※スバルが、「クロストレック」の正式な価格を公表しました。価格についての詳細は、以下の記事をご参考下さい(2022/12/11・編)
スバルのコンパクトクロスオーバーSUV「XV」が、新たな車名「クロストレック」としてフルモデルチェンジされる。
スバルの新型クロスオーバーSUV「クロストレック」。車名は、これまでのXVから、今後は海外名称である「クロストレック」へと世界的に統一される
ちなみに、これまでは「インプレッサ」が先にフルモデルチェンジされ、その新型インプレッサをベースとしてXV(クロストレック)が開発されていたのだが、今回はクロストレックのほうが先行して発売されるという点が異なっている。
新型クロストレックは、2022年9月15日に世界初公開されたのだが、今回はそのプロトタイプへ試乗したのでレビューするとともに、まだ公表されていない価格について予想してみたい。
■スバル 新型クロストレック(標準グレード)の主なスペック
駆動方式:AWD、FWD
全長×全幅×全高:4,480×1,800×1,575(※)mm
ホイールベース:2,670mm
最低地上高:200mm
車両重量:1,550kg(AWD)、1,540kg(FWD)
最小回転半径:5.4m
燃費:非公表(記事掲載時点)
搭載エンジン:2.0L 水平対向4気筒エンジン(FB20)
トランスミッション:リニアトロニック
最高出力(エンジン):10 kW(13.6PS)/6,000rpm
最大トルク(エンジン):65N・m(6.6kgf・m)/4,000rpm
最高出力(モーター):107kW(145PS)
最大トルク(モーター):188N・m(19.2kgf・m)
燃料タンク容量:48L
燃料:無鉛レギュラーガソリン
※全高はシャークフィンアンテナ装着車で、ルーフレール非装着の数値。ルーフレール装着の場合は+5mm。
まず、新型クロストレックの発売スケジュールからだが、世界初公開時のプレスリリースには、「2023年以降に、日本市場へ導入」と記載されている。そこで、今後のスケジュールを販売店に尋ねると、以下のような返答があった。「2022年11月11日になると、価格を明らかにして予約受注が開始される。納車を伴う発売は、2023年になる。おそらく、試乗車が2023年1月に配車され、納車が始まるのは2023年2月頃になりそうだ」。
新型「クロストレック」のエクステリアイメージ
また、価格については「予約受注の開始までは、正確な価格はわからないが、従来型の2Lエンジンを搭載するXVと比較して、上級グレードは約30万円の上乗せになりそうだ」と言う。新型クロストレックの日本仕様は、パワーユニットが2L水平対向4気筒エンジンにハイブリッドが組み合わせられる「e-BOXER」のみになる。従来のXVに搭載されていた、1.6L水平対向4気筒エンジンは廃止される。その代わり、従来のXVの駆動方式はAWD(4WD)のみだったが、新型クロストレックには2WD(FF)が新たに設定される。そして、新型クロストレックのグレードラインアップは、標準グレードと上級グレードの2種類だ。つまり、駆動方式の違いも含めると、合計4種類の選択肢になる。
従来のXVの価格は、2L水平対向4気筒エンジンにe-BOXERが搭載された、AWDの上級グレード「2.0e-Sアイサイト」が2,904,000円であった。だが、新型クロストレックの上級グレードには、新たに「11.6インチ センターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム」や、車両周囲の死角をモニターで補助してくれる「デジタルマルチビューモニター」などが加わる。そうなると、価格は販売店の言う「約30万円の上乗せ」が妥当だ。つまり、上級グレードのAWDは、おそらく3,200,000円前後になると考えられる。また、上級グレードの2WDは、AWDよりも230,000円ほど安く、2,970,000円前後になるのではと予想される。上級グレードの2WDは、装備を充実させながら価格を300万円以下に抑えることで、購入のしやすさを訴求する可能性があるためだ。いっぽう、標準グレードは、「11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム」や運転席と助手席の「電動調節機能」、「デジタルマルチビューモニター」、「ドライバーモニタリングシステム」などがオプション設定となっている。そうなると、価格は上級グレードに比べて50万円ほど安くなるはずだ。つまり、標準タイプのAWDは2,700,000円くらいになるのではと予想される。ちなみに、従来型のXVで価格が最も安い2.0e-Lアイサイトは、4WDを搭載して2,651,000円であった。予想価格から比較すると、クロストレックの標準仕様は5万円ほど値上げされることになる。それでも、機能の向上を考えれば十分に納得できるものだ。いっぽう、標準グレードの2WDは、AWDよりも23万円安い2,470,000円といった価格が考えられる。250万円を下まわれば、割安感を訴求しやすいからだ。また、上記の予想価格どおりなら、新型クロストレックは、人気の高いトヨタの「カローラクロスハイブリッド」などと比べても、割高に感じることはないはずだ。
前の車両が新型「クロストレック」で、うしろの車両が「XV」
ここまでは、予想価格を中心に解説したが、ここからは新型クロストレックのプロトタイプと先代のXVの比較試乗における、新旧の違いや進化した魅力などについてお伝えしたい。
新型「クロストレック」のフロントエクステリア
新型「クロストレック」のリアエクステリア
まず、新型クロストレックのボディサイズは、全長が4,480mm、全幅は1,800mmなので、従来のXVとほぼ同じ大きさだ。プラットフォームも共通で、ホイールベースも2,670mmなのでXVと同じ数値になる。全高は、25mm増えて1,575mmになったが、これはシャークフィンアンテナの採用によるものなので、全高を含めてボディサイズはほとんど変わっていない。
新型クロストレックの外観は、先代のXVと同様にサイドウィンドウの下端が後方に向かっていくにしたがって持ち上げられたデザインだ。ななめ後方の視界は、若干改善された印象も受けるが、視界のよさがウリのスバル車としては、後方視界は先代と同様にやや不満が伴う。最小回転半径は、先代と同じく5.4mに収まっている。
新型「クロストレック」のインテリア
新型クロストレックのインテリアにおける全体の印象としては、ていねいに作られていると感じる。試乗車は上級グレードだったため、インパネの中央には大きな11.6インチセンターインフォメーションディスプレイが備わっている。そのため、内装の見栄えは従来のXVというよりも、どちらかというと上級車種の「レヴォーグ」に近いイメージに感じた。
新型「クロストレック」のフロントシート
フロントシートは、シート形状が見直されている。サイズに余裕があって、座り心地も乗員の体が適度に沈んで、ボリューム感が伴うものだ。体重を支える座面の後方をしっかりと造り込み、腰を的確に支えてくれる。さらに、サポート性も良くワインディングなどをスポーティーに走行しても、着座姿勢は乱れにくい。
新型「クロストレック」のリアシート
リアシートは、足元空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕がある。これは先代と同等で、その広さはLサイズセダンに相当する。座り心地は、フロントシートほど柔軟ではないが、リアシートとしては満足できるものだ。
リアシートの座面は、前側が少し持ち上げられている。身長170cmの乗員が座ると、大腿部が適度に支えられて快適だが、小柄な乗員には圧迫感が生じる場合もある。後席の座り心地は、体格に応じて感じ方が異なる場合もあるので注意したい。少し気になったのは、後席の乗降性についてだ。先代のXVに比べると、ドアを開いた時の開口部の上側が少し下がっている。そのため、頭を下げ気味に乗り降りしなければならない。そのほか、ラゲッジルームの広さや使い勝手などは、先代とほぼ同様だ。
新型「クロストレック」の走行イメージ
動力性能は、先代の2L水平対向エンジン搭載車と等しい。最高出力は145PS(6,000rpm)、最大トルクは19.2kg-m(4,000rpm)で、13.6PS・6.6kg-mのモーターが組み合わせられている。新型クロストレックは、車重が1,500kgを超えることもあるためにパワフルとまでは言えないものの、実用回転域の駆動力に余裕があるので運転しやすい。エンジン回転数が下がっている時に、アクセルペダルを緩く踏み増すと、モーターがエンジンを適度に支援してくれて、速度は滑らかに上昇していく。また、4,000rpmを超えた高回転域における加速も活発なイメージだ。ちなみに、エンジンノイズは小さく抑えられており、少しアクセルを開けた程度ではエンジン音はほとんど聞こえない。
新型「クロストレック」の走行イメージ
走行安定性は、良好だ。カーブを曲がる時にステアリングホイールを回し始めた時の反応の仕方は、XVよりもさらに正確になっている。新型クロストレックは、コーナーを曲がる時に4輪がしっかりと接地しているので、旋回軌跡を拡大させにくい。この時に、危険を避けるためにアクセルペダルを戻したりブレーキペダルを踏んだりしても、後輪の接地性が高いので、不安定な状態に陥りにくい。ちなみに、新型クロストレックのAWDと2WDも乗り比べてみたのだが、舗装路において走行安定性に差が見られた。アクセルペダルを踏みながらコーナーを曲がる時には、前後輪を両方とも駆動するAWDは、前輪駆動の2WDに比べて旋回軌跡を拡大させにくく、操舵角に応じてコーナーを正確に回り込む。さらに、下り坂のカーブなどでアクセルペダルを戻した時も、AWDは後輪の接地性が高く、車体が安定している。駆動力が加わっていない場面でも、AWDは走行安定性を高めてくれるので、乗っていて安心感が高い。
新型「クロストレック」の走行イメージ
乗り心地は、XVに比べて新型クロストレックは快適になった。適度に引き締まっており、クルマ好きのユーザーに好まれる乗り心地だ。
以上のように、新型クロストレックは基本的なパワーユニットやプラットフォームは従来型のXVと共通化しながら、各部を洗練させた。
また、新型クロストレックは安全性もさらに高められている。アイサイトのステレオカメラには、広角の単眼カメラが新たに加わり、歩行者や自転車を含めて衝突被害軽減ブレーキを作動できる場面が広げられている。クロストレックは、スバル車の魅力がこれまで以上に強められた新型車と言えそうだ。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト