レビュー

SUVらしからぬスポーティーさ!走りも内外装も上級化した日産 新型「エクストレイル」

2022年7月25日、日産のミドルサイズSUV「エクストレイル」が4代目へとフルモデルチェンジされた。今回、新型「エクストレイル」の最上級グレード、G・e-4ORCEへ試乗したのでレビューしたい。

4代目の新型「エクストレイル」は、第2世代の「e-POWER」に発電用の新エンジン「VCターボエンジン」が搭載されているのが最大の特徴になる。さらに、4WDモデルには前後2基の高出力モーターを搭載する電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が採用されている。今回は、「e-4ORCE」搭載グレードに試乗した

4代目の新型「エクストレイル」は、第2世代の「e-POWER」に発電用の新エンジン「VCターボエンジン」が搭載されているのが最大の特徴になる。さらに、4WDモデルには前後2基の高出力モーターを搭載する電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」が採用されている。今回は、「e-4ORCE」搭載グレードに試乗した

まず、新型「エクストレイル」のボディサイズからだが、全長は4,660mmとミドルサイズSUVとしては一般的な数値だ。全幅は1,840mmなので、SUVとしては平均水準に収まるものの、駐車場などでの取り回しは少々幅が広めに感じられた。ちなみに、最小回転半径は5.4mなので、小回りの効きは悪くない。

新型「エクストレイル」のフロントエクステリアとリアエクステリア

新型「エクストレイル」のフロントエクステリアとリアエクステリア

外観デザインは水平基調で、運転席に座るとボンネットがよく見える。フロントピラーは、比較的手前に配置されているので、正面やななめ前方の視界がいい。だが、後方のピラーは少し太く、視界が遮られるのでバックなどの際には注意したい。

内装は、最上級グレードということもあって上質だ。車内の装飾類なども、ていねいに造り込まれている。

新型「エクストレイル」のインパネ周り

新型「エクストレイル」のインパネ周り

シートの座り心地は、フロントシートはサイズに余裕があって適度なホールド性もあり快適だ。だが、リアシートはもう少しサポート性を高めてほしいと感じた。着座位置は適度なのだが、座面の角度が水平に近い印象で、腰がシートに沈みにくいので走行中は体がいまひとつ安定しにくい。開発者は、その理由について「リアシートの背もたれを前側に倒したとき、広げた荷室を平らにしたかったため、座面にはあまり角度を付けなかった」と述べている。

新型「エクストレイル」のフロントシート

新型「エクストレイル」のフロントシート

新型「エクストレイル」のリアシート

新型「エクストレイル」のリアシート

後席の足元空間は、先代モデルと同様に広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先には、握りコブシ2つ半の余裕がある。さらに、リアシートには前後のスライド機能も備わっており、前側に寄せてもさほど窮屈にならない。4名乗車時の快適性を悪化させずに、荷室面積を拡大できるのは便利だろう。

新型「エクストレイル」は、リヤゲートの角度が立てられていることもあって、荷室容量には余裕がある。残念なのは、先代型のNAエンジン車に用意されていた「防水フレキシブルラゲッジ」が廃止されたことだ。開発者は、「防水にすると上質感を演出しにくく、先代では人気の装備とも言えなかった」とのことなのだが、「エクストレイル」の「タフギア」というコンセプトを表現するには格好の機能であったため、廃止されたのは少々残念だ。

新型「エクストレイル」のラゲッジルーム

新型「エクストレイル」のラゲッジルーム

それでは、いよいよ運転フィールをチェックしよう。新型「エクストレイル」のパワートレインは、先代型と異なりNAエンジン搭載車は用意されず、ハイブリッドのe-POWERのみがラインアップされている。e-POWERは、エンジンは発電機として作動し、駆動はモーターが受け持つ。なお、今回の試乗車はG・e-4ORCEなので、前後輪にモーターが搭載されている。

新型「エクストレイル」の走行イメージ

新型「エクストレイル」の走行イメージ

新型「エクストレイル」は、発電用エンジンとして新たに「VCターボエンジン」が搭載されている。1.5L直列3気筒の同エンジンには、圧縮比を変化させる先進機能が採用されており、ターボが装着されている。巡航時などエンジン負荷が小さいときは、圧縮比を14まで高めて燃料消費量を抑える。逆に、モーターが高い動力性能を発揮するときには、圧縮比を8まで下げてターボを作動させ、発電機をフルに稼働させる。

新型「エクストレイル」は、前述のVCターボエンジンの採用で発電能力が高められていることもあって、動力性能を一般のガソリンエンジンに当てはめると3.5L V型6気筒に匹敵する性能を有しており、パワフルで運転しやすい。巡航中にアクセルペダルを踏み増すと、3気筒エンジン特有のノイズが耳障りに感じることも稀にあるが、パワーに余裕があるのでそのような機会は多くはないだろう。

