レビュー
モデューロXとベース車のリュクスを比較試乗

ホンダ「フィット」のスポーティーモデル「モデューロX」は販売回復の救世主になるか!?

ホンダのコンパクトカー「フィット」に、専用エアロパーツや専用ダンパーなどを装着し、走行性能を向上させた「フィット e:HEV Modulo(モデューロ)X」が、2021年6月4日に発売された。今回、そのフィット e:HEV モデューロXを、高速道路とクローズドコースの2つのシーンにおいて試乗したのでレビューしたい。

専用カスタマイズパーツを、量産過程で装着するコンプリートカーブランド「Modulo(モデューロ)X」シリーズへ、新たに「フィット e:HEV モデューロX」が追加された

専用カスタマイズパーツを、量産過程で装着するコンプリートカーブランド「Modulo(モデューロ)X」シリーズへ、新たに「フィット e:HEV モデューロX」が追加された

フィットの製品画像
ホンダ
4.04
(レビュー1046人・クチコミ87161件)
新車価格:155〜259万円 (中古車:1〜258万円

さまざまな理由で、販売が伸び悩んでいる「フィット」

2020年2月にフルモデルチェンジされた、ホンダの主力コンパクトカー「フィット」。従来から人気車であったフィットは、新型も好調に売れていいはずなのだが、2021年1〜6月の1か月の平均登録台数は5,000台弱と伸び悩んでいる。ちなみに、ライバル車のトヨタ「ヤリス」(ヤリスクロスを除く)は1か月平均で約9,800台、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」は同じく約6,000台登録されていることを考えても、フィットの登録台数は少ないと言えそうだ。

その背景には、複数の理由が考えられる。まずは、新型コロナウイルスの影響による半導体の不足だ。販売店では、以下のように述べている。「フィットの納期は、一般的には2〜3か月ほどだが、半導体の不足により、グレードによっては5か月ほどに達する場合もある。また、車両の納期が2〜3か月に収まっても、カーナビやETCユニットの生産が遅れて影響を受ける場合もある」。

また、フィットの需要が軽自動車の「N-BOX」に奪われているという事情もある。N-BOXは、2021年1〜6月の1か月の平均登録台数が18,000台超にも達しており、フィットと比べると4倍近い登録台数を誇っている。いまや、日本国内で販売されるホンダ車の約35%はN-BOXが占めており、フィットは同じ価格帯に属することもあって、販売面で影響を受けている。

そのほか、現行フィットはフルモデルチェンジの際に、フロントマスクなどの外観を大きく変えたこともあげられる。前後左右ともに、視界にすぐれた機能的なデザインではあるのだが、ユーザーによっては前モデルと比べて雰囲気が変わりすぎたと感じるようだ。

こだわりの専用エアロや専用ダンパーを装着し、走行安定性と乗り心地を向上

そのようなフィットの販売状況を打破するかのごとく、2021年6月にフィット e:HEVモデューロXが発売された。

「フィットLUXE(リュクス)」をベース車として、操縦性や乗り心地などをさらに向上させるため、エアロパーツの装着やダンパーの改良などが施された 「フィット e:HEV モデューロX」

「フィットLUXE(リュクス)」をベース車として、操縦性や乗り心地などをさらに向上させるため、エアロパーツの装着やダンパーの改良などが施された 「フィット e:HEV モデューロX」

モデューロXとは、ホンダの技術者たちの手によって、意のままに操れるような操縦性の高さを引き出し、デザインや上質感などにもこだわって作り上げられたカスタマイズカーのことだ。2013年に発売された「N-BOX モデューロX」をはじめ、これまでに6車種が発売されており、今回のフィット e:HEV モデューロXが7車種目となる。フィット e:HEV モデューロXは、2020年1月に開催された「東京オートサロン」において、コンセプトモデルとして初公開されたのだが、今回はそれがようやく発売となったわけだ。

フィット e:HEV モデューロXは、「フィット e:HEV LUXE(リュクス)」と呼ばれるフィットの上級モデルをベースに、空力性能が高められた数々のエアロパーツが装着されているほか、専用ダンパーが採用されるなどによって、走行安定性や乗り心地を向上させている。

