バイク野郎 増谷茂樹の二輪魂

進化に対してのコスパが抜群! 新エンジンを搭載し、足回りも性能アップした新型「クロスカブ110」

数か月前にレビューした新型「スーパーカブ110」と同じ2022年4月にモデルチェンジし、エンジンや足回りを一新したホンダ「クロスカブ110」に、先代モデルにも乗ったことのある筆者が試乗。「クロスカブ110」は街乗りだけでなく、ちょっとした未舗装路も走行できるマシンなので、街中からダートまでがっつり走って進化を体感してきた。

新型「クロスカブ110」は、マットアーマードグリーンメタリック(上段)、パールディープマッドグレー(下段左)、プコブルー(下段右)の3色が用意されている。メーカー希望小売価格は363,000円(税込)

新型「クロスカブ110」は、マットアーマードグリーンメタリック(上段)、パールディープマッドグレー(下段左)、プコブルー(下段右)の3色が用意されている。メーカー希望小売価格は363,000円(税込)

新型「クロスカブ110」の車体をチェック

「クロスカブ」シリーズの初代モデルが誕生したのは2013年のこと。「スーパーカブ110」をベースに、アウトドアイメージを高めたバリエーションモデルとして発売されたものの、レッグシールドを装備していたこともあり、やや軽快感に欠ける印象だった。そのイメージが、2018年のモデルチェンジで登場した「クロスカブ110」で一新。レッグシールドを廃止したことでエンジンが露出し、さらに、タイヤがセミブロックタイプに変わったことと相まって、よりアグレッシブなルックスとなったのだ。このスタイルになったことで、街中で見かける機会が一気に増えたほど人気が高まった。

2013年に登場した初代「クロスカブ」は、パイプハンドルがむき出しのデザインに、ガード付きのライトを備えていた

2013年に登場した初代「クロスカブ」は、パイプハンドルがむき出しのデザインに、ガード付きのライトを備えていた

それまでの「クロスカブ」のイメージを変えたのが2018年に発売された「クロスカブ110」

それまでの「クロスカブ」のイメージを変えたのが2018年に発売された「クロスカブ110」

今回紹介する新型「クロスカブ110」の大きな進化点は、エンジンと足回り。新設計のエンジンは、ボア(内径)×ストローク(行程)が先代モデルの50.0×55.6mmから47.0×63.1mmに改められた。最高出力は8PS×7,500rpmと変化はないものの、ロングストロークタイプのエンジンとなったことで、トルクは先代モデルから0.3Nmアップの8.8Nm/5,500rpmになり、燃費も「WMTC」モードで67.9km/Lと、先代モデルと比べ0.9km/L向上。そして足回りは、同タイミングでモデルチェンジした新型「スーパーカブ110」と同様に、前後ともホイールをキャスト化し、フロントブレーキはディスクに変更された。これは装着を義務付けられたABSを備えるための措置だが、ホイールデザインが変わったことで車体のイメージもやや硬質になった印象だ。また、サスペンションストロークも伸ばされており、セミブロックタイプのタイヤと相まって、未舗装路での走破性が向上していると思われる。

先代モデルと比較し、サイズは全高のみ20mmアップした1,935(全長)×795(全幅)×1,110(全高)mmで、重量は1kg増の107kg。ホイールベースは1,230mmと変更はされていないが、「スーパーカブ110」と比べると25mm長い

先代モデルと比較し、サイズは全高のみ20mmアップした1,935(全長)×795(全幅)×1,110(全高)mmで、重量は1kg増の107kg。ホイールベースは1,230mmと変更はされていないが、「スーパーカブ110」と比べると25mm長い

エンジンは伝統の横型レイアウトだが、ロングストローク化された新設計。これによって、どう走りが変わるかも気になるところだ

エンジンは伝統の横型レイアウトだが、ロングストローク化された新設計。これによって、どう走りが変わるかも気になるところだ

新採用のキャストホイールは「スーパーカブ110」と同デザインだが、ブラックに塗装されイメージはやや異なる。フロントフォークにはインナーチューブの傷つきを防ぐ蛇腹を装備

新採用のキャストホイールは「スーパーカブ110」と同デザインだが、ブラックに塗装されイメージはやや異なる。フロントフォークにはインナーチューブの傷つきを防ぐ蛇腹を装備

