レビュー

日本へ初導入されたジープのピックアップトラック「グラディエーター」で悪路を試す

ジープのピックアップトラック「グラディエーター」の2代目となる現行モデルが、2021年11月30日に日本市場へ初めて導入された。

ジープのピックアップトラック「グラディエーター」が日本市場に初導入された。今回、グラディエーターにおける悪路走破性の高さを体感できたのでレビューしたい

ジープのピックアップトラック「グラディエーター」が日本市場に初導入された。今回、グラディエーターにおける悪路走破性の高さを体感できたのでレビューしたい

グラディエーターの初代モデルは、1962年に登場。「ワゴニア」のプラットフォームをベースに開発された初代モデルは、1988年まで生産、販売される。その後、2018年のロサンゼルスオートショーにおいて、グラディエーターは2代目の新型モデルとして復活した。

日本市場へ導入されている「グラディエーター ルビコン」のフロントイメージ

日本市場へ導入されている「グラディエーター ルビコン」のフロントイメージ

「グラディエーター ルビコン」のリアイメージ

「グラディエーター ルビコン」のリアイメージ

新型グラディエーターには、ジープ伝統の7スロットグリルに代表されるデザインアイコンが与えられ、すべてのジープ、特に「ラングラー」との共通性をアピールしている。いっぽう、ホイールベースは「ラングラーアンリミテッド」に対して480mmも延長されており、5名乗車が可能なダブルキャブボディに、広大な荷台が備えられているのが特徴的だ。

「グラディエーター」は、使い勝手にすぐれた広大な荷室を備えていることが特徴的だ

「グラディエーター」は、使い勝手にすぐれた広大な荷室を備えていることが特徴的だ

車体の骨格には、悪路走破性や牽引能力にすぐれる伝統のボディ・オン・フレーム構造(いわゆるラダーフレーム)が採用され、ボディ剛性や耐久性にも有利な設計になっている。今回、新型グラディエーターを、新潟の妙高高原にあるスキー場へ特別に敷設された悪路において試乗したのでレポートしよう。

■ジープ「グラディエーター」のグレードラインアップと価格
※価格は記事掲載時点
Gladiator Rubicon:9,200,000円(税込)

「ラングラー」より遊べるかも!?

日本においては、ピックアップ市場はそれほど大きくはない。そのため、本国からの導入提案の際、いったんは「グラディエーターの輸入はなし」との判断がなされていたのだという。だが、アメリカで発表されるや否や、日本のディーラーやユーザーなどからの反響、導入などの希望の声が大きかったことから、急遽発売されることになったのだ。

日本への導入に当たっては、オーストラリア仕様の右ハンドルの開発がちょうど進んでいたことも、条件としては有利に働いた。そして、2021年11月30日から予約受注が開始された。当初は、年間100台程度の販売台数が見込まれていたのだが、実際には予約開始から半年と少しで400台を超える受注があり、以降も月平均30台ほどのオーダーが入っているという。グラディエーターの購入ユーザーについては、現在ラングラーに乗っているオーナーからの買い替えも多く見られるとのことだ。ステランティスジャパンも、「オーナーは、“ラングラーの延長”のようにとらえられていると思いますので、たとえばグラディエーターでキャンプに行くなど、乗ってもらう方のファッションの一部となってもらえたら」とコメントする。Bピラーから前はラングラーと一緒だが、その後ろはホイールベースが延長されており、荷台もある。さらに、さまざまなアクセサリーも用意されているので、ノーマルのままでもよし、自分の趣味に合わせた改良もよしといった形で、いろいろと楽しめそうなクルマだ。

顔はラングラーと一緒だが

日本で販売されるグレードは、「グラディエータ− ルビコン」1グレードのみとなっている

日本で販売されるグレードは、「グラディエータ− ルビコン」1グレードのみとなっている

日本へ導入されるグレードは、ジープ最強のオフロード性能を誇るルビコン仕様で、前後デフロック機構や悪路走行時にサスペンションストローク量を増加させる電子制御式フロントスウェイバーディスコネクトシステム、極低速走行を可能にする専用ローギア付ロックトラックフルタイム4×4システム、マッド&テレインタイヤなど、走破性を向上させる数々の専用装備が備わっている。

「グラディエーター」には、FOX社製のパフォーマンスショックアブソーバーが備わっている

「グラディエーター」には、FOX社製のパフォーマンスショックアブソーバーが備わっている

さらに、前方に設置されたカメラによって前方下部の映像を映し出すオフロードカメラや、FOX社製パフォーマンスショックアブソーバーが備わるなど、実践的な悪路性能がいっそう高められているモデルとなっている。

「グラディエーター ルビコン」のインテリア

「グラディエーター ルビコン」のインテリア

「グラディエーター ルビコン」のフロントシート

「グラディエーター ルビコン」のフロントシート

「グラディエーター ルビコン」のリアシート

「グラディエーター ルビコン」のリアシート

インテリアは、スマートフォンの接続も可能なオーディオナビゲーションシステム(Uconnect)を始め、サブウーハー付アルパイン製プレミアムスピーカー、レザーシート、前席シートヒーターなど快適装備も充実しており、リアシートの背後やシート下には収納スペースが確保されているなど、日常の使い勝手を高める装備も数多く採用されている。

「グラディエーター ルビコン」に搭載されるエンジンは、3.6リッターV型6気筒ガソリンエンジンで、最高出力209kW(284ps)/6,400rpm、最大トルクは347Nm(35.4kg・m)/4,700rpmと高回転型のエンジンだ

「グラディエーター ルビコン」に搭載されるエンジンは、3.6リッターV型6気筒ガソリンエンジンで、最高出力209kW(284ps)/6,400rpm、最大トルクは347Nm(35.4kg・m)/4,700rpmと高回転型のエンジンだ