「フィット e:HEV モデューロX」のフロントイメージ

「フィット e:HEV モデューロX」のフロントイメージ

フロントバンパー下部をスロープ形状とし、フィンを設置することなどによって空気の流れを生み、直進安定性を高めている「エアロスロープ」

フロントバンパー下部をスロープ形状とし、フィンを設置することなどによって空気の流れを生み、直進安定性を高めている「エアロスロープ」

リュクスからの具体的な変更点として、まず外観ではフロントに専用グリルと専用エアロバンパーが装着されていることがあげられる。エアロバンパーの下部はスロープ形状になっており、フィンの設置などによって車体下部の中央に速い空気の流れを作り出し、直進安定性を向上させているという。また、バンパーサイドには、エアロボトムフィンが採用されている。ホイールハウス内を通る風の流れを、エアロボトムフィンによってスムーズにすることで、旋回時の上質なステアリングフィールを実現しているという。

「フィット e:HEV モデューロX」のリアイメージ

「フィット e:HEV モデューロX」のリアイメージ

リアにも、フロントと同様にエアロバンパーが装着されている。リアバンパー下面のディフューザー形状を最適化することによって、車体下面の空気の流速を高め、安定感のある走りが可能となっている。

直進性や旋回性の向上を図るために装着されている「専用テールゲートスポイラー」

直進性や旋回性の向上を図るために装着されている「専用テールゲートスポイラー」

また、専用テールゲートスポイラーは、上面の長さや角度を最適化することで前後のリフトバランスを向上させるとともに、サイド面は角度や面積を調整することによって、直進性や旋回性を向上させている。開発者によると、これらのエアロパーツは「市街地を走るような低速域から、効果を発揮する」と言う。

「フィット e:HEV モデューロX」のサイドイメージ

「フィット e:HEV モデューロX」のサイドイメージ

サイドは、ドアにロアガーニッシュが装着されているほか、電動格納式のリモコンドアミラーが採用されている。

フィットのノーマル車との重量比でマイナス30%を実現している、軽量な「専用アルミホイール」。強度や剛性バランスなどにもこだわって開発されている

フィットのノーマル車との重量比でマイナス30%を実現している、軽量な「専用アルミホイール」。強度や剛性バランスなどにもこだわって開発されている

装着タイヤは、モデューロXとリュクスで共通だが、ホイールは「スーパーGT」に採用されているホイールと同じデザインが踏襲されている。センター部分を徹底して軽量化することによって、リュクスとのホイール比で1本あたり約2.9kgもの軽量化が施されている。また、インナーリムの厚さをミリ単位で調整することによって、ホイールの“しなり”をコントロールし、タイヤの接地面圧を高めるとともに乗り心地を向上させているという。

四輪で路面をとらえるために、オイルバルブの形状が一新されている「専用ダンパー」

四輪で路面をとらえるために、オイルバルブの形状が一新されている「専用ダンパー」

足まわりは、専用ダンパーが採用されており、さまざまな路面においてショックをしなやかに吸収するバルブとピストンを採用。フリクションやオイルなどにもこだわって作られたダンパーで、乗り心地を最も重視して開発されている。

「フィット e:HEV モデューロX」のインテリア

「フィット e:HEV モデューロX」のインテリア

メイン表皮に滑りにくいラックススェード、サイドサポートには本革が採用されている「専用コンビシート」

メイン表皮に滑りにくいラックススェード、サイドサポートには本革が採用されている「専用コンビシート」

内装は、ステアリングホイールとセレクトレバーが本革巻のものになるほか、フロント、リアシートともに、専用のモデューロXロゴ入り専用シートを採用。そのほか、ドリンクホルダーなど一部のパネルに専用品があしらわれているほか、フロアカーペットやパワースイッチにも専用品が採用されている。

モデューロXと、ベース車のリュクスを比較試乗

手前のホワイトの車両が「フィット e:HEV モデューロX」で、奥のシルバーの車両がモデューロXのベース車となっている「フィット e:HEV リュクス」。今回は、2台を比較試乗することで、その違いがより明確になった

手前のホワイトの車両が「フィット e:HEV モデューロX」で、奥のシルバーの車両がモデューロXのベース車となっている「フィット e:HEV リュクス」。今回は、2台を比較試乗することで、その違いがより明確になった

今回、そのフィット e:HEV モデューロXへ試乗した。高速道路、およびクローズドコースの「群馬サイクルスポーツセンター」の2つの走行シーンにおいて、ベースモデルのフィット e:HEV リュクスと比較試乗することができたのでレビューしたい。