ディスクブレーキ化されたのは「スーパーカブ110」と同様だが、キャリパーは「スーパーカブ110」の1ポッドに対して2ポッドタイプを採用

ディスクブレーキ化されたのは「スーパーカブ110」と同様だが、キャリパーは「スーパーカブ110」の1ポッドに対して2ポッドタイプを採用

リアはドラムブレーキのままだが、ホイールはキャストに変更。ストロークの長いスプリングむき出しのサスペンションが装着されている点が「スーパーカブ110」と異なる

リアはドラムブレーキのままだが、ホイールはキャストに変更。ストロークの長いスプリングむき出しのサスペンションが装着されている点が「スーパーカブ110」と異なる

油圧ディスクブレーキとなったことで、ハンドルの右手側にはマスターシリンダーを装備

油圧ディスクブレーキとなったことで、ハンドルの右手側にはマスターシリンダーを装備

メーター内部に液晶が追加され、シフトインジケーターや時計、燃料計が表示できるようになった

メーター内部に液晶が追加され、シフトインジケーターや時計、燃料計が表示できるようになった

ギアは4速で、「カブ」シリーズに共通するシーソー式ペダルの自動遠心クラッチタイプ。AT限定の普通二輪免許でも乗車できる

ギアは4速で、「カブ」シリーズに共通するシーソー式ペダルの自動遠心クラッチタイプ。AT限定の普通二輪免許でも乗車できる

外観デザインは、先代モデルと比べると足回り以外に違いはほとんどない。ちなみに、「スーパーカブ110」と比較すると、むき出しとなったエンジンやハンドル周り、フロントキャリアも兼ねたガードを装備したヘッドライトなどが異なり、「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)と比べると、ダウンタイプのマフラーや小ぶりなキャリアといった部分が異なる。

ガードを装備した丸形ヘッドライトは「クロスカブ」シリーズの特徴

ガードを装備した丸形ヘッドライトは「クロスカブ」シリーズの特徴

「スーパーカブ110」と異なり、フロントフェンダーは金属製。フロントフォークは「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)のほうが長い

「スーパーカブ110」と異なり、フロントフェンダーは金属製。フロントフォークは「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)のほうが長い

ダウンタイプのマフラーは、ガードのデザインが異なるものの構造は「スーパーカブ110」と同じ

ダウンタイプのマフラーは、ガードのデザインが異なるものの構造は「スーパーカブ110」と同じ

パイプハンドルをむき出しで装着しているのが「スーパーカブ110」と異なる点。幅も広く、グリップ位置も高いので、ライディングポジションにも影響してくる

パイプハンドルをむき出しで装着しているのが「スーパーカブ110」と異なる点。幅も広く、グリップ位置も高いので、ライディングポジションにも影響してくる

エア吸入口を兼ねているため大型のキャリアを装備する「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)とは異なり、「スーパーカブ110」と同様の小ぶりなキャリアを採用

エア吸入口を兼ねているため大型のキャリアを装備する「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)とは異なり、「スーパーカブ110」と同様の小ぶりなキャリアを採用

試乗で実感! バイクを操る楽しさが大きく向上

エンジンと足回りという走りに関わる重要な部分を一新したことで、先代モデルと乗り味がどのように変わったのかを確かめるのはもちろんだが、同じ部分を変更し、最高出力やトルク値、キャスト化されたホイール、フロントブレーキのディスク化など共通する点が多い「スーパーカブ110」や、オフロード走行できる「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)との違いも気になるポイント。街中だけでなく、高低差のあるワインディングや未舗装路なども走行してチェックしてみよう。

シート高は先代モデルと同じ784mm。身長175cmの筆者は両足のかかとまでしっかりと接地する。2022年に発売された新型「スーパーカブ110」のシート高は先代モデルより3mmアップの738mmになったが、それでも「クロスカブ110」のほうが46mm高いので、この2車種で乗り換えると結構大きな違いに感じるかもしれない

シート高は先代モデルと同じ784mm。身長175cmの筆者は両足のかかとまでしっかりと接地する。2022年に発売された新型「スーパーカブ110」のシート高は先代モデルより3mmアップの738mmになったが、それでも「クロスカブ110」のほうが46mm高いので、この2車種で乗り換えると結構大きな違いに感じるかもしれない

走り出してすぐに、エンジンのトルクが太くなっていることを感じた。発進時の安心感も高くなったが、いちばん差を感じたのは登り坂のような場面。先代モデルは結構大きくアクセルを開け、エンジンを高回転まで回す必要があったような坂も余裕を持って登りきれる。街中や幹線道路を走っているときでも気持ちに余裕が持てるので、この進化はかなりうれしい。また、シフトフィーリングも先代モデルに比べるとカチッとした印象で、より走るのが楽しくなった。

トルクフルになったエンジンは、街乗りはもちろん、ちょっと郊外まで足を伸ばしたような場面で余裕を感じる。より遠出がしたくなるような進化だ

トルクフルになったエンジンは、街乗りはもちろん、ちょっと郊外まで足を伸ばしたような場面で余裕を感じる。より遠出がしたくなるような進化だ

そして、ブレーキをディスク化したことで増した安心感をあらゆる場面で実感できた。コントロール性がアップするため、信号で止まった際にはより狙った地点にピタッと止められる。加えて、コーナーの進入では、フロントフォークのストローク量を調整しながら入っていけるようになり、操る楽しさが向上。さらに、ホイールをキャスト化したことによって剛性感も高まり、路面からのインフォメーションもつかみやすくなったので、バイクを操る楽しさをより味わえるようになった。特に、サスペンションが「スーパーカブ110」と比べてストロークだけでなく、バネレートもアップしている。コーナリング時にしっかりとタイヤを路面に押し付けてくれるので、気持ちよさは新型「クロスカブ110」のほうが上という印象だ。

ブレーキを使ってサスペンションを縮ませ、曲がっていく感覚が楽しい。「スーパーカブ110」よりサスペンションが硬めなので、キャストホイール化の恩恵もより大きく感じた

ブレーキを使ってサスペンションを縮ませ、曲がっていく感覚が楽しい。「スーパーカブ110」よりサスペンションが硬めなので、キャストホイール化の恩恵もより大きく感じた

砂利を敷き詰めたような、よくある林道も走ってみた。セミブロックタイヤに加え、サスペンションストロークも長いため、通過するぐらいであればまったく不安はない。トルクフルになったエンジンによってトラクションがつかみやすくなっていることもあり、より安心感は向上している。少し大きめにアクセルを開けてもすべることもなく、初めてオフロードを走る人でも安心して進んでいけるだろう。ブレーキを強く握るのはオフロードでは禁物だが、ABSが装備されているので、その点でも安心できる。

この程度の未舗装路なら、多少荒れているところも問題なく走行可能。新型のエンジンやディスクブレーキなどの装備がよい方向に作用している

この程度の未舗装路なら、多少荒れているところも問題なく走行可能。新型のエンジンやディスクブレーキなどの装備がよい方向に作用している

ただ、「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)と比べるとオフロード走行時の安心感は一歩譲る。ハンドルクランプ部までフロントフォークが伸びた構造の「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)は剛性が高く、荒れた道でも操りやすいのに加え、排気量が124ccより余裕を持って走れる点が、差となるポイントだ。特に「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)は、リアにもディスクブレーキを採用していることもあって、オフロードに慣れた人なら、アクセルやブレーキの操作でリアをすべらせるなど、より積極的に操れるのも異なる点だ。

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試乗を終えて

新型のエンジンやディスクブレーキとキャストホイールの採用は、メリットは大きいがデメリットはほぼないと言っていいだろう。より遠出しやすくなり、バイクを操る楽しみもアップしているので、バイク好きな人ほどそのメリットを大きく感じるはずだ。これだけ安心感や走行性能を向上させながら、メーカー希望小売価格は363,000円(税込)と、先代モデルと比べて価格アップを3万円以下に抑えられているので、かなりお得感がある。

同タイミングで発売された新型「スーパーカブ110」との乗り味の違いについて軽く触れておこう。新型「クロスカブ110」のほうがハンドル幅は広く、サスペンションが踏ん張ってくれるので、よりアグレッシブに走りを楽しめる。未舗装路を含めたツーリングを楽しみたい人だけでなく、オンロードしか走らない人でも、より操る楽しさを味わいたいのであれば新型「クロスカブ110」を選んだほうがいいだろう。ただ、メーカー希望小売価格は新型「スーパーカブ110」よりも約6万円高い。

新型「クロスカブ110」はハンドル幅が広く、切れ角もかなり大きいので、街中での駐車や、林道でUターンをする際などでの取り回しがとてもしやすかった。街乗りユーザーも遠出したい人にもありがたい部分だ

新型「クロスカブ110」はハンドル幅が広く、切れ角もかなり大きいので、街中での駐車や、林道でUターンをする際などでの取り回しがとてもしやすかった。街乗りユーザーも遠出したい人にもありがたい部分だ

そして、比較対象となることが多いであろう「CT125・ハンターカブ」については、オフロードを含めたキャンプツーリングなどをするなら「CT125・ハンターカブ」(2020年モデル)のほうが優位。ただ、今回のモデルチェンジで、その差は縮まった印象だ。ただ、「CT125・ハンターカブ」は2022年10月に新エンジンを搭載したモデルチェンジを発表しているので、どちらを選ぶほうがいいかは新型に乗ってからお伝えしたいが、メーカー希望小売価格は新型「クロスカブ110」より77,000円高いので、コスパ重視でオンロードもオフロードも楽しみたいなら新型「クロスカブ110」は魅力的だろう。

●メインカット、走行シーン撮影:松川忍

増谷茂樹

増谷茂樹

カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。

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