驚きの悪路走破性の高さ

今回、インポーターからは「あくまでも、悪路走破性を試してほしい」とのことで、「スピードは歩く程度で、しっかりと地面を踏みしめるような感覚で走行してほしい」とコメントがあった。それを前提としたうえで、さっそくグラディエーターで悪路に乗り出してみよう。

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

今回は、一般道での走行は一切なく、20度を超えるダウンヒルやモーグルなどの走行に徹して、あくまでも悪路走破性のみを体験した。路面は、直前まで降っていた雨は上がったものの、しっかりと水を含んだ粘土質で滑りやすいことこの上なく、歩くのすらためらわれるほどだった。

グラディエーターに乗り込み、まずは4Lを選択。そしてスウェイバーを解除する。スウェイバーは、スタビライザーを電子的にフリーにするものだ。オンロードであれば、スタビライザーは車両を安定させるために働くものだが、いっぽうでサスペンションストロークがかぎられてしまう。そこで、あえてこれを電子的に解除することでよりストロークを長くして、接地性を高めるのが目的だ。ゆっくりとアクセルを踏み込んでいくと、エンジン音が高まった後、そろりと巨体が動き始めた。

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

まずは、20度のダウンヒル。セレクスピードコントロール(ヒルディセントコントロールはブレーキを使って下りだけで使用可だが、セレクスピードコントロールはエンジン側も調整するため、平たん路や上りでも設定速度を維持する)を1km/hにセットし、そろそろとまさに言葉どおり落ちていく。その際、ボディは横に滑ることなく、また、ブレーキがロックすることもなく、1km/hを保ち下っていくさまは空恐ろしいほどだ。

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

その後、アクセルを踏み込みながら、それでも10km/h程度の速度で水たまりやバンクを走破。そして、片輪が浮くほどのモーグルでもドライバーに不安感を与えない。その最大の要因は、乗り心地のよさだ。特に、片輪が浮いた後に着地する瞬間のショックの吸収力は見事なもので、常にステアリング操作に集中できるのは、悪路を走るうえでとても安心できる。これは、ホイールベースの長さが大きく貢献しているようだ。もちろん、デメリットとして腹を打ちやすくなるなどはあるものの、姿勢変化がよりゆっくりになるというメリットもある。さらに、FOXのショックアブソーバーがかなり大きな影響を及ぼしているようで、通常のラングラーやスポーツなどと比べても、ショックの吸収性は穏やかに感じた。このFOXは、バハ1000をはじめとした砂漠などをハイスピードで駆け抜けるラリー車などに多く採用されているブランドで、MTBなどでも多くの選手が装着している。つまり、今回のような低速走行だけでなく、高速走行でギャップなど気にせずガンガン走る際にも有効なのである。したがって、オイル粘度だけでなく、ショックを吸収するために高速でピストン運動してもオーバーヒートしないような耐性も備えられている。ちなみに、本国ではラングラーのV8モデルなどにも装備されていることからも、その性格が窺える。したがって、本来であれば歩くような速度ではなくハイスピードで悪路を走破する性格をも備えているクルマといってもいいだろう。今回は叶わなかったが、いつか試してみたいものである。

いっぽう、このようなシーンで最も不満なのが、フットレストがないことである。左ハンドルであれば、左前輪のホイールハウスが足元に出っ張ってくるのでそれを使うことが可能だが、右ハンドルではいかんともしがたい。そこはぜひ、何とか装備してもらいたいものだ。長距離で左足が休めやすいのはもちろん、悪路で体を支えるのにフットレストは有効な装備だからだ。

トランスミッションとエンジンとのマッチング

「グラディエーター ルビコン」の走行イメージ

「グラディエーター ルビコン」の走行イメージ

さて、エンジン特性は高回転型と前述したが、それには理由がある。高速道路などを走らせていると妙に低いギヤを保ち、なかなかシフトアップしないことが、どのジープでも共通した印象だ。それでも、このエンジン特性に重きを置いているのは悪路、特にがれ場や渡河性能時などの極限での走破性を求めているからだ。

ゆっくりと、一歩一歩踏みしめるように走る際には、当然のことながら4L、すなわち四輪駆動のローギヤ、つまり低いギヤを使うことになる。なぜ、低いギヤか。たとえば、ギヤ付きの自転車を想像してみてほしい。1速や2速といった低いギヤでの漕ぎ始めと、5速などの高いギヤとでは前者のほうが楽にスタートできる。しかし、スピードが乗ってくると後者のほうが楽に走らせることができる。つまり、これをあてはめると、がれ場などで石を乗り越える際には低いギヤのほうが楽なことは理解していただけると思う。では、それを乗り越える際には、ある程度の力も必要だ。そうすると、エンジン回転数は必然的に高くなる。しかも、そういったシチュエーションではスピードは必要ない。そこで、ジープとしてはこういったシチュエーションを重要視して、低いギヤと高回転側でトルクやパワーが出るエンジンとの組み合わせを選択しているのだ。

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

「グラディエーター ルビコン」の悪路走行イメージ

今回は、悪路のみであったので一般道での印象は想像しかできないのだが、基本はラングラーとそれほど変わらないか、ホイールベースが長いぶん、穏やかな走りになるのではと思われる。全長5mを超えるグラディエーターは、確かに路地の多い場所などでの使用はためらわれるが、悪路走破性の高さをここまで見せつけられると、昨今の豪雨など異常気象をものともしないであろう魅力的な車体を、何とかして手元に置きたいと思えてくるのである。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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グラディエーターの製品画像
ジープ
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(レビュー-人・クチコミ7件)
新車価格:960万円 (中古車:728〜3480万円
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