速域では駆動力が十分とは言えないものの、この回転域はCVTの制御によってさほど使われないので問題はないだろう。そして、2,000rpmを超えると1.5Lとは思えないような、豪快な加速が始まる。感覚的には、2.5〜3LのNAエンジンに匹敵する性能だ。

アクセルペダルを深く踏み込むと、エンジン回転数が6,000rpmまで高まった後、4,900rpmに下がり、再び上昇を開始した。これは、有段式のATに似せた疑似的な変速制御が採用されているためで、歯切れのよさを味わえる。

また、VCターボエンジンは、運転していても圧縮比の変化などによる違和感はほとんど覚えず、実に自然なフィーリングだ。アクセル操作や駆動力に微妙なズレが生じるターボラグなども感じられず、ドライバーのアクセル操作にエンジンが忠実に反応してくれる。まるで、上質な自然吸気エンジンを載せているかのような感覚に陥る。驚いたのは、エンジン音は3気筒の特徴がうまく生かされているのか、まるでV型6気筒エンジンのような迫力あるエンジン音が味わえたことだ。巡航中は静かなのだが、アクセルペダルを踏み込みパワーが高まった時には、エンジン音が高まる。3気筒エンジン特有の粗さが、うまく抑えられていることも好印象だった。

日産 新型「ローグ」1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジン搭載車の走行イメージ

日産 新型「ローグ」1.5L VC(可変圧縮比)ターボエンジン搭載車の走行イメージ

操舵感は、SUVらしからずかなり機敏なもので、車両は向きを素早く変えてくれる。カーブを曲がる際にも、旋回軌跡を拡大させにくい。その代わり、危険回避を想定したような素早い車線変更を行うと、ボディの傾き方が増して後輪の接地性が少しそがれやすく感じた。これは、試乗車が海外向けのローグで、海外市場に合わせたセッティングだったことが考えられる。日本で次期エクストレイルが発売される時には、もう少し操舵感を穏やかにして走行安定性のバランスが整えられることに期待したい。

乗り心地は少し硬めだが、路上の段差を乗り越えた時の突き上げ感などは抑えられている。高めの速度域を対象にしているが、快適性もおおむね満足といえるものだ。

燃費性能は、現時点では不明だが、開発者にたずねると「2Lエンジンよりもすぐれており、1.8Lに相当する」との返答であった。2Lエンジンを搭載する従来型のエクストレイルは、2WD車で13.2km/Lなので、新型では約15%ほど向上するとなると、15.5km/L前後あたりになるだろう。

日産 新型「ローグ」のエクステリア

日産 新型「ローグ」のエクステリア

ちなみに、新型ローグの内外装についても少し述べておきたい。新型ローグは外観が水平基調になって、従来型と比べるとすっきりとした印象を受けた。初代や、2代目のエクストレイルに近づいたようにも感じる。外観が水平基調なので、側方や後方の視界はおおむね良好だ。新型ローグのボディサイズ(全長×全幅×全高)は、4,680×1,840×1,700mm、ホイールベースは2,705mmと、従来型とほぼ同じだ。

日産 新型「ローグ」のインテリア

日産 新型「ローグ」のインテリア

車内に入ると、従来型に比べてインパネのデザインが大きく変わっている。従来型は、スポーティーな囲まれ感が重視されていたが、新型は水平基調でインパネの上下幅が薄く、シンプルながらも質感が高められている。前席は体を包み込むデザインで、サイドサポートの張り出しも大きめだ。今回の試乗でテストコースを走った際にも、しっかりと体を支えてくれた。後席の広さは従来型と同程度だが、十分なスペースが確保されている。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕がある。背もたれの下側が硬めに造り込まれていて、体の支え方もいい。

最低地上高に余裕のあるSUVでありながら、床は低めに抑えられており、ドアの間口部が広いので乗降性もいい。荷室面積は十分に確保されていて、リヤゲートの角度を寝かせていないので、背の高い荷物も積みやすい。新型ローグは、SUVとしての実用性が高く、ファミリーカーとして使いやすい。日本で発売される次期エクストレイルも、基本的には新型ローグと共通の内外装になると思われるので、参考にしていただければ幸いだ。

次期エクストレイルで、ひとつ懸念されるのが価格だ。圧縮比を変化させるVCターボエンジンの機能は複雑で、クランクピンの荷重は従来のエンジンの1.9倍に増える。さらに、耐久性も問われるハイテクなエンジンなので、価格が高まる心配がある。だが、ミドルサイズSUVはライバル車との競争が激しい。

特に、トヨタ「RAV4」のNAエンジン車は、排気量が2Lに抑えられており、2WD・Xの価格は2,743,000円と安価だ。いっぽう、現行エクストレイルは装備を充実させているために、2WDの20Xiで3,161,400円になる。従来型からの乗り替え需要を考慮しても、次期エクストレイルは価格を極端に高めることはできないだろう。

想定されるライバル車は、マツダ「CX-5」のクリーンディーゼルターボエンジン搭載車だ。VCターボエンジンを搭載する次期エクストレイルは、ハイブリッドに比べれば安くなり、ユーザーが受け取るVCターボの価値観もディーゼルに近いものになると考えられるからだ。CX-5のクリーンディーゼルターボエンジン搭載車で、売れ筋のXDプロアクティブは3,228,500円、充実が装備しているXD・Lパッケージは3,520,000円(いずれも2WD)だ。CX-5の価格を踏まえると、次期エクストレイルのVCターボエンジン搭載車は、3,350,000円くらいになるのではと考えられる。

VCターボエンジンは、上質な走りとすぐれた燃費効率を考えれば、少々の価格の高さも十分に納得できるものだ。きっと、人気を高めるに違いない。日産の本当の復活は、次期エクストレイルから始まるように思える。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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新車価格:248〜400万円 (中古車:14〜369万円
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