日本で売れている軽スーパーハイトワゴン、ホンダ「N-BOX」とスズキ「スペーシア」。前回は、2台の内外装や使い勝手などの違いについて比較(ホンダ「N-BOX」 とスズキ「スペーシア」の内外装や装備を徹底比較!)してみたが、今回は動力性能や乗り心地など、走りの違いについて比較してみよう。
ホンダ「N-BOX」
スズキ「スペーシア」
試乗グレードは、N-BOXが標準ボディのEX(FF/1,678,600円)で、スペーシアは標準ボディのハイブリッドX(FF/1,533,400円)。どちらも、NAエンジン搭載車だ。前回と同様、筆者(渡辺陽一郎)とモータージャーナリストを目指して勉強中の深山幸代さんの2人で比較試乗した。当記事のほか、以下の動画でも詳しく解説しているので、ご覧いただければ幸いだ。
■「N-BOX」と「スペーシア」(どちらもNAエンジン)の最高出力、最大トルク
-最高出力-
N-BOX:43kW[58PS]/7,300rpm
スペーシア:38kW [52PS]/6,500rpm
-最大トルク-
N-BOX:65N・m[6.6kgf・m]/4,800rpm
スペーシア:60N・m[6.1kgf・m]/4,000rpm
ホンダ「N-BOX」の走行イメージ
N-BOXとスペーシアの動力性能を実際に乗って比較してみると、N-BOXのほうが若干パワーに余裕が感じられる。いっぽう、スペーシアは実用回転域の駆動力が少し不足しているように思われた。2台で同じ道を走ると、N-BOXよりもスペーシアのほうが、アクセルペダルを踏み込むタイミングが多くなる。
スズキ「スペーシア」の走行イメージ
スペーシアは、坂道が多いような地域でクルマを使うのであれば、販売店で試乗して近所の登り坂などを走ってみたほうがいいだろう。状況によっては、パワー不足が感じられるはずなので、その際には「スペーシアカスタム」のグレードとしてラインアップされているターボエンジン搭載車も検討したい。ターボエンジンは、最大トルク(実用回転域の駆動力)がNAエンジンのおよそ1.6倍に増強され、坂道などを走りやすくなるからだ。さらに、最近のターボエンジンは燃費効率もよく、WLTCモード燃費は5〜7%ほどしか悪化しない。軽自動車のターボエンジンは高効率なので、必要であればスペーシア、N-BOXのどちらもターボエンジン搭載車を積極的に選びたいところだ。
ホンダ「N-BOX」の走行イメージ
カーブを曲がったり、車線を変えたりする際の運転フィーリングは、N-BOXとスペーシアでは印象がかなり異なる。N-BOXは、軽自動車としてはステアフィールが重めで重厚感のある乗り味となっており、車両全体の動きが穏やかでカーブを曲がる時のボディの傾き方は少し大きめだ。
スズキ「スペーシア」の走行イメージ
いっぽう、スペーシアの運転感覚は自然で、N-BOXに比べて軽快さを持ち合わせている。N-BOX EXの車重は930kgだが、スペーシア ハイブリッドXは870kgと軽く、ボディの重さの違いが運転感覚にも影響を与えている。
N-BOXは、時速40km以下では乗り心地が少し硬いものの、全体的には重厚感がともなっていて、軽自動車としては快適な部類に入るだろう。さらに、N-BOXはシートにボリューム感があって座り心地がよく、そのこともN-BOXの乗り心地のよさへとつながっている。
いっぽう、スペーシアは路面の凹凸を少し意識させるようなフィードバックがあり、N-BOXよりも乗り心地が硬めだ。スペーシアは、長距離を移動する際に重要な乗り心地よりも、取り回しのしやすさや視界のよさなど、市街地の短距離移動における使い勝手のよさを重視したクルマ作りがなされている。
乗り心地のよさや静粛性の高さ、内外装の質感のよさなどを重視するユーザーは、N-BOXが適しているだろう。軽自動車とは思えないクルマ造りがなされており、多くのユーザーの購買意欲が高められることで、好調な売れ行きへと結び付いているものと考えられる。
深山さん「N-BOXは、たくさんアクセルを踏み込まなくてもしっかり加速して坂を上ってくれるので、高速道路の合流などもスムーズにできそうな感じです。あと、シートの座り心地がよくて、路面のゴツゴツや繋ぎ目などが体に伝わってこないので、乗り心地がとてもいいですね!」
いっぽう、カジュアルで明るいなじみやすさを重視するユーザーには、スペーシアが適している。スペーシアは、N-BOXとは異なる軽快さを持ち合わせており、運転感覚にクセがなく、視界もいいので運転がしやすい。また、車内の雰囲気も明るくて楽しげなデザインやカラーリングへと仕上げられている。
深山さん「スペーシアはインパネが平らなので、運転席に座ると前が開けていて、とても視界がよかったのが印象的でした。運転感覚もつかみやすくて、クルマがすれ違う路地などでも運転しやすそうです!」
一見すると似ているような2台だが、実は持ち味がかなり異なっている。これまで述べた違いをもとに、みなさんの好みや用途に合わせて比較検討いただければ幸いだ。
「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト