レビュー

美しさを追求したホンダ「ZR-V」。デザインがホンダ車っぽくないのはなぜ!?

ホンダは、新型SUVの「ZR-V」を、2023年4月21日に発売すると発表した。

2022年11月17日、ホンダは新型SUVの「ZR-V」を、2023年4月21日に発売すると発表した。「ZR-V」は、ホンダ車では異彩を放つ美しいデザインと、爽快な走りの2つが大きな特徴となっている。今回は、なぜこれまでのホンダ車とは異なるデザインが採用されたのかなどについてデザイナーに伺ってみた

2022年11月17日、ホンダは新型SUVの「ZR-V」を、2023年4月21日に発売すると発表した。「ZR-V」は、ホンダ車では異彩を放つ美しいデザインと、爽快な走りの2つが大きな特徴となっている。今回は、なぜこれまでのホンダ車とは異なるデザインが採用されたのかなどについてデザイナーに伺ってみた

ZR-Vの製品画像
ホンダ
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(レビュー-人・クチコミ678件)
新車価格:294〜411万円 (中古車:―円

「ZR-V」において注目したいのが、これまでのホンダ車とは少々趣きが異なる、強い存在感と流麗さをあわせ持つ内外装デザインだ。今回、「ZR-V」の発売に先立ち、デザイナーへ同車のデザインにおける魅力などについてインタビューしたのでお届けしたい。

左から、「ZR-V」エクステリアデザイン担当の田村敬寿さん、パッケージング担当の伊藤智広さん、カラー・マテリアル・フィニッシュ担当の後藤千尋さん、インテリアデザイン担当の上野大輝さん

左から、「ZR-V」エクステリアデザイン担当の田村敬寿さん、パッケージング担当の伊藤智広さん、カラー・マテリアル・フィニッシュ担当の後藤千尋さん、インテリアデザイン担当の上野大輝さん

本田宗一郎の言葉を原点に

「ZR-V」は、ホンダ「ヴェゼル」と「CR-V」のちょうど中間に位置する、新たなCセグメントのグローバルSUVだ。「ZR-V」の企画を立ち上げるにあたり、「本田宗一郎が残した、2つの言葉を心に留めていた」と話すのは、インテリアデザイン担当の上野大輝さん。

「ZR-V」インテリアデザイン担当の上野大輝さん

「ZR-V」インテリアデザイン担当の上野大輝さん

ひとつめは、「“ないものを作れ”。私たち開発者が、型にはまった仕事をしてはいけない。独自の価値を、私たちの手で創造したいという思いがありました」。そして、もうひとつは「“自分のために働け”。私たちが、個人の目的や使命を為していく中で、お客様や社会に何をもたらし、その成果に満足できるか。それこそが、自分のために働くことの真髄だととらえました」と語る。

まず、上野さんを含む「ZR-V」のチームは、日本のSUV市場を改めて分析。すると、過去から未来まで、大きく3つのステップに分けることができたという。

初期のSUV、いわゆるクロカンから発生したオフロード性能を備えたものを“SUV1.0”と定義。その後、屈強なスタイルで街を走りたいというニーズから、堅牢さと快適性を兼ね備えた現在の“SUV2.0”へと進化していく。そして、今後訪れるであろう“SUV3.0”では、自分と社会との繋がりが重視される傾向にあり、屈強さを誇示するのではなく、社会に溶け込みながら自分を表現したいといったニーズが生まれてくると予測。そこで、「これからの時代に求められるSUVのあり方として、美しく意のままを提供する新たなSUVの創造を目指したのです」と上野さん。これが、「ZR-V」のグランドコンセプトである “異彩解放”へとつながっていく。

パッケージングにおいても美しさを追求

ホンダのクルマ作りで面白いところは、パッケージング、つまり人の乗車位置や荷室空間などをデザイン部で開発するところだ。他の多くのメーカーは、車体設計部などが行っているが、ホンダは使い勝手などのパッケージングとデザインを両立させることを目指していることがわかる。

「ZR-V」パッケージング担当の伊藤智広さん

「ZR-V」パッケージング担当の伊藤智広さん

コンセプトの異彩解放を表現するために、「凛々しく、艶やかなクルマを作ること。そして、自在に操る自信と余裕を提供することを目標としました」と話すのは、パッケージングを担当した伊藤智広さんだ。