「フィット e:HEV モデューロX」の試乗イメージ

「フィット e:HEV モデューロX」の試乗イメージ

まず、モデューロXの試乗を開始して、最初に感じたのは直進安定性が向上していることだった。前述の専用エアロパーツによって、空気の流れが最適化され、高速道路ではリュクスに比べてステアリング操作による進路修正の機会が減っていることに気付いた。リュクスと乗り比べると、モデューロXのほうが運転がしやすく感じる。ブレーキは、モデューロXとリュクスでは共通なのだが、モデューロXでは制動力が高まったように感じた。リュクスは、燃費効率なども考慮されているために、車両の前側が若干下がり気味なのだが、モデューロXでは走行安定性を向上させるために水平に近付けている。そのため、4輪の接地バランスが向上して、ブレーキを作動させた時にもすぐれた制動力をもたらしてくれる。

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

「フィット e:HEV リュクス」の走行イメージ

「フィット e:HEV リュクス」の走行イメージ

モデューロXとリュクスの違いは、群馬サイクルスポーツセンターを走ると、さらによくわかった。モデューロXでコーナーへ進入する時には、リュクスに比べてステアリングの切り始めから正確に反応する。フィットは、現行型になって操舵感は大幅に改善されているのだが、モデューロXではさらに正確性が高められている。だが、過敏な味付けではないので、ドライバーを疲れさせるような心配は要らないだろう。

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

モデューロXは、コーナーを旋回している時の挙動が安定しており、軌跡を拡大させにくい。コーナーの出口に向けてアクセルペダルを踏み込むと、リュクス以上に前輪がしっかりと接地してくれる。たとえば、コーナーの先がさらに内側へ回り込んでいるような時にも、モデューロXでは操舵角に応じて進行方向を自在に変えることができる。

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

「フィット e:HEV モデューロX」の走行イメージ

いっぽう、モデューロXでは後輪の接地性も高い。たとえば、下り坂のコーナーへ進入する際にブレーキを掛けた時など、通常は後輪の接地性が下がって車両は不安定になりやすいのだが、そのような場面においてもモデューロXの後輪はグリップしている。

モデューロXにおける、最大のメリットはこのすぐれたタイヤの接地性と感じた。今回走行した、群馬サイクルスポーツセンターは路面がかなり荒れていたのだが、タイヤが路上で細かく跳ねる挙動が抑えられていることが実感できた。これは、エアロパーツやショックアブソーバー、ホイールなどを変更したことによる相乗効果だろう。とくに、ホイールのたわみ方の最適化なども、接地性の向上に大きく貢献しているように思えた。

接地性の向上によって、走行安定性だけでなく乗り心地も快適になっている。低速域では少し硬めに感じたのだが、タイヤの接地性を向上させて路上を細かく跳ねる挙動が抑えられているので、バタバタとした粗さが払拭されている。適度な引き締まり感がともなうので、クルマ好きのユーザーが運転すれば、リュクスなどノーマルのフィットよりも、モデューロXの乗り心地のほうが快適に感じられるかもしれない。

ちなみに、以前試乗した「S660 モデューロX バージョンZ」でも、路面の跳ね方がうまく抑えられており、コーナーなどにおける操舵の修正なども減っていた。同様のことが、今回のフィット e:HEV モデューロXにも当てはまっている。

フィット e:HEV モデューロXの価格は、2,866,600円。e:HEV リュクス(2,426,600円)に比べると、44万円高い。モデューロXは、割安とまでは言えないのだが、専用に開発された数々のパーツの効果は、市街地などでも実際に体感できるものだった。運転の楽しさや、安全に大きく影響する走行安定性を向上させて、乗り心地も満足できるものとなっている。スポーティーな走りだけでなく、運転感覚や内外装の上質なコンパクトカーを求めるユーザーにも適しているだろう。

モデューロXの走りは、ベースとなるフィットの素性がすぐれているからこそ実現できている。ベース車の素性が悪いと、パーツを加えたり交換しても、よい効果が得られないこともある。フィットの売れ行きは、前述の通り伸び悩んではいるものの、商品力そのものはすぐれていると改めて実感した。今後は、モデューロXの走りのよさがより多くの人にわかりやすく感じられるような、エクステリアのブラッシュアップも望みたい。ベースのフィットとは異なる、走りのよさが外観からも感じられるような魅力をまとったフィットは、モデューロXであればこそ可能なはずだからだ。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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新車価格:155〜259万円 (中古車:1〜258万円
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