スポーツカー好きの中年、マリオ高野です。
新しくなった日産「フェアレディZ」の走りに、いたく感動しました。今回で7代目となる新型「フェアレディZ」の走りに対する評価は、「フェアレディZ」というクルマに何を求めるかによって変わる傾向にあります。
サーキットや峠でいい汗がかけるピュアスポーツを求めるのか、巡航時の快適性を重視したグランツーリスモを求めるかで印象は多少異なりますが、絶対的な運動性能とコンフォート性のバランスにおいては、感動レベルですばらしいとたたえたくなるクルマであると断言します!
衝突安全性や歩行者保護性、エアロダイナミクスなどを向上させながら、「フェアレディZ」らしさを受け継ぎ表現
新型でも、スポーツカーの黄金比であるサイドのフォルム、「ロングノーズ・ショートデッキ」は最重視されました。前後ピラーやルーフ部分のラインは、伝統を強く感じさせるポイントのひとつです
強調されたリヤフェンダーの張り出しにより、視覚的にも高性能さが伝わるリヤビュー。テールレンズまわりの雰囲気も伝統を強く意識
今回、試乗したのは「バージョンST」という上級グレード。乗り心地のよさについては、フロント255/40R19、リヤ275/35R19のタイヤを履くスポーツカーとしては全面的に絶賛できるものがあります。スポーツカーらしく引き締まってはいますが、路面からの入力をいなす足さばきはエレガントのひと言。それでいて、運転好きのドライバーが求める路面およびタイヤグリップの情報は濃密に得られるので、極めて秀逸と賞賛したくなりました。
ハンドリングは、一般的なドライバーが山道を少し速めのペースで駆け抜けるような状況においては、これまた完璧レベルのすばらしさ。乗り心地とハンドリングの両面において、ボディの基本骨格は旧型からのキャリーオーバーであるとは思えないほど、剛性が高く感じられます。特に、ステアリングに伝わる剛性感が秀逸で、自分の掌と4つのタイヤの接地面がつながっているかのようなダイレクト感が得られ、ステアリングフィールフェチの人に自信を持ってオススメできる手応えでした。
高速クルージングにおける快適性や直進性も、極めて秀逸と評せる高いレベル。静粛性も高く、高性能なBOSEオーディオが、より楽しみやすくなりました
スイッチ類やドアの内張裏など、細部に旧型からのキャリーオーバーを感じさせる部分があるものの、全体的な洗練度は大幅に向上。3連メーターも伝統に忠実な配置となりました
日産のスポーツブランド「NISMO」からフィードバックされた技術が反映されたというシート。長時間、長距離ドライブ時にも高い快適性が維持されます
旧型比で排気量を小さくしてターボ過給したエンジンは400馬力を超えるということで、公道でアクセルを踏み込むのは慎重さが求められるところですが、よほど乱暴な操作をしない限り、ハイパワーFR車特有の恐怖感、つまりリヤタイヤがグリップを失って滑ることへの恐怖感はまったくありませんでした。
クローズドコースで試乗した武闘派のドライバーの話によると、安定感は高いいっぽうで、意図的にリヤをスライドさせることは比較的容易で、エンジンパワーをフルに発揮させると自由自在のドリフトマシンに変わるようです。しかし、意図的にそういうことをしなければ4輪の接地感は常に濃密にて、400馬力オーバーの怪物を手なづけることができると勘違いさせてくれるほどにコントローラブル。一般的なドライバーにとっては、十分以上のリアルスポーツ性能を備えていると断言できます。
小排気量化かつターボ過給化されながらも、大排気量NAのような低速トルクとピックアップのよさを発揮。クルマのキャラとエンジンの特性的にATとのマッチングのよさを感じさせるところも、伝統的と言えます
排気サウンドはかなり控え目な印象。ご近所への騒音を気にせず、早朝や深夜に発着できます
総じて、先代モデルで少し気になった車体の重々しさや、ややドタバタ感のある入力の伝わり方は全面的に解消したとも感じました。もっとピュアに突き詰めた運動性能を味わいたい人は、将来的に設定されることが予想される「NISMO」バージョンに期待といったところでしょう。
個人的な要望としては、3リッターV6ターボエンジンのサウンドや回転フィールに、もう少し色気があればなおすばらしいと思います。今回試乗した9速ATには何の不満もありませんが、せっかくMTがあるということなので、いずれMTでの印象も報告します。
この試乗の模様は動画でもご覧いただけます。
1973年大阪生まれの自動車ライター。免許取得後に偶然買ったスバル車によりクルマの楽しさに目覚め、新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、自動車工場での期間工、自動車雑誌の編集部員などを経てフリーライターに。3台の愛車はいずれもスバルのMT車。