新型「エクストレイル」の走行イメージ

新型「エクストレイル」の走行イメージ

さらに、新型「エクストレイル」は走行安定性も良好だ。ステアリングの支持剛性が高く、カーブを曲がるときなどは小さな舵角から進行方向が正確に変わる。操舵感はSUVというよりも、どちらかというとステーションワゴンに近いように感じられた。一般的に、高重心のSUVは後輪の安定性を高く保つために、操舵したときの反応が鈍く抑えられていることが多いのだが、新型「エクストレイル」はステア操作に対しての反応が素早く、スポーティーな感覚だ。

新型「エクストレイル」の走行イメージ

新型「エクストレイル」の走行イメージ

ひとつ、注意したいのは乗り心地の硬さだ。跳ねるような粗さはないが、時速50km以下では路上の細かな凹凸が乗員に伝わりやすい。これは、装着タイヤ(235/55R19)の影響もあるだろう。その意味で、バランスがよかったのは、「オーテック e-4ORCEアドバンストパッケージ」だ。オーテックのタイヤサイズは20インチ(255/45R20)なのだが、指定空気圧は19インチに比べて少し低い。タイヤ銘柄はミシュラン「プライマシー4」で、乗り心地は硬めではあるが角が丸く、19インチタイヤよりも快適に感じられた。さらに、オーテックはカーブを曲がるときには横方向の踏ん張り感が強く、操舵に対する反応も19インチタイヤ装着車以上に正確だ。路面やタイヤのグリップ状態が、ステアリングホイールを保持する掌に伝わりやすく安心感も高い。クルマ好きのユーザーは、機会があればオーテック e-4ORCEアドバンストパッケージにも試乗してみるとよいだろう。

WLTCモード燃費は、今回試乗した4WDのG・e-4ORCEは18.4km/Lで、2WDのGは19.7km/L。動力性能に余裕のあるハイブリッドとしては、燃費性能も満足できる数値となっている。

新型「エクストレイル」の外観イメージ

新型「エクストレイル」の外観イメージ

新型「エクストレイル」を購入するときは、まず2WDか4WDのe-4ORCEかを決めることになるが、後輪をモーターで駆動して走行安定性を積極的に高めているe-4ORCEを推奨したい。価格も妥当だ。

また、グレードは予算に余裕があるのなら、最上級のG・e-4ORCE(4,499,000円)を推奨したい。G・e-4ORCEは、X・e-4ORCE(3,799,400円)の装備に、プロパイロット緊急停止支援システムやプロパイロットパーキング、SOSコール、インテリジェントアラウンドビューモニター、日産コネクトナビ、リモコンオートバックドアなど、さまざまな豪華装備が加えられているからだ。さらに、シートの生地や内装の装飾も上級化されている。G・e-4ORCEの価格は、X・e-4ORCEに比べて699,600円高いが、80万円相当の装備が加わっている。もし、予算が厳しいのなら、X・e-4ORCEを選ぼう。

新型「エクストレイル」の外観イメージ

新型「エクストレイル」の外観イメージ

ちなみに、先代「エクストレイル」は2L直列4気筒のNAエンジン搭載車が人気だった。売れ筋グレードは、20Xi・Vセレクション4WD(3,256,000円)だったので、新型のG・e-4ORCEは価格が約124万円高い。このあたりが、従来型から新型「エクストレイル」に乗り替えるときの悩みどころになるだろう。

新型「エクストレイル」(G・e-4ORCE)のライバル車は、機能や装備から判断するとトヨタ「ハリアーハイブリッド(G・E-Four)」(422万円)になる。「ハリアー」に、オプションのパーキングサポートブレーキ+ブラインドスポットモニター(68,200円)、100V・1500Wの電源コンセント(44,000円)を加えて装備の条件を合わせると約433万円になり、実質価格は新型「エクストレイル」G・e-4ORCEに近づく。

先代「エクストレイル」は、「ハリアー」のような上級SUVではなかったが、新型はデザインや機能を向上させている。内装の質やVCターボエンジンによる走行性能の高さなどは、「ハリアー」と並ぶ水準に達している。「ハリアー」は静かで滑らかな印象が強く、新型「エクストレイル」は走りが活発でスポーティーという車両の性格の違いなどを考慮して検討するといいだろう。

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎

「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けるモータージャーナリスト

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エクストレイルの製品画像
日産
4.12
(レビュー486人・クチコミ26520件)
新車価格:351〜504万円 (中古車:17〜598万円
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