「ZR-V」のフロントエクステリアとリアエクステリア

「ZR-V」のフロントエクステリアとリアエクステリア

凛々しさや艶やかさを表現するために、「踏ん張りの効いた台形スタンスや、流麗なルーフラインといった艶やかなフォルムのための骨格を作りました」と言う。さらに、佇まいとしての美しさを追求するため、美しいトリムライン(ここでは、ドアやテールゲートなどの開口部をさす)を採用。トリムラインを、使い勝手を高めるために凸部などを極力排除したうえで、きれいな見せ方にこだわったと言う。

「ZR-V」のフロントシートとリアシート

「ZR-V」のフロントシートとリアシート

また、セダンライクな乗車姿勢とすることで、「クルマとの一体感を高めています」と伊藤さん。ドライバーの、ヒールポイント(ペダル類に足を置く部分)とヒップポイントの高低差を、CR-Vなどと比べてより低いセダンライクなドライビングポジションとすることを追求。これにより、ドライバーは低重心でしっかりと踏ん張ることができる。同時に、後席もドライバー席との高低差をできるだけ低くすることで、エクステリアの流麗なルーフラインにも寄与している。このあたりは、パッケージがデザイン部に属していることのメリットとも言えそうだ。

これまでのホンダ車とは異なるキャラクターを目指した

「ZR-V」エクステリアデザイン担当の田村敬寿さん

「ZR-V」エクステリアデザイン担当の田村敬寿さん

「ZR-V」のエクステリアデザインを担当した田村敬寿さんは、「流れるようなシルエットとスポーティーなスタンスを、“球体”のようなひとつのボリュームで凝縮して表現しました」と言う。そして、「艶やかで強い塊に、キレのあるシャープな機能を融合しました」とのこと。

「ZR-V」のサイドイメージ

「ZR-V」のサイドイメージ

「ZR-V」のデザインは、近年のホンダ車とは一線を画す仕上がりに思える。たとえば、「ヴェゼル」や「アコード」などは、いわゆる近年のホンダ車らしい直線基調のデザインだ。しかし、「ZR-V」にはそのようなニュアンスが感じられない。田村さんに、そのことをたずねてみると、「ZR-Vは、ユニークなクルマという新しい方向性が求められていました。CR-Vとヴェゼルの間に位置するSUVなので、それらよりもユニークなクルマに、ということととらえたのです」。そして、「たとえば、漫画などではメインキャラクターとその家族がいます。家族は主人公につながる兄弟などですから似ているわけです。いっぽう、敵役としてとても魅力的なキャラクターも存在します。ZR-Vは、そのようなキャラクターを目指したのです。同じ世界観の中でも、キャラクターが異なることによって、これまでとは異なるユーザーからも好まれることを目指しました」。そのため、これまでのホンダ車と異なるように見えるのは当然のことのようだ。

「ZR-V」のフロントフェイス

「ZR-V」のフロントフェイス

もうひとつ気になったのが、「ZR-V」が球体をイメージしてデザインされたということだ。なぜなら、SUVといえばマッシブさや力強さが重視されるため、丸みというのは弱さにもつながりかねないと思えたからだ。だが、田村さんはその点について、「造形を考えた時に、よいものはひとつのテーマに沿って統一した考えを持っています。さらに、これまでにない方向性を考えた時に、球体をSUVにするという組み合わせへと辿り着きました。そして、球体という統一した考え方に、灯体やタイヤなどを組み合わせていくと、当然はみ出してしまうものがあります。そこへ、抑揚をつけてなじませていったことが、グラマラスなデザインのポイントとなったのです」。

機能美とユーティリティが融合したインテリア

インテリアは、水平方向に伸びやかなインパネと、骨太なハイデッキコンソールが大きな特徴だ。「素材そのものが持つ、本来の美しさを生み出すこと。そして、必要な機能から必然的に浮かび上がる造形や使い勝手をインテリアデザインへと落とし込んでいます」とコメントするのは、冒頭でコンセプトを説明してくれた上野さん。

「ZR-V」のインテリア(e:HEVモデル)

「ZR-V」のインテリア(e:HEVモデル)

水平とシンメトリーが強く意識された骨格は、決してスタイリングありきでできあがったデザインではない。たとえば、センターコンソールやドアに施されたニーパッドは、コーナーリング時には足を添えることで下半身をしっかりと支えてくれる形状になっているなど、デザインと機能性をうまく融合させている。そのうえで、「どの席においても、乗り込んだ瞬間にZR-Vでしか味わうことのできない色気を感じていただければ」と、インテリア全体に込めた思いを語る。

「ZR-V」e:HEVモデルのハイデッキコンソール

「ZR-V」e:HEVモデルのハイデッキコンソール

ハイデッキコンソールは、ドライバーと同乗者にパーソナルな空間を与えながら、独自の使い勝手を目指してデザインされた。特に、並列置きのカップホルダーは、同乗者との動線が交わらないようにすることで、「使い勝手も美しくしたいという思いを込めています」と上野さん。そのカップホルダーの位置も、シフターの前側にレイアウトされており、使用する時の目線の移動が極力少なくなるように配慮されている。

また、細部の仕立ての美しさも、インテリアの見どころのひとつだ。上野さんは、「機能部品の一つひとつが、単体でも美しいことを目指してデザインしました」と述べる。インパネやドア内張りにはピンストライプが入れられているが、これらは加飾パネルのないシンプルな空間に、「よい意味での緊張感を与える効果を狙っています」と言う。

「ZR-V」e:HEVモデルのステアリング周り

「ZR-V」e:HEVモデルのステアリング周り

また、パドルシフトはメタル製を採用。これまでの形状では、手の小さい人だとステアリングの握り方を変えないと操作ができなかったそうだ。そこで、「どんな方でも、パッと操作できるパドルを目指しました。握り方を変えずに済むように、パドルシフトの先端を薄く仕上げなくてはならず、かつ剛性も必要だったのでメタルという素材を選定しました」と、そのこだわりを話す。

グラマラス&エレガントをいかに魅力的に見せるか

カラー・マテリアル・フィニッシュ担当の後藤千尋さん

カラー・マテリアル・フィニッシュ担当の後藤千尋さん

自動車のデザインを引き立たてて、クルマ全体をコーディネートするCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)デザイナーがいる。その担当領域は幅広く、目に見えるものや手で触れられるものすべてといっても過言ではない。そこで、カラー・マテリアル・フィニッシュ担当の後藤千尋さんに、新色のボディカラーを中心に説明してもらった。

左のボディカラーが「プレミアムクリスタルガーネットメタリック」、右が「ノルディックフォレストパール」

左のボディカラーが「プレミアムクリスタルガーネットメタリック」、右が「ノルディックフォレストパール」

「ZR-V」には、2色の新しいボディカラーが採用されている。まず、ノルディックフォレストパールは、「凛とそびえる木々、霧がかった空気、しっとりと差し込む木漏れ日。そんな、静謐(せいひつ)な森林のイメージをインスピレーションして、落ち着きのあるグレイッシュティールで表現しています」と言う。

もう一色の、プレミアムクリスタルガーネットメタリックは、「陰影に煌めくガーネットや、燃えるような夕日、そして夜に浮かび上がるような照明、そんな艶やかさや深みといったところを目指して、ソリッドとメタリックの2つのカラーを重ねたスリーコートカラーです」と話す。そして、どちらの新色も「移り変わる光によって豊かな表情が浮かび上がり、成熟した落ち着きや高揚感、そんなイメージの両立に注力しました」とコメントする。

では、インテリアはどうか。グラマラス&エレガントという、「ZR-V」の世界観を表現するためのこだわりは、パール調プライムスムースと呼ばれる素材を使用したソフトマテリアルの採用だ。

パール調プライムスムースと呼ばれる素材が採用されたドアアームレスト

パール調プライムスムースと呼ばれる素材が採用されたドアアームレスト

この素材は、ドアのひじ掛けやセンターコンソールなどに使われており、「乗車するユーザーの周囲を包み込むように配置されていて、感性を刺激するように内側から光を放つかような輝きを持たせました」と言う。同素材は、ボディカラーに使われる光輝材のガラスパールを採用することで、輝きを持たせている。その結果として、「ZR-Vのインテリアが持つパーソナルな空間を、より艶やかに彩ることができました」と後藤さん。e:HEVのブラック内装とマルーン内装色を選択すると、同素材の仕様になるそうだ。特に、新色のマルーンは同色の個性を引き出すようなマテリアルになっているのだそう。

「ZR-V」は、内外装ともに人の感性に響くデザインが採用されていることが今回のインタビューでわかったが、あとはデザインとマッチした走りになっているかも重要だろう。後日、一般道での試乗の印象についても改めてレビューしたい。

内田俊一

内田俊一

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かし試乗記のほか、デザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。

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